本当にせこい   作:七九六十

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14-6 年齢の話

 

 

 

 ワイワイと盛り上がる彼らを見ながら、るりがポツリと(つぶや)く。

 

「……まさか皆で同じ大学に行くことになるなんて、思ってもみなかったわ」

 

 彼女は中学生の頃から姫知利(きちり)大に行くことを決めていた。しかし友人である舞斗(まいと)小咲(こさき)は大学に行く必要のない職に就きそうだったし、高校に入ってできた新しい友人たちも進路が合わず、バラバラになるはずだった。

 少なくとも2学期の頭に行われた三者面談において進学は(らく)のみであり、彼も凡矢理(ぼんやり)大学か佐張(さぱり)大学を希望していたのだ。

 

 だから、独りで4年間過ごすことを覚悟していたのだが。

 

「るりちゃんも何気に淋しがりだからねえ」

「むぅ」

 

 舞斗(まいと)(ほお)を突かれながらも、反論することができない。

 昔は大丈夫だったのに、なんと弱くなってしまったことか。

 英語学科には独りで進むと意地を通したが、小咲(こさき)(つぐみ)の進学先が同じだと知って安心したのは事実なのだ。

 

「なんだ、宮本も」

「一条君と一緒にされるのはちょっと……」

「ヒドいっ!?」

 

 ただの照れ隠しである。

 

 誰であれ、別れは淋しいものである。

 (らく)だけでなく、るりもそうだし、他の面々もそうだ。

 そう、彼女にとっても。

 

千花(ちか)ちゃんも一緒に大学行く?」

「行く!」

「即答かよ」

 

 舞斗(まいと)の言葉に元気よく答える千花(ちか)の姿に、予想できていたとはいえツッコミを入れてしまう。

 

 (らく)も彼女が先ほどから(うらや)ましそうにこちらを見ていたことに気付いていた。

 高校を自分の意思ではなく中退して実家に連れ戻された彼女は、自分にもあり得たかもしれない未来の姿を目の当たりにして、我慢できなかったのだ。

 ……ただまあ彼女の交友関係から考えると、高校を卒業と同時にバラバラになって音信不通、という可能性が大だったのだが。

 

「でも、受験まで1年切ってるけど大丈夫なのか?」

「そこはまあ、本人次第なところがあるけど」

「がんばる」

 

 もしかしたら人生で初めてかもしれない。

 未来に希望が持てる状況で、自分から、自分のために行動を起こすのは。

 

 ならばいくらでも頑張れるだろう。

 

 そんな決意(みなぎ)千花(ちか)の姿を見守る。

 

「もしかしてウチの学校にも通うのか?」

「!」

 

 橘の代わりにクラスに居ても違和感ねーだろーな、なんてのんきな(らく)に、また高校に通えるのかと期待に目を輝かせる千花(ちか)

 そんな2人に舞斗(まいと)は苦笑する。

 

「それも面白いけど、少なくともしばらくは家でみっちりお勉強かな。今の状態だと授業についていけないし」

 

 さすがに20年のブランクは大きい。今の状態では授業を受けるよりも自分のペースで学習する方が効率が良いのだ。

 もっと時間に余裕があるのなら通学しながらでも良かったのだが、この時期では難しい。

 

「……そうよね。それに、こんなおばさんじゃセーラー服も着れないし……」

「いやメッチャ似合いますって」

 

 (らく)が反射的に答えてしまう。

 正直なところ、2個上の(ユイ)姉よりもよっぽどセーラー服が似合うだろうなあ、なんて考えていたりする。

 

 そういえば人妻好きの大関・百乃花(もものはな)としては、千花(ちか)のセーラー服姿というのはありなのだろうか。

 ()れたという表現がどこにも当てはまらないが、一応は人妻である。

 

「……あれ、2個上? (ユイ)姉って今年成人したんだよな?」

 

 自分の思考に対してふと疑問が生じる。

 

 (ユイ)は今年20歳。

 (らく)たちは今年17歳。

 

 はて……

 

 今年の成人式にて飛び級前の同級生と再会しているので、20歳で間違いないのだが。

 

 ただこれもおかしな話で。

 第179話の同級生は『4年生のときに中国に引っ越した』と言っており。

 第118話の(らく)は『オレが小学2年くらいの時に転校して行った』と言っている。

 

 ここだけ見れば『2個上』が正しい。

 

 しかし今の年齢から考えると『(ユイ)が4年生、(らく)が1年生』が正しい。

 

「たしか2学期が始まってすぐ、第119話センセイで一条が叫んだんだよね。オレたち2つしか歳違わないハズって」

「そのときの一条様と2歳差、という意味だったのでは?」

「いや、オレの誕生日は12月だから、あのときは16で……って第119話ってなんだよ」

(ユイ)先生の年齢を間違えて覚えていたとか?」

「それは無いわね。その後すぐに『19だろ今』って言ってるし」

 

 ここに来て新たな謎に気付いてしまった一同。

 

「一条先輩が実は留年してたって説はどうですか?」

「なるほど。だったら辻褄が合うわね」

「ねーよ」

 

 ちびっ子たちのトンデモ説は否定される。

 しかし舞斗(まいと)が更なる火種を投入する。

 

「でもほら、荷物を部屋に運び込むシーンで『もう少し早く日本に来れてたら、同じ生徒として編入出来たんだけど』って言ってるし」

「1年前でも(ユイ)先生は高校を卒業している歳だから、2年前だったらってこと?」

「2年前の夏に高校生でいるためには、一条君はやっぱり……」

「しかしそれだと前提に、一条様が留年・浪人していなければ、って必要ではありませんか?」

「こ、こいつらはまた好き勝手なことを……」

 

 実際は編入する年齢に上限は無いので、何歳であろうと(らく)と同じ学年になれる。

 しかし編入出来る時期は限られるので、この場合は『4月に合わせて手続きできていれば』という意味で『もう少し早く』だったのだろう。9月編入が可能であれば、そうしていただろう。教師として就職活動するよりも簡単なはずだ。

 

 同じ生徒として通いたかったが、それができないから教師になった、というニュアンスの会話だったためにややこしい話になっているだけのはずだ。

 おそらく、それだけのはず……

 

「まあ千棘(ちとげ)ちゃん17歳も第176話の秦倉先生の20歳の誕生日に、たった2つしか違わないって言ってるんだけどね」

 

 千棘(ちとげ)はアメリカの学校に通っていた都合で(らく)たちよりも年上の可能性があったが、残念ながら第28話の彼女の誕生パーティにて年齢が確定している。

 というわけで(らく)が留年している可能性は無く、ただ『2個上とは何ぞや』という疑問が残るだけである。

 

「……これだけ雑な設定なら、もしかして私も17歳でいける?」

「そうなると万里花(まりか)お嬢様と同じ年齢になってしまいますが」

 

 娘よりも年下になってしまった母親というのは、業界では希にあることなので問題ないだろう。

 見た目のほうも問題ないし。

 

「ねえ(イエ)ちゃん、私の年齢って……」

「飛び級したときに増減しただけね。それか美国(アメリカ)との時差よ」

 

 不安な(ユイ)に、(イエ)のよく分からないフォローが入る。

 本当に、よく分からない状況である。

 

 

 

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