〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC 作:ジュミ・ベラウ
唐突な旧版17話の削除ご迷惑をおかけしました。
現在スランプに陥っています。その上で前回と時間が空きすぎるのを恐れて無理やり書き上げて投稿した結果、展開の納得がいかず、結果書き直しになってしまいました。
スータさんの設定もかなり変わってしまいましたので、旧版とは一歳繋がりはございません。
モチベーションと体調、学校の都合で投稿頻度は落ちますが、これからも応援していただけると幸いです。
sideティリア
ある時ふと思った。コーヒーが欲しいってネ。
本物のコーヒー豆はないから、代替コーヒーを作って飲んだことはあった。たんぽぽの根っことかネ。
でもカフェインが足りなかった。
ボクは自称他称ともに妖精だケド、妖精らしいことはあんまりできてない。まぁ、原作コキリ族もそんなんか。魔法を使えるっていうのはソレっぽいかもだけども、『森』の妖精らしいかっていうとどーにも。
じゃ、ソレっぽいこと何にもできないかっていうと違う。ボクには『緑の指』がある。植物を育てる才能だ。ソレに魔力も付随するからこそ、ボクは魔法のマメを作れたんだ。それ以外にもそれこそガンバリ草とか、金のリンゴとか、やろうと思えば量産できるジャラ。
「ウン、いい匂いだ。」
香ばしい香り。ようやくの合格点。色も申し分ない。鮮やかな黒。
味もいいカンジだ。いいカンジにボク好み。苦味が強く、酸味は弱く、それでいて後味は甘い。
「ほぅ……」
ほっと一息。ウン。ちゃあんとカフェインを感じる。眠気覚ましとしても申し分なし。……元々が魔法のマメだからか、魔力も少し回復したみたいだ。生でポリポリ齧っても回復はしないんだけどナァ……?
マァ、全回復するにはカフェイン中毒の致死量レベルでがぶ飲みしないとだから魔力回復はおまけだネ。
「さ、遠慮せずに飲んでヨ。」
「飲めるかっ!」
一面低木に囲まれた広場で、イーガ団総長『コーガ』は叫ぶのだった。
美味しいのになァ……
*
かつての王家に国を追われた怨みから、厄災を信奉し、その復活がために暗躍するシーカー族の過激派集団。ほぼ全員が優れた諜報、潜入、戦闘能力を持った忍者集団である。
また、カカリコのシーカー族と違い、国を追われたおりに技術を手放していないため、ほぼ忍術や忍法のような古代技術を扱ってくる。それも特別道具などを介さないので、ある種の魔法に見えるほどのものである。
そのイーガ団の1番の標的は厄災封印の力を持つ王家の巫女、すなわちハイラル王妃と後継者であるゼルダ姫であった。いくら他の戦力を拡充しようとも、最後の仕上げである封印を担うものが斃れれば、ハイラルの希望は潰える。
しかしいかにイーガ団の術といえども、ハイラル城の王妃の寝室に忍び込んでの暗殺は不可能であった。よしんば成功したとしても、実行者は即座に捕えられ、処刑されるだろう。
イーガ団は目的の為であれば人質や裏切り者の粛清なども行うが、反面身内にはかなり甘い。特に総長のコーガや、ナンバー2の『スッパ』などは、仲間が生還できない前提の任務を立案、実行するつもりなどなかった。
だが、彼らは焦れた。
巫女の暗殺は最大の標的であるだけで、他にも厄災のためにできることは多くある。それが古代研究の妨害であったり、変化の術を用いた各種族間の不信を煽ることであった。
しかしそれらは尽く上手くいかなかったのだ。
発掘拠点を襲撃しようと企めば、実行日に人員や物資は撤退していてもぬけの空に。それどころか、稀に罠の類を残していく始末。何人かの団員が潜んでいたシーカー族の忍びによって捕縛された。幸いにして処刑はされていないが、牢から抜け出すのは困難だろう。
各種族の権力者に化けようとしても、成り代わりたい権力者の誘拐がとにかく困難。ほんの数年前とは比べ物にならないレベルで強者が増えていた。
うまく成り代わりに成功したと思っても、一部の強者は気配から偽物であると看破してくる。
その上、城や各種族の集落に送り込んだ潜入工作員はこの数年でほとんどが機密情報を扱えない閑職に左遷させられた。焦って情報を盗もうとした者は連絡がつかなくなってしまった。
各種族とハイラルの連携は密接行われていた。厄災復活を見据えた対策のための協力関係は着々と築かれていっていたのである。
そしてその中央にはいつも仮面をした妖精がいたのだ。
「スータ! お前、ちょっと行ってティリアを探って来い!」
優秀であるが幹部ではない女構成員にコーガはそう命じた。
変化の術が見破られるのであれば、変装させなければ良い。そもそもイーガ団はたとえアジトの中でさえ忍者装束とイーガの紋章を刻んだ白面を外さない。素顔というものはまず割れていないのだ。ならばいっそのこと素顔のまま行こうというわけであった。そもそもスータ含めた女構成員の殆どは装束に身を包む際に変化の術を応用して体型や声を男構成員のものに変化させている。
ではなぜ経験豊富で実力も高い幹部級ではないのか。それは、スータが唯一ティリアを前にして生還した団員であるからだ。
ティリアもイーガ団内部では一応は暗殺対象となっていた。一応とつくのは、その高い戦闘力から、対策なしに突っ込むのは危険と判断されたためである。スータ含めた交戦経験者は斥候任務やあるいは襲撃の帰りの不幸な遭遇戦が主であった。あるいは手柄に焦った末端が勝手な行動を行ったか。
だがスータは冷静に引き際を間違えず、それどころか無力化された味方を数名連れた上で離脱に成功していたのである。 故に危なくなっても引き際を間違えずに帰還して必ず情報を持ち帰ってくれるだろうという判断であり、女性というのもかつて逃げられたイーガ団員と結び付けられ辛いだろうという目論見がある。
スパイであると見抜かれても、無事に帰ってくればそれでいい。どんな小さな情報でも持ち帰ってくれれば儲け物だった。
そんなコーガの考えとは裏腹に、スータは1月もの間、潜入を続けられていた。
「それで、なんか分かったか?」
潜入から1月後の報告で、スータはティリアを「人を殺せない甘さがある」と伝えた。
実際ティリアはイーガ団員を殺したことはない。なんなら斬られた者すらもいないのだ。倒された団員は手足の関節を砕かれた上で、転移の術などに使うエネルギーの込められた札を全て焼かれ、その上で牢へと入れられた。
コキリの
ティリアの魂というのは異世界の日本から渡ってきた代物である。そして日本において『人殺し』はかなりのタブーだ。すでに前世で生きた時間の5倍以上をハイラルで生きている彼女だが、三つ子の魂百まで。その本質はそうそう変わらない。
何より、彼女のスタートラインは、死にゆく運命の人を助けたいというエゴだった。つまりは人助けである。そして、イーガ団は魔物ではなく人であった。
魔物や野生動物を狩るのは平気であるのも、彼女に偶然資質があったゆえである。詰まるところ前世において狩猟を営むものと関わりがあった。その上で、殺すか殺されるかの状況に追い込まれた結果慣れたのである。それから、割と早い段階でゲームと現実の違いを経験したのも大きいか。
それでも彼女は殺人に慣れていない。1度として経験したことはないので当たり前だが。それどころか彼女は殺すことを恐れている。自分だけではない。自分以外の仲間が人を殺したり殺されたりするのもだ。
その魂を分けられた剣もまた、人を斬りたがらないのである。
転生云々は流石に掴めなかったものの、スータもおおよそ正解と言っていい推測を立てていた。
では、この情報は彼女のウィークポイント足りうるかと言えばそうではないのだが。
殺人へのためらいや忌避感が弱点となり、場合によっては味方の足を引っ張って命を危険に晒すことなど、日本でサブカルチャーに触れていれば知らない者は珍しい。
敵の無力化という事象において、最も手っ取り早いのは殺すことだ。生け取りを実行するには圧倒的な実力差が必要である。そこで彼女は考えた。それだけの実力を、双び立つ者の無いほどの実力をつければ良いと。100年鍛えれば良いところまでは行けるであろうと。
そして実際彼女はイーガ団員が10人がかりでも殺さず撃退できるだけの実力を有するのだった。
「それじゃ弱点にはならねえなあ。……他になんか無いのか?」
「ライネルやヒノックス相手には力負けすると。」
「当たり前だ!」
そこまでいかずとも、体格が子供であるため力の押し合いには弱い。だが、剣以外に弓と魔法も使えるので、距離を取ったからといって安心できるわけでもない。
「魔法か。」
イーガ団も転移の術や土遁の術、変化の術といたものを使う。一見すると魔法に見えなくもないそれらだが、その実は古代シーカー族の遺した超技術を応用したものだ。秘伝ではあるものの、原理さえわかれば理論上誰にでも使えるものも多い。ティリアに言わせれば「極端に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」というところである。
しかし魔法は魔力を持たないと使えない。そして魔力を持っていたところで自在に使えるかはまた別な話である。そもそもティリアは自身の扱う魔法の原理を知らない。そのどれもがやってみたらできただけなのだ。彼女は雰囲気で魔法を使っている。ゆえに教えたくとも教えられないのが実情でもあった。
とはいえ、一部の魔法は道具に込めることで他人が使えるようにはできる。その内の1つが魔法の楽器を用いた魔法だ。イーガ団も魔法の楽器は持っている。そもそも入手するのに販売数が少ない以外の制限はないためだ。しかし彼らがいくら奏でても『大翼の歌』による転移などはできなかった。流石に対策済みである。
戦闘時の魔法もまた弱点がある。ノーモーションで繰り出すそれは射程距離が短く、範囲や威力も大きく落ちるのだ。破壊力や殺傷力というより、目眩しや体勢崩しがメインである。
反面、手から放つ場合は魔力を込めれば込めるほど威力が上がり、全力で放つ『ディンの巌』はイーガ団のアジト程度ならば崩落させてしまえるだろうとのことであった。理論上は。
それを聞いたコーガはため息をついた。破壊力そのものもそうだが、攻撃の範囲もまた広すぎる。
一応、それだけの威力を出そうと思えばかなりの溜め時間が必要で大きな隙になりはする。なりはするが、溜めている間は片手が塞がるだけで剣を振ったりできないわけではない。
頑張れば足から魔法を出せなくもないのだが、この場合は溜めている間まともに歩くことができない。
「……コーガ様、わたくしに1つ提案がございます。」
「なんだ?」
「森の賢者ティリアの排除は現実的とは言えません。であれば、こちらに引き込むのも一考の余地があるかと。」
「懐柔策か……実際話してみて、どうだ? 俺様達の仲間になってくれそうか?」
「それはなんとも。ただ、彼女はその強さとは裏腹に、どこか小市民のような感性を持ち合わせています。……人並みに傷付き、人並みに怒る、そういった感情の持ち主ではないか、と。」
だからこそ、裏切られたと感じた時は人並みに復讐を考えるのではないか、とスータは考えたのだ。逆に人質を取るのは得策ではない。現状は人を殺せない甘ちゃんでも、強い怒りを買えば、殺人への忌避感が吹き飛びかねないとスータは危惧した。
「我々の先祖は力があった為に恐れられ、追放されました。森の賢者もまた、突出した力を個人で持っています。城の者の中には、彼女を恐れて排除したがっている貴族などもいるようです。」
「愚かな……」
スッパは小さく吐き捨てるように呟いた。
「……確かに馬鹿なヤツらだが、利用できるな。上手くそそのかせばハイラルとティリアとの間に亀裂を作れるぞ。」
「もし森の賢者がこちら側になれば、同時に退魔の剣が安置されたコログの森も占拠できるでござるな。」
「よーしスータ! お前は引き続きティリアを探れ。」
「了解いたしました。」
ドロンと煙を立て、何枚ものお札が舞う中にスータが姿を消すと、コーガは早速計画を練り始めた。
彼はものぐさだが、頭は決して悪くない。その横に侍るスッパはコーガであれば必ず有効な計画を打ち立てられると確信していた。
*
だが、現実は非情なり。
ティリアは全てを知った上で泳がせていたのだから。
・ティリアの前世
もう本人も忘れかけてしまっている感じがするが、一応男性である。死んだ記憶はないが、死んでいたと仮定すると享年21歳くらい。
祖父が猟師だったので、野生動物を殺すことに必要以上の忌避感を抱かず、それでいて責任持って始末をつけるという考えがある。倒した魔物の死体処理を徹底しているのも前世の祖父の教えから。
意外とティリアのパーソナリティについては書いていなかったことに気がついた。
とはいえお人よしで寂しがりなのは変わらない。多分可愛い系の男性だったのだろう。
・『大翼の歌』について
本作では行った事がある女神像の前に移動する歌。演奏した本人が行ったことさえあれば4人くらいは一緒に連れて行ける。
もしイーガ団が悪用すれば襲撃に役立てられてしまうので、その辺り対策済み。どうやったかは次回あたりで。割と力技。
というわけで次回、スータさんの行動とかティリアとコーガのお茶会とか諸々答え合わせです。戦闘はもう数話先になりそうなので、次回含め説明パートは短く分けて書きます。書いてて筆がなかなか進まないので。
息抜きで別の小説を書くかもしれませんが、未完で終わる気は無いので気長にお待ちいただければと。