〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC 作:ジュミ・ベラウ
sideティリア
ボクの放った『ディンの炎』はごく一瞬だけ黒い風を切り裂き、敵のその姿を晒した……ケド、魔力の結界と思わしきもので容易く弾かれちゃッタ! ウソでしョ……今のほとんどフルチャージガーディアンビームと同等の威力のハズだヨ?
しかもその後すぐに黒い風が覆ったから姿はホントの一瞬しか見えなかったケド……アストル? にしちゃあ頭身が低かったし、髪色も違っタ。似てるのは服の感じだけだネ。
にしても……恐ろしいのはあの魔剣だ……。一瞬見えたタイミングで歴戦のガーディアンがまっすぐ見据えてたもン。あれこそかつて雷獣山の主を尖兵へと変貌させた瘴気の源に違いないヨ。……デザインはどことなくマスターソードに似てた……そもそもマスターソードが細かな意匠はともかくシルエットとしてはシンプルな剣だからかもだケド……ブラッディムーンのように赫々とした刀身には、いったいどれほどの瘴気が蓄えられてるのか予想がつかんヨ。ナニアレ……知らン……怖……。いやホント。
でも、気配もフォースの波長も覚えた。ここであったが100年目、逃すものかイレギュラーめ……!
そう決めて、もう一度、今度は切り裂いた黒い風を飛び出して斬りかかる用意をしながら『ディンの炎』を構えようとした。瞬間、今度は向こう側から黒い風を切り裂いて、一本の槍が飛んできた。
「な……ァ⁉︎」
思わず吐き気を催すほど、濃密な怨念がその槍全体を覆っている……と言うより怨念と瘴気そのもので槍が形作られてルんダ。
その狙いはボクではなく……
「ガーディアンがッ!」
歴戦のガーディアンだった。
そりゃァ不眠不休で24時間戦えますってカンジの手合いの方がボクより恐ろしいってネ!
そう思い至るのにコンマ1秒掛からなかったとはいえ、身体の方が思考に追いつかなかった。ここに来てさっきまでの疲労が出たんダ。
とはいえ、ガーディアンとて優れた戦士だ。1本目の槍は脚を使って受け止めた。弾き飛ばさなかったのは、こんなヤバいブツをそこらにほっとくワケにはいかなイからだろーネ。
だけど全く安堵はできなかった。すぐさま2本目が飛ンできたから。コッチはボクが渾身の一撃で斬り捨てた。ケド、砕けた槍はすぐさま瘴気のウネウネしたのに姿を変えて、白刃剣に絡み付いた。
まさか朽ちてしまうンじゃ、って思ったケド、流石に白龍の爪を鋳込んでいるだけはあってなんとかなった。ウネウネは剣に渾身のフォースを込めた金色の輝きで退散させたジャラ。消し去るには濃度が高すぎるヨ。何万年もののビンテージ怨念ってカンジだった。
ガーディアンは掴んでいた一本目をへし折って、その残骸の上に立つと、機体下部から極太のビームを照射して溶かしてしまった。そういや、スマッシュ攻撃でそんなコトもしてましたネ……。アレ、コッチに向けられたら軽く死んでたよネェ……。
でも、やっぱり物理攻撃だから、一見消し飛ばしたように見えても、散り散りに霧散しただけで、浄化されたわけじゃない。
そんなワケで油断はできんジャラ。2度あることは3度あル。案の定もう一本の槍が飛んできて──
「なッ……⁉︎」
消えた……。跡形もなく。
なぜ? 消滅……?
「違うッ! コレは!」
相手は風使いだ。そしてボクの風魔法は瞬間移動。
敵も同じことができないとは言ってない。
「フェイントかッ……!」
間に合わなかった。3本目の槍は、ガーディアンの目に突き刺さってしまった。
ガーディアンは身動き一つしない。槍は瘴気へと解けていって、ガーディアンの目や回転関節の隙間から内側へと浸透していく。それでもなんとか半分は叩き斬って押し返したケド……ガーディアンの橙色の灯りは激しく点滅を繰り返してル。
「ダメだダメだダメだダメだ! しっかり! 気を確かに持つジャラッ!」
最悪だ……想定してなかった……歴戦のガーディアンが乗っ取られるなんテ!
*
魔剣士は瘴気がガーディアンの中枢へと絡み付いていくのを感じて、ひとまずの成功を悟った。このままその魂までもを掌握すれば、今連れ帰らずとも己の意思で本拠地へと馳せ参じる事だろう。
しかし、手応えは完全とは言えない。放った槍の内、2本が押し戻され、命中した1本もまた、ガーディアンの内部に侵入できたのは質量の半分ほどだ。
「このまま
突如として彼を襲う落雷に、反応が遅れ、もろに受ける。空中に浮いたまま、ぐらりと姿勢を崩す。
「へぇ。黒焦げにしてやるつもりだったんだけどね。もう1発いっとこうか!」
続けて放たれる『ウルボザの怒り』の雷撃を魔剣士はなんとかいなして、彼女へと向き直る。
(凄まじい魔力……それに美人だが……年増は好かんな。おや、あの子供は長じれば中々の美人に……男⁉︎)
ウルボザと、リンクの顔を見て、中々無礼たことを考える魔剣士。最初の一撃を受けて以降は涼しい顔のまま雷撃を跳ね除ける彼に、ウルボザはますますの怒りを募らせる。
「とっておき、行くよ!」
一際巨大な雷が、魔剣士に降り注ぐ。しかし彼は魔力の結界で己を包み、防御に成功する。結界に弾かれた雷は、激しい光と火花を撒きながら霧散した。
「ダルケル!」
「おう!」
しかし半ば必殺技じみた威力のその雷は、本命を確実に通すための煙幕として、防がれることをも見越して放たれたものであった。
ダルケルが己の炎を注ぎ込み、燃え盛る溶岩塊と化した地面の一部を持ち上げ、砲弾の如き勢いで投げつけていた。
その温度もさることながら、何より重さが違う。
魔剣士は元々白い顔をさらに白くして、なんとか回避した。
だが、さらなる追撃の準備をするダルケルを見遣って、これ以上この場にいるのは己でも危険だと思い直す。
「ふむ。この場は引くか。……あの2人が相手では、今のワシでは命が足りぬ。」
手元に戻ってきた槍2本と半分の瘴気をも、ガーディアンに注ぐつもりであったが、それもできまいと悟る魔剣士。
黒い風に溶けるようにして青年の姿が掻き消える。すると次第に、周囲に吹き荒れていた旋風も消えたのだった。
*
「ティリア!」
「大丈夫なのかい?」
黒い風に阻まれてよく見えなかった彼女に、一目散に駆け寄る3人。当のティリアは愕然とした表情でガーディアンを見つめていたが、ダルケルに肩をゆすられてハッとする。
「リンク! すぐゼルちゃんを迎えに行って、そのままお城に戻っテ。さっきのアイツがもしゼルちゃんを狙ったら!」
そう言って投げ渡した緑色の真珠には『フロルの風』が込められている。
リンクはそれを握り、ゼルダのいる発掘拠点を強く念じた。
彼が緑色の旋風に包まれて消えると同時に、ガーディアンがティリア達の方を向いた。
「不味いネ……」
ティリアは両手を地面につけると、そこから魔力を流し込んだ。戦いの中で撒き散らしておいた種や豆が活性化して、勢いよく発芽する。『ティリアの戯れ』により、めがね岩の片方が小さな森へと変貌する。
一際太い幹の樹は、よく見るとその内側にガーディアンを巻き込み、拘束している。
「何がどうなってるんだい?」
「今調べるトコ。ダルケル、防御をお願イ。」
「任されたぜ。」
ポーチから紫色のルーペのようなものを取り出し、それ越しにガーディアンを見つめるティリア。自作のまことのメガネを通し、ガーディアンに取り憑いた瘴気の流れを確認する。
「……大モンダイだヨ。辛うじて、サイアクじゃないケド。」
少なくとも、乗っ取られてはいない。その証拠にガーディアンの体の光はガノンの赤紫でなく、正常な橙色のままだ。
しかし絡みついた瘴気は、ガーディアンの機械頭脳の一部をダウンさせていた。人間でいうところの理性に近い部分である。
「シンプルに……暴走ってヤツだネ。」
「そりゃあ、また……。」
「直せるのかい?」
「……ココまで浸透されてると、『いやしの歌』も『太陽の歌』も届かないヨ。王妃サマに頼るしかないケド、そのためには一回機能停止まで追い込まなきゃァ……。手伝ってくれる?」
「俺様の信条は、ダチの頼みは断らねぇ、だ。」
「私も、あんたの頼みなら断らないよ。」
「ありがとジャラ。」
ティリアは嬉しそうに頭を掻いた。
ガーディアンの目線は、ダルケルにしっかりと向けられているが、一向にビームが放たれる気配はない。
『ダルケルの護り』には飛び道具を反射する性質もある。それは、ガーディアンのビームも例外ではない。歴戦のガーディアンはそれを直接は知らないが、しかし歴戦の経験値からくる予測によって正解を引き当てていた。
無論ガーディアンにも反射をさらに反射する術はあるが、あれは機体を回転させられなければ使えない。拘束されたままでは跳ね返されたビームによって大打撃を受けるは必至であった。
今の歴戦のガーディアンは生きとし生けるもの全てを敵とみなし、ウサギを狩るのにも全力を出す獅子の如く、全身全霊を持って殺しにくる状態にある。そしてそれは歴戦で磨き上げた技を発揮できないことを意味しないのだ。
ガーディアンは身を捩って、樹木やツタによる高速から逃れんと試みるが、慣性の法則により、拘束を引き千切るのに十分な勢いを出すことができないでいる。
しかして、単に身じろぎするだけでは逃れられないと理解した時点で、すぐさま次の手に移るのだった。
ティリアも、もとより己の大魔法が、僅かの時間稼ぎにしかならないことなど理解している。
この稼いだ時間でティリアとウルボザは消耗した魔力をアイテムで回復することを選んだ。特にティリアは溜まっていた疲労を取り去るという点でも、森の環境は効果覿面であった。それでも、全快とは言い難いが。
ガーディアンはモノアイからエネルギーバリアを射出し、それを粉々に砕いて自分の周りに漂わせた。
全身の砲口から無数の熱線を照射し、己を包む木々やツタを焼き切り、引き裂いた。そうして飛び出したビームは周囲を漂う破片に反射し、軌道を変え、一本の閃光へと収束してダルケルへと迫った。
「うおりゃぁ!」
『ダルケルの護り』に弾かれたビームを、ガーディアンは身体を回転させて受け止めつつ、再加速して射出。
しかし狙う先はダルケルではなく、その陰から飛び出してガーディアンの背後へ回ろうとしていたティリアだった。
「にぇっ……⁉︎」
慌てて盾で弾き返すが、この際、ガーディアンが弾き返してこないようにかなり逸れた方角へ飛ばさねばならなかった。
「そうだよネェ……飛んできた方向にしか返せないなんて言ってないもンねェ……。」
姿勢を立て直しつつ、独り言つ。
ガーディアンによっていくらか引き裂かれていても、未だ此処は森である。それゆえ彼女の動きは速い。森の木々に足を取られぬ歩法と、予備のブーツを履き直したことで復活した衣服のセット効果によるものだが、ガーディアンはその状態の彼女の動きをも見切ったのである。
「強いネ……まったく。」
ガーディアンの目線がティリアを向いている間に、打ち掛かっていくダルケルとウルボザ。しかしその2人の方を見ないままに、フレキシブルに動く脚で文字通り一蹴するガーディアン。
『ディンの巌』によって地面が爆ぜれば、その礫を空中に浮遊して回避される。
「飛べるのかい⁉︎」
「あれより高度は上がらンと思いたいネ……。」
機体下部の穴。通常個体であれば急所であり、飛行型であれば蓋がされており、そしてこの歴戦個体であれば極大の砲口であるそこは、同時に短時間の浮遊、滑空を可能とするスラスターでもあった。飛行型ほども自在な飛行はできないが、最初にその脚力で飛び上がってからはしばらくの間、さながら円盤型未確認飛行物体の如く浮いていられる。
「とはいえスラスターは1つだけジャラ!」
『ディンの炎』と『ウルボザの怒り』がガーディアンの目元で交差するように放たれる。炎はプラズマの一種であり、高電圧がかかると一気に勢いが増すのだ。それを経験則から知っていたウルボザは、ティリアの魔法に合わせる形で雷を放ったのだった。
強い閃光を伴った爆発の衝撃を受け、ガーディアンは空中で姿勢を崩す。
後方に倒れるように落ちゆくガーディアン。その下には、かつてメガマグロックと戦った際よりさらに重量を増した巨岩砕きを軽々振り上げたダルケルが待ち構えていた。
だが、ガーディアンは頭部をぐるりと180度回転させ、目線をダルケルに向けてビームを放った。
咄嗟に『ダルケルの護り』で弾き返すが、そのビームは目を守るため再び頭部を反転させたガーディアンの後頭部にぶつかる。その反動を利用してガーディアンは落下の軌道を変更。身を起こし、反対側に頭が倒れて行くような姿勢となる。つまりは、機体下部の砲口がダルケルへと向けられる形となるのだ。
飛行形態を取るため、体内へ縮められていた脚が伸び、ダルケルの赤い結界へと爪を立てた。
脚を縮めて機体を『ダルケルの護り』へと密着させる。
「ダルケルゥーッ!」
ティリアが叫ぶが、もう避けられない。
青白い閃光が、ダルケルを飲み込んだ。
・ティリア
敵の姿をしかと見た。誰だオマエ?
・謎の魔剣士
自称魔族。当然の権利の如く空中に立っていた。風属性。