〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC   作:ジュミ・ベラウ

27 / 28

 大変お待たせいたしました。1ヶ月ぶりの更新でございます。
 体調を激烈に悪くしていまして……全体の原型はできていたのですが、投稿できる完成度に仕上げられる精神状態ではありませんでした。

 これからは流石に遅くても月に一回は更新したいと思っています。ただ体調やらの兼ね合いもありますので、その辺ご容赦いただけると幸いです。




邪の未知はHeavy

 

 剣を振り、盾を構え、弓を射る。

 頭を空っぽにして。一つ一つの動作だけを、身体に染み付いたそれらを確かめる。

 だがしかし雑念が混じったせいで、魔宝弓から放たれた矢は、的の中心から3cmほど左に逸れてしまった。

 

 ハテノ村の近くの森。弓矢の的や訓練用の人形が置かれたリンクの訓練場に、彼女はいた。日が昇るか昇らないかの時分である。

 

「いっかんネ、コレじゃ……。」

 

 眉間に皺がよっている自覚がある。声も不機嫌さが滲み出る程度には低い。いくら仮面で隠れているとはいえ、もう数年にもなる付き合いともなれば仮面越しでも感情は伝わってしまう。

 

「ティリア?」

「あーあ……オハヨ。随分早起きだネ。」

「なんだか目が冴えて。」

 

 彼の起きてくる前に心を鎮めてしまいたかったが、その努力は無駄に終わってしまった。

 

「コワイ顔になってる?」

「……かもネ。あ〜ホントはリンクが起きてくる前に考えを整理したかったンだケドなァ。教育によろしかないカラ。」

「そう?」

「そだヨ。」

 

 イーガ団に痛ましい傷跡を残した襲撃。それは、彼女が歴戦のガーディアンと戦ったその日の朝の出来事だった。

 死者はゼロだが、しかし良かったなんて口が裂けても言えぬほどの悪意。被害者はいずれも死んではないが、死んでいないだけとも言えよう。そのくらいには『壊され』ていた。あまりにも悪辣に。

 

 それから既に1年が経っていた。その1年で大きく変わったことがある故に、彼女は思い詰めていた。 

 

 早い話がスランプである。ここに来て、彼女の成長がまた頭打ちになりつつあった。肉体的には言わずもがな、魔力や技術においてもどうにも行き詰まっている。

 だが、だからと言ってティリアという存在が完成したというわけではないことは、他ならぬ彼女自身が強く感じているところだった。

 

「ウーン……」

 

 とりあえず未だ己より小さいリンクを膝に乗せ、ふわふわの髪を撫でて癒されるなどした。リンクはされるがままになりつつ、彼もまた思索の海に精神を沈ませる。そうしなければティリアの胸の膨らみが、自分の背中に押し付けられていることに気がついてしまいそうだったからである。

 

 ティリアの悩みというのは結局のところ、厄災までに己を完成させることが不可能であるというところであった。

 

 火の属性であればダルケルには及ばず、『ネールの愛』の強度も『ダルケルの護り』には劣る。『フロルの雷』であっても『嵐の歌』を併用できなくてはウルボザのそれより威力は劣る。

 『フロルの風』にしても瞬間移動ができる点以外、それこそ風量や風圧は未来のリーバルの『リーバルの猛り(トルネード)』には劣るだろう。

 では剣と盾にその他アイテムの扱いはと言えば、それも近い将来必ずリンクに抜かされるであろうという確信があった。

 森の妖精としての特性を生かした『ティリアの戯れ』も、事前準備が不可欠と他の英傑たちの必殺技のような使い勝手の良さはない。

 

 それが、現在のティリアの強さの自認であった。そもそも比較対象がハイラルでも5本の指に入るような強者ばかりであるのだが、その強者たちをも一蹴したのがガノンやその眷属達である。現状に満足してしまっては救える命も指からこぼす。

 

 リンクの頭を撫でながらこの先のプランを練り直すティリアはしかし、リンクを抱きしめる力が強くなり、必然胸の小さな、しかし確かな膨らみをむぎゅっと押し付けていることには気が付かなかった。流石のリンクも恥じらいを覚え始める年頃であるのだが。

 いかんせんティリアの方には、未だ己は子供のままであるというある種の諦観があった。成長は確かに遅いが、しないわけではないのだ。もうそろそろウルボザあたりに膝詰めで説教されるべきである。

 

 *

 sideティリア

 

 いやァ〜……もう歴戦のガーディアン戦から1年も経った。たっちゃっタ。

 エート、リンクは今いくつだったっけ? 7歳……とすると原作開始まで10年を切ってるネ。

 

 この1年で進んだことと言えば神獣の発掘が始まって、ナボリスは既に全体が露出してるジャラ。制御端末系も既に白龍コーティング済みだヨ。流石に全身真っ白けはムリだったヨ……。

 シーカーストーンの起動は成功したジャラ。ただ、シーカータワーが見つかってないからまずソッチを探さないと各地の祠をクリアできないネ。……祠とタワーのワープが使えるようになったら、場所の限定される『大翼の歌』ばかりに頼る必要もなくなるジャラ。

 シーカーアイテムはインストールのために始まりの台地の祠に入んなきャだかラ、ドッチにしてもまずはどこかのタワーか、お城の地下にあるらしい中央端末だかを起動しないといけない。

 ……でもお城の地下はマジモンの厄ネタだからなァ……藪を突いて魔王が出たらトんだコトだヨ。

 

 閑話休題(それはともかく)……。

 

 最近スランプ気味でネ。こう、肉体的な成長が遅すぎてリンクに抜かされるんじゃァないかっていう焦りが……。いや、抜かされるのは既定路線だったヨ? ボクくらい超えてもらわんとガノンドロフには勝てないジャラ。

 ただなァ……ボクを慕ってくれてる子らのサ、純真な目線が眩しすぎてネ、このままでいいのかと思うワケですヨ。

 借り物の知恵と知識でサ、賢こぶって賢者なんて呼ばれて……それで、果たして今この世界は原作より良くなってるのかなァって思っちゃってネ。

 マ、物心着いた頃からこういう思いに苛まれるかもしれないとは思ってたヨ。所詮は転生者あるあるジャラ。100年もあったンだからこのくらいは想定して、どうすべきかも考えてタ。

 それでもやっぱり肉体的には幼いと言って相違なイ。精神は肉体に引っ張られちゃウ。

 でも、迷うヤツは弱いからネ。子供達の手本となるべきボクがこの始末ではいかんから、吹っ切ろうとしてたトコロを、まんまとリンクに見られたワケ。恥ずかしいなァ。

 

 ボクがこう悩んでる発端は、やっぱりイーガ団襲撃からだなァ……。

 あ、スータさんは被害に遭ってはいないヨ? 

 いないんだケド、しばらく帰ってくるなっテ、コーガ=サンからのお達しサ。つまりはコーガ=サンやスッパ=サンがいても彼女を守り切れない可能性が出てきたってコト……。

 まァ、状況証拠的にはボク以外に犯人に思いいたらンだろーサ。それでも決定的な暴走が起きてないのはコーガ=サンの人徳ゆえか……。

 

  当時、アジトのあるカルサー谷には非常に強い風が吹き荒んでテ、アジトのあちこちで隙間風が報告されてタらしい。……となればあの黒い風の魔剣士の仕業だろーとボクは思い至れる。

 だケド、その実在を知るのはボク側のヒト達ばかりで、イーガ団員の中にアレを目撃した人物はない。

 とすれば風を使う剣士で、イーガ団アジトの所在地を知っていて、と諸々条件を鑑みれば有名なのはボクしかいないワケだネ。死亡者がいないと言うのも、ボクが人殺しを忌避すると言う性質ゆえと言えなくもないカンジで。

 

 スータさんはボクを信じてくれてるケド、怒り狂った他構成員にしてみれば、彼女は裏切り者らしいし。

 コーガ=サンやスッパ=サン始めとした幹部の多くもボクが下手人とは考えてないジャラ。コッチは信用信頼と言うより損得や行動の一貫性で、ボクにメリットがないという理性的な考えサ。助かるヨ。

 

 それでも、このままヘイトが高まり続けて、コーガ=サンがソレを抑え続けた結果、イーガ団分裂とかになったら目も当てられんヨ。

 だから、停戦協定の内容を少し緩めるコトにした。ヘイトがボクに向けられてるウチはまだいい。ボクの暗殺計画は、末端が勝手にやる分にはいつでもかかってこい。その度に殺さず追い返してやる。ただし、ゼルちゃんや王妃サマ、それにボクの友人や無辜の民に刃を向けたら、全力全開のボクとマジバトルだ。

 

 やりたくないケド。はぁ……。

 

 犯人はソレも理解した上でやったンだろウ。ボクが何をされるとイヤかを理解している。……知性ある存在。単なる魔物ではないネ。

 やはり、あの魔剣士は姿形だけじゃァなく、ちゃんとニンゲンかソレ以上の頭脳も持ってる魔人の類と見るべきか。ウルボザ曰く、何かブツブツ言っていたらしいから言葉を持つヒトの可能性は非常に高いと言わざるを得ンジャラ。

 厄災か……イヤ、この場合は大魔王の手の者と考えようか。あの闇……量はともかく濃度は厄災ガノン以上かもだ。

 

 ボクは直ぐにこの情報をイーガ団上層部とハイラル王国、ゾーラの里、リトの村、ゲル殿街、ゴロンシティと共有した。人相画も配ってあるヨ。

 マァ、今の所この人物を知ってるって連絡はない。どこかに潜んで暗躍しているに違いないからネ。

 

 見かけても近づくなとも言い含めてある。

 

 犯人は訓練された忍者であるイーガ団員に姿を見られるコトなく一方的に斬り捨てる技量に加えて、金色ライネルクラスの魔物を使役する闇の力と、ボクの『フロルの風』を抑え込める程の風属性魔法を持つというコトになる。

 

 下手をすれば、ボクより強い可能性がある。そうでなくとも魔物の使役が、どの程度の規模でできるか定かじゃァなイのが懸念点。

 〈ティアキン〉のゲルド族みたいにモルドラジークの群れみたいなカンジで突っ込ませるのができないという保証はなイ。

 

 ちなみにモルドラジークを笛の音で操る古代ゲルドの呪術は、ウルボザ曰く既に失伝してるそうだヨ……。多分、雷の賢者サマが廃止して歴史の闇に葬ったンじゃァないかな? 第二の魔王を生まない為にサ。

 

 ただ、ここでネックになるのが〈厄黙〉で出てきた『アストル』だヨ。厄災を信奉する邪教密教の一族である彼らのコスチュームの背中……ゲルド族の紋章が描かれてた記憶があるンだよなァ。我ながらそんな細かいのをよくもまァ覚えてルもンだと思うヨ。ただ、アストルは男だし、ゲルド族にゃァ見えないネ。とは言え、彼らの始祖が魔王側のゲルド族じゃァないとも言い切れない。〈ティアキン〉で出てきた『コタケ』と『コウメ』と思われる2人組とか、ガノンドロフに離反するとは思えンし。

 ウーム……やっぱりアストルか、その同胞かなァ……。だとすると彼らの本拠地がわかんないのヨ。

 

 候補地としては一箇所あったンだヨ。デスマウンテンの西、『アッカレ高原』側の崖にある小さな村『シャトー集落』って場所がネ。

 厄災復活に備えて各地のハザードマップを作るという計画が数年前から立ち上がってるンだケド、その一環でボクもシャトー集落に足を運んダ。一応そこに集落があるコトはなんとか覚えてたケド……名前は知らンかったネ。存在も言われるまで忘れてタ。思い出せたのは奇跡だヨ。

 

 ンで、そのシャトー集落は街道が一切繋がってないド辺境! 細々とした畑があるみたいだケド、よく暮らしてけるネ、と思ったもんサ。狩猟と採集の対象としてはオルディンダチョウとか『ポカポカダケ』があるとは言え、ネ。

 んで、こう、この集落のヒトは「余所者は帰れ!」ってスタイルなのヨ。で、怪しいなァ、と思ってたンだケドお……杞憂だったジャラ。

 

 諦めずに足を運んで色々してたら警戒も解けたんダ。歓迎ムードとは言わずとも話を聞いてもらえるくらいには。

 極め付けには、ゴロン族の『バルク』さんが集落に自分の店を出店したんダ。『ゴロゴロ屋』ってお店。な〜ンか聞き覚えがあるナァって思ったラ、これアレだ……〈厄黙〉に出てたお店だ!

 

 ってコトはこの集落、厄災信仰ウンヌン関係なく、ただただ排他的な土地ってだけなのサ。そんな場所でお店やって、しかもけっこー繁盛させてるバルクさんの人柄の良さヨ……。

 しっかし、困ったコトにシャトー集落には女神像がないから、『大翼の歌』で飛べないンだよネ。

 

 把握してる村や集落の代表1人にはボクお手製のゴシップストーンレプリカを渡してる……でもなァ、あの風が吹けばまともに通信できない可能性は高いヨ。声を伝える通信系は『フロルの風』に頼ってるから……。

 と言うわけでそれとは別に狼煙をあげる道具も置いてあるヨ。ワンタッチで起動できるようシーカー技術者サンたちがガンバってくれましタ。スータさんも含めてネ。

 強い風が吹いてもそうそう霧散しない強くて濃い色の煙を数時間に渡って噴射し続けるのサ。

 

 これ以上打てる手段は思い浮かばないヨ。全く、悩ませてくれる……転生者は未知に弱いのダ。ここから先はチョーシに乗れんネ……。

 

 守るべき者が、また1人増えたンだかラ。……ついこの前だヨ、ハイラル王家に()()()が生まれたんダ。オトコノコだヨ。

 

 ……………ウン。

 

 ここに来てこれまで1番の原作ブレイクでしョ? いやァ……まさかこうなるとは思わんかったジャラ。

 相談されたのはリンクが『大回転斬り』を習得したあの日だヨ。……リンクの成長の瞬間を見れなかったあの日だヨ……よよよ……。

 

 あの時の呼び出しこそ、王夫妻からの相談だったンだ。「第二子は望めるか?」ってネ。

 よくよく考えてみれば、王家に1人しか子供がいないってのは中々どうしてリスキーだもンなァ。前世において、王家というものの最大の責務はその血を絶やさないことだっテ聞いたことがあるヨ。

 原作でゼルちゃんひとりっ子だったのも、王妃サマが早逝しちャッタからだし。生きてたらそりゃァこうなるよネ。それも早いうちに。じゃないとローム王の年齢問題もあるジャラ。

 ……王妃サマの体調問題は解決してるし、ネックになるイーガ団もボクが停戦をもぎ取った。丁度いいタイミングだったンだ。

 

 さてさて、ソレを相談されたボクはヒッジョーに悩んだワケでス。

 ローム王のコトを考えたら早いうちにってのはワカる。とてもワカる。じゃァ王妃サマの方はというと……原作知識も当てになンない未知数だヨ。

 妊娠出産というのは凄まじく心身を消耗する。果たして王妃サマが2度目のソレに耐えられるかどうか……。一応サ、出産に際する体力の消耗は初産が大きくて、2度目以降は少しラクだとか聞くけども、当事者でない以上はその手のアドバイスなンか何もできやしない。

 んデ、ゼルちゃんをお腹に宿す以前よりも体調はいいし、体力もついてるってコトは聞いた。

 

 じゃァ何がネックなのかと言えば、対厄災の要となる封印のチカラに他ならないジャラ。

 

 妊娠出産の負荷が想定以上で、心身に大きなダメージを残した結果、チカラを喪失してしまったとしたら?

 

 王夫妻だってソレはワカってるから、フォースという知見を持つボクに相談を持ちかけたンだヨ。

 いわば、ボクは天秤役だったのサ。王家の責務という重大使命のうち、血を残すか、厄災を封ずるか、その2つのドッチがより重要かの裁定を任されたワケで……。

 

 重くない⁉︎ ボク一介の妖精だヨ⁉︎

 

 いやマァ、単なる杞憂に終わって、王妃サマに全く問題なしって可能性もあるヨ?

 ……ハイラルの未来を考えるのなら、リスクより安全性をとって、ボクは多分第二子は諦めるべきだって言ってタ。厄災の復活はゼルちゃんが17歳になった時。その後厄災を倒しても、陛下や王妃サマは子供をつくるには高齢になり過ぎるジャラ。だから、その場合はもう諦めるしかなイ。

 

 ……でもさァ、見たかったンだよ! 妹か弟の手を引くゼルちゃんをさァ!

 ソレを見て微笑む王妃サマとローム王とをさァ!

 時々遊びに来る姉の幼馴染の天才剣士に目を奪われる弟くんとか!

 あるいは姉の想い人に自分も想いを寄せてしまう妹ちゃんとか!

 

 何よりサ、王妃サマ(トモダチ)もローム王も、ゼルちゃんがリンクと楽しそうに話してるところを見てサ、もう1人子供が欲しくなってるンだって顔に出てたンだもの!

 

 だから、ボクってばついつい大口叩いちゃッタ。

 

「例え王妃サマがチカラを失おうとも、例えゼルちゃんがチカラに覚醒(めざ)めるのが間に合わずとも、その時はボクが何としてでも厄災を抑えて封印までの時間を稼いで見せる

ヨ!」

 

 ──って。

 言ったからには後戻りなンかできやしない。

 

 でも、ソレを口にするだけの覚悟もなしに厄災と……大魔王と戦えるものか!

 

「だからサ、第二子を望むかどうかは、今この時は、ハイラル王家の責務がどうではなく、ボクの友人である王妃サマと、その夫のローム()()は、子供が欲しいか欲しくないのかで決めて欲しいナァ。」

 

 ──っテ。

 

 その結果、2人は第二子をもうけるコトになった。

 ボクを名付け親に指名して。

 

 ……ナンデ⁉︎

 重くない⁉︎ ボク一介の妖精だヨ⁉︎

 

 もう大慌てでハイラル城の書庫に行かせてもらっテ、ハイラル王家の命名則とか、過去の王族の名簿とか見してもらったジャラ。子供の性別は男の子だって分かってたカラ、何かいい名前がないかなァって。

 

 名前というのは子供にとって最初に与えられる祝福であり祈りでもある。

 あるいはおまじないなワケだヨ。そしてボクには魔力がある。だったら、ボクがつける名前にもまた魔法が宿る可能性があったンだヨ。

 

 候補として上がったのは『ゲポラ』、『ダフネス』、『グスタフ』、『グレアム』、『ダルタス』、『ラウル』……。

 

 もし光のチカラを持つのであれば、『ラウル』が1番いいのではないか、と考えたンだケド……彼は正史の通りであるのならばガノンドロフと相討ちと言える最期を遂げている。

 縁起という目線で見れば、あまりいい名前とは言えないかも知れない……。

 

 だったら運命を全く同じにしないという意味でも、彼から何文字かいただく形で名前を考えるのがいいかな。

 

 そうして決まった子供の名前は『ラウレス』……ゼルちゃんの弟ラウレス王子だヨ。

 

 命名の儀式はボクから頼んで時の神殿の女神像の前でさせて貰ったジャラ。

 

 ……大臣やら貴族やらイッパイに参列してる前で、女神像のお膝元……大仰に名前を告げるのはメッチャ緊張したジャラ……。

 でも、間違いなくハイラル王国始まりの場所であり、かつてのラウル王が暮らした土地であるあの場所でした意味はあったと思う。

 本当は空島の時の神殿が1番いいのかもしれないケド、流石に新生児を連れて行ける環境じゃァないし、そもそも結界で足を踏み入れられないしネ。それはそれとして後日、時の神殿(空)の近くまで行って、報告も兼ねて祈りを捧げてきたヨ。

 

 どうかラウレスくんの未来に光あれってネ。

 

 *

 

 ハイラル王妃懐妊の報せが民草を騒がせたのは、ティリアの1ヶ月半休みも後半に入ろうというタイミングであった。

 当時のティリアはイーガ団が襲撃に受けたことについては、スータの計らいによって報告を受けておらず、またイーガ団内部もコーガ必死の舵取りで何とか抑えられていた。

 

 状況証拠からティリアに怒りを向け、独断で暗殺計画を実行しようとした者もいたが、ティリアの休みを邪魔させまいと秘密裏に警護していたシーカー忍者によって未遂に終わる。

 

 休暇期間を読書や料理、鈍らない程度の日々の鍛錬に費やし、毛艶と肌のハリが良くなった彼女は、休み明けすぐにそれら情報の洪水を浴びる羽目となった。まさか協定を結んで1年と経たぬうちにそれを揺らがせることになろうとは。

 彼女は取り急ぎコーガと秘密裏の会談を設け、協定の縛りを緩めるなどした。イーガ団末端のヘイトが自分にだけ向くようにコーガへと頼み、王妃と、王妃のお腹の子供は何としてでも守れるように無数の策を弄した。

 

 ロイヤルガードのガーディアンが城を守り、王妃とその侍女や近衛兵には『ネールの愛』を込めたダイヤモンドのペンダントを配った。

 そして王子が生まれるまでの間はリンクと共にハイラル城で寝食を行ったのである。

 

 その間に、各地での遺物発掘やその研究は進む。イーガ団からの妨害を一切受けなかったこともあり、その進捗スピードは過去最高であった。

 

 そうして十月十日を越え、無事に王子が生まれると、厳戒態勢は一段引き下げられた。流石にティリアを一処に押し込めてしまうと各地の部族との円滑なコミュニケーションに支障をきたしたからである。

 これで彼女の自認が一介の妖精というのは無理があろう。流石に彼女としても半分は冗談のつもりで言っているのだが。

 

 各地の人々は森の賢者を中央ハイラルが独占していることに不安を覚えていたのである。それは、人相画とともに知らしめられた謎の魔剣士が、もし己の町を襲ったならばという恐怖であった。

 

 イーガ団も、そしてティリアでさえも知らない謎の存在が、ハイラルの闇の中を暗躍している。その闇の一端を彼女が掴むのは、さらに3年後。リンク達が10歳となってからなのだった。

 





・ティリア
 やることが、やることが多い!となっているTS転生コキリ族。そろそろ女性用の上半身下着が必要になるかもしれないが、そうなるとウルボザに相談し、リンクとの距離感に関して説教される運命にある。

・ゼルちゃん
 御母様が御懐妊されてからは一緒に遊んだりが難しくなったが、ティリアとリンクがずっとお城にいてくれたので寂しくはなかった。生まれてきた弟は小さくて、そして温かい命。そのことを認識した瞬間、胸の奥に暖かな光を自覚した。それはまだとても小さいが、いずれ……

・リンク
 一応妹がいる時空の設定。生まれたての妹もあんな感じだったなあと思う。お城に滞在している間は毎日のように訓練場を訪れていた。時々現れる木こり姿のおじさんにはまだ勝てない。

・ミファー
 その年は夏合宿がなかったのでリンクに会えなかった。寂しい。ゼルダ姫に弟が生まれたと聞いて、お姉ちゃん同士仲良くなれたらなあと考えるいい子。

○独自設定
『古代ゲルドの呪術』
 蛇笛もたいなものでモルドラジークの群を突っ込ませていたあれ。本作では失伝している。また、たとえ失伝していなくともティリアとは属性相性が悪く扱えなかったという裏設定が。楽器を使った魔法という点では悪くなさそうにも思えるが、呪術という点があまり良くなかった。

『シャトー集落』
 声の記憶でも語られている排他的集落。アストル達の故郷だったのではと考えることもできたが、今作では違うことにした。〈厄黙〉でゴロゴロ屋を開店できているので、そちらの描写との兼ね合い()ある。

『ラウレス王子』
 ゼルちゃんの弟。彼の設定、名前やその他、ソレこそ大幅な原作改変をしてまで出すかどうかを悩んでいたのも遅れた原因。本格的な活躍はかなり先の〈ティアキン〉編の予定。今はまだ赤ちゃん。

 なお、王子についてはその他の命名候補も元ネタがありますのでわかった方はコメント等くださると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。