〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC 作:ジュミ・ベラウ
大変遅くなりまして。大学の課題に追い詰められてたのと、ポケモンやってたのとで。
それ関連で一つ。スイッチ2を手に入れたので、これで〈封印戦記〉を遊べない憂いは免れました。あと〈ティアキン〉の声の記憶も集められるようになりました。
ゼルちゃんが最初にデクの樹様に会ったのは生まれてすぐだったんですねぇ。拙作では多分ティリアと入れ違いだったんでしょう。はい。
作者は〈ブレワイ〉は持っていないので、声の記憶や設定資料集で判明している設定と齟齬等ありましたらコメントで教えてくださると幸いです。
イーガ団との停戦協定を締結して少し後のことである。ティリアはいつものようにリンクを伴って城の訓練場で剣を振っていた。
いや、正確には違う。剣を振っているのは彼女の『ぬけがら』だった。魔法の曲『ぬけがらのエレジー』によって本物そっくりのハリボテを生み出し、それをタクトで指揮する『操りの唄』で制御しているのだ。
ティリアの『ぬけがら』は本物と遜色ない見てくれをしている。しかしその戦闘力まで本物と同等というわけにはいかない。
「んむむむむ……!」
その動きは時間が経つにつれ目に見えて動きは悪くなっていき、そして相対するリンクによって首筋に剣が添えられる。
「勝負あり!」
審判の兵士が高らかに告げた。
「疲れたァ!」
仮面をずらして口元を露出させつつ、洗い息を吐くティリア。リンクはすぐに駆け寄って、清潔なタオルを手渡した。
「ありがとネ。」
『ぬけがら』を動かして兵士とする技は、彼女が森にいた頃には考えもしなかった。元々彼女は『ぬけがら』を囮として使うことを考えていたのだ。故に本物と遜色のない見てくれの完成度となるまで鍛え上げたのである。見た目だけでなく、単純な気配も彼女と同じだ。何せ『ぬけがら』ゆえ、元々彼女の一部である。
そしてまたそのポージングも、
これを思いついたのはリンクの修行の中で、技の型を教えるためにリンクに『操りの唄』を使った時である。
(コレ、応用したら!)
その後、訓練用ダミーの代わりに自身の『ぬけがら』を操るようになると、それまで実演は野生の魔物を使うしかなかった『兜割り』や『とどめ』と言った危険な技の練習をより実戦に近い形で、その上で実戦ほどの危険度もなくできるようになった。最も、リンクとしては作り物とは言え恩師の胸を貫くことは相当に堪えたが、何度か繰り返すうちに、息絶える演技をする『ぬけがら』を見て、よくない扉が開きかけたため、努めて無心となるよう心がけた。その結果、彼は少しだけ無口となってしまった。
それを見たティリアはかなりしょんぼりしてしまったが、リンクは流石にその理由を打ち明けることもできないのであった。
ともあれ、それらはティリア自身の魔法の扱いを上達するに充分な訓練ともなった。
だからこそそれを実戦で使えるか否か、試したのだ。その思惑がなければ、『ぬけがら』ではなく自分自身で走って『ティリアの戯れ』を発動させられた。そしてその実地試験としての成果は問題点の洗い出しに留まり、有効な使い道と言い切るには及第点以下である。
なぜならば、この『ぬけがら分身』とでもいうべき技法は、遠隔操作できる分身を出せる利点はともかく、戦闘要員としては本体が戦った方がよっぽど強いのだ。
まずもって『ぬけがら』故に軽い。重さが足りないので踏ん張りや、体重を乗せた攻撃の効果が落ちる。しかし軽いからといって本物以上のスピードがあるわけではない。また、いくら操っていても、口は動かないし瞬きもしない。この欠点は常に仮面をつけているので無問題であるが、生命活動に伴う音までしないのでは、手練れには偽物と看破されるであろう。すなわち心音や呼吸音である。もっとも、乱戦下ではそれらの音は他の音にかき消されるのが常であり、まだ若いスッパが気づかなかったのも無理はない。ただでさえハイリア人とコキリ族は違うという先入観を持っている彼では難しかろう。今日の訓練でリンクに指摘されるまでティリアも気づいていなかったが。
その上、この分身はそれ自体が魔法の産物であるためか、『ディンの炎』を始めとした魔法は使えない。使ったように見せかけることはできるが、その場合実際の発動地点はティリアであるため、彼女から離れるほどタイムラグや距離減衰が発生するのだった。
しかし何より最大の欠点は、これの操作には大変神経を使うので、ティリアはその間他のことが一切できない。自分も戦いながら『ぬけがら』を使って挟み撃ちにすることは現状全く不可能だったのである。
「もっとこの分身をうまく使えるようにならないと。ボクが沢山いれば……少しは役に立つでしョ?」
「少しなの?」
「少しサ。何せボクの下位互換だからネ。ボクにだってできないことは沢山あるんだから、ボクにできないことが分身にできる道理もないヨ。」
せめて分身1体を制御したまま自分も普通に動けたならば、1人で完璧な連携をとった挟み撃ちができるのだ、と彼女は言う。
それを聞いたリンクは無邪気な敬意を恩師に抱くのだった。このヒトは、一体どれほどの高みを行こうとしているのか、と。そしてまた自分が彼女の全力を追い越せる時が本当に来るのだろうか、とも考えたのである。
「理想はネ、本体含めた三銃士……もしくは
それはつまりゼルダシリーズにおけるメジャーな連携人数である。異なる時代、あるいは時間軸そのものが異なる可能性こそあれど、この世界もまた〈ゼルダの伝説〉であるのであればそういったお約束ごととは切っても切れまい、と言う発想であった。
「別に分身が全部異なる動きをしなくても、ただ本体に追随するか、あるいはあらかじめ決められた行動パターンをなぞるだけでもいいんだヨ。」
とはいえ、それでも十分な高望みであるのかもしれない。
「シーカー忍者の分身術を応用できればなァ……」
「忍者?」
「そうそう。古代エネルギー分身だヨ。青白く光ってるから1発でニンゲンじゃないってわかるケド、極めれば手数は最大7倍とかだヨ。流石に自立行動までは無理みたいだケド……」
だがそれも古代の導師ミィズ・キョシアであったならば、肉眼だけでは判別できない分身精度をも誇り、それぞれを独立させて動かせるのである。しかしそれを学んで身につける労力よりは、得意なことを伸ばす方が良い、と彼女は結論づけた。
その点で言えば、もう1つの方は彼女にとって想定以上の成果を発揮してくれたのである。
「やっと森の妖精っぽい技ができたでしョ。」
「確かに。ティリア、一番得意な魔法は『ディンの炎』って言ってたね。」
森の妖精なのに炎の攻撃魔法が得意なことを、それなりに悩んでいた彼女である。この大いなる究極奥義の開発には並々ならぬ心血を注いでいた。
一帯を小さな森林へと変える大魔法。事前に種子を準備する必要があるが、一度発動できたならば、それだけで勝敗は決するほどの大技だった。根や蔦の拘束力は凄まじく、
それはそれとして使用回数含めたデメリットもあるためにおいそれと使えないものでもあったが。
「デメリット?」
「自然破壊。自然を別の、不自然な自然で上書きしちゃうんだヨ。そしてボクの森は急成長する分寿命は短いからネ。」
数日どころか数時間で蔦や木々は枯れ果てるのだ。しかも地面の栄養も大量に吸い取ってしまうため、しばらくそこはぺんぺん草も生えない枯れた土地となってしまうのだった。
一応アフターケアとして枯れた森が土に還ったならば、その凄まじい栄養素でもって前以上に肥沃な土地となるだろうが、それを糧に育つのが必ずしも元通りの自然とは限らないのだ。
そして使用回数。こちらは発生させたい森の範囲次第ではあるものの、数十〜数百もの種子を事前に準備しなければならない。魔法のマメならば収穫した時点で使えるが、どんぐり、ハイラルボックリ、小鳥の木の実などは収集した上でそこにティリアのフォースと魔力を注がなければならない。それも精度を求めるならば1つ1つ丁寧に、だ。片手間に力を込めた種子は発芽不良や、歪な成長をしてしまう。
「そして魔法と技術ではネ、後者の方が絶対いいんだヨ。」
「どうして?」
「技術ってのは究極誰でも使える……そうでなくても魔法よりずっと門戸が広いンダ。魔法は魔力を持ってないとどうにもならンジャラ。」
「そっか。」
「それに、たったの一個人にのしかかる未来というのは、決して健全とは言えないヨ。1人の強者より、万の凡兵こそダ。支える土台が多ければ多いほど、そしてまたその土台の1つ1つが強い方がズゥっと安定するのサ。」
そう言って彼女は仮面の下で難しい
「どうしたの?」
「……厄災封印ができるのは現状王妃サマだけだヨ。そしてまた厄災に特効を持つ武具は退魔の剣だけ。替えが効かなすぎる……つまりプランAが失敗した瞬間ハイラル滅亡は確定だ……軍事作戦としては3流もいいトコだ。魔力の産物というのは自分ルールを周囲に押し付けるから困るのサ。厄災は聖剣でしかまともにダメージを与えられず、封印するしかないって性質に逆らえないわけでネ。」
「それでも、やるしかないのではありませんか?」
幼く、それでいて毅然とした声が訓練場に響いた。
「ヤァゼルちゃん。久しぶりだネ。」
「本当です! 近くにはきているのにここのところ全然顔を見せて下さらないではありませんかっ! 御母様も寂しがっていましたよ。」
「それはゴメンネ。今度埋め合わせするからサ。」
金髪と太眉が特徴的な幼い少女。その足元では真っ白で卵形の小さなガーディアンがピポポと、こちらも抗議するような声をあげているようにティリアの座るタルの周りをぐるぐるしていた。
ゼルちゃん、とティリアは気安く呼ぶが、その実彼女はこのハイラルの王女。つまりは姫であり、騎士にとっての使えるべき貴人。
リンクは慌ててティリアの隣から降りると、膝立ちとなり、胸に手を当て、騎士の礼節に則った姿勢を取ろうとした。
「おれ……自分は、ティリア、様の弟子にしてハテノ村の騎士の家系に連なるリンクと申します……」
「?」
少女はきょとん、と首をかしげると、しばらくしてティリアと共に吹き出した。足元のガーディアン、テラコも笛のような機構を伸び縮みさせて笑い声のようなものを上げる。
「リンク〜そりゃないジャラ……気づいてなかったノォ?」
くつくつと笑いながら、ティリアはリンクの頭を撫でる。なんだか揶揄われているような気がして、彼はむっつりと唇を尖らせたが、目の前に姫がいることを思い直し、慌てて真顔を取り繕った。
「リンク、彼女ってばキミと初対面じゃないヨ?」
「え?」
そう言われてリンクはまじまじとゼルダの顔を見つめる。綺麗な金の髪に、青緑の瞳。
「?」
「にぇ〜、ホントに分かんない?」
「わからないのですか?」
ゼルダが寂しげな、潤んだ瞳をするのを見て、リンクはワタワタと手を振って滅相もない、と示しながら必死で頭の中を見渡して思い出そうとする。
が、今彼女から感じる微かな光のフォース、特徴的なそれをリンクは今まで近くで感じたことはなかった。一番近い波長を持つのはハイラル王妃のそれだが、彼女のものはもっと強い。
「ふふ……あはははは! いや〜揶揄いすぎちゃったヤ。ゼルちゃん、答え合わせしたげテ。」
「わかりました。」
そう言うが否や、ゼルダは煙玉を勢いよく地面に叩きつけた。
*
sideティリア
けほっ……チョット吸い込んじゃったヤ……
今の煙玉はボクのお手製だヨ。ホントは『ケムリダケ』があればよかったんだケド、地下世界に行くのはまだリスクが高いからネ。
ボクの緑の指は植物でなくて、キノコのような菌類にも発揮されるんだァ。加工に手間をかけるくらいなら最初から量産できた方がラクなのヨ。
さて、そろそろ煙も晴れる頃だ。
さー驚く勿れ……って言っても見てくれは単なる早着替えに過ぎないけどもサ。
「シーク……?」
おーおーお目々見開いてびっくりしてる……これが俗に言う「お前女だったのか!案件」ジャラ……知らんケド。
さて『シーク』と言えばシリーズのキャラクターではあるネ。某大乱闘にも出てるから、知名度と正体はけっこー高い方かも?
マァ、実際は〈時オカ〉と〈ゼルダ無双〉の2作品にしか出とらんジャラ。リメイクとかは除くヨ。
で、このシークはと言えばそれらの作品におけるゼルダ姫が、正体を隠して魔王対策の暗躍をする為に生み出した仮の姿。シーカー族の生き残り、青年シークを名乗るわけだ。結構安直なナマエ……〈ゼルダ無双〉に至ってはシーカー族長にそんな名前の一族はいないと言われる始末。
で、このシークだけど、髪色は金のままではある。だケド、肉体的には魔法で男性にしてるんだ。……単なる男装じゃァないのサ。……すごいネ。かなり古いTSものなンじゃないノ?
とまぁ、ジョーダンはここまでにしてだ。今リンクの目の前にいるシークは単なる男装……になってるかも怪しい変装だヨ。シーカー族の民族衣装を身に付けてるだけだもン。髪色目の色はそのまま。シーカー族は基本白髪だからマァ怪しいっちゃ怪しいか。
じゃァナンデ彼がびっくりしてるのか。それには深い理由があるのサ。
……ゼルちゃんはイーガ団の排除対象優先度第二位だ。停戦してるとは言え、それは今でも変わらない。だから変装でもなんでも護身の手段が多いに越したことはないのサ。
ボクがイーガ団を看破できるのは、イーガ団アジトに忍び込んで、構成員ほぼ全てのフォース波長を覚えてしまったから。だからそれと一致するフォースの持ち主はイーガ団ってわけだヨ。指紋認証、声紋認証といった生体認証とやってることは同じだネ。
でもそれだけじゃァ個人の特定はできても、それが変装かどうかはわからないんじゃないの、ってゼルちゃんに訊かれたヨ。その通りサ。だから変装しているかどうかは経験と勘に頼るしかないジャラ。……別人になり変わるタイプでもなければ変装してようがいまいが関係はないケド。
そしてまたフォースはこの世のあらゆる存在が持っていル。だから存在している以上は消すことはできないのサ。なンで、隠れ潜む敵もすぐに分かる。そして生物と無機物では大きさが全然違うから、擬態したイワロックと本物の岩の見分けもつくンだ。
さて、ここまで聞けば、リンクがびっくりした理由もおのずと見えてくると思うなァ。
つまりは、ゼルちゃんから感じるフォースとシークから感じるフォースが別人のものだと認識してたンだヨ。
「どういうこと?」
「いやー。いい教訓になったでしョ。」
フォースとは存在のエネルギー。それを偽ることができれば、おのずと気配も偽れる。イーガ団であっても素顔を見なければゼルちゃんと確信は持てないだろーサ。いや、見てもなお、だ。だって持つ気配がシーカー族の少年のそれなんだから。むしろゼルちゃんの影武者と判断されるかもネ。
まァ、できるかどうかは半信半疑だったけども、片手間に作ったアイテムで大きな成果を上げられたんだから、通用期間に制限があろうともいい結果と言えるネ。
しっかしアレだネ。普通こー言う時は、「見えるものばかり信じるな」って教訓になるもンなのに、「フォース感知だけに頼るな」って言う羽目になろうとは……
「どうですティリア!」
どやや、と胸を張るゼルちゃんカワイイカワイイネ……あら、リンクもお目々キラキラさせてる。新しい技術とかそーいうのに興味津々だもんネ。男の子は。
ただ、さっきも言った通りこの変装術が通用するのはゼルちゃんが大人になるまで、かなァ? ってくらいダ。
変装において一番有効的なのは性別を変えること。あとは人種とか年齢だ。でも未来のゼルちゃんは胸とお尻の大きい、かなり女性的な体型だ。男装だけで性別を偽るにはムリがありすぎるのサ。サラシは万能じゃァないノ。
流石にボクも性別を変える魔法は持ってないヨ。……持ってたらもっと小さいうちに自分を……いや、しないかな。ボクってば親にもらった肉体をいじるのに抵抗があるタイプなんだよネェ……一時的ならともかく、永続的にはやンないかな。ピアスの穴すら開けてないくらいだし。耳飾りは全部イヤーカフ方式だヨ。おっことさないようにキツく挟んでるノ。
つまりは、これはゼルちゃんが光と時の力を覚醒させていないからこそ通用してるのサ。ゼルちゃんのフォースの波長がまだまだ小さくて弱いからこそ、その形を歪曲させられるんだヨ。けっこーな力技だネ。
だからゼルちゃんが覚醒して圧倒的な光が噴き出せば、偽りの波長はもろとも吹き飛ばしちゃう。他にも、既に特殊な能力なんかを覚醒させてるヒトは、この方式が難しいジャラ。ウルボザやダルケルとかだネ。
*
リンクは驚愕を隠せないまま、シークをしげしげと見つめる。
口元は白い布で、忍者の覆面のようにして隠しているが、確かに目元や髪色はゼルダと変わらないのだ。
しかし、やはり感じる気配は全く異なる。同年代の少年の気配としか感じない。
「本当にゼルダ様なのですか?」
「いやです。」
「?」
「様はいやです! 同い年なのですからシークと呼び捨てで呼んでくださいっ。」
「い、いやそれは……おれは騎士として……」
「貴方はまだ騎士ではないでしょう? どうか正式な騎士になるまでは、ただの友人として接して頂けませんか? それとも弟弟子として接するべきでしょうか……」
ぐい、と顔を近づけてくるシークにリンクはたじたじであり、ティリアと言えばその様子をそれはもう微笑ましそうに見つめるのみだった。助け舟を求めるように目線を送れば、ようやく彼女は口を開いた。
「にゃはは。実はネ、コレはボクから提案したのサ。」
「ティリアから?」
「姫様にもトモダチは必要サ。」
王家の力、その覚醒はどれだけこの国を愛していて、護りたいと思えるかが鍵であると考えられている。その第一歩として隣人を愛せよ。すなわち友との間の友愛や親愛を育もうとティリアは王に提案していた。
勿論のことそれ自体も大きな理由ではあるが、それとは別に彼女の思惑、私欲もあった。リンクとゼルダを幼馴染みにしてしまおうというわけだ。濃厚なリンゼルを摂取するという趣味と実益を兼ねている。やっぱりティリアはヒロインレースをややこしくする悪い奴なのだった。
*
リンクがシークと出会ったのはほんの数日前。ティリアがイーガ団との停戦協定を結んだ翌日だった。
場所は今日と同じ訓練場だが、ティリアとともに訪れた時、そこには先客がいた。シーカー族の少年少女、見習い忍者たちだ。シークはその中の1人として、同年代の『インパ』と共にシーカー忍びの体術訓練を受けていたのである。なお教官役の忍びと、ティリアのみがシークの正体を知っていた。
リンクやティリアの体術とはまた違った体系だが、何か糧になることもあろう、と折角の機会にリンクは彼らと組み手を行ったのである。もちろん素手であり、柔道のそれに近いものだった。
当然リンクの相手になるものは殆どおらず、唯一いいところまで行ったのはインパとシークの2人だけ。その2人でさえ、結局はこてんとマットに転がされたのだった。
無論リンクも手加減はしていた。圧倒的な実力差があるのだから、加減なしではお互いに経験値を得られない。
そう言う意味では加減の具合は花丸であるとティリアは笑う。
その上で彼に食らいついてきたからこそ、リンクはインパとシークの名前を覚えたのだ。たった一度会っただけでも。インパについてはティリアが留守の間に研究所で出会った『プルア』という少女の妹であると言うのも大きかった。
*
しかし姉妹なのに全然似てなかったな、とリンクは思い返す。
思い返しついでに、シークを投げた際に香った『姫しずか』の花の香りが混じった匂いも想起し、なぜだかドギマギした。
「どしたン? 顔赤いヨ。」
「具合でも悪いのでしょうか?」
2人の少女が同時に顔を覗き込んでくる。と、同時にふんわりとした甘い香りが微かに匂う。
「あ、えと……どうしてゼルダさ……シークはシーカー族の訓練を?」
リンクは慌てて話を逸らし、誤魔化しに走った。
「それは、護身術を身につけるためですっ。それに、気配だけ作り替えてもシーカー族らしい動きを習得していなければ、その矛盾をつかれてバレないとも限りません。」
「なるほど。わかりました。」
「敬語もいらないです!」
「それは……うん……わかり、分かったよ、シーク。」
確かに言われてみれば当然でもあった。
しかしこの姫君はなんでまた自分にこうも好意的でぐいぐいと来るのだろうか、とリンクは心の中で首を傾げる。
実際のところは全てティリアのせいであるのだが。
なんせこの数年、ティリアは王家と会う機会があると、その度に教え子リンクを自慢してきたのだから。これは彼女の趣味と実益の他、ただ純粋に教え子が可愛くてしょうがないと言う、ある種の親莫迦、師匠莫迦じみたそれでもあったが。
「あ!」
突如として、シークが大きな声をあげる。
「御母様からの伝言を忘れていました!」
「伝言?」
「はいっ。御母様、御父様両方からティリアに大事なお話があるそうです。」
「ほーほー。それじゃァ急いだ方がいいかな。リンクも来る?」
「それが、御母様はティリアだけで来て欲しいそうです。」
それを聞いてリンクはホッと息をついた。
流石のリンクも、いきなり国で一番偉い人と顔を合わせるには心の準備の時間が足りないのである。
「んじゃ、ボクは行くヨ。あとはお若い2人でねェ〜……」
「うん。えっ?」
いきなり王女様と2人きり、正確には訓練場を利用する他の兵士たちもやってくるだろうが、今はいない。そうでなければシーク関連の機密情報を彼女が口にすることはなかっただろう。
「リンクはティリアの奥義が使えるんですよねっ。ぜひ見たいです!」
「わ、分かった!」
リンクはシークに促されるまま、訓練場の人形を設置しに行くのだった。
・リンクくん
ティリアのせいで匂いフェチになってるんじゃなかろうか。な未来の勇者くん。相変わらず『大回転斬り』は使えない。
・ゼルちゃん
御母様存命なのでイメージとしてはテラコを組み立てた時のテンション。ティリアのこともかなり慕っているので、好きな人が好きな人も好き(NOT LOVE)な感じ。
・テラコ
煙玉のタイミングでどっかに行った。シークとゼルダが同一人物と悟られないよう、シークの時は距離を置かなければならない。多分今頃めっちゃ拗ねてる。
・陛下夫妻
大事な相談がある。
次回はまた結構期間空くかと。ポケモンのネタバレが目に入る前に遊んでおきたいのと、声の記憶集めをしておこうかな、と。
この辺り活動報告であげるべきだったのかもしれませんが、まだその辺りの機能うまく使えないのと、前書き後書きの方が見てもらえるかなァと思いまして。
できれば〈封印戦記〉の発売までにもう1話か2話更新したいなァ、と思ってます。
モチベーションになるのでコメントは励みになっております。返信はできていませんが、それは私が気の利いた返しを思いつかないだけなので、全部目を通しております。また、前書きでも記したとおり、ブレワイの声の記憶は自分で集められないので、もし設定と齟齬がありましたら教えていただけると幸いです。
ある程度であればバタフライエフェクトで通せるかもですか、致命的にずれて大改稿不可避となるのがめっちゃ怖いです。
それでは次回の更新まで、季節の変わり目、体調の変化にはお気をつけください。私は崩しました。