〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC   作:ジュミ・ベラウ

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 歴戦のガーディアン編は①から④まで3時間おきに連続投稿しております。話を飛ばしていないかご注意ください。



〈絡繰古強者〉歴戦のガーディアン④

 

 光の奥で、赤い障壁が砕け散る。

 

「ソコを退けェッ!」

 

 盾を構えたまま『フロルの風』で加速して体当たりを試みるが、小兵であるティリアの重量ではガーディアンを退けるどころかよろけさせることもできない。

 

「退きな!」

 

 ウルボザの声を聞き、ティリアが飛び退るや否や、今日一番の威力を持った雷がガーディアンへと突き刺さる。

 いかに装甲が電気を通さずとも、これほどの大電圧となればその衝撃はかなりのもの。ガーディアンはダルケルに被さった状態から離れんとした瞬間、

 

「でいやぁっ!」

 

 巨岩砕きの一撃により数m吹っ飛ばされた。

 

「ダルケル!」

 

 ティリアはダルケルへと駆け寄るが、彼は酷い傷を負っていた。『ダルケルの護り』でいくらか軽減されていて尚、彼のゴロン族の高みに位置するほどに練り上げられた鋼の肉体はズタズタにされていたのである。

 

「このダルケル様が油断しちまったぜ。あとちょっとで叩き返してやるところだったんだが……。」

 

 ティリアから受け取ったマックス薬を飲み干すダルケル。だが、傷は治っても失った気力やら蓄積した疲労やらまでは取り去れない。その上、砕けた護りの結界が再発動できるまでは時間がかかる。

 

「ダルケルがムリなら『ネールの愛』じゃ防げんネ……あの攻撃……。」

 

 ダルケル渾身の一撃によって転がされたガーディアンは、さながら目を白黒させているかのように隙を晒しているが、だからと言って考え無しに打ち掛かっていってどうにかなる手合いではない。

 その時間を各自の回復と、作戦立案に当てることとした。

 

「炎と雷の合わせ技は相性がいいみてえだが。」

「ウーン。火属性ならボクよりダルケルのが強いケド、ダルケルの炎は自分の身に纏う形だから、自爆技になっちゃウ。」

 

 正確には自爆というより、ウルボザの雷に焼かれてしまうのだが、言わんとすることが伝わったのかダルケルは、飛び道具ではと訊く。

 ダルケルは炎そのままというより、その熱で地面の土や岩を溶岩化させて投げつける技を使う。その方が強いからだが、そうなると今度は土の性質が雷の属性を打ち消してしまうとウルボザは言った。

 

 そうこうしている内に、ガーディアンが身を起こす。

 輝くモノアイから、赤いレーザーサイトが照射される。その先端はウルボザの心臓の真上に固定されていた。

 

「私が狙いかい。」

 

 ならば、と撹乱のために駆け出すウルボザ。七宝の盾に雷を纏わせて磁気を発生させると、ブーメランのように投げては手元に戻し、木々の間を縫うように進んで射線を確保しきれないようにする。

 一方のティリアも己のブーメランを投げては、念による軌道変更を生かしてガーディアンの脚を狙う。一歩進もうと持ち上げようとするその起点を潰すようにぶつけるのだ。

 

 しかしガーディアンもそれしきでは隙を見せない。下半身を回転させながらの突進で、丸鋸のように脚を振り回して邪魔な木々を薙ぎ倒して行く。

 ならば、とティリアとダルケルはそれぞれの技で地面を隆起させて障害物を生成する。ガーディアンの薙ぎ払いで容易く粉砕される程度のものだが、射線を切れさえすれば問題はない。

 

 問題があるとするならば、ティリア達に有効打を打つ機会が巡ってこないことにあった。

 あまりにも隙が無さすぎるのだ。攻撃行動と攻撃行動との間、コンボの繋ぎとでも言う部分があまりにも澱みがない。こうなってくるとノーガードでの殴り合いをしなくては攻撃チャンスが巡ってこないが、それができるのはダルケルだけ。そのダルケルも万全の状態ではない。

 その上、甘い攻撃は普通に回避してくるのだ、ガーディアンの巨体で。並みの衝撃を通さぬ装甲に慢心せず、下手すれば『回避ジャスト』からのラッシュに持ち込んできかねない。

 

 ティリアも暴走前のガーディアンとの戦闘で蓄積した疲労がぶり返しつつあった。生成した森が今や林と言えるかどうかというレベルに禿げ上がってきていたため、森の妖精の種族特性効果が弱まってきたのである。

 一番ダメージの少ないウルボザもであってもこれまでにないほどの頻度で雷を使ってきたために、呼吸が乱れつつあった。

 

「しまっ──」

 

 最初に崩れたのはティリアであった。

 根が張り巡った上、ダルケルの溶岩や『ディンの巌』でグズグズに痛めつけられていた地面がとうとう耐え切れず、ティリアの踏み込みで陥没してしまったのだ。

 そうして僅かにバランスを崩したところ、ムチのようにしなるガーディアンの脚を、腹部に叩き込まれ、めがね岩の外まで吹っ飛ばされた。

 すぐさまポーチから妖精が飛び出し、その魔力で破裂しかかった内臓を癒すが、刈り取られた意識は戻らない。このままでは遙か下の地面に叩きつけられてしまう。

 

 その状態のティリアに、無情にも青白の閃熱が放たれた。

 

 *

 

 しかしそのビームが、ティリアの胸を貫くことは無かった。

 彼女の白刃剣、その柄に埋め込まれた赤いコハクが輝くと、宙を舞っていたブーメランが踵を返して主の元へと帰還する。彼女の左手へと。

 ブーメランが左手に収まる勢いで、彼女の左腕全体が上へと持ち上がった。装着されたミラーシールドと一緒に。

 

 閃光はその盾へと命中し、消えた。

 

 とはいえ、その衝撃までもを受け流すことはできず、ティリアの身体は盾を持つ腕に引っ張られるようにして空中で半回転していた。

 その衝撃のおかげで彼女の意識は覚醒を遂げる。

 

 すぐさま『フロルの風』でめがね岩の上へと戻ってくるティリア。

 

 しかしガーディアンはそれを見逃さず、またもやモノアイから閃光を放つ。

 ティリアはそれを『ガードジャスト』で正確に叩き返した。

 その弾かれたビームをガーディアンも跳ね返し、それをまたティリアが跳ね返すというラリーの様相を呈する。

 

(ウルボザ……!)

(分かったよ……!)

 

 ダルケル達2人の間で交わされる無言のアイサイン。

 

 危険なビームラリーは10往復を超えてなお決着が付かない。

 だが11往復めのビームが向かってきたとき、ティリアは『ガードジャスト』のための『盾アタック』を繰り出さなかった。

 そのためビームは跳ね返ることなく、盾にあたって消えた。

 

 しかしガーディアンは次も跳ね返ってくる想定で動いていた。力場を纏ってその場で1回転していた。

 

 その回転を終えた後隙こそ、ティリアの狙いだ。

 構えた盾の鏡面から青白い線熱が放たれた。これが新たな鏡盾の特殊性能だったのだ。

 言うなれば〈時オカ〉における『双生魔導士ツインローバ』戦におけるミラーシールドの挙動を、『ネールの愛』を応用して再現したのだ。

 彼女の盾には歴戦のガーディアンのビーム2発分が吸収されていた。それを1つに束ね、一気に放出したのだから、流石のガーディアンもたまらない。

 

 僅かな隙を差し穿つが如く閃光は、ガーディアンを大きくよろけさせることに成功した。

 しかし、ティリアにはもう追撃する体力が残されていなかった。

 

 だからこそ、彼らは備えていたのだ。

 

「よっしゃあ!」

「しくじるんじゃないよ!」

 

 炎を纏い、そのまま縦回転するダルケルに、『ウルボザの怒り』が落とされる。

 ダルケルの纏う炎は高電圧を受けて、真っ白に発光するプラズマと化す。ともすれば、彼自身をも焼き付くさんとするほどに。

 そうならないのは、2人が極限の集中状態でそれぞれの炎と雷を制御していたからだ。

 元々、ダルケルは自身の炎で火傷することはない。ウルボザもまた、自身が放った雷撃で痺れてしまうことはない。しかし彼らはそれらの属性を無効化できるほどの完全耐性は持っていない。精々が他の同胞より少し強いという程度だ。そして自分自身の放った技であろうと、『ガードジャスト』で跳ね返されたりすれば、当たるとダメージを受ける。

 

 彼らは自分自身の呼吸や脈拍といったリズムや、エネルギーの波長を感じ取り、それらに沿わせる形で属性を纏うのだ。そしてそれは常に変動する。だが自分の身体だからこそその変動をも見越して対応ができ、反射されて制御から離れれば触れるとダメージを受けるのだった。

 

 2人は今、自分だけでなく、お互いの波長をも感じ取って力を合わせていた。お互いのフォースをシンクロさせていたのだ。

 

 2人は知る由もないが、それは遙か神代の時代において『シンクストライク』と呼ばれる技術であった。

 

 プラズマのエネルギーフィールドを纏ったダルケルの突撃は、歴戦のガーディアンを完全にノックアウトすることに成功したのだった。

 

 ティリアはそれを見届けると、安堵の息をついて気を失った。

 

 *

 sideティリア

 

 ボクが目を覚ましたのは戦いから3日後だった。城下町の王室御用達の大病院の一室で、点滴までされてたヨ。

 リンクにゼルちゃん、ウルボザと王妃サマが目を覚ましたボクにわっと寄ってきた。

 

 ダルケルは部屋に入れなかったみたいだケド、城下町にはいるみたい。と、いうより彼の方が重症じゃなかっタ?

 

「何言ってるんだい。あんたは腹をやられたんだよ。子供を産めなくなったらことじゃないか。」

 

 あー、確かにあの一撃は痛かった。内臓グジュって言ってた気がする。

 でも妖精サンが治してくれたし……。

 それにしても、子供かぁ……。王妃サマとか見てると個人的には欲しい気もするケド、男のヒトとそういうことができるかネ……。既にオンナノコとして生きた時間の方が長いけどサ。……そもそもコキリ族って子供産めるの?

 

「まぁ子供云々はともかくさ。それ以外の内臓だってどうにかなっちまってたら大事じゃないか。精密検査もするべきだし、1ヶ月は絶対安静だよ。」

「そんなァ。」

「ティリアは働き過ぎです。そのくらいゆっくり休んでも問題はないと思いますっ。」

 

 ゼルちゃんの言葉に王妃サマもうんうん頷く。

 

 ハァ……困ったなァ……。そんな長時間も休まなきゃなんてェ……。厄災対策もまだまだ途上だから、急いで進めたいけど……

 

「 絶 対 安 静 だ よ ? 」

 

 ウルボザが怖くて、全然動けなくてェ……。

 

 ハイ、ティリア、1ヶ月休みます。

 でも、せめて、あの魔剣士についての注意喚起くらいは……。

 

「 休 ん で く だ さ い ・ ・ ・ ! ! 」

 

 ひぃん……! ゼルちゃんまでウルボザみたいにならなくても……あっあっ、王妃サマまで……親友同士仲の良いことで……アッハイ、ちゃんと休みます。エ? 一月半? あの、増えて……イエ、滅相もございません。

 

 美人さんが詰め寄ってくると怖いよォ……助けてリンク……アッ……ひと足さきに退避してる! ダルケルにボクが起きたって伝えて来るって? まって、置いてかないで。ハクジョーものぉ……。ひぃん。

 

 そんな一幕がありつつも、ひとまずはその後のあれこれを聞かせてもらえた。ウルボザとダルケルの合体技で倒すことができたガーディアンは、ウルボザが奏でた『大翼の歌』でお城まで運んだらしい。

 危惧していたゼルちゃんへの襲撃もなかったみたいだ。

 

 それで、歴戦のガーディアンは今、古代研究所の近くに王妃サマが光の結界を張って安置されてるらしい。

 

「機能停止した後だけど、あの赤黒いモヤはさっさと抜け去ってどっかにいっちまったのさ。」

 

 だから光による浄化は念の為、残留した瘴気がないかのチェックも兼ねてるみたいだ。

 

「逃げられたかァ。……今思えばもう少し回路の奥深くに根を張られてたらその時に自爆プロトコルを作動させられてたかもだネ。」

「そうならなくてよかったです。実は、あの後歴戦のガーディアンは目を覚まして、これを差し出してきたそうです。」

 

 ソレを見てボクはぶったまげたネ。だってそこにあったのはシーカーストーンだったんだから。

 

「シーカーストーン! 彼が持ってたのかァ。どおりでドコ掘っても見つかンないワケだヨ。」

 

 僥倖ではあるか。とは言え、現状シーカーストーンは起動できないみたいだ。壊れてはないらしくて一安心一安心。歴戦のガーディアンの体内に格納されてたンなら、あの戦いの余波で壊れてたかもしれないってゾッとするヨ。あるいはもし自爆されてたら、一緒にこの世から消えてた……。うへェ……アブないが過ぎるヨ。

 

 しかしなーんで彼が? それもそのうち分かると思うケド。シーカーストーンは映像を流せるから、解析が進めば歴戦のガーディアンのメモリーを解析できるはずだ。

 あの戦いで機械頭脳が損傷してなければ、だケド。

 

「ン? てことは彼はボクらを認めて、手を貸してくれるってことでいいのかな?」

「そう思うよ。研究員たちの指示にも、素直に従ってるみたいだって、あんたの補佐官が言ってた。」

「ふんふん。スータさんがそう言うなら問題はなしだヨ。」

 

 対厄災コーティングも早々に済ますつもりらしい。

 

「ただ、装甲がひしゃげて上手く外れない部分もあるみたいでね。かと言って壊して外したとしても新造することができないから難航してるみたいだよ。」

「あらまァ。」

 

 かと言って、たとえば全面をハイリアの盾の合金で作ると、ガーディアンの機動力を担保する軽さがなくなっちゃうし……難しいネ。

 

「それで、あの魔剣士の方は?」

「そっちもなんとか人相絵を仕上げて、各地に注意喚起するよう手配済みさ。生死を問わずの指名手配にね。」

「キビシくない?」

「あんたの命を狙ったって判断さ。つまり当然の処置だね。」

 

 殺人未遂でデッドオアアライブ……ボク別に王族じゃないんだケド?

 

 しっかし……おやすみかァ……何しよ? ……カラダ動かすのはダメだろうし……研究所にも行かせてもらえんだろうし……魔法音楽隊に顔出しするのも……ダメ? アッハイ。

 

 ……アレ? ひょっとしてボク、無趣味のつまらんヤツなの?

 いやでも、ボク料理できるし。実益も兼ねてるケド……。

 

 なにもしないは落ちつかないヨ。

 





○シンクストライク
 拙作においてはお互いの呼吸どころかフォースまでもをシンクロさせた連携技という扱い。その性質上、強い信頼が必要となる。

○巨岩砕き
 ダルケルのものは特注であり、通常のものよりはるかに重い。ダルケルは鍛錬を経てどんどんと重量を上げていったという。声の記憶より。

○龍鱗のミラーシールド・改
 地の文の通りの性能。実は吸収した攻撃の閉じ込め解放は任意ではできない。一定以上のエネルギー量になると『ネールの哀』を突き破って出てくる。その性質上一度しか吸収した攻撃を放つ事はできない。通常ガーディアンのビームでは5発くらい溜め込める想定だったが、歴戦のガーディアンのビームは2発で限界だった。

○ティリア
 ワーカーホリック疑い。本人は好きでやっているが、それはそれとして疲労がたまらないわけではないのでドクターストップが掛かった。年齢的にはともかく、肉体的には成熟していない違法ロリである。

○ダルケル
 病室が狭くて入れなかった。そそくさと出てきたリンクと病院の庭で軽く手合わせを行い、彼の強さに一目置いた。

○謎の魔剣士
 時系列的にはイーガ団アジトを襲った帰り。使用した瘴気は9割型戻ってきたので、そこまで損は出していない。それはそれとして歴戦のガーディアンを手に入れる事はできなかったが、ガーディアンも少なくないダメージを負ったのでしばらく実戦には出られないと把握した。今頃ティリアの調査資料を読み漁っている。

○スータさん
 襲撃を受けたという連絡はあったが、ティリアの休息のためにあえて伝えないようにした。


 これにて今年の投稿は終わりです。また少し時間が空くかも知れませんが、来年も、TS転生コキリ族のティリアをよろしくお願い申し上げます。
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