〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC 作:ジュミ・ベラウ
遅くなりまして申し訳ありません。
難産にございました。調子がいい時はスルスルと言葉が繋がるんですが、悪い時はてんでダメなものでして。展開が少しスローだったので、元々は今回でハテノ村につくまでの道程だったり、カカリコ村に寄り道するとかも考えてたんですが、結局修行パートまでいくことにしました。
捏造設定も出てきます。リンクの家族構成とか。名前を出すつもりはありませんが、妹ちゃんのイメージは風タクのアリルちゃんです。外見は、おじさん含めて、初期設定か何かのコンセプトアートで検索すると出てくる人たちです。
少年リンクは、未来のハイラルの勇者である。それがティリアの認識であった。そこには僅かながらの自己嫌悪と罪悪感も同居していた。
魔王を滅ぼすのには、自分より100歳以上年下の少年に頼るしかなく、かつそれを知っている理由を話さないままに彼の憧れを利用して師匠ポジションに収まってしまった負い目があるのだ。
無論、彼女がマスターソードを抜けるのであれば、その勢いでガノンの首を獲るために全身全霊を注いだであろうが、彼女は知恵と知識があるゆえに本質的は臆病だ。バタフライエフェクトというものの存在を知っていればなおのこと。転生者あるあるとはいえ、彼女が森を出て4年程度。それだけで、ゾーラの里を壊滅させかねない事象が起こったのだ。一体どのような「風が吹けば桶屋が儲かる」とのカラクリが起こっていたのかは想像がまるで付かない。黒い風の使い手が今のハイラルに噂すらない。
「オバケめ……」
アンノウン。お化けの類が恐ろしいのはそれであるからだ。正体がわからないから対策を立てられない。理解できないものへの恐れはいつだってこれに尽きる。
*
駐屯地を後にし、『始まりの台地』の『時の神殿』に参拝した後、とっぷり日が暮れてしまったせいで近場の宿場町の宿が全部満室になってしまい、街道沿いにテントを張って野宿、同衾した以外は特段ハプニングもなく、リンクの家があるハテノ村までたどり着いたのであった。
いや、これが通常の旅人であれば、それなり以上の波乱と言えたのだろう。道中、道のど真ん中に一つ目の巨人『ヒノックス』が寝転がっていることがあった。それも系列最強の黒い個体である。が、それも、
「『テルメ山』あたりから降りてきたのかな?」
などと言いながら、ティリアにさっくりと駆除されてしまったのである。ヒノックスは全身分厚くて硬い皮膚と、その下の柔らかな脂肪がゆえに刃が中々通しにくい。普段は仰向けにずでーんと寝転んでいるとはいえ、奥義『とどめ』を決め難い。が、それは心臓などの内臓を狙った場合の話だ。
ゼルダシリーズにおいて、一つ目の怪物は目玉をズタズタにされる
むしろ、その後の死体処理の方が面倒だ。なまじ巨体がゆえに、埋めるにしろ焼くにしろ時間がかかる。
とりあえず薬の材料になる爪を剥ぎ、角を切り落とし、腹を捌いて肝を引きずり出した後は、首を刎ねて頭、特に目玉を灰になるまで『ディンの炎』で焼き尽くした。それ以外の胴体は手足の骨を可能な限り粉砕骨折させ、山の上の方まで引きずっていって地面に埋めた。骸骨巨人『スタルヒノックス』を産まないための処置ではあるが、これに数時間を費やしたのだった。
「疲れたァ。『ライネルのお面』様々だヨォ……肩こったヤ……」
「大丈夫?」
「まぁねェ……ハァ、ちょっと休ませテ……」
ちょうど良い大きさの岩の上にぐでんと仰向けに寝転がる。ちょうど真昼の太陽がお面越しに目に飛び込んできて大層眩しい。
本当は起きたヒノックスと戦い、攻略のレクチャーとしたかったのだが、いかんせん場所が悪い。街道のど真ん中。その上ハテノ村までそこそこ近い。ヒノックスは縄張りを持ち、そこから大きくは動かない質とはいえ、ここまで近ければハテノ村の『ハテノ牛』を狙ってやってこないとも限らない。その巨体ゆえに大喰らいであり、何より人間を明確な補食対象としている。幸いにして、今回の黒ヒノックスの腹から人骨の類は出てこなかった。
*
リンクにとって、ティリアはよく分からない人である。
凄まじく強いというのはわかる。なのだが、戦いと関係ないところではぽやぽやと呑気にしていたり、かと思えば魔物相手にかなり残酷で非情な戦いぶりを見せたり。大人ぶって見せることもあれば、子供っぽい振る舞いも見せる。
リンクはティリアの強さと知恵に惹かれ、弟子入りを志願した。子供特有の、割と後先考えていない行動ではあったが、しかしその願いは聞き入れられ、彼はティリアの一番弟子となったのである。
無論、その後は保護者であるおじさんに「勝手に決めてはいけない」と叱られはしたが、それも最終的に認められた。
半月の間、ゾーラの里でミファーと共にフォースについてのレクチャーを受けはしたが、ついぞそれを感じ取ることも、剣に纏わせることもできなかった。
「そうカンタンにマネされちゃったらボクの立つ瀬がないってものだヨ。」
できなくともティリアは決して怒らず、ニコニコとしながらミファーと一緒にリンクの頭を撫でるばかりで、厳しいおじさんと全く違う教育方針に新鮮味と「こうも甘くて強くなれるのか」という疑念とがないまぜになった感情が、リンクの内に生じた。
旅の途中も、ティリアは決してリンクを戦わせようとしなかった。それどころか、やや過保護とも思える行動を取ることが多かった。野宿をしなければならなくなった日は、近くの森の中に湧き出たスタルボコブリン達を『太陽の歌』でまとめて成仏させ、街道からちらとでも見えた魔物の拠点はダッシュで壊滅させる。無論、これは街道を行くすべての人のためにもなることだが、しかし実践を経ずにこのまま強くなれるのか、というリンクの焦燥を煽ってしまった。
極め付けはヒノックスである。ハイラル全土に住まう魔物では、砂漠にのみ生息するモルドラジーク系統に次ぐ巨体を持ち、分厚い表皮がために並の刃物を通さない強敵。それが目の前に現れた時、リンクは少なからず心の高揚を覚えた。リンクはティリアの戦う姿を見るのが好きだった。
しかしその期待は裏切られた。街道沿いで仕方がないというのは理解していたが、しかし目を覚ますか覚さないかの内の『ふいうち』で仕留めてしまったのはどうしてもつまらなく、また騎士の戦い方でもないので真似したいと思えなかった。
とはいえ、リンクは子供らしい心とは別に、近衛の子として鍛えられた忍耐を持っていた。故にそれらの不満を表に出すことなく旅を終えた。
*
ハテノ村にあるレンガと白い漆喰の伝統的な家。大きくもなく小さくもない、しかして代々近衛を輩出する名誉ある家。それがリンクの家だ。
リンクはここでおじさんと妹の3人暮らしなのである。
「ティリアはどこで寝るの?」
「森の中で野宿。宿を取るとおカネがかかるしネ。」
もとより、森で生まれ育った彼女は、森さえあれば食う寝るところに住むところに困らない性分である。村の入り口を出て直ぐの『ギナビーの森』にテントを張り、ついでに近場の魔物の住処を壊滅させたのであった。
そうして3日ほど、暮らしの基盤を整え、村長や店屋などに挨拶回りを行なって、それからようやくリンクの修行が始まったのである。
その内容は、決して易しいとは言えないものだった。ティリア自身は決して怒らず、声を荒げない。その意味では優しい。しかし修行の難易度はリンクをもってしても毎日体力すっからかんで布団に入ることになる程。密度と難易度が尋常ではない。
奥義含めた技のレクチャーは最初に見本を見せてみて、そして一度、何の説明も無しに見様見真似でやらせてみる。そしてどこまでできるかを把握した後ににっこり笑顔で、
「ココとココの動きが甘かったからもっかいネ。」
と延々リトライさせるのだ。しかしこの技習得は決して簡単ではないものの修行の中では楽しい部類である。これが週に1度あるおかげでリンクのモチベーションは保たれているのだ。
技そのものは、飲み込みの早いリンクはあっという間に習得する。しかし使いこなすには肉体のスペックが足りないのだ。その足りないスペックを補うための基礎トレーニングで、技の習熟度を上げるのに必須なステータスを伸ばすわけである。
例えば『とどめ』。これの訓練は中に急所に見立てた球を埋め込んだ実寸大のぬいぐるみ型ダミーを地面に寝かせてひたすら突かせるというものだが、ものによってはリンクの刃が球まで届かないものもある。おおよそ黒ボコブリン程度の敵からが、彼の『とどめ』が通用しない相手だ。ダミーの強度は魔物の皮膚と筋肉の硬さに合わせてティリアが
なぜ通用しないか。それはリンクの体重と腕力、それから脚力が足りないからだ。大きく上に跳躍し、そこからの落下の勢いと体重をかけて急所をぶち抜く下突き、それが『とどめ』という技の基本形だ。今のリンクでは落下の位置エネルギーを稼ぐための跳躍力も、そもそもの体重も、硬い筋肉にぶつかっても真っ直ぐ刃を通せるだけの筋力も足りないのである。
基礎の型でこれなのだ。応用形が求められるライネルやヒノックスには通じないだろう。ライネルは暴れ狂うロデオの最中に足だけでしがみつきながら、落下のエネルギーを得られないので純粋な腕力だけで背骨の中央から内臓にかけてを貫かねばならない。ヒノックスにしても目玉には弾力があるので、かなりの腕力がなければ真っ直ぐ突き立てることができずに脳まで刃が通らない。
他の技や道具、地形を利用すれば、今のリンクでも通用する相手はもう少し増えるだろうが、それらの応用にしても、やはり地力があってこそだ。そもそもこの技、相手を仰向けに倒してノックアウトしなければ使えないので、転倒させるだけの地力がなければ、最初から寝ている相手を暗殺するしかできない。ヒノックスは肝を潰さずに採れることや、起きた時の被害範囲を考えれば、むしろ寝起きドッキリじみた暗殺をしてしまうのがベストではあるのだが。瞼が分厚いので確実に決めるには目を開かせた方が良い。しかしこれもタイミングを逃すと瞼だけに剣が刺さったまま持っていかれたり、振り払われたりしてしまう。
「あと、正確性がまだ甘いネ。」
人形をずらりと並べ、制限時間以内に何回技を決められるかという訓練をすると、焦るあまりに狙いが逸れて急所を外すことも彼には度々あった。ボコブリン系程度であれば心臓ではなくとも胸から腹のいずこかを貫通されればほぼほぼ致命傷だが、モリブリン系のような巨体や、生命力の高い黒以上の上位個体ともなると致命傷=即死とはならずに死ぬまでの間痛みで暴れて周りに被害を出すことも考えられる。なんにせよこの技の狙いは失敗しているのであるが。
人形の急所は全て同じ位置ではない。流石に頭や股間といった極端な位置にはないが、実際に解剖して調べたデータを元に、個体差の範疇で位置をずらしている。
「ティリアはどうして場所がわかるの?」
「フォースは生命力だからネ。急所は基本生命の流れの重要な箇所だから、フォースを読めたら難易度はグッと下がるヨ。」
そうでなくとも経験則やそれからくる推測などがあればこれくらいはできる、とティリアは言う。ハイラルの強者たちで、ティリアほどフォースを能動的に扱える者はいない。彼らは文字通りの経験値を積むことで、技を鍛えてきたのだ。
「ダミーだから動かないケド、本物は呼吸で胸が動いたり、寝てるヤツは突然寝返りを打ったりするからネ。」
また乱戦の中では、飛び上がったところを別の個体に妨害されないとも言い切れない。素早く正確に数を減らしてしまうことを心がけるべきだろう。
「実践はまだまだ先かなァ。」
「どうしたら本物と戦わせてくれる?」
「青ボコブリン人形までだったら100発百中の精度が欲しいネ。1分間に23体仕留められるようになったら、実践テストをしよう。クリアできたら次の奥義だヨ。」
「分かった!」
「いい子だ。」
ティリアはリンクの頭をわしゃわしゃと撫でる。褒める時の癖になってしまっていた。彼の髪は手触りが良いのだ。最近はウルボザに教えてもらったティリアの使っている高級シャンプーを使っているのでその金色の輝きはますます磨かれている。あといい匂いもするので、村の女の子達はよくリンクとお近づきになりたがる。それはシャンプーを狙ってかはたまた。
「次こそはテストを受けられるようになる!」
「その意気だヨ。……とはいえ、今日はここまで。また来週ネ。」
「そんなぁ。」
奥義の訓練は週に1度のお楽しみ。
ティリアの修行は週の最初と最後が2連の休養日で、それ以外の5日間が訓練に当てられているが、真ん中の3日目は座学オンリーだ。そしてそれ例外の4日中3日が基礎トレーニングの日である。
リンクのおじさんははじめ、休みが多くはないかとティリアに問うたが実際の修行を目の当たりにして考えを改めた。
毎日毎日帰ってくる頃にはヘロヘロで、ご飯の時は半分寝たようになって、それから体を清めて布団に入ると、早々に寝息が聞こえてくる。
のだが、翌朝はコッコの鳴き声が聞こえるか聞こえないかに起き出し、元気いっぱいなのだった。
体力の限界まで追い込む。それでいて故障や怪我のリスクを避けるためという考えに則った徹底管理型のトレーニングプランである。週の半ばの休みで2日間の疲れを軽減させ、週末と翌週の2連休で完全に疲労を回復させるのが狙いだ。
「ある世界の偉い仙人はこう言った。『よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む』……ボクの理想の修行はコレなんだヨ。」
ティリアは訓練メニューの意図を、おじさんにこう説明した。
「遊び、ですかい?」
「遊びをバカにしちゃァダメジャラ。厳しいだけの修行なんて身に付かないもの。楽しいだけでもダメだケド……まァ、ボクとしても修行内容は手探りだネ。」
いくらリンクが同年代に比べて自制心が強くとも、まだまだ子供だ。厳しいトレーニング内容をずっと続けると、だんだん飽きてくる。飽きてくるとどうしても身が入らないものだ。あと教える側も退屈する。教える側の身が入り切らないのに教え子の身が入る道理がどこにあろうかという話だ。
「筋肉はつけさせないので?」
「子供のうちにつけさせると成長の邪魔になるジャラ。基礎トレーニングは体幹と持久力を重視するつもりだヨ。あとは柔軟を念入りにして、受け身の訓練も必須だネ。リンクほど強いとダメージを受けて吹っ飛ばされるって経験ほとんどないだろうし、いざって時を考えるとネ。」
「ははぁ。訓練というと体を動かすばかりかと思っていましたが、色々考えるものなのですなあ。」
「人様の子供を預かるからには無意味なケガや故障はさせられんジャラ。」
体幹と柔軟は怪我と故障の予防である。また体幹がしっかりしていると、構えた時の姿勢が良くなるほか、身体の操縦性が上がることにもつながる。つまり、技を出す時の頭のイメージに実際の身体の動きを近づけられることに繋がる。技の正確性を伸ばすには打って付けであるのだ。
毎日体力が尽きるまでよく動き、たまには座学で作法や魔物の生態などを学び、休日は村の子供達と交流し、修行がある日の昼食はティリア特製の栄養満点のご飯をよく食べ、そして週末から次の修行日にかけてはじっくり休んで疲労を取り去る。
食育も大事だと言うことで、バランスよく食べることや、ハイラルの食材が持つ特殊な効能の解説と調理法も昼食の時間や座学で教えていた。
「今日のお昼は『魚介出汁のチカラそば』だヨ。」
「そば?」
正確には蕎麦粉は使ってないから中華そばだが、蕎麦はともかく中華と言う国も言葉もハイラルにはないのでその辺りの説明はおおいにぼかしつつ、ティリアは湯切りした麺の入ったどんぶりにスープを注いだ。
金色に輝くスープは『ツルギダイ』の削り節と『ツルギダケ』からとった出汁をベースに岩塩で味を整えたあっさり目の塩スープだ。麺はタバンタ小麦の全粒粉を使ったコシのある太麺である。なお、かん水の入手が難しかったので重曹を焼いてから溶かした代用品の水で茹でたものだ。
トッピングは白髪ネギ代わりの千切り『ツルギソウ』に、上ケモノ肉で作ったケモノチャーシュ。スープの出汁に魔法のマメ醤油を足したものに数日間漬け込んだゆでタマゴの味玉である。
「さァ、お上がりヨ!」
もちもちとした太麺は、一見するとあっさりしたスープを絡めるには太すぎるように感じるが、透き通ったスープはその実かなり濃厚な魚介の旨みを持っており、味気なさを全く感じさせない。チャーシューはあえて特上ではなく上ケモノ肉を使うことで脂と赤みのバランスが程よく、口の中でとろけすぎずに噛んで旨みを味わうことができる。味玉も、濃厚な出汁の風味がとろける黄身とマッチし、それと麺を絡めることでまた少し変わった味が堪能できる。
「美味しい?」
「美味しい!」
「そりャ良かったジャラ。」
あっという間に完食したリンクに、ティリアは材料を当てさせるクイズを出した。日々の昼食時のお約束になりつつあるこれで、食材ごとの効能を教えるのだ。
「上の細いのは……ツルギソウかな?」
「正解ジャラ。」
と言うことは、とリンクはティリアお手製の図鑑のページをパラパラとめくる。ハイラルの食材には、通常の栄養素の他に、一定時間だけ特殊な効果を与えるものがある。そういったものは名前の一部に効果に合わせた言葉を持つ。『ツルギ』の名称は主に腕力等を高める『チカラ成分』を持つものであり、またそれら特殊な成分は別な効能の成分と合わせると打ち消しあってしまため、一つの料理や薬に複数の効果を持たせることはできない。
そこまで知っていれば、ティリアの使った食材は『ツルギ』系か特殊効果のないものに限られる。
「魚介出汁……『ツルギゴイ』?」
「川魚は使ってないヨ。」
「じゃあ鯛だ! ツルギダイ!」
「正解正解。」
「あとは、ケモノ肉……多分、上?」
「おー、よく分かったネ。」
「で、トリの卵。麺は小麦だよね……これで全部!」
「惜しい! あと1個。」
「えー。……分かんないや。」
「正解はツルギダケだヨ。キノコの出汁も入ってたのサ。」
「ずるいや。魚介出汁って言ったのに。」
「にゃはは。」
などと言いつつ昼ご飯を終えて、また訓練に励む。
そうして気がつけば1年が経過していた。リンクは5歳になり、奥義は『とどめ』を皮切りに『盾アタック』と『背面斬り』を習得し、現在は次の奥義に入る前に応用を学んでいる。
「いいネ。素晴らしい日々だヨ。充実してる。」
「そう?」
人に教えることは、教える側も大いに勉強となる。ティリアはそれを実感していた。彼女とてまだ全盛期を迎えていない途上の身であるものの、その成長曲線は100年を経てかなりなだらかだ。それこそ、横這いに真っ直ぐと見分けるのは難しいくらいに。だが、ハテノ村でリンクの師として修行をつけているうちにその成長曲線がわずかに上振れてきたのである。
「あと身長も少し伸びた気がするジャラ。」
毎日朝晩にハテノ牛の牛乳1瓶を飲み干しているからだろうか。なお胸の膨らみもわずかに大きくなっていることには気が付いていない。そろそろウルボザに下着の相談をするべき頃合いが近づいているのだった。
「思ってたより成長ペースが早いネ。」
とはいえそれは子供が大人になる意味でではない。こればかりはどれだけ焦ろうが努力しようがどうにかなるものではないので、純粋な腕力等の不足の解消はまだまだ先だ。リンクに関しては、代わりに応用メニューを多く組むことで小手先の技術をつけさせた。
『とどめ』の威力が足りないのであれば、坂道に誘い込んでから転倒させ、高いところから低い所を狙って跳躍する。
『盾アタック』も威力が足りずに隙を生み出せないのであれば、勢いをつけて盾そのものを投げる。
『背面斬り』で後ろに回り込むには速度が足りないのであれば、回り込みたい方向とは逆方向に向けて小石などを投げて視線を誘導する。
そう言った知恵や策は、しかし圧倒的な力の前には諸共叩き潰されるが、しかしこれらは自力で届かないものに届かせる踏み台。成長して地力が伸びても無駄にはならない。より高いところまで届かせられる技術だ。
また食事効果や薬による強化は倍率が一定であるため、地力が伸びればその分強化値も大きくなる。が、今のリンクが食事はともかく薬に頼るのは少々リスキーなのでティリアは最終手段だと言いふくめている。
薬は食事より純粋かつ多くの成分を食事より短時間で体内に流し込むので胃腸含めた身体の負担が大きいのだ。いくらリンクが並の大人を凌駕する戦闘力を持っていようとも、体内器官などは子供のそれ。その耐久性もまた子供相応なのだ。
「昔、強い敵に囲まれた時にサ、『がんばり薬』をがぶ飲みして長期戦を乗り切る羽目になったんだケド、それが10歳くらいの時でネ、次の日はお腹を壊して頭も痛くて酷い目に遭ったジャラ。」
それを聞いたリンクはコクコクと黙って頷いた。
*
sideティリア
ボクがハテノ村に来て2年近く過ぎたジャラ。
リンクは最後の『大回転斬り』以外の奥義を習得し、それらの応用に入っている。早くない? まだ6歳だヨ……
まァ、習得できてて使い熟せてるコトと通用するコトは別な話だケド。基礎ステが足りんよ基礎ステが……いくら技の倍率が高くてもサ。うん。今のボクとおんなじ悩みだネ。
早くない? ボクの100年に10年どころか2年くらいで追い縋るのはなんなの? 天才なの? それともボクが才能ナシだった? 普通は100年もいらないの?
それに肉体の未熟って悩みも、多分リンクの方が先に解決するし……
自信なくしそーだよゥ……
リンクってば、座学でも魔物の生態とか攻略法とか貪欲に学んでサ、乾いたスポンジ以上だネ。なんなら自己流も編み出したし、ますます強くなった……
んだケド、未だにフォースを操ることはできない。これがかなり堪えてるみたいデ、最近ずっと元気が無いノ。最後の奥義『大回転斬り』は体力満タンの時にフォースを纏わせてリーチと威力を伸ばした斬撃だから、フォースを武器に纏わせられないといけないんだよネ。
気配斬りとか、それらしいトレーニングをいろいろ考えてみたケド、なーんか上手くいかない。そもそも気配を読むのは元からできてたし、『とどめ』の正確性を見るにソレ以上の感知もできてるはずなんだケド……そもそもフォースがどういうものかはゾーラの里の時にやったし、コッチに来てからもそこそこやってる。……手ェ繋ぐだけじゃダメかなって、ハグとか試してみたし、感じ取るのは上手く行ったんだヨ。でもそれはボクのフォース。他者のフォースは判るようになってるのに、なーんで自分自身のだけダメなんだろ? 普通は逆な気がするヨ。
自分のフォースを自在に操るところが難しいというのは、気がつけば当たり前にできてたボクには理解してあげられない感覚だ……
原作リンクくんは〈厄黙〉の描写を見る限りできてた感じだけどネェ……必殺技で剣が光ってたし……体力満タンじゃなくても良い代わりに必殺技ゲージが必要なのは、ゲーム性のハナシだろうから置いといて、あの技、『大回転斬り』っぽかったジャラ。
うーん。描写を鑑みるに必殺技ゲージはアドレナリンかなんかなのかなァ? 興奮したら……いや、戦いの時は平時より興奮するのは当たり前だし、興奮状態のフォースが活性化するのもそう。いやまァ、フォース≒生命力だもの。当然といえばそう。
「どうして……」
「焦りは禁物だヨ。フォースは生命力だからリンクは絶対持ってるんだ。それで、ソレを使うのは心だ。心のチカラはネ、焦ったりするのとスッゴク相性が悪いんだヨ。まだ6歳なんだ。焦らなくていいんだヨ。」
泣きそうになるリンク。そうだよね、まだ6歳だもんネ。泣いたって良いんだヨ。子供はそうやって大人になるんだから。
「ごめんネ。」
「なんでティリアが謝るの?」
気がつけば、ボクはリンクを抱きしめて、そう呟いてた。リンクはできるはずなんだヨ。なのに、ダメなのは、きっとボクの教え方が良くないんだ。
もっとがんばらなくっちャァ……!
ところで後ろの木の影に妹ちゃんが隠れてるケド、見ないであげて欲しーなァ。男の子はこういうところ隠したい生き物なのだヨ、って経験者は語る……
……それにしても、ここまで追い詰められるなんテ……何を焦ってるのかな?
「最近、自習の時間が増えて、ティリアはどこかに行ってるから。おれが一本取るより前にどこかに行っちゃうんじゃって思って……」
アー……こりャボクが悪いや。リンクは現時点で教えられることは教えたから、あとは自分で磨いていく段階だって、目を離してもリンクなら大ジョーブだって、信頼のつもりだったんだケド、コレはボクの甘えだったなァ……ウン。
10年以内に一本取れたら素顔を見せるって約束だったケド、そっか。ウン。確かに負けず嫌いなリンクだものネ。挑戦できないままどっかに消えちゃったら悔しいよなァ……
しかもリンクは未だにボクから1本とれてない。全力じゃないボク相手に、だ。奥義も残すところあと1つ。なのに全然届いてる気がしてない……
いや、実際ボクもけっこー冷や冷やしてるんだヨ。毎回勝ちはギリギリだしネ。全力じゃなくても本気でやってるから、それなりにプライドがダメージを受けてはいるんだヨ。……でも師匠が自信なさげだったらダメだろうって、堪えた素振りを隠してたんだケド、見せるべきだったかな。
なんやかんや言って、ボクは6歳の子供の心にイロイロ求め過ぎてたわけだ。
「……寂しかった?」
「そんなんじゃ……」
「リンクはカワイイネ。」
「っ……」
焼けた鉄もかくや、というほどに頬を染めてリンクは俯いた。リンゴみたいなほっぺただネ。
「リンクなら大ジョーブかなって思ったんだケド、ごめんネ。ちゃんと、話すべきだったネ。」
次からはリンクも連れていこうか。たまには環境を変えてみるべきだろうしネ。
去年と一昨年は暑くなってくるとゾーラの里でミファちゃんと合宿したんだし、それ以外の場所に行くのも悪くないよネ。
「いつもどこに行ってるの?」
「『王立古代研究所』。古代遺物の研究だヨ! 王様から手伝って欲しいって言われてネ。将来リンクの役に立つアイテムを作ろうって……アレ?」
なんか、リンクの顔がもっと赤く。……怒らせちゃった?
「エト……その……言い訳だったネ。」
「や……ちが…………後ろ……」
「ん、アァ、妹ちゃんか。」
「気づいてたの?」
「アー……ごめんネ……」
「いじわる……」
この後、リンクを宥めるのに結構時間かかっちゃったや。妹ちゃんおしゃべりだし、明日には今日のこと噂になるんだろーなァ……
ウン。これも良い経験だヨ?
というか、村のオトナ方はむしろリンクもちゃんと子供だったんだ、って安堵すると思うな……
と思ってたんだケド……いやジッサイ間違ってはなかったんだケド、なんか村の女の子たち、お通夜ムード……
ナンデ⁉︎
修行パートの育成プランは、作者は全くの文系なのでほぼほぼイメージで書いております。ハーメルンで読んだウマ娘のスポコン系を参考にしてます、はい。判る人には判るかもしれません。
次回は研究所、次の次はそろそろゼルちゃんや幼インパを出そうかと。プルアは……次回出せるかなぁ。キャラ増掴みきれてないので会話文とか調べなければ……
次回はここまで期間を空けずに行きたいです……
感想励みになってます。全部に返信できてはいませんが、全部目は通してます。返信してないのはいい感じの返しが思いつかないからです。