〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC 作:ジュミ・ベラウ
ゲーム的には工夫を損なうとして却下された要素も、この世界ではお構いなし。使えるものはなんでも使いたいのです。生きるために。人のために。
そんな意図でティリアが動く回です。
sideティリア
王立古代研究所。来る厄災に備えて、王命により設置、運営されている研究施設の中では最大のもの。発掘された遺物がずらりと並べられている様はジッサイ壮観。……確か厄災復活のお告げが下るまでは古代研究は禁止か、そこまで行かずとも細ぼそと、それこそ王立で税金を注ぎ込んだ国家プロジェクトじゃァなかったネ。
ともかく、ボクがここに顔を出すようになったのは半年ほど前から。経緯としては、また体調を崩した王妃サマのお見舞いに来た時に、知恵を借りたいってローム王に言われてネ。
今度の体調不良はソレはもう酷くっテェ……このまま死んじゃうんじゃァないかってボクもゼルちゃんもオロオロしてたケド、あっちこっちで手に入れておいた魔物素材や『マックス』系素材に『ガッツ』系素材のお陰でなんとか持ち直した……と言うよりも、患う前より健康になってる気がするし。あの子の体調は、いわゆる免疫系の弱さが原因ジャラ。病気に罹りやすくて、重症化しやすく、治りにくいってトリプルコンボ。マァ、原作よりマシになってるとは信じたいネ。昔コログの森に迷い込んできた時に、体質改善は食事と睡眠って言っといたのが効いてるといいなァ……
……ホンット、心臓に悪いジャラ……なまじ原作では病気で亡くなってるって話がある分、おっかないネ。いつの話か覚えてないのヨ、コレが。テラコが組まれたあとだっけェ?
ウン。『テラコ』はネ、実は完成してるのヨ。
そもそも、アレだけ高性能な機体がお姫様とはいえ一個人の愛玩用ロボットって立場であるのがおかしなハナシで。なーんでそうなったのかと言うとだヨ、そもそもテラコは発見時点でバラバラのパーツ状態。他の『ガーディアン』と違って組み立てられてなかったんだ。つまり前回の厄災時点では運用されてないってコト。アレだけ便利な存在が、だヨ。
で、あの子が切り離されたプラモみたいない状態でゼルちゃんのトコに流れ着いた
そもそもゼルちゃん王族だし、自分で掘り出したワケだし、寄越せというのは荷が重いよネ。見るからに強そーってわけじゃァないしサ。
とはいえテラコの存在は非常に大きい。あの子の内部を解析すれば研究が一足飛びに進むコト間違いなしってなもんヨ。
ただ、ボク自身は魔法はともかく古代技術に関しては素人もいいとこだったから、しばらくは研究所の本棚にある書類や石板や論文を読み漁る日々だったヨ。あとは、テラコの解析ができるほども基礎技術が進んでないのサ。テラコのスゴい能力の殆どが内部の『守護者のネジ』1本に集約されてるんだケド、コレ、無理に外したら多分よろしくないってコトで、分解はゼルちゃんが嫌がるしネ。このネジが『時空石』という確証もない……せめて製作者の日誌かなんか遺ってないかなァ……
ホント、どういう存在なのかな、この子。いかんせん文献にも出てこないし……
ボクの考察では、この子は未完成の『試作機』だったんだと思う。あるいは『実験機』か『技術実証機』か。とにかく、未完成で、実戦には出てなかったものなのは確か。多分厄災復活までに間に合わなかったか、厄災討伐後に作られたかのどっちかだろーサ。時間を巻き戻す能力を考えると、1万年前の厄災は完封したように見えてそれなりの被害が出ちゃったから、ソレを無かったことにしたかったのかな。例えば製作者の大事なヒトが死んじゃったりして……
ボクが知ってるのは、この子の機能だけ明らかに他のガーディアンとは一線を画してるってコト。新技術を盛り込んで、ついでに高性能なまま小型化して、さらには他のガーディアン含めた遺物を制御する移動端末としても使えて、戦闘能力も高くて、その上他の機体たちと違って見るからに感情がある。子犬みたいな愛嬌があるんだよネェ……セラピー用ペットロボットの役目もあったのかな? 原作ゼルちゃん見てるとそんな気がするヨ……音楽を奏でる笛が内蔵されてるのもその為かもネ。
ただ、今現在テラコの発揮できる能力はと言えば、感情があるところと、音楽を奏でるトコ、つまりはセラピー系だけなのヨ。戦闘力は、内部に武装があるのは確かなんだケド、戦闘モードが起動してないんだよナァ。OSにロックでもかかってるのかも? 体躯の小ささを考えると暗殺向きだしネ。非常事態でアンロックされるのか、あるいは未覚醒なのが原因か。
原作ではゼルちゃんの覚醒に呼応して再起動……アレが封印の光に反応したのか時の力だったのか……あるいは両方か、ゼルちゃんの力のうちどれに反応したのかは不明だケド、とにかく、テラコの覚醒にはゼルちゃんの覚醒が必須なのかもナァ。王妃サマの力は原作ゼルちゃんより弱いというか、試しにテラコの前で使ってもらったケド、首を傾げるだけだったし、光だけじゃダメなのかな……ゼルちゃんは光が100年の封印で枯れ果てても時の力は残ってたから、そっちの方が強いのかも……とーぜんながらボクのフォースでもダメだし……ただ、なんか懐かれた。可愛いけど、ナンデ?
わかんないことだらけだよゥ! 誰か公式設定資料集を転生特典にして生まれてきてくれませんかァ!
キーアイテムの『シーカーストーン』がまだ未発見というのも痛い。流石にコレがどこに埋まってるかなんて知らないし、バタフライエフェクトで掘るべきところが発掘ポイントに指定されてなかったらどうしよう……
ただ、遺物関連でイチバン大事なコトは他にあるんだヨ。厄災ガノンによる乗っ取り!
コレを対策しないと、人間を蒸発させられる威力のビームを撃ってきて、6本のフレキシブルアーム、もしくはプロペラでどこにでもやってこれる機動力を持った超兵器が数百、下手すりゃ数千体が敵に回る! 数万の可能性も……格納庫の『古代柱』って中に生産工場内蔵しちゃってないよネ……?
何せ、あの子らは『心を持たぬ兵』だからネ、精神的なもの、怨念の類を跳ね除ける精神力のパラメータがゼロで固定なわけだから、なんらかの対策を練ってあげないといかんのヨ。感情のあるテラコは多少耐性があるかもだケド、ゼロ距離で怨念の瘴気を浴びちゃったら流石に抵抗しきれなかったし。
ちなみに、発掘しないっていう選択肢はないヨ。ガーディアンの大部分は地下深くの柱状の格納庫に隠されてるからネ。発掘しなかったところで敵の手に落ちてから這い出してくるだけだヨ。……原作だとこの時点で詰んでたんだナァ……だって、ガノンの怨念がドンナ性質持ってるか研究しようがないもの。サンプル不足でサ。怨念って言葉は精神的なものだし、まさか無機物に取り憑いてくるなんて考えにくかったんだろうネ。あと厄災ガノンにそれを考え実行に移す悪辣な知性があるって見てくれでもなさそーなのがまた。油断、というより、敵が想像以上というか……ボクだって〈ブレワイ・ティアキン〉関連の原作知識なしでガノンの名前だけ聞いたらなんか強いトライデント持った猪の姿で出てくるもんだと考えてた思うネ。
で、遺物乗っ取りに関してボクが考えてる対策は3つある。
『そもそも乗っ取られないための対策』……コレはすでにテラコ含めた15体のガーディアンに施してあるヨ。白龍素材を使った対厄災コーティングを施したのサ。魔王ガノンドロフの瘴気に耐えられる白龍のチカラなら、ソレより薄い厄災の怨念は問題なく弾けるだろーネ。どこを見て薄いと判断したかっていうとネ、色だヨ。厄災ガノンは黒とピンクっぽい紫の瘴気を纏ってる。魔王ガノンドロフは黒と赤。赤みが濃くなってる。ガノンドロフのテーマカラーは赤だし、赤い方が強いという仮説だケド、そこまで的外れじゃないハズだ。
問題は怨念の瘴気を現状浴びるコトできないから、本当に対策できてるか試せない……ライネルを暴走させたヤツを生け取りにできたら処刑と合わせて徹底的に実験してやろーかしらネ……。あとは、白龍素材、そこまで大量に手に入らないから、復活までに全ての機体に施すのは不可能だろうってコト。優先順位は城地下にある中央制御装置と、『四神獣』、あとは一応拠点として使える『シーカータワー』かな。一応コーティングは2種類あって、ガーディアンの頭脳部脳含めたコア周りに施すものと、装甲全面に塗るもの。実験できないからどっちの方が効率的かわからないってのも、コストの高さに拍車をかけちゃってる。コアとか制御系周りだけでいいなら神獣に施すのもラクになるし……あの子らまだ発掘途中とはいえ、サイズは知ってるからネ……それぞれがちょっとした特撮怪獣クラスだモン。
白龍ちゃんの鱗とかは古くなったのをもらってるから、そこまで大量には手に入らないのサ。厄災復活までの残り10年ほどでどれだけ手に入るか……あと飛んでる高度が高度だから、リト族でも採りには行けないだろうネ……空気が薄いから揚力を稼ぎにくいし、激しく羽ばたくほど筋肉は酸素を欲するから呼吸もままならなくなっちゃうしで、ボクが行くしかないのサ。
で、対策完了した15体は全部装甲が白に塗られてわかりやすくなってます。ゼルちゃんと王妃サマの防衛用の個体として『ロイヤルガード』のコードネームで呼ばれてるヨ。テラコと、歩行型7体、飛行型3体、砲台型4体が内訳だネ。
次に、『1度乗っ取られてもある程度容易に取り戻せるようにする対策』。王妃サマやゼルちゃんの光に頼りっきりというのは、作戦としてはジッサイ不健全だもの。策っていうのは二重三重に施すのが基本なのに、ガノン相手では封印手段が1つだけっていうのも、原作での敗因の1つと言えるし。
例えば量産型の『光の矢』。怨念特攻の武器のうち、遠距離攻撃手段はまだ中々ない。特に高高度から一方的に攻撃できるのがウリのリト族さん達は弓はともかく矢の方面での強化が難しかった。だけど、ダボラさんのおかげで将来的には属性矢をそこそこ大量に配備できるかもしれない。龍岩石を使った普通より強力なヤツだ。弓矢の攻撃力は基本弓依存だったのが、矢でも威力増強できるのはいいコトだと思う。で、そんな強化属性矢の1つが白龍の龍岩石を用いた『光の矢』。コレを複数発打ち込めばガーディアンの怨念を祓うことも可能かもしれない。あるいはソレができなくとも普通に倒すよりはラクなハズ。まだ開発されてない『古代兵装・矢』よりはコスト低いし、矢尻のカタチも上下左右対称で飛ばしやすいと思う……
それからズバリ『いやしの歌』。コレに怨念を消し去るチカラがあるのはとんだサプライズだったケド、利用できるのならぜひ利用したい。とりあえずお店に卸してる魔法の楽譜に『いやしの歌』は早々に追加しておいた。スタル系の魔物には『太陽の歌』の方が曲そのものも短くて手っ取り早いんだケド、こっちは楽器の魔力だけだと範囲が狭いから……魔法の曲の利点は演奏者が魔力のあるなしに、楽器さえ魔法の楽器なら最低限の効果は保証されてるとこだしサ。ちなみにテラコの笛部分にも魔力を込めたので彼の演奏でも魔法の曲は使えるヨ。そのうち『時の歌』とか使えないかなァ。
あとは古代兵器の動きを封じれる手段があればモット安全に『いやしの歌』を浴びせ聞かせられるネ。
あとの対策は、最後の手段。『乗っ取られた機体を手っ取り早く破壊するための対策』。
『古代兵装』の開発だ……兵器開発は……あまり気乗りしない……ハイラルは武器こそたくさんあるケド、兵器と言えるものは古代兵装を除いては大砲くらいのもの……ただなァ……あまり技術力をつけ過ぎて、将来人類同士で争ったら困るので、ソレなりに慎重になってる。ボクには前世知識というアイデアの源泉がある。そしてシーカー族の技術者は優秀だ。ボク自身が造り方まで知らずとも、大まかな仕組みや見た目を伝えれば再現できてしまうかもしれない。だからこそこの辺りの知識の開示は慎重にやるつもりだ。この辺りはハイラル王にもはっきりと言ってある。兵器の知識をグイグイ求めてくるようだったら、ボクはこのハイラルを去るってネ。納得してもらえてよかったヨ。
ともかく、銃火器は造らないつもりだヨ。ボウガンは……片手で撃てる弓だし、女性の護身用として王妃サマやゼルちゃんのために作ってみるかもってトコになってる。
あとはガーディアンそのものに暴走時の自壊プログラムを組めたらなァってトコ。流石にプログラミング関連はボクには分からんので専門家に丸投げだネ。
コレらの方針は定まったのが大体4ヶ月前。それでちょくちょくお城や研究所に顔を出してる。
『マスターバイク』は移動手段という面で欲しい。ただ長距離移動手段としての輸送トラックなんかはあんまり旨味がないんだヨ。ワープがあるからネ。バイクは死なない騎馬という面が強い。ただ、馬と違ってハンドリングを勝手にやってくれないから、テラコの人工頭脳を応用できたらナァ、と思ってる。まぁ、『マスターバイク零式』がないから量産するための技術がないので、将来的にってところ。未来の天才『プルア』と『ロベリー』もまだまだ子供だしネ。リンクよりは年上な感じだケド、ボクからすると大差はない。可愛い子達だヨ。未来の宝。なんとしてでも守らなきゃならんネ。
あと古代兵装で作りたいものはまず矢だ……雑魚敵を問答無用で消し去れるのは強い。
ソレから、移動手段として『クローショット』を作ろうと思ってる。『フックショット』よりはコッチと思ったのは、『ガーディアンの腕爪』を流用できるからだネ。〈厄黙〉で近い動きをするものに『ガーディアンフレイル』があったからできなくはないハズ。フレイルそのものは作る気はない。まともに使えるのがリンクだけの武器はコストをかけて開発してもムダになっちゃうし。リンクの手はマスターソードとハイリアの盾で予約済みだからネ。
ソレからラジコン操作で偵察や、爆撃までできる『ビートル』も欲しい。『リモコンバクダン』と組み合わせられるとなお良し。リモコンバクダンは応用形で自走型の『ボムチュウ』作れると便利かもだヨ。
あるいはシーカーストーンそのものの簡易量産型もあれば嬉しい。軍のエースだけでなく、一般隊長も『シーカーアイテム』を使えるに越したことはないからネ。
ところで、シーカーストーンの初出は〈ブレワイ〉じゃないんだよネ。〈時オカ〉のリメイクである〈時のオカリナ3D〉で、ヒント映像を見せてくれる岩があるんだケド、それの名前がシーカーストーン。ちなみに同じ作品に出てくる小さくて妖精が出てきたりする方は『ゴシップストーン』だヨ。……こっそり聞いた話だがってネ。
携帯端末のシーカーストーンは機能と液晶を考えるに、ヒント映像のシーカーストーンを加工したのかな?
だとするとゴシップストーンもあると嬉しいなァ。これを加工すると離れたところとも会話できる首飾りになるんだヨ。無線の代わりに配備したいナァ……ボクと会話できる『サリアの歌』は一方通行でボクからはかけらんないのヨ……あと一々楽器を奏でないとイケないし……
とまァ、色々考えてはいるんだヨ。いるんだケド! コレらほとんど机上の空論。仮説を元に動いてる。税金使った国家プロジェクトだからネェ。ボクは基本魔法系の視点からアイデアの提供と監修がメインで、アレコレするのは一般研究員さん達だ。最近は研究も1段落してきたし、それはつまるところ現状手元にある遺物だけだと進められる限界に到達しちゃったってコトで……
諸々ローム王に相談した結果、発掘の進展を待つ間、宮廷楽団の規模を拡大して、『魔法音楽隊』を組織してみるのはどうかということで、今は仮にやってみてる。顧問はボクで、直属の上司は陛下だヨ。つまりはこの組織の問題は国王が直々に負うという事で、めっちゃ期待されてるジャラ……失敗はできんネ。とはいえ母体が宮廷楽団ならムダにはならないと思いたいネ。『いやしの歌』がムリだったとしても、魔法の曲は他にもある。ソレこそ数十人規模で『ゴロンのララバイ』で魔物の群を丸々眠らせたり、『大翼の歌』で大人数を避難させたりもできるはずジャラ。特に楽器抱えて移動してその先で演奏ってのもパレードのマーチとかもやってたらそれなりにはできるハズ。
まぁ、まずは人を集めるところからだネ。1人ではダメでも10人なら。10人でダメなら100人だって脳筋思考だけど、何事も(数の)暴力で解決するのが一番だってどっかのニンジャが言うてた!
魔法の曲は楽器そのものが魔法の楽器なら、奏者には魔力はいらないから、純粋に演奏技術で選べる。楽器は宮廷楽団のお高いヤツに魔力を込めたのは悔しいケド、ボクの手作り品より音は良いしネ。
あとは楽団員にも数名、魔力の持ち主がいた。これは僥倖。奏者に魔力がなくても最低限の効果は発揮できるとはいえ、あったらあったでより強力になるのは間違いないからネ。とりあえずローム王の許可を得て求人は種族性別問わず出させてもらってる。魔力持ちは特殊資格とおんなじ扱いで手当も出るヨ。ただ、魔法の曲の発動には綺麗な音色じゃないといかんから、吹奏系にしろ、打楽器弦楽器にしろ、戦場の極限状態でまともに演奏できる胆力も必須なんだヨ……
せっかくだから手隙の研究員に頼んで手回しオルガンを作れないか頼んでみてるんだ。これなら回すだけで良いしネ。
とまぁ、コレらがリンクをほっぽってやってたコトだネ。ただ、これを知ったリンクってば、なんかめっちゃ謝ってくるの。君は悪くないって何回言ってもサ……
どうしよ……
*
建物の外にずらりと並べられた遺物達。その中でも最大のそれは、縄文土器を逆さまにして手足を生えさせたかのような外見をしている。
統率のとられた軍隊のように、同じ向きでずらりと並んだ未起動のガーディアン達。その様は、実際壮観であった。
ティリアに連れられて王立古代研究所の敷地に足を踏み入れた少年は感嘆の声を漏らす。
「ガーディアン……」
「すごいでしョ。この子は確か、『終焉の谷』で発掘された子だ。」
「オクタロックに似てる?」
「そりゃァ、多分古代シーカー族はそれを参考にしたんじゃないかなァ。」
メタ的にはそれがモデルなのは本当だが、それを抜きにしても多脚ゆえの安定性と、車輪や
「ティリア様、おはようございます。」
「おはようスータさん。今日は見学の子を連れてきたジャラ。」
「前にお話しされていたお弟子さんですね。」
「リンクです。よろしくお願いします。」
「研究員のスータです。ティリア様の助手を任されています。」
シーカー族研究員のスータ女史に案内されるまま、2人は研究所内へと足を進めた。
「人、少ないね。」
「ほとんどは終焉の谷やゲルドキャニオンでの採掘に派遣されているからね。それ以外にもフィールドワークで魔物の生態調査や地形の測量データを収集してるんだよ。」
「魔物の生態はおれもティリアに教えてもらったけど、測量?」
「そう。個人での戦いならともかく、軍隊を動かすとなると地形の把握はかなり重要なのです。シーカータワーさえ起動できれば詳細なマップが簡単に手に入るとは言っても、それにかまけて厄災までに見つからなかったらどうします?」
「そっか。」
「ティリア様のお陰で設備や人員を増やしてもらったからには、ムダな時間を過ごすわけにはいかないのです。魔物研究についても、ティリア様の論文を元に進めています。この方は今のハイラルには欠かせない人ですよ。」
「褒めてもご馳走くらいしか出ないヨぉ、スータくぅん。」
「ティリア様のご馳走は普通にとてつもないご褒美です。毎日のように食べてるリンクさんが羨ましいくらいですわ。」
「今度お弁当作ったげるヨ。」
「本当ですか!」
食い気味で答えたスータはその整った顔を赤らめてメガネの位置を直して、照れくさそうに咳払いをする。
「マァ、魔物研究に関しての論文はほとんどが連名だヨ。」
「連名?」
「共同研究だったのサ。」
「ティリアと同じくらい魔物に詳しい人いるの?」
「いるんだヨ。視点が違うから、モノによっては彼の方が詳しいまであるネ。リンクは聞いたコトない? 『ドクロ池の商人』サンの噂。」
「アッカレ地方の?」
「そうそう。魔物屋サンの彼こそ魔物についての知識はハイラル1サ。訓練用人形も彼との合作だから、リンクも大いにお世話になってるんだ。」
「そうなの! お礼言った方がいいかな?」
「魔物屋サン、今日はフィールドワーク?」
「はい。帰りは明後日になると。」
「だってサ。」
今日は会えないと聞いてリンクは残念がったが、しかし研究所の中には彼の興味を引くものが沢山あった。少ない研究員達の邪魔にならないよう見学していた彼は、壁際のマネキンの前で立ち止まった。
「コレは?」
ガーディアンと同じ模様と発光体のついた鎧兜が着せられたマネキン。装甲もおそらくはガーディアンのそれと同じものだろう。セラミックのようで、鋼鉄並みの硬さ。それでいて水に浮くほどに軽い古代素材だ。
「コレはネ──」
「『試作古代兵装』さ! 実にクールかつナイスなデザインだろう?」
ティリアの言葉を遮って軽快な声が響いた。ゴーグルで目元を隠した少年がリンクの隣に現れる。どこからかギュイーンという音が響いた。どうやら少年のバックパックの機械かららしかった。リンクよりちょっと年上くらいといった体躯で、白い髪と襟の大きな民族衣装を着ていることから、彼もシーカー族であることが推測できる。
「試作?」
「そう。試作。完成系には程遠いが、しかし! この鎧は既に既存のハイラル兵士のものより高い防御力を、より軽い素材で達成している! 実にマーベラスだろう? 失礼。挨拶が遅れたな。ミーはロベリー。ここの研究員……見習い、である。」
研究員で切ろうとしていた彼だが、スータのジト目に見つめられ、慌てて見習いと付け足した。
「ヤァロベくん。」
「これはティリア女史。グッドモーニング!」
「リンクも挨拶して。」
「リンクだ。ティリアの弟子をやってる。」
「ほう! ユーが噂の天才少年剣士君か! 噂は予々……どの内容もアブサード……尾鰭のついた眉唾物と大人は言うが、バット! ミーはそう思わない。」
そう言ってロベリーはリンクの手を取ってブンブンと振った。
「ソーリー。興奮が抑えきれなかった。しかし、凄い体幹だな。」
ロベリーの方が多少身長も高いのだが、そんな彼がほとんど全力で腕を振っても、リンクは全く動じなかったのである。
「ティリアに徹底的に鍛えられたから。」
「エクセレント! 師に恵まれたな。」
少年2人の初邂逅はお互いにそれなりの好印象で果たされたようだった。2人して試作古代兵装を眺めながら、ロベリーが特徴やギミックを説明すると、リンクは実際に戦闘経験のある身としてアイデアや懸念点、こういう工夫があると嬉しいといったことを口に出す。
ティリアは満足そうに大きく頷き、スータを伴って自分のデスクに向かった。
デスクの上にはガーディアンの腕爪が先端についた大型のガントレットが転がっている。『試作型クローショット』だ。
射程はおよそ10m。鎖ではなく古代エネルギーのワイヤーなのだが、強度が十分に出せず、伸ばしすぎると千切れてしまう。爪の発射速度は申し分ないが、巻取りのパワーは子供体型のティリアを引っ張れるほどもなく、速度も出ないので真っ直ぐな伸び縮みにはならない。それでも最低限の形にはなっているのは、ティリアのアイデアと、それを正確に読み取り、どの技術が使えるかと試行錯誤を重ねた研究員達の努力の賜物であった。
「握力は申し分ないんだケド……」
「およそ300kgをぶら下げてもポールを離しませんでしたからね。」
「問題は突き刺す方だネ。」
「ハイラルの一般的な樹木では、爪を刺しただけでは巻取りの強さですっぽ抜けてしまいますから。」
「ままならないヨ……マァ、コレの開発は今まで通り片手間でいいヨ。最優先は今まで通り神獣とガーディアンだ。陛下のお達し通りにネ。」
「承知していますわ。しかし、その神獣も発見された文献は殆ど解読済みで、現物が出てくるまではこれ以上の進展も……」
「ガーディアンも……既に制御系とかは完成しちゃってるしネ。」
古代研究のメインは新兵器開発ではなく、古代兵器を発掘し、運用できるようにすること。兵器の現物は1万年前に完成しているからして、あとは運用に際しての問題点の洗い出しや、機能の把握等がメインなのである。
「とはいえ、前回殆ど完封負けみたいにされたんだ。間違いなく対策はされる。」
「それが、乗っ取りだと?」
「そうだヨ。」
「……そして乗っ取られるとするならば発掘していようがいまいが関係はなく、むしろガーディアンの所在を把握できる分発掘しておくのが望ましい、と……ですが……これほどの兵器です。敵に渡すくらいなら破壊してしまうべきでは?」
「そうもいかないのが現状だヨ。」
厄災ガノンがなぜ『厄災』であるのか。魔獣や怨霊ではなく、災害として扱われているのか。
ティリアはデスクにスペースを作ると、一枚の巻物をコロコロと広げた。
「『赤き月の刻』……ブラッディムーンですね。」
「厄災ガノンの本質はガノンという強力な怨念の魔物を中心とした魔物災害。強力な白銀クラスを多く含む数千数万の魔物の大量発生。これが厄災の本質なんだとボクは考えてるヨ。戦いは数……数の暴力ほど恐ろしいものはないネ。」
「ティリア様なら切り抜けられると思いますが?」
「ボクだけならネ。でも一握りの超人だけが生き残ってどうなるのサ? 国は人だヨ。大勢の無辜の民、か弱い人々こそ国の礎だヨ。ボク1人で、そこまで手は届かないサ。」
古代シーカー族もまた、同じように考えたに違いないと、研究員の多くが賛同するであろう。だからこそ、あの古代兵器は
*
スータは目の前の小さな賢者を、大いなる畏怖をもって見ていた。数千数万の大群を切り抜けられるということを、彼女は否定しなかった。肯定した上で、それだけの力があると認めた上で、それを無意味と断じた。
(何故?)
それだけの力を持ち、その上でまだ足りないと鍛錬を続け、だというのに他に頼ることを躊躇わない。
「だからこそ、なのでしょうね。」
「?」
「貴女はやはり、鬼や武人ではなく、賢者、であらせられるのでしょう。」
「どったの急に?」
「いえ。……急で申し訳ないのですが、明日から一週間ほど休暇を頂きたく。」
「いいケド、ボクじゃなく所長に言うべきじャ?」
「わたくしは貴女の補助ですので、直属の上司はティリア様になっております。書類上でもこのように……」
「アラホント。いかんね、部下の把握を怠る上司はダメジャラ……」
書類を受け取り、目を通して申し訳なさそうに頭を掻く。身の丈は子供のはずだが、スータは彼女の振る舞いに壮年の研究所長と同じものを感じた。
「休暇ってことは里帰り? ア、プライベートは聞かない方が良かったネ……」
「いえ、里帰りです。私の生まれはカカリコではないもので、それなりに長旅をするんです。」
「ほえー、珍しいネ。」
スータは正真正銘のシーカー族であるのは実際確かである。だが国内のシーカー族は殆どがカカリコ村生まれで、それ以外の生まれ育ちはかなり珍しい。
「参考までに、どのあたり?」
「ゲルド砂漠の北に、石造りの集落があるんですよ。人口は500人ほどですね。」
「そっかァ。……気をつけてネ……そうだ!」
ティリアはポーチを開くとガサゴソひっくり返し、
「お守りだヨ。困ったことがあったら祈りを込めてぎゅっと握るんだ。」
「ありがとうございます。末代まで大事にしますね。」
「そんな大それたモンじゃないヨ?」
しかしながら、それは実際大それたものだった。多くの命を救ったのだから。
オリキャラのスータさん。プロットにはいませんでしたが、急に生えてきました。シーカー族は果物の名前から取ってるみたいなので、スターフルーツから。原作でおんなじ名前の人とかいませんでしたかね?
いたとしても時代が違うので同名の他人で通したいと思います。
クローショットとかフックショットはブレワイにあれば大活躍したこと間違いなしでしょうが、あったらあったでロッククライミングの楽しみや工夫が損なわれていたんだろうなぁ、と。
あとは古代遺物の意匠って『スピナー』とか似合うだろうなぁ。ビートルとかボムチュウとか便利そうなのはどんどん作りたい。だけど研究てそんな簡単じゃぁないもので。
次回はがっつり戦闘させたいですね。政治とか研究とかは頭の中で色々考えないといかんので筆が鈍るんです。戦闘はもうちょい楽に描けるかと。作者は頭が良くないので頭の良い展開はどうにも……