〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC 作:ジュミ・ベラウ
オリキャラ登場。
ハイラル大森林を出て直ぐの頃、ティリアはまず最初にハイラル鍛治ギルドに向かった。勿論職人達への差し入れとして森で取れた栄養たっぷりの『ヨロイダケ』を籠いっぱい持って行くのを忘れずに。
最初は子供ということもあってあまり歓迎はされなかったが、彼女は店にある適当な剣を手に見事な剣舞を見せることで職人達は直様態度を反転させた。
職人は良くも悪くも頑固で実力主義。ティリアが優れた剣士であることを証明すればもう彼女はモテモテであった。無論恋愛的意味ではない。……1人怪しい者もいたがティリアは気づいていない。
誰だって自分の鍛えた剣を優れた人物に振るってもらいたいものだ。
「それで、嬢ちゃんはどんな剣をお望みなんだ? ここにいる職人はみんな腕自慢だ!」
「ボクが求める剣は『
「ホワイトソードだって⁉︎」
ホワイトソードとはハイラルにおける白刃の聖剣の総称である。白という言葉のイメージ通りさまざまな特色に染まることでより強い伝説の剣となることが多く、かのマスターソードも『女神の剣』からの成長過程で『女神の
マスターソードについては知らずとも、ハイラル中の鍛治師が集まる組合だけあってホワイトソードを知るものはそれなりにいた。ギルドの案内を請け負った組合の副長であるセドロも当然知ってはいたが、ティリアが求めるものはさらに特殊なものだった。
ホワイトソードの伝承の中でもたまに語られる『使い手と共に成長する剣』を彼女は求めていた。
「見ての通りボクはまだまだ子供だから、今の体躯に合わせた剣を打ってもすぐ身の丈に合わなくなっちゃうジャラ。」
「だから
ティリアの話を聞いて我も我もと立候補していた職人達は悔しそうに手を下ろしていく。彼らは自分の技術に誇りを持つからこそ、無責任にできないことを請け負おうとはしない。
「素材が揃ってたらもっと色々考えられたんだがなあ……」
「ボクとしては最初にここで必要な素材を聞いてから集めに行く予定を立ててたんだヨ……」
「参考までに材料の心当たりはないか?」
そう聞いて帰ってきた『オルドラの爪』『フロドラの爪』『ネルドラの爪』をはじめとした特殊な素材の名前。オルドラやフロドラ、ネルドラは辛うじて名前を聞いたことのあるような大精霊の名前であるが、ティリア曰く精霊を見ることができる者は限られている。
「身近な精霊で言えば、森のコログを挙げられるケド……見たことあるヒトは? 近くにいると木を叩いたみたいなカラカラコロコロって軽い音が聞こえるヨ。」
「俺はないな……」
「ガキの頃に会ったような気がする。夢じゃなかったらだけどな。……大人になってからはダメだ。音は、どうだろうな……それがコログの音か、見えないんじゃ判んねえか。」
結局組合内で今現在精霊を見ることのできる者はいなかった。
「もし龍の爪が手に入ってもだ、俺たちが見えないんじゃ加工のやりようが無い……」
「本体から離れたら都合よく見えるようにならないかなァ……」
「そうだったら自然に抜けた爪や鱗の噂が立つと思うぜ。」
「いっそのこと嬢ちゃんが鍛治を学んで行ったらどうだ?」
「聖剣を造ろうってんだぜ? それだけの腕になろうと思えば何十年修行する必要があるよ?」
「しかも俺たち鍛治師が依頼されて、技術が足りないから自分で造れってのも情けない話じゃないの。」
侃々諤々意見が飛ぶが、明確な答えは見つからない。
ヒントとなるようなもの、あるいは代わりに使えるような剣がないかと保管庫に案内されたティリアは、飾り台に置かれた一振りの剣に目を奪われた。
「セドロさん、この剣は?」
「妙な形をしてるだろ。切先は片刃に見えて全体は諸刃。」
長さと幅の違う片刃の剣が2つ、背中合わせにして柄に固定されることで諸刃剣の形になっているような剣。背中同士は数箇所金属を橋渡しして繋げられてはいるが、全体で見れば剣の中央に大きく隙間が開く形となっている。
「こいつは『フェザーソード』。名前の通り羽のように軽いが、形状を見ての通り強度的にはすこぶる脆い。試し切りしてみるか? 売り物にならないんで壊しても構わん。」
「いいの?」
「嬢ちゃんほどの腕前で壊れるんだったらそりゃ剣の方が脆すぎだ。イーガ団の使う『風斬り刀』を参考にしたらしいがな、こいつの脆さは風斬り刀以上だ。おかしな話だがよ、構造的に刃こぼれはしにくいのにもっと根本的なところが脆い。使い続けると刃ではなくて剣身の根本からボッキリ行くぜ。」
曰く、全部で3本あったが2本は別々の物好きが買って行ったその日のうちに折れたらしかった。買って行った2人も、別に腕が悪い剣士でもなかったことを思うと、フェザーソードの性能がピーキー過ぎるのが原因であろうとセドロは語った。
2人は外に出ると試し切り用の巻藁を設置した広場に向かう。
ティリアが静かに剣を構えると、手の空いている職人達が見物に集まってくる。
彼女は息を整え、そして巻藁と距離を取ったまま、スっと振り下ろした。
「素振りか?」
「いや。ありゃ
セドロの言う通り、彼女の5メートル向こうにある巻藁は見事に縦真っ二つになっていた。静かに素早く切り裂かれたので確認するまで全くずれておらず、繋がっているように見えたのだった。
「真空波か? だが風斬り刀を参考にしたとはいえ斬撃が飛んだことはなかったぞ。」
「ああそうだ。ありゃあ嬢ちゃんの技量あってこそだろうぜ。」
ティリアは満足したのかフェザーソードを鞘に収めてこう言った。
「この剣を打った人を紹介して欲しい」
と。
*
sideティリア
その剣を見た時、ボクはとにかくびっくりした。〈ムジュラ〉に出てきたフェザーソードそのものの形状をしてたんだから。名前も同じフェザーソード。
ボクはそれを手にしてこう思った。なんて軽くて、繊細な剣だろうって。少しでも太刀筋がズレたら耐久度がとんでもない勢いで削れていくじゃじゃ馬。でもその刃はこれまで見たマスターソード以外のどんな剣より研ぎ澄まされてるみたいだった。
今ボクが使ってるのは『コキリの木剣』。森人の剣の製法をベースにボク自身の魔力とフォースを込めて作った剣。外見は剣身まで木製なのを除けば〈時オカ〉の『コキリの剣』と同じ。柄の宝石部分はデクの樹サマのコハクだよ。普通のやつより赤みが強いオレンジ色だネ。ボクの生まれたさくらんぼの千切れた跡を瘡蓋みたいに塞いでいたんダ。
ちなみに剣そのものは魔法を込めたから木製だけど燃えないヨ。
ボクの手にこのフェザーソードはコキリの木剣の次にびっくりするくらいよく馴染んだ。コキリの木剣は木製だし、ボクは鍛治師じゃないから切れ味には限界があって、ソレに関してはフェザーソードの方が断然上だ。
それでも、手に馴染むケド、完璧じゃない。ボク専用に造られたワケでもないしネ。
ボクの技の型には合う。けれどボクの力、その全力には耐えられない。
だからこそ、ボクはこの剣を打った職人に会いたいと思った。この剣が脆さを克服したなら、どれほど素晴らしい剣になるだろうって。
何より、この剣は僅かながら力を感じた。精霊の魔力だ。素材そのものが特殊と言うより、多分打った時の炎に精霊由来の何かが含まれてたんだと思う。
「こいつを打ったのは『ダボラ』という男だ。若造だが腕は良い。良いんだが怠け者でな、何よりカネにがめつい。少し前に独り立ちして城下町の裏路地に工房を構えたんだが……あの性格だ。きっと怠けてるだろうな。最近はギルドにもめっきり顔を見せん。」
ダボラ……なんだかズボラとガボラに似た名前……
ズボラとガボラと言えば〈ムジュラ〉に登場する鍛治師2人組で、コキリの剣をフェザーソードに鍛え上げてくれる。何か縁を感じるヨ。
そして1年後、ムジュラの仮面を手に入れた後にやって来ましたダボラの鍛治工房。裏路地にあるからと思っていたよりは大きい? でも繁盛しているカンジはしないや。
「お邪魔しまーす。」
「邪魔するなら帰れ。金と剣の腕があるなら残れ。」
うーんヘンクツ!
工房の奥のソファで横になってる人は身の丈2メートルくらいある巨漢だった。ズボラにもガボラにもあんまり似てない。少なくとも口調は全然違う。
強いていうなら灰色がかった肌がガボラっぽくて、服装が上裸に胸の真ん中をベルトが通ったヘンな吊りズボンを身につけて乳首丸出しなズボラっぽいことくらいか。
怠け者という割には全身筋肉モリモリだネ。
「これセドロさんの紹介状ジャラ。」
「セドロのヤローから紹介だと? まさか1年前にフェザーソードで斬撃を飛ばしやがった剣士か!」
「お話届いてたの?」
「まだ信じたわけじゃねェさ。あの剣は確かに風斬り刀の流れを汲む。だがな、相応の腕がなければ斬撃が飛ぶどころか素振りでも剣身が砕けるはずだ。オマエみてーな小娘がなァ……到底信じられんぜ。」
「じゃ、信じさせてあげル!」
ボクはポーチから取り出したフェザーソードを一振りした。
飛ばした真空波は、口の空いた溶鉱炉の中、炎を左右に分断する。炎はゆらゆら燃えてすぐ1つに戻ったケド、ダボラさんにはそれで十分だったみたい。
「へェ……そいつは確かに俺様のフェザーソードだ。ちょっと見せな……ハン、たいしたウデだ。剣身に全くのダメージがねェとは恐れ入ったぜ。……それで、オメーは俺にどんな剣を打たせたいんだ?」
「ボクといっしょに成長する
「材料はあるんだろーな?」
「モチロンだヨ。」
まってましたと言わんばかりにボクはポーチから素材を取り出しテーブルにドンと並べる。
「ウソだろ……オルドラの爪かよ……」
「視えるんだ、ヤッパリ。」
「ほー、知ってたって口振りだな……」
「フェザーソードを打った時の炎ってオルドラの纏ってた精霊の炎でしョ?」
「分かるのか。」
「ボクは森の妖精だからネ。」
「オメーがコログぅ? 化けてンのか。」
「先祖返りでサ、ボクはコキリ族のティリアだヨ。」
「気に入ったぜティリア。成長するホワイトソード造り、挑戦してみようじャねェか。」
「やったネ。」
こうしてボクはこの先長い交流を結ぶ鍛治師と出会ったのである。
ちなみにもしもダボラさんが精霊を視えていなかったら自作した『まことのメガネ』を掛けてもらうつもりだった。
*
工房の中、天井に吊るされたカンテラと溶鉱炉から漏れる炎の灯りを頼りに、2人は素材を吟味していた。
「造ってはやるがな、ルピーを忘れンなよ。」
「前金で10000ルピーある。残りは完成後に20000ルピー。足りる?」
「上等……! だがな、前金は受けとらねェ。成功報酬だ。オメーが俺様の打った剣を気に入ったら一括で寄越せ。」
「言っといて何だけどサ、もっと寄越せって言われると思った。」
「材料持ち込みだからな。ぼったくり過ぎたら兵士にしょっ引かれちまう。」
「……経験者は語る?」
「コメントは差し控えさせてもらおうか。だが、負けてやる代わりにオメーも働くんだぜ。なんたってオメーといっしょに成長する剣だ。いわばオメーの魂を分けた半身。オメー自身が魂を込めなければ意味はねェ。」
最初の工程は基礎の素材の加工。
「手回し?」
「他に方法があんのか?」
ティリアは石臼の上部にデクの葉のプロペラを取り付け、妖精のオカリナを取り出して『嵐の歌』を吹いた。
勢いよく渦巻く風がデクの葉のプロペラにぶつかり、それを動力にして石臼がひとりでに回り出す。
「魔法使いか。火は出せるか? 水はどうだ?」
「火は『ディンの炎』って魔法があるジャラ。水は……森の湧き水で作った妖精の力水なら。」
「なら溶鉱炉にそのディンの炎ってのをぶち込め。それからオメーの木剣と、あとはフェザーソードの柄も炉に焚べろ。」
「コキリの木剣を?」
「その剣もまたオメーの魂を込めた剣だ。数十年使い続けたんだろ、その力を受け継がせるんだよ。フェザーソードもそこまで使い込まれたわけじゃねェがオメーの力に晒されてる。……おっと、木剣の鍔から下、特に宝玉は絶対外せ。新しい剣の柄に使うからな。」
言われた通りにティリアが着けた炎にデクの樹のコハクを外した木剣と、フェザーソードの持ち手と鍔の木製部分を外して投げ込むと、次はその炎で金属を溶かす工程に入る。
溶かしたフェザーソードの剣身に、粉末にした龍の爪とダイヤモンドを加え、鋳型に入れて整形し、程よい大きさの金属塊に固める。
「ここから先は俺の仕事だ……邪魔すんじャねェぞ。」
そうして生まれた精霊の素材を鋳込んだインゴットを、ダボラは炎で熱しては金床の上で叩き、焼いては叩きと鍛造の段階に入る。何度か叩いては炉に戻し、また叩いてはネルドラのウロコで冷やされた妖精の力水に浸して冷却する。
作業は三日三晩続いた。
3日目の朝にティリアが起き出すと、ダボラは丁度研ぎ、磨き終えた剣身を柄に嵌め込んでいるところだった。
その刃は東から差し込んできた陽光を反射させ、見事に白く輝いていた。
「完成だ。持て。そして振れ。できの程を示してみろ。」
ティリアがその持ち手に触れると、全身がじんわりと暖かくなった。
庭に出て試し斬り用のカカシと相対する。
縦、横、斜め、ジャンプ斬り、背面斬り、居合斬り……ティリアは並べられたカカシを次々切り捨てて行く。
最後に彼女は剣を真っ直ぐ天に掲げ、一呼吸置いた。そして勢いよく振り下ろす。金色に輝くフォースのソードビームがカカシを真っ二つにする。
斬られたカカシの断面はどれも見事に滑らかだった。
「金を置いたら出て行け。俺様は寝る。」
ダボラはティリアがこの剣を気にいると彼女が振るまでもなく確信していた。そしてティリアもまたこの剣の出来の良さを感じていた。これまで振るったどんな武器よりしっくりくると、今度はこれを持っていない自分を思い描けなくなった。この剣と離れ離れになるなど信じられない。
それが魂を分けるということだった。
こうしてハイラルの地に新たな聖剣『コキリの
というわけでティリアの武器はホワイトソードでした。ちなみに盾は森人の盾です。