「作った魔法によって力に補正が掛かるというタレントか。それだけでは良く分かりづらいな」
「そうなのですよ。タレントを調べる魔法で判明したのは良いんですが、雑な説明しかしてくれなくって。それで手探りで研究はしてたけれど、人望が無いから実験のデータなんて中々取れなくって」
戦っていたら何か強くなった、そんな風に認識する者こそ居るが、レベルという具体的な指標を認識しているのはプレイヤー位だ。
それでも死者を蘇生させたら筋肉が痩せてもないのに弱体化している事から何となくレベルの存在は認識していたギーシュはデイバーノックとヘジンマールでの実験を通して仮説を立てた。
「ビーストマンとの戦いの後に強くなった感覚もあって、その回数が上がる度に頻度が減る事から必要な討伐数を計算。それを超えても強くなる感覚が無ければ試しに魔法を覚えさせてみると、そんな感じでした」
「ま、まあ、レベルの概念が無いのだ。曖昧な認識も仕方無いだろうさ」
「私自身は魔法を十個作る度に一回。作った魔法を習得すると難易度に応じて回数が一から三増えるらしいのは詳細を一切教えていないデイバーノックで無許可の実験済みです」
「おぃいいいい!? 何やってるのだ、貴様!? 又我を勝手に実験台にしよって!」
「いや、教えない方が真っ白なデータが手に入ると思って。因みに私の現在の数字は四十五で限界値は八十です」
「ふむ。後は職業ビルドがどうなっているかだが、此方も認識していなければ非効率になってしまうだろうな」
蒼の薔薇についてギーシュから情報を得ているアインズはユグドラシルとは職業の会得条件が違うのは予想している。同時に意図して選べない以上、無駄な物まで取ってしまうという事も。
その辺の検証は修行法の調査や検証を行った後で実験してみようかと思うものの、対象は子供を作る魔法で用意すれば良いとして、まさかNPC達に子供の親になれと命令する訳にはいかず、その辺の者では弱過ぎる。
その辺りはデミウルゴスかアルベドにでも検討させるのが良いかと結論付けた所で気になっていた事を口にした。
「所で次の納品にタレントを読み取る魔法の指輪を加えてもらえるか?」
「既に作って確か七番目の隠れ家……聖王国を二つに分けた湖に繋がる地下洞窟にあった筈」
「聖王国……か」
現在、ナザリックがいずれ戦う事になると警戒しているのはプレイヤーの子孫が居て装備などを受け継ぎワールドアイテムを所持している可能性が高い法国とプレイヤーを敵視する竜王が住む評議国。
何方も容易に倒せる相手ではないと評価し、何方かと戦っている時に漁夫の利を狙われる可能性もある。
特に竜王の場合、呼び寄せたのなら送り還す事も可能だと想定している。八欲王の時には使えなくとも位階魔法の中に送還魔法はあり、それを元に開発している可能性はあるのだから。
そんな中、聖王国に対しては梃子摺りはしないだろうが宗教上の問題で鬱陶しい相手になりそうだとは感じていた。特に聖騎士を率いるレメディオスは狂信的な忠誠を聖女王に捧げる猪だという。
余程の事がないと仲良くは出来ないと。
「困ったな。指輪は欲しいが亜人や聖騎士との遭遇の可能性を考えれば素直に見送りは……そうか。その手があった」
敵対するであろう相手以外にもアインズには悩みの種がある。少し厄介な案件であり、どうすべきか自分の心情も含めて悩んでいたのだが、それを解決する方法を思い付いた。
「此方から転移魔法の使い手を護衛に出そう。あまり人目に晒したくないが、既に貰った指輪の中に使える物があったからな」
アインズからの提案がされた後、ギーシュ達の姿は聖王国の空の上にあった。亜人や兵を刺激しない様にと高度を普段より上げ、ギーシュを背に乗せたヘジンマールの横をデイバーノックが並んで飛ぶ。
更にヘジンマールを挟んで反対側にも飛ぶ少女の姿があった。
「人間なのに分かってるでありんすね! 血の気が完全に失せて青白くなりだした肌こそ美の蕾だと理解しない奴が多いでありんす」
「そうそう。先ず死んでいないと選外になるのだ。基本的に肉があるのが良いが、完全に肉も皮膚も剥がれ落ちて骨だけになった姿には一種の芸術性を感じるな。すり減りも歪みもない均衡の取れた骨格のスケルトンが中々見ないのが残念だ。残念といえば腐った肉を新鮮な肉に変える魔法をゾンビに使ったら腐り落ちた部分そのままの怪我人が呻いてるだけみたいになってしまって……」
「ないわー。流石にそれはないわー」
「やはり命が失われたと一目で分かる状態に入った直前か完全に肉が無くなった状態にこそ美があるのだな」
「そうそう! 特にアインズ様のお美しさときたら……」
ギーシュとネクロフィリア嗜好の話で大いに盛り上がっているのはシャルティアであった。先日の洗脳関連の失態をアインズは責める気にはなれず、だが本人が罰を望み苦しんでいる事から今回の護衛任務を命じたのだ。
但し、ワールドアイテムで洗脳を行った者達に姿を見られている事から服装はペロロンチーノが用意していた服の中からナース服を選び、更にギーシュが提出済みの髪型を変える魔法によって緑の髪色でドレッドになって顔上半分を隠す蝶の仮面まで装着している。
「ところでこの髪型って本当に直るんでしょうね?」
創造主にそうあれと決められた姿に手を加えるのはNPCにとって喜ばしい事ではなく、アインズもこれが罰になると分かってはいたが現在絶賛後悔中だ。
シャルティアはドレッドヘアーに指先を絡ませて伸ばしたり縮めたりと何処か不安そうにさえ見えていた。
「毛量以外は色も癖も長さも自由自在だし、解除すれば元に戻るぞ」
「なら良いでありんすが……。ところでお前は将来的には人間を辞める気なのでありんすよね?」
「人間の価値観だからこそ思い付く魔法もあるし、アンデッドや悪魔もそれは同じなので今は人間のままだな。……会話の途中だがお客さんだ」
地上からヘジンマールの姿を見付けたのか飛来する人影が複数。鎧を身に纏い翼を広げるその姿は……。
「天使? 聖王国か、もしくは亜人対策で派遣された法国の部隊か」
法国と聞いた瞬間にシャルティアの口元が怒りで歪む。護衛任務だと言い聞かされていなければ今直ぐにでも飛び出そうな剣幕の中、十体程の