究極の魔法に至る為!   作:ケツアゴ

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悩みを聞いてもらえる魔法

あひゃひゃひゃひゃ! ウヒョヒョヒョヒョ!ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ! ウヒヒヒヒ!

 

「うわぁ……」

 

「何でしょうか、この不愉快な笑い声は」

 

 ハートレスの調査とはいっても相手側に出向いて少し話を聞くだけだった。ナーベラルの奴は呼び寄せるべきだって憤慨していたが、冒険者としての立場は向こうが上って分かっているのか? 分かっていないんだろうな……。

 

 そんな訳で拠点としている宿屋『黄色の梟』までやって来たんだが、居るという裏庭の方から聞こえて来た笑い声に俺は思わず声を漏らす。

 貸し切りって話だったし、絶対笑い声の主がギーシュ・ハートレスだと分かっていながらも、エルダーリッチの仲間が居たのを思い出してそっちであってくれと願う。

 

 いや、既に変人っぷりは伝わってるから仲間までそんなのだと嫌なんだが!

 

「まあ、何か嬉しい事でもあったのだろう。……行くぞ」

 

 

 未だに俺が出向く事が不満らしいナーベラルを連れて声のする裏庭を覗けば金髪の青年がブリッジの姿勢で大笑いをしていた。

 

「モモン様、あの奇妙な物体を今すぐにでも消しましょう!」

 

「モモンさんだと言っているだろう。そして虫ですらないのか……」

 

 どうやって声を掛けるべきか迷い、ハムスケを連れてくれば良かったと悔やむ中、別方向から声が掛けられた。

 

 

「ああ、組合から既に話は通っている。私がいる事で煩い連中がいるからな」

 

 低く震えるような虚ろな声を発するのは赤いフードを身に纏ったエルダーリッチ。ハートレスのメンバーである彼は人間に擬態している俺達へアンデッド特有の憎悪を向ける事無く普通に話し掛けてきている。

 こいつがデイバーノック、デミウルゴスから聞いていた助手か。手の指輪も何らかのマジックアイテムか気になるが、もっと気になるのが。

 

「何でフードの上からエプロンを着ているんだ?」

 

「客人が来るだろうから茶の用意をしていた所だ。紅茶は嫌いか?」

 

「悪いが信仰の都合で人前での飲食は控えているんだ」

 

 何でエルダーリッチがエプロン姿でお茶の用意までしているんだよ!? そして客人が来ると分かっているのにあの態度かよ!?

 

 

 

 

「家事が少し上手に出来る魔法か」

 

「ああ、料理を作れば少しの間だけ食べた物に強化が乗る他、ほんの僅かだが強くなれる。効果はどちらも微弱だがな」

 

 ギーシュは一頻り笑った後は部屋に戻って最後の仕上げをするらしく、俺達の相手はデイバーノックとヘジンマールがする事になった。

 依頼の聞き取りもある程度決められた内容を聞くだけの形式上の物で、今は開発した魔法について聞いているんだが、発動中は少し強くなって料理にバフが乗るだって!?

 

 それってレベルアップして家事に関わる職業を得たって事なんじゃないのか!?

 

 うわぁ、今回の事で会いたくないって更に思ったのに重要度は更に上がってしまった様な……。

 

 

 

「それで今回はどんな魔法か聞いていますか?」

 

「ああ、確か……」

 

 

 

 

 

 

「話を聞いてくれる相手が出てくる魔法か」

 

「ええ、本人が気休めにしかならない魔法と言っていましたが」

 

 魔法についての話を聞き、迎えた定期報告の日に渡されたリストの中にその魔法があった。召喚魔法よりも幻覚に近いらしく、使用者が話を聞いて欲しい相手の複製を短時間だけ出すとの事だ。

 複数人の中からランダムで一人、そして最初の一人で固定される。

 

 本人って訳じゃないし、愚痴を聞いて貰う為の魔法か。作った本人が気休めにしかとか言い切る程だしな。

 

「それで褒美は用意してやったのか?」

 

「ええ、幸いな事に金貨を使用しませんし、スクロール用の紙の製造法だけでも十分貢献してくれていますからね。……指輪の製造法については本人の才覚による物な上に教える場合は擬音が九割でして……」

 

「そうか……」

 

 しかし愚痴を聞いてくれる魔法か。ナザリック内部じゃ使える場所は……。

 

 

 そうか、あの場所だったら!

 

 

 

「おぉ! これが新しい指輪ですね! 私としては個別の名称が欲しい所なのですが!」

 

「本人が作る事だけを重要視しているからな。識別名が必要なら命名権は譲るそうだ」

 

 俺が訪れたのは宝物庫、出迎えたのは製作したパンドラズ・アクターだ。軍服に時折挟むドイツ語に加えて動きが鬱陶しく、アインズにとっては黒歴史的な存在故に会いたくなかったが、目的の為には必要だった。

 

 羞恥心が刺激されては精神抑制され続けてるんだけれどな!

 

 

「ほんの好奇心だが私が相談するとなると誰が出て来るのか気になったのだが、出て来る者によっては……分かるだろう?」

 

「成る程。姿をお隠しになった御方の誰かの姿だった場合、少々刺激が強い可能性がありますからね」

 

「まあ、そういう事だ。それと出て来る者によっては気恥ずかしそうだからな。少々席を外せ」

 

「ははぁ! 了解致しました!!」

 

 いや、本当にその動作どうにかしてくれ……。

 

 

 

 パンドラズ・アクターが遠ざかるのを確認して俺は指輪の魔法を発動させる。まあ、一人で愚痴を呟くよりはマシだろうな程度の気分で使ったのだが、欲を言えばギルメンの誰かだと嬉しいと思っていた。

 

 

「さて、誰が出るの…やら……」

 

 現れた人物を目にした瞬間、思考が固まった。現れたのは上質ではない服を着た人間の女。様々な感情が頭を駆け巡り、沈静化しても再び溢れ出す。叫び出しそうなのを堪える事十分以上。

 漸く落ち着きを取り戻した俺は相手の前の椅子に深く腰を下ろした。

 

 そうだ、あくまでも記憶を元に再現しただけだ。本物が目の前にいる訳じゃない。

 

 

 

「あくまでも貴女は私が作り出した幻だ」

 

「そうね」

 

「だが、折角試してみるのだから話そうか」

 

「ええ、何でも話してちょうだい」

 

「この姿で異世界に来て、未だ分からない事が多い。気は抜けないからな」

 

「大変ね」

 

「……失望されたくないんだ。皆が残したNPC達の理想の姿でいたい」

 

「辛くはないの?」

 

「支配者なんて柄じゃないし、気が休まらないよ」

 

「うん」

 

「アインズ・ウール・ゴウンでの日々は楽しかった。本当は皆が最終日に戻って来てくれなくて悲しいし、ヘロヘロさんに最後まで残ってもらえていれば今よりも……いや、此処迄にするよ」

 

 アインズは首を左右に振ると立ち上がって魔法を解除する。目の前の相手の姿が徐々に薄れて消え去るのも待たずにアインズが去ろうとした時、声が掛けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう。辛くなったら何時でも会いに来て良いのよ。……悟」

 

 ああ、精神抑制があって良かったよ。じゃないと泣いて縋り付いていただろうから。

 

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