本当にせこい   作:七九六十

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14-4 最終話について

 

 

 

 アイデンティティに悩む千棘(ちとげ)と、経歴の迷走具合に苦悩する(ユイ)、そんな2人を相手に上手くフォローできずにオロオロしている(らく)。3人の脱落者を出しながらも、話題はこの場に居ない万里花(まりか)へと移っていく。

 

 そして、小咲(こさき)はある重大な事実に気付いてしまう。

 

「……ねえ、マイちゃん。原作(あっち)の私たちって、万里花(まりか)ちゃんのお見舞い、行った?」

「…………………………行った、と思うよ、たぶん。きっと、そのはず」

 

 行っただろう。見落としているか忘れているだけで、きっと行ったはずだ。

 

「見舞いに行くよって、一条君が大ゴマで言ってたわね」

「ええ、決め台詞として言っておいて、まさか実は一度も行ってないとかは……」

 

 原作(あちら)では次々に人の繋がりが断たれていく時期である。

 (ユイ)を皮切りに万里花(まりか)、その直後に(はる)(つぐみ)

 そして間を開けて夏にはるりと千棘(ちとげ)、そして千棘(ちとげ)()りを戻す代わりに小咲(こさき)と。

 ほぼ全滅である。

 

「……これを考えると、平和にお見舞いに行ける時期が無いね」

「私が言うのもなんだけど、もっと人との縁は大事にした方が良いわよ?」

 

 事情は異なるが、すべての縁を失った千花(ちか)の言葉は重い。

 そんな彼女が(あき)れるほど諸行無常な原作の流れ(これからの予定)を眺めていると、今度は(はる)が重大な事実に気付いてしまう。

 

「あれ、もしかして私って、来年は出番が無いんですか?」

「私も最初の少しだけね。あとは初詣の1コマで、さらには最終回もセリフ無し、と」

 

 これから1年生組は最終話に向けて、2巻分ほど出番が無くなってしまう。

 しかも最大の山場、天駒(てんく)高原の決戦にはまったく登場しないのだ。

 

「私は首領(ドン)と一緒に、出発前のシーンに出てるね」

「私も万里花(まりか)お嬢様と一緒に少しだけ出ていますね」

 

 2人ともセリフ付きである。

 同じような立場のポーラや、それよりも上であるサブヒロインの(はる)よりも扱いが良いのだ。

 

 そんな最終決戦であるが、出番があるからといって幸福だとは限らない。

 

「……ねえ、これ私って、居る意味あるの?」

「宮本様は……正直、居なくてもというか、居ない方が……」

「るりちゃんはこの時期、みんなで居るのに一方向しか見てないんだよね」

「サブキャラの恋愛が裏で進行していて主人公たちと同時に決着するって、本来ならもっと感慨深いものになるはずなのに、なぜかこの作品では場違い感がヒドイよね」

 

 出れば出るだけ魅力が無くなっていく、そんな青のり状態なのは気のせいだろうか。

 

 要素を抜き出すとよくある王道パターンのはずなのに、というニセコイではお馴染みのヤツである。配役やタイミング、見せ方がズレるだけでここまで印象が変わるとは、という驚きがある。

 ジャンプ片手に『君ら何のためにそこに居るか分かってる?』『何で突然、良き理解者ヅラしてんの?』と突っ込んだのは果たして全国に何人くらい居るのだろうか。

 いや、そのようなツッコミをするような人は、こんな終盤まで読んでいない可能性の方が高いか。

 

「というか相手のコレは誰なの?」

「さあ? このあとの話で登場するのでしょうか?」

千棘(ちとげ)ちゃんたちみたいに転校生との運命の出会い、かもしれないね」

「………………いや、まあ、うん」

 

 バスから降りたシーン。風をはらんで膨らんでいるのは分かるが、パッと見で中年太りっぽい腹になっているのが笑える。

 

「それにしても、この後の小咲(こさき)ちゃんはよくこの3人の中で過ごせたね」

「夏休みから卒業まで、軽い拷問ですよね」

「当事者の私が言うのもなんだけど、居心地が悪すぎるわね」

「……うーん、私としては別のことが気になるんだけど……」

 

 彼女の性格なら、気を遣ってこれまでの関係を維持しようとするだろう。

 だからと言って実際にやらせるのは……

 

 そんな小咲(こさき)だがまたしても1つの、しかし重大な点に気付いてしまった。

 

「あのね、一条君と千棘(ちとげ)ちゃんって、本当に付き合ってるの?」

「え?」

 

 何をおっしゃるウサギさん。

 最終決戦であれだけ大騒ぎして、お互いの気持ちを確かめ合ったではありませんか。

 

「あれ……ちょっと待って」

「え、いやまさか、そんなはずは……」

 

 最終決戦の直後にアメリカへと戻った千棘(ちとげ)

 それから(らく)たちの卒業式のシーンまでがダイジェストに流れる。

 なんで雪が降ったシーンを半袖で迎えているのだろうか。

 

千棘(ちとげ)ちゃんと連絡を取った形跡が無いね」

 

 いくら受験生だからといって、いやむしろ大変な受験を控えているからこそ、彼女とのメールや電話のやり取りで励まされたとか、そういう要素の出番ではなかろうか。

 なのになんで『中学からの仲良し4人組が、4人で協力し合って仲良く高校を卒業しました』感を出しているのだろうか。

 というか高校での出会いをすべて無かったことにしての、この笑顔での締めは……

 

「それでね、もっと問題なのが最終回なんだけど……」

「ああ、お約束の数年後に飛んだやつだね」

「これ一条様は『本年度から』市役所に勤めるのに、1つ下のポーラは『既に大学院生』なんですよね」

「一条君は留年でもしたのかしら? それとも就職浪人?」

 

 これは本当に何なのであろうか。曜日と一緒で、時間の概念がおかしいのであろうか。

 

「優秀な私が飛び級したという可能性も……」

「飛び級制度もあるにはあるけど、ポーラさんの性格的にやるかな?」

 

 なんだかんだと仲良くなった同期と、自分から離れる姿が想像できない。

 そんな淋しがりやのポーラである。

 

 まあそれは別にして。

 本題は最後の(らく)千棘(ちとげ)の会話である。

 

『……久しぶり。前に会ったのって()()()()だっけ?』

『確か()()()()()だな。お前が忙し過ぎんだよ』

 

 そして極めつけは、感動的なはずのキスシーンである。

 

『ちょっと!! もっと上手くやんなさいよ!!』

『なっ……! うっせーな、仕方ねぇだろ! ()()()なんだから……!!』

 

 告白から6年、そして結婚式直前のカップルの会話である。

 

「一緒に居るのが楽しいから好きになったんだよね?」

「……見方を変えれば、一緒に居なくても好きだという気持ちが続いているということで……いえ、苦しいですね」

「告白の直後からいきなり(はな)(ばな)れなんてことがなければ、(つぐみ)ちゃんのフォローもあり、なのかしら?」

「でも一条先輩、『1人だけじゃたどり着けないような世界にも、2人でなら行けるような気がする』とか言ってますよ?」

「この調子だと、結婚後も一緒に居られるのはクリスマスの156(怪奇千万)分だけ、とかなりそうよね」

 

 2人とはいったい……

 そもそも地元で独り、安定した職業に就いた彼は、本当に新しい世界を欲しているのだろうか。

 

 ラブコメの最期を結婚式で締める。

 ラブコメの最期を主役カップルのキスシーンで締める。

 どちらも王道である。

 

 なのになぜ、こうまでケチが付いてしまうのか。

 

「……恋愛結婚ってこんな感じなの?」

「あのね千花(ちか)ちゃん。これは例外中の例外だからね?」

 

 ちょっと身の回りに(あふ)れているが、本来ならレアケースである。

 

万里花(まりか)お嬢様なら恐らく、告白からそのまま監禁コースでしょうね」

首領(ドン)はそこまでできないよ。でも絶対、依存度は高いね」

小咲(こさき)ちゃんも(つぐみ)ちゃんも(はる)ちゃんも、そこら辺の感性は普通だから、やっぱ似た者同士で惹かれ合ったのかな」

 

 この結末を描きたかったのならヒロインは千棘(ちとげ)しかありえない。

 そう断言できるほど、見事な配役であった。

 

 特に新しく『(じょう)』と『(かぎ)』を作るところなんかは、この2人にしか出来ない事だろう。

 

(かぎ)が4本なのは、再会して再び仲良くなろうという約束が込められていたんですけどね」

 

 当時、子供たちの様子を見ていた本田はある程度の経緯を把握している。

 そのため『お姫様の(かぎ)』と『天使様の(かぎ)』についても知っているのだ。

 

「その約束の(かぎ)を真っ先に放棄したのが、発案者の首領(ドン)なのは本当に皮肉ね」

 

 その(ユイ)も、いつの間にか(かぎ)の使用目的を(らく)との恋愛にしか向けてなかったのだが。

 

「さらにそれを土に埋めたのよね? ということは仲良くすることを拒否したってことなの?」

 

 子供の微笑ましい約束事の残酷な結末に、大人たちは何とも言えない表情になる。

 特に友情や愛情に飢えている千花(ちか)からすれば、(みずか)らそれを捨てる行為に理解が追い付かない。

 

「そして新しい『(じょう)』と『(かぎ)』のお披露目が、6年後の結婚式の日なんだよね」

 

 それを見た小咲(こさき)万里花(まりか)(ユイ)の心境は……

 

「この最終回、首領(ドン)の扱いが前担任よりも小さいのは気のせいか?」

「私も含めて母親は誰一人登場していないことに比べれば、まだマシじゃない?」

 

 (らく)の母親は結局、名前も顔も出てこなかったのは何故なのか。何かの伏線だというならまだしも、ここまで隠す必要はあったのだろうか。

 例えば千棘(ちとげ)そっくりでママレード・ボーイを(にお)わすとかだったら、それはそれで読んでみたいのだが。

 

「ちなみに万里花(まりか)お嬢様は招待状が送られただけで、一条さんからの電話は無かったみたいですね」

「……橘さん、今度こそ一条君から贈られた髪飾り、投げ捨てるんじゃないの?」

「すでに一条様の好みに合わせた長い髪は、バッサリと切ってますからねえ……」

 

 るりも電話を受けてないという意味では同じだが、万里花(まりか)の立ち位置でこの扱いはあんまりだろう。彼女よりも一歩下がる(つぐみ)には電話があったのだから、なおさらである。

 

「なんでお姉ちゃんはウェディングケーキをイミテーションにしなかったんだろ?」

「んー、それだけ気合が入ってたから、とか?」

千棘(ちとげ)お嬢様がたくさん食べるからじゃない?」

 

 小咲(こさき)が試作品まで作って立派なウェディングケーキを仕上げたことに対して、(らく)千棘(ちとげ)からはこの仕打ちである。

 これを機に関係を断ったとしてもおかしくはない。

 

「おまけを見る限り、少なくとも小咲(こさき)ちゃんと一条は連絡取り合ってないよね」

「また子供同士が初対面ですし、親からも話を聞いていない感じですよね」

 

 (つぐみ)が『また』とか軽く言っているが、もうちょっとどうにかして欲しいところである。

 

「でも一条君と(はる)は連絡取ってるみたいね。もしかしたら息子が偶然バイトに来ただけの可能性もある話っぷりだけど」

「…………この子、私よりも(はる)に似てるような」

「んー、髪型のせいか(フウ)ちゃんの成分も入ってるような……」

「もしかして(はる)は独り身が確定? 少なくとも子供は居なさそうね」

 

 るりが昼ドラ要素を嗅ぎ付け、さらに小咲(こさき)が悪い可能性に気付いてしまう。

 まあさすがに無いと思うが、むしろ読みたくなってくるドロドロさである。

 

 小咲(こさき)の娘だという弥柳(みやなぎ)紗咲(さき)

 自宅から通えない距離にある凡矢理(ぼんやり)高校にわざわざ入学したようだが、何か理由があったのだろうか。

 正直なところ凡矢理(ぼんやり)高校に学校としての魅力は無く、せいぜい男女同部屋での宿泊行事があるくらいなのだが。

 

「一条と千棘(ちとげ)ちゃんの息子の一条(はく)……こっちは一条の成分がヘアピンにしか無いね。後頭部寄りだから目立ってないけど」

「正面からだとシンメトリーに見えますね。とうとう脇役(モブ)に落ちましたか」

「少女漫画だと、初期に出てきたのに特徴が弱くていつの間にかフェードアウトする役どころ、って感じね」

「女の子の扱いに慣れてそうだし、つぐみちゃんの娘が護衛兼幼馴染とか? 万里花(まりか)ちゃんと(ユイ)先生の娘ではないだろうし」

「扱いに慣れてるけど上手いわけではない感が、この少ないページでも十分に伝わってくるのが凄いですね」

「幼馴染の事をほっとけなくて、中途半端なせいで本命にフラれるタイプと見た」

 

 散々な言われようである。

 ちなみに彼を追いかけてきたのがヤクザだけ、つまり母方(マフィア)とは疎遠な可能性が示唆されており、(らく)たちの世代も人間関係が崩壊している説が補強されている。

 それを考えると(つぐみ)の娘が幼馴染説も苦しいか。

 

 そもそもこの2人が同学年というのはどういうことだろうか。

 

 最終話の(らく)たちの結婚式の段階で、小咲(こさき)の横に誰か居るのであれば、るりの様にそれを示唆してもおかしくない。

 というか普通はそうするだろう。いくらなんでも孤独なシーンだけを描写するなんて、救いが無さすぎる。

 

 では結婚式の惨劇で傷ついた小咲(こさき)が立ち直って、良い人を見つけて結婚するまで(らく)たちに何の進展も無かった、というのはどうであろうか。

 十分あり得そうな話だ。

 

 もしくは一条(はく)が彼らの第一子ではないという可能性はどうだろうか。

 見た感じだと一人っ子気質が出ている気がするが。

 

 兄がいる、というのはないだろう。

 三代目と呼ばれていること、それを否定はするが他の人に押し付ける感じが無いこと、本編で若頭だった竜が出てきていること、以上を踏まえると長男ではあるはずだ。

 

 では姉はどうだろうか。

 女の扱いから考えると無さそうだが、ほとんど顔を合わせたことない姉がビーハイブ(マフィア)の方に居る可能性はある。

 途中テコ入れで出てきて、早々にヒロインレースから脱落するキャラとして扱われそうなのは気のせいだろうか。

 

 ……オマケだから設定ありきで、特に深く考えてはいないのだろうが。

 

 

 

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