〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC   作:ジュミ・ベラウ

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 あの仮面大好きなんです。



王国の章
見覚えのあるモノ①


 

 ハイラルを行く旅人で、いつからか語られるようになった存在がいる。街道沿いの森の中、稀に小鬼が現れると。

 

 曰く、葉っぱを編んだオレンジ色の衣を纏い、ツノとギョロリとした目を持った禍々しい仮面を身につけている。

 曰く、決して素顔を晒すことはせず、無理に見ようとしたものは妖精の魔法で吹き飛ばされる。

 曰く、美しい宝剣を携えており、その太刀筋は見る者の目を奪うほど美しく洗練されている。

 曰く、邪悪な存在ではなく、側を数匹の妖精が飛んでいることがよくある。

 曰く、人助けが趣味で、対価は僅かな感謝だけ。

 

 その存在が初めて人の噂に上がる様になったのはハイリア王家にゼルダという姫が生まれた1年後あたりからである。

 いつしかその存在は『森の小鬼(スタルキッド)』と呼ばれるようになっていた。

 

 *

 sideティリア

 

 とうとう来ちゃっタ。ハイラル城下町……跡地でしか姿を知らなかったからかなり新鮮だヨ。

 ただ前世の記憶より幾分か広く感じるネ。

 まぁ多分ゲームとしては広いマップだったケド、現実の王国にしては狭かったってところカナ。ハイラルの全国地図を馬宿で購入したんだけど、ゲーム内の地理と差異はなかったヨ。だから解像度と縮尺だけが違うんだろうネ。

 そもそもゲーム内では24分で1日が経過するからネ……移動時間と縮尺を合わせたらマップの広さは60倍にしないと比率が噛み合わないヤ……

 

 実は森から出て既に1年近く経ってるんダ。だから肉体年齢は11歳のはずなんだケド、まるで成長していない……

 何をしていたかというと素材集めだネ。オルドラ、フロドラ、ネルドラ達の爪やウロコを集めて来たんダ。大変だったヨ。外見年齢が10歳かそこらだから一人旅は舐められるし、野生馬を捕まえようにも手足が短くてなかなか届かないし……『フロルの風』が使えるようになっていなかったら移動だけでさらに倍以上の時間がかかっていただろーサ。

 フロルの風は便利で、テレポートの他にも上昇気流や追い風を起こしてパラセールで移動するのにとっても役立ってくれたヨ。燃費も良いしネ。

 あとはネールの愛を展開すれば、オルドラの炎もフロドラの雷もネルドラの冷気もカットできる。

 

 何のための素材集めかといえば、ボクの剣を作るため。この100年で鍛えたのはいいケド、今度は並大抵の武器ではボクのフォースや魔力に耐えられなくなっちゃっテ直ぐ壊れちゃう。今使ってるのは子供用の大きさだから成長すると使えなくなっちゃうし。

 ちなみに普段着てる葉っぱの服は予備の洗い替えを含めて大妖精サマに最大まで強化してもらったヨ。ルピーはあるからネ。イワロック様々……チョットフクザツだけどサ。勿論こっちも耐火性はバッチリ。暑さ寒さもへっちゃらだからわざわざ防寒着とか買わなくていいんダ。

 見かけた魔物を片っ端から狩っていたら素材が山ほど手に入る。路銀稼ぎはこれで十分。時々危険な魔物退治を引き受けたりして感謝の理もそこそこ溜まった。現在のボクのステータスはハート18個にがんばりゲージ2周。魔力の器8つ。

 ハートとがんばりゲージはともかく魔力の器はどれくらいあればいいのか分からないケド……1つでネールの愛が1回使える。1度発動したら大体1分は効果が持続する。あまりにも強力な攻撃……白髪ライネルの大剣叩きつけなら1発で砕け散るケド、それでも1回は確実に守ってもらえる。

 フロルの風なら器1つでテレポートは2回。追い風や上昇気流は3回使える。

 ただ魔力はがんばりゲージと違って息を整えても自然回復しない。十分な睡眠をとるか、妖精の力水を飲むか、温泉か女神の泉に浸かるしかない。

 

 城下町の露天でトリ肉の串焼きを買ったりして、ぶらぶら散策する。7日後にゼルダ姫の誕生日が迫っているみたい。

 現代日本ほども医学が発達してないから子供達が大人になるまで生きられる可能性は前世より低い。まだ1歳されど1歳。この1年健やかに育つことができたのは素晴らしいことだヨ。

 

 なーんて考えちゃったりしつつも面白いお店を見つけた。大通りからは外れたところにある仄暗い店内の雑貨屋さんだ。

 どうも独自ルートでハイリア国外の工芸品なんかを仕入れているらしい。

 ゲームではハイラル国内しか冒険できなかったけれど、よくよく考えれば世界はハイラルの外にも続いているはずなのだ。

 この店の品々はそういったまだ見ぬ異国の情緒に浸らせてくれる。

 

「!」

 

 と思っていたら、ボクは壁にかけて飾られた1枚の仮面に目を釘付けにされた。

 ハート型で、目の上にツノ、ほっぺに棘、ギョロリとした目を持った不気味な仮面。

 値札はなく、非売品の札が下に貼られてる。

 

「嬢ちゃん、この仮面が気になるのかい?」

 

 ガタイのいい店主がボクの横に立っていた。筋肉隆々で髭面。どことなく〈時オカ〉のアイテム屋さんに似てる……かも?

 それにしても「嬢ちゃん」か……スミマセンおじさんボクこれでも100歳越えのお婆ちゃんなんです。

 

「これは1枚しかない非売品でね。何でも太古の部族が邪悪な儀式で使ったという仮面らしい。」

「これは『ムジュラの仮面』ジャラ……」

「……ジャラ?」

「コキリ訛りジャラ……」

「嬢ちゃん外国から来たのか。」

 

 ついつい口をついて出てしまう訛り。コログ族相手だとあんまり出ないんだケド、ハイリア人が相手だとなーんか出やすくなっちゃうジャラ……ア。

 

「ムジュラの仮面。その昔、恐ろしい魔人を宿していた邪悪な仮面だヨ。多分……これはオリジナル、と思うジャラ。」

「オリジナルぅ……やばいか?」

「オリジナルだからこそ問題ないジャラ。邪悪なムジュラの化身は仮面の勇者によって倒されてるカラ、これはただ歴史深い仮面というだけだヨ。」

 

 僅かだけれど魔力を感じる。そして寂しがりな小鬼の気配も何となく。

 何万年も、下手すれば何千万年と前かもしれないタルミナの物語。それでも、それが事実だった証拠がここにある。

 

「……おじさん、この仮面、どうにか譲って欲しいジャラ。」

「むむむ。おじさんもこれ結構気に入ってたんだがなァ。……そうだな、何か代わりになる珍しい品と交換ってのはどうだ?」

 

 ムジュラの仮面と同じくらい珍しいものってナニ? 世界に1枚しかないものと同じだけの価値あるもの……

 

「むーん……」

 

 ポーチを開けて色々取り出してみる。

 あれでないこれでない……

 

「ストップストップ! 嬢ちゃんこのままじゃ店が埋まっちまうよぉ。」

「ワア、ホントだ。随分増えたなァ……」

「そのちっこいポーチにどうやって入れてたんだ……まさか魔法のポーチか?」

「そうだケド……けっこー珍しかったりする?」

「庶民の手に届くほど流通はしとらんなァ。それにしたってそこまでは入らん。」

「いいデショ、森のトモダチに広げてもらったのサ。……でも世界に1枚だけの仮面に匹敵する価値があるものは……ないジャラ。」

「このハート型の岩は?」

「希少イワロックの心岩(しんがん)ジャラ。希少イワロックを狩ればいくらでも手に入るヨ。」

「この動いてる子供の頭サイズの心臓は?」

「ライネルの肝ジャラ……魔法薬の材料にすると滋養強壮にいいヨ。」

「こいつらは?」

「ボクの作った魔法の楽器ジャラ。」

 

 妖精のオカリナ、妖精のたてごと、妖精の縦笛、妖精の横笛、妖精のタクト、妖精のヴァイオリン、妖精の木琴等々。

 いやね、ゼルダ世界に来たなら一度は奏でてみたいジャン、魔法の歌。

 

 勿論この楽器達の歌は本当に魔法を使えるヨ。『嵐の歌』を奏でたら強風と雷雨が局所的に発生したのにはビビった……

 リンクに会えたら『エポナの歌』を教えてあげようと思ってる。

 ただ『時の歌』はどれだけ魔力を込めてもダメだった。多分王家の血筋が持つ時の力を込めてないとダメだろうネ。

 とにかく、店主さんに魔法の楽器である証明がてら1曲、『ぬけがらのエレジー』を奏でた。2人に増えたボクをみておじさんは目を丸くした。ふっふっふ。ボクの作るぬけがらはホンモノと遜色ない見てくれの上に複数作れるんだ。かわりに奏でるたびに自分の魔力も消費しちゃうケド、魔法の楽器は正しい曲を奏でれば魔力のない人でも使えるヨ。魔力があったらより効果や規模を大きくできるだけで。

 

「嬢ちゃんは魔法使いか? どうりで。子供1人の割に強力な魔物素材を持ってると思ったら……もしかして俺より年上か?」

「ギクッ!」

 

 バレちゃった。

 

「……ミンナニハナイショダヨ?」

「ははは。本物の魔法使いに会えるなんてな! 気に入ったぜ。嬢?ちゃん、俺と契約を結ばないか?」

「ティリアだヨ。契約っテ?」

「この魔法の楽器、いや楽器でなくてもいい。こういう品を作って売るときは俺の店専属で買い取らせて欲しい。勿論魔法の曲の楽譜や権利は別で正式に権利書を作って販売時に売上の一部を送る。この契約を飲んでくれたらムジュラの仮面はただで譲ろう。」

「ホント⁉︎」

 

 願ってもないことだ。とはいえ広める曲は慎重に選ぶ必要があるだろうケド……楽器そのものはボクのハンドメイドで大量生産はできないから魔法が広がりすぎて社会秩序が大きく変わってしまうことは避けられると思う。ウィズローブの持ってるような魔法の杖であれば稀に流通してたりもするから、魔法そのものを知らない人はそこまででもないだろうし。

 曲の権利料金に関してはボクは作曲者ではないので辞退させてもらった。ドロボー(盗作者)とは呼ばれたくないしネ。

 とりあえず楽譜は『大翼の歌』と『目覚めのソナタ』、『ゴロンのララバイ』、『嵐の歌』の4曲を提供した。

 『大翼の歌』は奏でた人が行ったことのある女神像の近くに飛ぶようにした。近くに魔物の襲撃が迫っている時なんかの避難用に役立てて欲しい。

 『目醒めのソナタ』と『ゴロンのララバイ』は子育てに役立つと思う。『ゴロンのララバイ』は一部の魔物にも効くから奏でる暇さえあれば逃げるのにも使えるかも。ボコブリンやモリブリン、ヒノックスに効くのは確認済み。ただ、黒色以上の強さの個体にはほとんど効かない。あと眠らないスタル系の魔物にも。

 『嵐の歌』は日照りが続いた時に農業で役に立つと思う。範囲や持続時間はそこまで広くないケドね。あと雷も漏れなく鳴り響くから小さな子供は怖いと思う。ボクも初めて吹いた時はビビり散らかしたし。

 楽器は何回か使うと魔力が切れて自然回復するまでは曲の力も使えなくなる。あとは犯罪者が『大翼の歌』で逃げるのを防ぐため悪人には使えないようにセーフティを掛けておくのも忘れずに。

 

 こうして契約を結んだボクは念願のムジュラの仮面を手に入れたのだった。これを被れば服装も相まって完全に〈ムジュラ(ゼルダの伝説ムジュラの仮面)〉に出てきたスタルキッドである。

 

 次にボクが向かったのは鍛冶屋さんだ。一応鍛治師の組合『ハイラル鍛治ギルド』はハイラル大森林の近くにあるんだケド、今回ボクが求めてるような変わった剣は、同じく変わった鍛治師にしか造れないだろうということで副組合長(サブギルドマスター)のセドロさんが紹介してくれた鍛治師が城下町の裏路地に店を構えているらしい。聞いたのは1年前だから引っ越しとかしてたらギルドに聞きに戻ろうっと。

 





 主人公ティリア
 
【挿絵表示】


 セドロさんは厄災の黙示録に出てきた鍛冶屋のおっちゃんです。
 16年後の厄黙本編にギルドマスターという独自設定をつけて、今回は副長としてます。

 次回はオリキャラ出ます。
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