未来を変える鬼狩り達   作:yuki_06090570

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孤独な鬼狩り

未来を知った炭治郎たち。その悲惨な未来を回避するためにも、今すぐに鍛練をおこなって力を付けなければならない。しかし那田蜘蛛山で負った傷は相当深く、全集中・常中もしていない今の肉体では治癒力もかなり低い。

 

「すみません…。常中だけでもできていれば良かったんですが……」

 

今ここで常中をおこなうと逆に体の負担となり、完治までの時間が延びる可能性がある。そのため現状は稽古を受けることはできない。

 

「まあ仕方ねえわな。今のお前らは入隊してから間も無い肉体だ。むしろこの時期から常中できてただけでも上々だろ」

 

今は天元が遊郭で三人と共闘する時からおよそ半年前。それだけの月日であれ程強くなったのだから三人の成長速度は尋常ではない。勿論、無一郎には遠く及ばないが。

 

「……煉獄さんの死が俺たちの足を進ませたんです。

こんな言い方は良くないかもしれないですが…あのとき煉獄さんが生きていたら、俺たちはまだまだ非力なままだったと思います」

 

"心を燃やせ"。その言葉がなければ、何度も挫けていただろうし、そもそも遊郭で命を落としていただろう。

杏寿郎が死んだおかげで炭治郎たちは強くなれたという、ある意味では猗窩座の言っていたことは間違いではないのかもしれない。

 

「同感だな。いや、お前らだけじゃない。俺たち柱も同じって意味だ」

 

杏寿郎は現柱面子の中では新参の部類に入る。しかし底無しの明るさ、悪鬼を切り捨て人を守るという絶対的な信念、有無を言わせぬ圧倒的な信頼感。様々な要因から、杏寿郎は柱の"(かなめ)"となっているのは間違いない。少々ズレた感性を持っていることが玉に瑕ではあるが。

 

「つうわけで、俺らは柱同士で稽古してくるわ。善逸はさっさと薬を飲んどけよ」

 

天元は善逸を指差した後、病室から出ていった。

 

「いやだから……この薬不味過ぎるんだってぇ……」

 

「さっさと飲みやがれ、善逸」

 

湯呑みに溢れんばかりの量が入っている薬湯を見て涙を零す善逸。そんな泣き言を言う善逸に、伊之助は枯れきった声で一蹴する。

そんなこんなで善逸は涙を流しながら、嗚咽を溢しながら、薬湯を喉へと流し込む。

 

「こんなの一日五回も飲んだらご飯食べられないよ……」

 

そう。善逸に処方された薬湯は一日五回の服用と指示されている。そして、今日はその一回目である。

 

「頑張れ善逸!

煉獄さんを助けるには、それを飲んで一刻も早く強くならなきゃならないんだ!」

 

その後も善逸は愚図り続け、結局薬湯を飲み切るのにかなりの時間を要した。

 


 

天元が病室で炭治郎たちと話をしていたとき、実弥は診察室に居たしのぶと話をしていた。

 

「胡蝶。暫く……あの三人が完治するまでだな。それまで蝶屋敷の稽古場と中庭を使わせてもらうぜェ」

 

「はい、構いませんよ。何方にせよ、竈門くんたちは機能回復訓練をしていただかないといけませんし」

 

却下されても無理を押し通すつもりで聞いたが、意外にもあっさりした反応で容認されたことに、実弥は少々驚きを見せる。そんな中でも、しのぶが作業の手を止める気配は全くない。

その姿はまるで生き急ぐかのような……。姉が死んだとき以上に、柱になったとき以上に、生き急いでいるように見える。

 

「おい…」

 

実弥は作業中の手を止め、しのぶを睨みつける。しのぶは突然手を掴まれて作業が止まると、実弥の方に顔を向ける。

 

「…何か御用で?不死川さん」

 

表情は変わっていない。姉のカナエを想起させる柔らかな表情。しかし内に秘めた風貌が大きく変化しているような感じがあった。

 

「お前…俺たちの会話を聞いてたんだろォ」

 

「…!

…いったい何のことでしょうか?」

 

しのぶは一瞬目を見開くが、直後いつもの声色で返答する。その反応を見て、実弥は疑惑から確信に変わる。

 

(とぼ)けんな。俺ら三人が人の気配に気付かねぇ訳ねぇだろ……柱だぞ。流石に誰が聞いてたかは分からなかったがなァ」

 

「……………」

 

「……今からでも遅くねぇ。毒は食むな」

 

実弥がそう言った瞬間、しのぶは実弥の胸倉を力一杯掴む。力の弱い腕とは思えないくらいに、実弥の隊服にシワが付く。

 

「……貴方に何が分かるんですか……。

…親を殺され…姉を殺され…継子も三人殺された……!!

どれだけ大切な人を殺されても!!私は鬼をまともに殺すこともできない!!!指を咥えて眺めることしかっ…!!

そんな気持ちが!貴方なんかに分かるわけないっ!!!」

 

しのぶは今までにないほど怒りをあらわにする。仇を討つために毒を食むほどの覚悟。それを真っ向から否定された。よりによって、以前の自分を知る人が。

 

「………本当は私だってこんなことしたくない…。誰が好き好んで毒を食みたいなんて思うんですか……。誰が好き好んで……姉の仇に喰われたいと思うんですか……。

私だって……鬼の頸を斬りたかった……。でも私には鬼の頸を斬る力もない……。仇を討つにはこれしかない……。

私だって……貴方みたいに…悲鳴嶼さんみたいに…恵まれた身体が欲しかった……」

 

実弥は嘆き始めたしのぶの手を掴み、胸倉からゆっくりと手を離させる。

 

「一つだけ…お前にも可能性があるって言ったら……お前は毒を食むのを止めるか…」

 

"可能性"と聞き、しのぶは泣き顔を上げて実弥を見つめる。その可能性というのは、どう考えても鬼の頸が斬れる力のことだろう。

 

「そんな可能性があるのなら……毒なんて喜んで捨ててやりますよ……。もしもそんなものがあるのなら…ですけど……」

 

「そうかァ……。

なら…"痣"を出し、"透き通る世界"を会得するぞ」

 

「痣…?透き通る世界…?

何ですか…それ……」

 

「……来い」

 

実弥は掴んだ手を離さないまま、しのぶを連れて中庭へと向かう。その途中、一人の隊士と鉢合わせる。

 

「カナヲ……」

 

「姉さ……師範……」

 

その隊士は、生き残ったもう一人である栗花落カナヲだ。しのぶのことを"姉さん"と言いかけたということは、間違いなく未来の記憶を持っている。

 

「お前も生き残り組だったな。今から胡蝶を連れて行くから、お前も来い」

 

「はい」

 

生き残り組という意味をすぐさま理解したカナヲは、実弥の指示に何の疑問もなく従う。そうして三人は中庭に入る。

 

「遅かったなぁ、不死川!何して…た……」

 

「何故…胡蝶が此処に……」

 

待っていた天元はしのぶを見て言葉が途切れる。義勇も驚愕という風な表情をしている。

 

「コイツが、さっきの俺たちの会話を聞いてた奴だ」

 

「……謝りませんよ。だって皆さん大っぴらに話してたんですから。隠すどころか、私に聞かせるつもりだったでしょう」

 

しのぶからは優しい笑顔が消え、昔の強気な雰囲気が戻っていた。此処に居る者たちは昔のしのぶを知っているためそれほど驚きはしなかったが、何がどうしてこうなったのかは不思議だった。

 

「それで、痣って何ですか。透き通る世界って何ですか」

 

空気を読まず、早速本題に入るしのぶ。その質問に実弥が返答していく。

 

「透き通る世界については俺も良く知らねぇ。今分かんのは竈門くらいだろうな。

痣に関しては、俺と冨岡が知ってる。二つの条件を満たせば鬼の紋様と似たものが身体の何処かに発現する。条件は、"心拍数を二百以上"に、"体温を三十九度以上"に上昇させることだ」

 

「はぁ?三十九度以上を保つなんて、死ぬに決まってるでしょう」

 

医者の知識を持ち合わせているしのぶは眉を歪ませる。

 

「まあ、医者のお前からすりゃあ当然の反応だわな」

 

実弥は木刀を持ち、義勇に木刀を投げ渡す。二人は呼吸に集中して、

 

-風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ-

 

-水の呼吸 弐ノ型 水車-

 

互いに斬り掛かる。そうして数回斬り合い続けると二人の体温と心拍が上昇し、義勇と実弥の左頬に炭治郎の額と似た色の痣が発現する。

 

「痣……」

 

二人は斬り合いを止め、実弥は診察室から掠めていた体温計で自身の体温を測定する。

 

「ほら見ろ」

 

目の前に突き付けられた体温計を見ると、確かに三十九度以上になっていた。

 

「身体は……何ともないんですか……」

 

「何ともない。むしろ軽いくらいだ」

 

実弥に聞いたつもりだったが、義勇が返答する。まさか義勇が口を開くとは思っていなかったため、しのぶは若干驚く。

 

「痣が発現すりゃあ、身体能力が大きく向上する。当然力もな」

 

「………」

 

しのぶは無言で体温計を奪い取り、自身の体温を測る。そしてその結果を皆に見せる。

 

三十五度三分

 

常人であれば低体温症で死んでしまうほどに低い体温だ。毒を食んだ影響は相当なものらしい。

 

「私なんかにできる芸当ではありませんね、失礼します」

 

しのぶは中庭から去ろうと歩を進める。

 

「おい待てェ。失礼すんじゃねェ」

 

何処かで聞いた覚えのある言葉に、義勇は空気が読めず笑みが溢れる。

そして実弥はしのぶの肩を掴む。しかししのぶは振り返りはしない。

 

「毒を食わなきゃあ多少は体温上がるだろ」

 

「…今更止めたところで健康な身体に戻れる訳ありません。……離してください」

 

「おい、胡蝶。そんなもんはやってみてからじゃねえと―――」

 

「うるさいっ!!!

何も知らない貴方たちがとやかく言う筋合いなんかあるもんかっ!!!」

 

天元の言葉を遮り、しのぶは周囲に響き渡るほどの怒号を上げる。その声に周囲の者たちは絶句する。実弥も驚いて肩を掴んでいた手を離してしまい、その隙にしのぶは何処かへ行ってしまった。

 

「姉さん……」

 

「ありゃあ相当頑固な奴だな……」

 

「……胡蝶…」

 

「…………」

 

三人はしのぶが居た場所を眺めていたが、実弥は無言で病室へと向かう。

 

「竈門」

 

実弥が病室へ入ると、炭治郎たちは身体を起こして座っていた。

 

「不死川さん…。俺たちにも聞こえましたよ……。やっぱりしのぶさんが聞いていたんですね…」

 

「ああ…胡蝶はどっかに行きやがった…。お前の鼻で探して追い掛けてくれるかァ…?」

 

「…勿論です。可能な限り探してきます」

 

炭治郎は立ち上がり、病衣から隊服に着替えて蝶屋敷から出発する準備を終える。玄関に向かうと、木刀を二本持ったカナヲが待っており、炭治郎に駆け寄ってくる。木刀を持っている理由は、おそらくしのぶと戦うことになるだろうからだ。

 

「炭治郎…。私も一緒に行く」

 

「…分かった。行こう」

 

そうして二人はしのぶを探しに、蝶屋敷を出た。

 


 

「………はぁ………」

 

しのぶはため息を吐き、足取りを重くして一人で歩く。怒りのあまり、木刀を持ったまま出てきてしまった。

あれ程怒りの感情を曝け出したのはいつ振りだろうか。…もしかすると、人生で一番剥き出しにした怒りだったかもしれない。

 

「……」

 

あの場に居る者に限らない。自分以外の鬼狩りは鬼の頸を斬ることができる。だから自分の苦悩なんか、誰であろうと…例え恐怖で戦えなくなってしまったアオイであろうと…分かるはずが無い。

 

鬼の頸が斬れなくても戦い続けることを選んだ。隊士を治療し続けてきた。新たな呼吸法を編み出した。鬼を殺せる毒を作り出した。柱に昇り詰めた。誰よりも多く継子を育ててきた。隠の人々の統率を担い、鬼殺隊を下から支え続けてきた。

…姉の仇を討つために、一年以上毒を摂取し続けてきた。

 

誰であろうと、自分の覚悟を否定させはしない。例えそれが善意であったとしても……。

 

「………ふぅぅ…………」

 

未来を知ったところで何も変わらない。毒を食んでいた時点で、自分が近い未来死ぬことなんて端から分かっていた。それが今年の大晦日付近に確定しただけだ。

普通の女の子の生活。そんなものは疾うの昔に捨て去ってしまった。鬼舞辻無惨を倒したあとの暮らしなんか、一度だって考えたことはない。

 

「…………」

 

誰よりも鬼殺隊に貢献してきたつもりだ。一般人を助ける隊士を助けて…。自分が調薬して那田蜘蛛山に赴かなければ、今以上の犠牲だってあった。

それに未来の話を聞く限り、総力戦時にはまだ上弦の鬼が五体残っている。上弦の強さは最低でも柱三人分と言われているのに、柱の人数が全く足りていない。なら自らを犠牲にして、上弦一体を激的に弱体化させることは間違っていないはずだ。

 

「……どうして皆……私を否定するんだろう…………」

 

「それは…その未来にしのぶさんの幸せが含まれていないからです」

 

声のする方に顔を向ける。そこには炭治郎とカナヲが立っていた。

 

「何ですか……君たちも私の覚悟を踏み躙るんですか……?」

 

「そんなつもりは無いです。

…俺たちは未来を知ってしまった。でもそれは沢山の未来の一つに過ぎないのかもしれない。だからどれだけ血反吐を吐いたとしても、未来を変えてみせます。誰も死なない未来に…。そしてその未来で…しのぶさんにも笑っていて欲しいんです」

 

「姉さん…!私はもう……家族が目の前で殺されるところを見たくないの…!!お願い!!一緒に戦って…一緒に生きて!!」

 

炭治郎だけではない皆の思い。そして自分の素直な気持ちをぶつけるカナヲ。しかしその言葉を聞いても、今のしのぶには全く響かない。むしろ怒りを逆撫でしてしまう。

 

「…私は間違ってない……!

決戦時点で上弦が五体も居るんだったら…何人かの命を犠牲にしなければ勝てる可能性なんて作れない…!!

あなたたちは考えが甘すぎる!!宇髄さんも…!冨岡さんも…!不死川さんも…!!」

 

しのぶは顳顬(こめかみ)に血管が浮き出るほど怒りをあらわにする。思っていることを息が切れるほどに吐き散らかす。

 

「……毒を食むのは止めない…。必ず姉の仇を道連れにする…!!」

 

「しのぶさん……!」

 

「姉さん……!」

 

何処かへ歩いて行こうとするしのぶの前に、二人は立ち塞がる。

 

「……退きなさい……」

 

「いや…!退きません!」

 

炭治郎がそう言うと、しのぶは持ってきてしまった木刀を持ち、二人に構える。その視線は怒りに満ちており、那田蜘蛛山で負った怪我など無視して本気で叩き潰しに来るつもりだ。

炭治郎とカナヲも木刀を持ち、しのぶと対面する。

 

「…それなら…!力尽くで退かせるまで…!!」

 

-蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ-

 

しのぶは素早い突きを炭治郎へと放つ。不意を突かれた炭治郎は辛うじて木刀で受けるが、後方に飛ばされる。

 

「炭治郎!!」

 

「余所見とは……随分と舐められたものです…!」

 

-蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 複眼六角-

 

-花の呼吸 弐ノ型 御影梅-

 

稽古のときとは違う。しのぶは微塵も手加減せず、カナヲに六連続の突きを放つ。カナヲはその突きを正確に受け流す。

 

「姉さん!私ももっと強くなる!!だから毒を摂取するのは止めて!!」

 

「止めて欲しかったら今ここで私の木刀を落として見せなさい!!」

 

木刀を打ち合いながら、互いの気持ちをぶつけ合う。

 

-水の呼吸 捌ノ型 滝壺-

 

炭治郎はしのぶに向かって木刀を振り下ろす。しかし柱の中で一番の反射神経を持つしのぶは難なく回避する。

 

「竈門くん!私はまだ貴方を認めていません!!

妹だろうとなんだろうと、鬼は鬼!!」

 

「分かっています!!だから俺は強くなって、認めてもらうんです!!貴女にだけじゃない!煉獄さんに!伊黒さんに!悲鳴嶼さんに!」

 

-水の呼吸 肆ノ型 打ち潮-

-花の呼吸 伍ノ型 仇の芍薬-

 

炭治郎とカナヲは呼吸を合わせて、しのぶに連撃を放つ。しかししのぶは連撃を全て躱し、

 

-蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 複眼六角-

 

反撃に六連撃を三撃に分けて二人に放つ。二人はまともに受けてしまうが、諦めずしのぶに斬り掛かっていく。

 

しかしまだまだ非力な炭治郎とカナヲが二人協力して攻撃を続けても、しのぶの優位は変わらない。

 

「その程度で私が負けるはず無いでしょう?!

分かったらさっさと退きなさい!!」

 

「いいやっ!俺たちは退かない!貴女を助けたいから!!」

 

炭治郎は体温と心拍数を急激に上昇させる。瞬間、痣の形が変化する。

 

「っ!何も知らないくせに!!」

 

-蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡き-

 

しのぶは先刻と変わり、目にも留まらぬ速さの突きを炭治郎に放つ。

 

-日の呼吸 幻日虹-

 

「えっ…消え…!」

 

その瞬間、炭治郎はしのぶの木刀に強烈な斬撃を放つ。するとしのぶの手から木刀は離れ、地面に転がる。そしてしのぶは地面に膝をつく。炭治郎は日の呼吸を使った影響で身体が痛み、一瞬(うずくま)るが、無惨と戦った時よりマシだと言い聞かせて立ち上がる。

 

「しのぶさん……俺は何もかも知ってます。貴女の過去も…悩みも…苦しみも…怒りも…」

 

「どう……して……」

 

「一度だけ…全部話してくれたことがあったんです。ただ一つ…毒を摂取していたことだけは話してくれませんでしたけど……」

 

炭治郎は膝をつくしのぶの肩に手を置く。俯いていたしのぶは炭治郎の顔を見つめる。

 

「しのぶさん。俺はしのぶさんが好きです。蝶屋敷の皆もしのぶさんが好きです。しのぶさんだって、皆のことが好きなはずです。そして…残された者の気持ちは、しのぶさんだって良く知っているはずです」

 

「………」

 

「姉さん…!私…自分の気持ちを素直に言えるようになったんだよ…。だから……間に合う今だから言う…!

独りで戦わないで…!一緒に戦って…一緒に生き残って…!」

 

二人の説得で、しのぶは目から涙が溢れ始める。同時に小さく嗚咽を漏らす。

 

「でも……それじゃあ私は……」

 

「毒はゆっくり消していけば良いんです。水をしっかり飲んで、栄養のあるご飯を食べれば、いつか毒は消えます。

そうすれば体温だって高くなる。痣も……出せますよ」

 

痣の話をした途端に一瞬言葉を詰まらせた炭治郎。しのぶは怪訝な顔を見せる。自分には無理だと言いたいのかと勘違いするしのぶに、炭治郎は困ったように弁明する。

 

「あの…ですね……痣を出してしまうと…二十五歳で死んでしまうそうなんです…。俺としては、今痣が発現してない人には出して欲しくないんですけど…多分そんなことも言ってられないので……」

 

「…分かりました……毒の摂取は止めます……。そういう約束ですからね……。

でも…痣と透き通る世界については必ず教えてもらいますよ…。

私の覚悟を否定した責任は取ってもらいますからね……!」

 

しのぶは立ち上がり、カナヲに身体を向ける。

 

「ごめんね…カナヲ…。姉さんと"他の人に同じ思いをさせない"って約束したのに…私は……」

 

涙を流すしのぶを、カナヲは優しく抱きしめる。

 

「良いの…。しのぶ姉さんが自分を犠牲にしないってだけで…私は嬉しい……」

 

「ごめんね……!ごめんね……!」

 

二人は抱きしめ合い、カナヲはしのぶが泣き止むまでなだめていた。炭治郎はというと、どうすれば良いのか分からずまごつくだけだった。




【あとがき】

駄文をお読みいただきありがとうございます。

映画でしのぶさんが死亡してしまいましたね……。一番好きなキャラだったので、遣る瀬無い気持ちでいっぱいです…。それでも、しのぶさんはまだ戦っていると思うと、涙は流せませんでした。

当然ですが、このお話ではしのぶさんも助けるために炭治郎たちは頑張ります。というか、頑張りました。

本当に助けられるかは、未来の私次第です。頼む…未来の私…皆が生き残る未来を書いてください……!

誤字脱字があればコメントしていただけると幸いです。
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