〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC 作:ジュミ・ベラウ
理力と書いてフォースと読む。
気がついた時、デクの樹サマのヘソの中、ティリアは葉っぱのベッドでコログのペパパを抱き枕にして寝ていた。
「生きてる……」
身体の節々が痛み、ひどく喉が渇いていて、お腹の底から飢えが込み上げてくるよう。それらの痛みが、彼女の生命が存在することを如実に証明している。
彼女の目覚めを知ると、とんできたスダジィが、ボックリンが彼女を見つけてここまで連れてきてくれて、ティリアは5日間も寝ていたとそう伝えた。ベッドの傍には、彼女の落とし物が丁寧に土を払われた状態で積まれていた。イワロックからの戦利品であるルビー、サファイア、ダイヤもまた彼女の私物棚に並べられている。
彼女は木の枝を杖にしてベッドから降りた。生まれたての子鹿のごとき足腰で、森人の剣へと近づいた。
岩を叩き斬ったはずのそれは、刃こぼれ一つしていなかった。
「あり得ない……」
森人の剣にイワロック(希少)を一撃で屠るだけの切れ味はない。確かに木製の刃とはいえどなまくらではない。だが木製ゆえにどれだけ研いでも切れ味が金属を上回ることもない。
それに勇者リンクの振るうマスターソードでさえイワロックの鉱床を切断することはない。硬さに任せて砕くのみだ。
そしてそれ以前にまず、彼女はどうやってイワロックの振り下ろしから助かったというのか。青く輝く結界に覆われていたことは覚えているが、それを誰がやったのかは分からない。その結界も、反撃に転じる時には消えていた。
ふと、何か暖かな光が彼女を照らしていた。部屋の隅で佇む女神像が、淡い光を纏っていた。
「ハイリア様?」
『ティリア……ようやく貴女に言葉を届かせることができました。』
女神像は相も変わらずアルカイックスマイルを浮かべていて、それだというのにないはずの瞳がティリアを見据えているようだった。
*
sideティリア
ハイリア様の仰ることには、ボクの身を守ったのはボク自身が使った魔法『ネールの愛』らしい。あらゆる攻撃を弾く、ハイラルを創造した黄金の三女神の一柱『知恵の女神ネール』の名を冠する大魔法。
そしてイワロックの鉱床を一撃で叩き斬った技は時の勇者が編み出し黄昏の勇者に遺した秘剣『
ボクはそれらの技を前世の記憶で知っていた。どういう形をしているか知っていた。背面斬りに関してはどんな動きをすればいいかも知っていた。ただ「知っている」と「できる」には天と地ほどの差があるハズだ。火事場の馬鹿力とゾーン状態での完璧な身体制御が走馬灯で想起されたそれらの技を再現するに至った。
でもそれだけだと森人の剣の異常な耐久性と斬れ味が説明できない。
『その答えはティリア……貴女自身の備えた力、フォースにあります。』
フォース……この世界のあらゆるモノが持つ力。有名なもので言えば、黄金の三女神が残した秘宝『トライフォース』。これは女神のフォースの結晶が三位一体となったもの。この世のどんなフォースより純粋で高密度の巨大な結晶。それは手にした者の願った通りに世界を書き換えてしまうほどのエネルギーを持つ。そもそもトライフォースこそがこの世界の基礎で、破壊されたが最後世界は滅びの一途を辿るしかなくなる。
あるいはマスターソードのソードビームを形作る『スカイウォード』。これもまた天空に漂う一種のフォースだと、ハイリア様は教えてくれた。
ボク自身の生命力を削って捻出された魔力がネールの愛を再現し、体力を削って捻出されたフォースが身体の完璧な制御を成し、そして剣の刃を覆ってイワロックを一撃で屠るエネルギーとなった。
フォースが完全に目覚めたからこそボクは女神像の声が完全に聞こえるようになったらしい。
『貴女の持つ魔力とフォースは非常に強い。しかし今の貴女にそれらを十全に扱う下地はありません。無理に使った反動で、貴女のハートの器とがんばりの器は1つずつ失われた状態になってしまっています。』
ハートの器もがんばりの器も、自前の鍛錬や努力で増やせる。実際〈
あるいは女神の生み出した器をその身に宿すことでも増やせるけれど、これだけで増やせる数は限度がある。これらは所詮後付けのもの。入手にはそれ相応の試練を乗り越える必要があるとはいえ、女神の加護に頼りきりというのは本当の強さと言い切れない気もするし……
実際〈ブレワイ〉/〈ティアキン〉リンクは女神の加護をパワーアップではなく弱体化の解消に用いていた。自前で鍛え上げた肉体が最初にあって、それを取り戻すためにハートの器やがんばりの器を使ったんだ。
『ティリア、貴女に加護を授けましょう。』
ハイリア様がそう言うと、女神像の頭上から金色の縁を持った雫型の青い神器が降りてきた。文字通りの形をしたハートの器とも、人魂や炎のような形のがんばりの器とも違う見たこともない器だった。ソレをボクは両手で受け止めて、すると器はボクの胸の中に溶けるように消えていった。
頭の中でセルフ器取得ファンファーレ流しとこ。
『それは〈魔力の器〉。』
曰くボクの魔力保有量は、ほんの一瞬ネールの愛を展開するだけで消えてしまうごく僅か。器換算で100分の1個分しかなかった。本当に成長過程で、ボクが魔法を使えるようになるのはもっと先のハズだったらしい。もしあの時ネールの愛展開が少しでも早ければボクは死んでいたということでもあり、ゾッとした。
『貴女がこれ以上の加護を望むなら、それに相応しい試練を乗り越えることです。多くの人を助けなさい。そしてその人たちが心の底から感謝を示した時、貴女は〈
もちろん、自力での鍛錬でも器は増えると女神サマは付け足した。
「フォースの器はないんですか?」
『フォースは万物に宿るエネルギー。強いて言うならハートの器がそれだと言えるでしょう。ハートが満タンで、生命力に満ち溢れている時、マスターソードがソードビームを放つのはそういう理由です。』
「ほー。」
『……きっと貴女は他にも知りたいことがあることでしょう。しかし、これ以上貴女に教えてあげられることは殆どありません。それどころか、より上位の世界から落ちてきた貴女の方がこの世界のことを知っている部分もあります。』
残念無念。
そう言えばと、ついでに天空の白刃剣を手に入れられないか聞いてみた。マスターソードの1段階進化前の聖剣で、〈ティアキン〉では最古の女神像がくれるもの。
だけど返事は「マスターソードに劣るとはいえ聖剣である以上はおいそれと渡すわけにもいかない」そう。渡すにしても忘れ去られた神殿の大女神像まできちんと巡礼すべしと。
その上マスターソードほどではないけれど使い手を選ぶし、だからといって同じ素材を使ってボクだけのホワイトソードを造ろうにも、その素材は神サマしか加工できない特別なものだそう。
素材に関しては同様の理由で本物の『
どうしても欲しいならマスターソードの『ダウジング』で探してみるといいらしい。流石のハイリア様も現在の所在地までは把握していないみたいだケド、ファイなら本物だけが持つ特徴を覚えているかもしれない。
なんにせよマスターソードを引き抜けるのはリンクだけなので、ハイリアの盾探索は当分先になりそうだ。
*
気がつくと、ティリアの耳に女神の声は聞こえなくなっていた。
ぼーっと女神像の前で突っ立っていたからか、いつの間に起きてきていたペパパが不安そうに顔を覗き込んでいる。
そんなペパパを尻目に、ティリアは決意を新たにした。
イワロック如きに遅れをとるようでは来る魔王との決戦で犠牲者を減らすことなど夢のまた夢。
幸にして彼女は自身に才があることを知った。女神の加護を得る術も手に入れた。
もう油断も慢心もしまい。リンク達の生まれるまでの100年弱、己を高めるためだけに使い続けると、そう決意した。
なお今度はストイックになりすぎ、まるで修羅の如き形相になったせいでコログ族達に怖がられてしまい、ティリアは泣きながら態度を元に戻すことになった。何事もやりすぎは良くないのだ。
フォースについては独自解釈を多分に含みます。
実際スカウォのハイリアの盾を本物とした場合、後世ではどこに行ったんでしょうかね。
神トラ2のカメイワでも手に入るんでしたっけ。アレは本物なんでしょうか。私カメイワはクリアできておりません。
今話までが序章です。次回以降100年ほど飛びます。修行パートは書けそうにないです。
あんまりTS成分強くないなァ。個人的にTSの醍醐味って肉体的には異性なのに同性の距離感のまま、あるいは肉体的には同性なのに振る舞いで異性を感じさせるとかで性壁を粉砕してくることだと思うんですよ。
初めて手を出しましたがうまく描けるでしょうか。性癖破壊の犠牲者は今の所2人予定しております。