〜TS転生コキリ族ハイラルを往く〜 ゼルダの伝説 FAIRY OF THE MAGIC   作:ジュミ・ベラウ

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 ウルボザエミュが上手くできてるか不安です。二次創作の難しいところですね。人様のキャラクターをお借りするわけで、その人格をうまく再現するのは至難の業だと思ってます。

 前回からだいぶ日が開きましたが、ストックがないのでここからの更新は結構遅めです。



妖精と砂漠のヴァーイ

 

 sideティリア

 

 来る厄災復活に備えて4種族と交友を結んでおくべきだと考え、ゾーラの里、ゴロンシティ、リトの村、ゲルドの街を巡ることにした。どこも行ったことはあるケド、そこまで深い交友を結ぶほども滞在はしなかったネ。素材集めを優先してたジャラ。

 

 サイコロコロコロ、ポーイと天運に任せて1d4でゲルドの街に向かうべしとの導き。早速フロルの風で『カラカラバザール』まで向かう。『大翼の歌』だとゲルドの街の女神像にはアクセスしてないので飛べません。

 

 と、まァそんなこんなでやって来ましたカラカラバザール。およそ半年ぶりくらいなんだケド、な〜んか前より活気がない。

 近くで出店をやってるおばあちゃんに話を聞いてみる。

 

ヴァーサーク(いらっしゃい)。おや、これまた恐ろしい仮面をつけたお嬢ちゃんだね。」

サヴァーク(こんにちは)。いいでしょ。ムジュラの仮面っていうんダ。」

「ほー。若いハイリア娘の流行はヴァーバ(おばあちゃん)にはよくわかんないよ。」

「ふふーん。この仮面は世界にこれ1枚ダケだヨ。……ところで、前より人が少ないみたいだけど何かあったの?」

「それがねえ、近頃モルドラジークが増えてね。街道沿いにも出るもんだから観光客も商人も危なくってこれやしない。お嬢ちゃんも危ないから徒歩での移動はやめた方がいいよ。モルドラジークから子供が走って逃げるのは不可能だからね。噂じゃ東の方で真っ白で大きな特異個体も出たって話だよ。」

「特異個体!」

 

 それって『キングラジーク』じゃ⁈

 

「気になるのかい?」

「特殊個体なんて浪漫の塊だもの!」

ヴォーイ(男の子)みたいなことを言うんだねえ。」

 

 中身男の子です。なのでゲルドの街には入れません。

 

「まぁ、近々大規模な討伐作戦を組むらしいよ。キングラジーク討伐には次期族長のウルボザ様が直々に出向かれるらしい。」

「ほへー。……モルドラジークの肝、分けてもらえないかなァ……」

「なんだい、お嬢ちゃんの知り合いになんぞ重い病気を抱えてるのがいるのかい?」

「うん、トモダチ。昔から身体が弱くって。」

 

 原作だと、具体的にいつかまでは覚えてないケド、ゼルちゃんが幼いうちに亡くなってしまうはず。

 病名まではわからない。そこまで身体が強くないから色々併発して、というのが確率としては高いと思う。

 

 魔物の肝はいい薬の材料だ。砂の下で数百年チカラを蓄えたキングラジークの肝ならば、あの子を助けられるかもしれない。 

 

「そうかい。でも、難しいだろうねぇ。特にキングラジークの肝となれば数万ルピーはくだらないよ。ゲルド族全体の財産として還元されるべきものだからね。」

「でもそれはゲルドの戦士がモルドラジークを倒した場合ダ。でしョ?」

「無茶をするでないよ。お嬢ちゃんの細腕じゃ、モルドラジークの分厚い皮膚を貫けるもんかい。こういうのは大人に任せてりゃいいんだ。アタシゃ子供が死ぬとこなんか見たくないね。」

 

 すみません多分ボクの方がおばあちゃんより年上です……

 でも人生経験じゃ勝てないネ。森を出てからまだ2年とたってないんだもの。

 しかしこのおばあちゃん、すごい肉体美だ。男性と比べれば細いながらもしなやかな筋肉がみっちり詰まった四肢。バキバキに割れた腹筋。

 聞けば若い頃は街の兵士として槍を持ってブイブイ言わせてたらしい。

 ボクも完成系としてはああいう体型を目指したいネ。

 

「お嬢ちゃんハイリア人かい?」

「一応……」

 

 コキリ族の先祖はハイリア人なので間違ってはいない。タブン。

 

「ヴァーイってのはヴォーイより筋肉がつきにくい。ゲルド族は多少マシとは言え、筋肉のつきやすさは生まれに大きく左右されるもんだ。お嬢ちゃんはまず肉が足りてないね、絶対的に。」

「おにく……」

 

 心当たりしかない。100年と少し。お肉やお魚はそこまで食べてきたワケじゃないから、消化しにくい体質になっちゃってるんだよネ……だから野菜や山菜、キノコと違って一度にたくさんは食べられないんダ。

 

「心技体、なんて言い方もあるけどね、お嬢ちゃんは心と技は足りてるのに体がついてこない経験、あるだろう?」

「お察しの通りで……」

 

 なんでわかるんだろう?

 

「年の功さね。」

 

 心読まれた……

 

「顔に出てるんだよ。」

 

 お面つけてるのに?

 

「アタシくらいの歳になるとお面で顔は偽れないもんさ。」

「ボクそれできない……」

「精進しな。」

 

 実年齢より精神年齢の方がジッサイ大事だと思い知らされたのでした。

 あとは成長期なんだから意識してお肉を摂りなさい、と。割引してくれたので串焼き肉をたくさん買った。いいようにされた感はないでもないけど、こういう機会に溜め込んでおかないとなかなか手が伸びていかないしネ。魔法のポーチに入れておけば腐る心配もいらないし。

 

 それで、おばあちゃんには教えてもらえなかったケド、ボクにはこの長い耳がある。普通のハイリア人の1.5倍の長耳を以てすれば噂をたどるくらいなんてことない。

 

「キングラジークは砂漠の東か……」

 

 スナザラシのレンタルはしていないみたいだったケド、代わりにいいものが手に入った。みんな大スキ『サンドブーツ』だ。女装してぶんどるやつだネ。

 今の時代はまだ生産されている上、子供サイズも存在してた。結構高かったケド、イワロックで稼いだ資産はまだまだ健在だから思い切って買いました。砂地でも足を取られずに走れるのは素晴らしい。この技術はぜひ後世まで語り継がれるべきだヨ。国を挙げて保護すべき伝統工芸だ。

 

 そうして意気揚々とキングラジークの住処まで行って、『ディンの炎』と『フロルの風』を組み合わせた爆発魔法でほぼほぼハメ殺しだネ。モルドラジークは爆発のような大きい衝撃はニガテだから、それが砂の中にまで侵入してきてひっきりなしじゃあ耳がイカれてしまうだろーし。なまじ耳がいいからね。

 でも皮膚の硬いのには閉口したヨ。全力で切りつけて1回刃こぼれを起こしちゃったからネ。

 自己再生でどうにかなる程度では済んだケド、鉄の硬さを侮ってた。これが動かない鉄箱ならなんてことはないんだヨ。でもやっぱり生き物は違う。流動するということの厄介さをこれほどまでに強く感じたのは初めてだった……

 ボクはパワーがないから技で切ってる。だからこそ正確な太刀筋でないと効果は得られない。しかもちょっとでもダメージを受けたらフォースを練れなくなるから、フォースを纏わせての威力強化や剣ビーム、奥義『大回転斬り』のような高威力技が使えなくなっちゃウ。

 一応お腹は背中ほども固くないから仰向けにひっくり返ってくれたら、重力に全体重を任せて奥義『とどめ』で一撃必殺もできるんだケド……これをすると内臓がズタズタになっちゃって肝をドロップしなくなっちゃうんだよネ……なので一撃必殺を狙えないままちまちま戦うしかなかったのである。

 

「やったー!」

 

 ようやっと斃れてくれた時には〈風タク〉リンクくん並みにぴょんぴょんはしゃいじゃったヤ。

 でも亡骸が中々消えない……消える時と消えない時があるんだケド、なんでだろ? 今ムービー中? それともガノンが瘴気と赤い月で蘇らせたやつは仮初の肉体だから消えるけど、天然物の魔物は消えない?

 この辺りは要検証……この考察が当たりだと数十年前にボクを追い詰めたイワロックは前回の厄災から生き残ってる長寿個体になっちゃウ。あながちあり得そうなのがまた……

 

 現実逃避はやめようネ……

 

 ボクは今からこれを解体して肝を手に入れにゃならんのデス。

 でもなァ、数十分も戦って、もう疲れちゃって、全然動けなくてェ……

 それに今が丁度日の最も高い頃。暑い……風が時折吹いてくるケド、ぜんっぜん涼しくなイ! こりゃハイラルの風が欲しくなるヨ……

 

「へぇ。木の葉の服にツノ付きの鬼面……アンタが森の小鬼かい?」

「ぴゃっ⁉︎」

 

 いきなり首の後ろをツイーっとされた。ダレぇ⁉︎

 

「アハハハ。あれだけ強いからどんなヤツかと思ったら随分可愛らしいヴァーイじゃないか。」

「初対面でイタズラはやめて欲しいナ……へ⁉︎」

 

 ウルボザさん⁉︎ ナンデ……っておばあちゃん言ってたっけ。キングラジークの討伐には次期族長が直々に向かうっテ。

 

「ウルボザさん?」

「おや、私を知ってるのかい。」

「キングラジークのところに来たってことは次期族長サマでしョ。」

 

 見たところ1人なのは、他の兵士たちだと雷の異能に巻き込みかねないからか、それとも1人で倒すことを族長と認めるための試練として課されているか……アレ、この場合ウルボザさまが族長になれない……?

 

 ともかくここで未来の英傑と出会えたのは僥倖と言えるネ。

 

 *

 

 次期族長と目されるゲルドの戦士『ウルボザ』は単身、『スナザラシ』に牽かれて東ゲルド砂漠に調査へと赴いていた。

 族長の一族である彼女がわざわざ1人で行動しているのは理由がある。彼女はゲルド族最強の戦士であり、また雷を操る異能を持つ。その彼女でなければまず太刀打ちできないであろうモルドラジークの亜種が目撃されたという報告があったのだ。

 その魔物の名は『キングラジーク』、鉄分を含んで鎧のようになった硬い皮膚を持つ魔物である。その外皮は生半可な攻撃を通さず、反面鉄分を含むため雷に弱い。

 

 彼女が目撃地点周辺領域に入って直ぐ、地面の下から激しい振動が感じられた。

 

「既に誰かと戦ってるのかい……⁉︎」

 

 前方、陽炎で揺れてぼやけてはいるが、白くて巨大な魔物の周りを、金色の光が飛び回っていた。

 魔物は砂地に潜るが、その都度真っ赤な爆炎に弾き出され、そのまま剣で全身を斬りつけられていく。なまじ生命力が強いために苦痛が長引く。

 

「一方的じゃないかい……」

 

 とうとうキングラジークは動かなくなった。目は片方潰され、背鰭は根本から切り落とされ、全身に大小さまざまな傷を負って。

 ウルボザは念の為スナザラシを待機させ、徒歩でキングラジークの元まで向かった。

 そこにいたのは美しい白刃の宝剣を携え、木の葉の服を纏い、仮面で素顔を隠した少女だった。ウルボザは彼女、ティリアのことを親友から聞いて知っていたのだが、話で聞くのと実際に目にするのとでは感じ方は随分と変わってくるものだ。

 単身でキングラジークを斃してしまうほどの業前。幼い肉体故にパワーと持久力で劣るが、それでも技量だけなら自身を上回るのではないか、とウルボザは思った。

 しかし話してみればこれが中々話に聞いた通りの部分がある。若さにかまけているのか、あるいは自身の性別に無頓着なのか。服から覗く白い柔肌は、日に焼けて赤くなりかけていた。女の命と言ってもいい髪は砂に塗れてキシキシだ。

 ウルボザは顔が引き攣りかけるのを堪えながら、とりあえずゲルドの街に連行した。

 

「ナンデ⁉︎」

「動くんじゃないよ。口紅がはみ出ちまうからね。」

「アッハイ。」

 

 砂で汚れた葉っぱの服を脱がせ、ハイリア人向けの『淑女』シリーズの服に着せ替え、代々の族長御用達サロンでシャンプーとヘアアレンジ、そしてメイクを受けさせる。

 

ヴォーイ(男子)禁制じゃなかったノ……?」

「何を言ってるんだい。アンタは立派なヴァーイじゃないか。」

「ひぃん……落ち着かないよゥ……」

 

 これはまた筋金入りであるとウルボザは思った。100年以上森の中で生きてきた上、同胞はいても同族はいないというわけで世間知らずかつ自身の性別に非道く無頓着。あるいは自分をヴォーイ(男子)と勘違いしているのではあるまいか。聞けばカラカラバザールには足を運んでもゲルドの街に入ったことはなかったと言う。

 

「聞いてた通りだね。アンタ自分のファッションにここまで無頓着なんて……同じヴァーイとしてほっとけないよ。」

「聞いてた通りって……あの子から?」

「そう。彼女からさ。アンタがキングラジークの肝を欲しがってたのも彼女のためだろ?」

「ウン……後は、ウルボザに会えたら伝言をお願いっテ……」

「伝言かい?」

「『近いうちに会いに行く』っテ。」

「難儀だねぇ。王族なんだから呼びつけてくれれば飛んでいくってのにさ。」

「病弱なのにネ……行動力は人一倍ダ……」

 

 彼女は昔、ティリアの使いのコログを追いかけて迷いの森に入って来てしまったことがある。それでティリアと知り合ったのだ。

 その時も3日ほど森を彷徨った後、ティリアとコログ達の奏でる『サリアの歌』を辿ってコログの森に辿り着いたのだったが、かなり衰弱しており、後少しで森の迷い子(スタルキッド)の仲間入りをするところだった。

 

「迷いの森の霧は、森の入り口に追い返すだけのハズ。だからあの子ってば霧に関係なく森の入り口付近をぐるぐる迷ってたことになる……」

「それはまた……」

 

 その後コログの森で保護した後も、熱を出してしまい、帰すに帰せない程だった。数日間看病をした後に、ボックリンによって送り返された。ティリアは彼女に『トモダチの印』として、妖精のオカリナと楽譜を渡した。

 

「それで、時々楽器の魔法でおしゃべりしてたんだケド、子供が生まれたって言うからネ、森を出たのサ。」

「へぇ。それじゃ本当に森の外は1年と少ししか知らないわけだね。……さ、終わったよ。鏡を見てごらん。」

「これが……ボク……?」

「またベタなリアクションを……」

 

  ボサボサだった明るい黄緑の髪はゆるりとしたウェーブがかけられ、白い肌に映えるピンクのチークと橙色のアイシャドウ。口紅は薄く、それでいてこれでもかと色っぽさを演出している。

 流石に女性だけの民族。女の子の魅せ方を何より熟知していた。

 今、鏡の前には正に妖精と呼ぶに相応しい少女が映っているのだった。

 

「誰だこの美少女(ロリ)……」

「アンタだよ?」

「ひぃん……」

 

 ティリアはムジュラの仮面を引っ掴んですぐさま装着しようとしたが、ウルボザに阻止された。

 

「そう恥ずかしがらなくてもいいじゃないか。むしろヴァーイとしては逆じゃないのかい?」

 

 普通年頃の娘というのはすっぴんで出歩くことこそ恥ずかしがるものである。いくら外見年齢が10歳児であっても中身の情緒はもう少し育っているべきだとウルボザは思った。

 

 翌日、ティリアはゲルドの街の訓練場で、兵士たちと手合わせを行った。無論淑女の服を着てとメイクをしたままである。今日のメイクはプロの指導を受けてティリアが自分で行なったものである。

 

「及第点だね。これからは自分でするんだよ。」

「……ジャラ。」

 

 一通りのメイクセットをもらったので逃げ場はない。ティリアの辞書に貰ったものを無碍にするという言葉はないのだ。

 これはティリアの性格を読み切ったゲルドのお姉様方の勝利である。

 実年齢では大きく上回っているはずのティリアはしかし、年の功で勝てる気がしなかった。

 

 ティリアはもはやヤケクソ気味に手合わせにのぞみ、そしてその実力をゲルドの戦士達に知らしめた。

 接近戦を仕掛ければ『盾アタック』で姿勢を崩され、そこから『兜割り』や『背面(そとも)斬り』といった大技で一本取られる。槍や弓で距離を取れば剣ビームで牽制してその隙に距離を詰められる。剣ビームにしてもクリーンヒットすれば屈強なゲルド族が1発で失神するほどの威力だ。わずかでもダメージを受ければ封じられてしまうとはいえ、そのわずかのダメージを盾を使って正確に捌かれてしまう。

 何よりゲルド族はハイリア人の男よりさらに平均身長が高い。10歳児程度の小柄な体格をしたティリアの小回りの良さに翻弄されることもしばしばだった。

 

「可愛い顔してとんでもない力だね。しかもこれで全力ではないときた。」

 

 無論本気ではある。手合わせで手を本気を出さないという不粋をするティリアではない。

 だが全力を出すにはこの訓練場はあまりにも狭い。『フロルの風』を放てば備品が悉く吹き飛び、『ディンの炎』はギャラリーもろとも相手を焼き尽くす。およそ訓練相手に放っていい技ではないのだ。『ネールの愛』に至ってはもはや試合が成り立たなくなる。その守りを砕くには白髪のライネル以上の剛腕が必要となるのだから。

 

「でも私はアンタの全力が見たい。」

「なら、河岸を変えさせてもらうジャラ。」

 

 そうして2人が移動して来たのは『砂漠の処刑場跡』。それなりに広く、ところどころに障害物や高台がある。

 懸念点としてはモルドラジークが住み着いていることだが、『ディンの炎』と『フロルの風』の爆発で砂から叩き出されたところを『ウルボザの怒り』の落雷で痺れさせられ、そこをティリアの奥義『とどめ』で急所をひと突き。いっそ可哀想なくらいあっさりと処理された。

 

「それじゃ、始めさせてもらうよ。」

「どっからでもドーゾ。」

 

 ウルボザの流れるような太刀筋をティリアはひらりひらりと躱して行く。剣と盾は収めたままだ。

 

「そこ。」

 

 剣撃と剣撃の隙間を縫うように放たれた『居合い斬り』をウルボザは『七宝の盾』で弾く。タイミングはわずかにずれ、『ガードジャスト』で姿勢を崩すことはできなかった。

 また盾を構えて生まれた死角にうまく入り込まれ、一瞬姿を見失う。

 続けて飛んできた『背面斬り』を剣を背中側に回してなんとか防ぐ。

 

「すばしっこいね。」

「それだけが取り柄。」

 

 そういうティリアの剣には赤々と輝く炎が灯っていた。『ディンの炎』をフォースに灯しているいわば『ファイアウォードソード』だ。

 ウルボザが飛び退って距離を取ると、すぐさま燃え盛る剣ビームで追撃が入る。

 飛来する炎の斬撃をウルボザは雷で迎撃した。

 瞬間、炎と電撃のぶつかり合いが爆発を起こして砂埃が舞う。

 

「♩♩♩〜♩♩♩〜」

「オカリナの音色?」

 

 砂埃で見失っているわずかの間に奏でられた魔法の曲。『嵐の歌』の効果によって上空を黒雲が覆い、砂漠にザアザアと雨が降る。砂地はあっという間に泥に変わり、強い風と雷鳴が鳴り響く。

 

「私の前で雷雲を呼び寄せるなんて……味な真似をしてくれるね!」

「雷はアナタほどうまく使えないからネ……胸を借りるジャラ!」

 

 『フロルの風』で上空にテレポートしていたティリアの『大ジャンプ斬り』が降ってくる。

 ウルボザはそれに『ジャスト回避』を合わせ、ゾーンに突入するが、ワンテンポ遅れて発生した『大ジャンプ斬り』の衝撃波で姿勢を崩され『ラッシュ』にまで持ち込めなかった。

 ただ、あれほどの高高度からのジャンプ斬り、多少の落下ダメージはあるはずだ、というウルボザの考えはすぐに覆された。即座にバックステップで距離を取ったティリアが剣ビームを飛ばして来たからだ。その手品は単純で、『大ジャンプ斬り』の着地の瞬間にだけ、コンマ数秒『ネールの愛』を展開していた。

 

 ウルボザもティリアもスピードアタッカー。お互い躱して躱されて中々勝負が決まらない。

 

「ハッ!」

 

 走るティリアの移動先を見越して『ウルボザの怒り』を放つ。間違いなくクリーンヒットするはずのそれは、ティリアの掲げた白刃剣に吸い込まれた。

 刀身こそ金属ではあるが、その柄は電気を通さぬ木製。それも迷いの森の霊力を持った大樹から削り出したものだ。凄まじい電圧でも焦げ目の1つもつきはしない。

 雷をフォースで覆った『サンダーウォード』の剣ビームがウルボザに迫る。それは雷の性質上亜光速の剣ビーム。

 しかしウルボザは冷静に剣先を地面の泥に突き立て、思い切り泥を跳ね上げた。

 サンダーウォードは跳ね上げられた泥に吸われて霧散する。

 

「なるほど、剣そのものに雷を纏わせれられるのか。……こんな、感じかい?」

「そう簡単に真似されちゃボクの立つ瀬がないなっちゃうジャラ……」

 

 電撃を纏った『七宝の剣』が振るわれる。その度に斬撃の軌跡をなぞって電撃が放たれる。

 対するティリアも剣を頭上に掲げ、『嵐の歌』で発生した雷を『フロルの風』で空気濃度を調整することで素早く刀身に落とす。

 

「そろそろアンタの魔力も打ち止めなんじゃないかい。」

「その前に決着をつけるジャラ!」

 

 実際ウルボザの指摘は正しい。何よりティリアの雷とウルボザの雷では発生のプロセスが違う。ティリアのそれは魔力を消費する魔法だが、ウルボザのそれは魔力も持つが基本は生命力のフォースから生じるもの。どちらも使えば相応に消耗するが、ウルボザの場合は生命力が残っていれば放てる性質上、打ち止めがかなり遠い。何よりティリアは魔力で強化した『嵐の歌』で雷雲を呼んでから『フロルの風』で自然の落雷の落ちる地点を制御するという手順を踏むので、ウルボザのそれより隙が大きく消耗も大きい。

 すなわち継戦能力においてティリアはウルボザに勝ち目はない。そろそろ決着をつけなければ追い込まれて負けるのは彼女だ。

 

「フーッフーッ……」

 

 多彩な発想と戦法。それに身体能力が追いついていない。いくら『感謝の理』を集めて女神像に捧げようと、それで得られる加護は後付けのもの。今は基礎が圧倒的に足りていないのだ。

 

 ティリアは盾を構えると、そのままウルボザに突っ込んで行く。右手の剣は逆手持ちにして盾の影に隠して。

 対するウルボザはティリアの攻撃がどの向きから振るわれるかを予測しなければならない。

 

 ウルボザは迎撃の構えを取った。

 

「ヤーッ!」

 

 ティリアは持っていた盾を勢いよく投げつけた。ウルボザは予想だにしない攻撃に虚をつかれる。

 盾の軌道はウルボザの右脇を掠めて逸れるルートだったが、直撃しないまでもその視線を右に誘導されてしまった。

 

「いない……後ろだね。」

 

 ウルボザの左側を通って後ろに回り込んでの『背面斬り』が来ると睨んだウルボザは回転斬りを選択する。

 遠心力に任せた重い一撃が予想通り後ろにいたティリアの攻撃とぶつかり、そして彼女の剣を弾き飛ばす。子供ゆえにそこまで強くない握力と疲労。そして自ら呼んだ雨水で滑った結果だった。

 ウルボザは無手になったティリアの首筋に剣を突きつけた。

 

「……引き分け、だね。」

「はーッ、はーッ……」

 

 肩で息をするティリアの左手が、指でっぽうの形でウルボザの眉間に突きつけられていた…その指先には圧縮された『ディンの炎』が輝いている。残された魔力全てを注ぎ込んだこれをこのまま解き放てばウルボザが迎撃の雷を落とすより速く額に穴が開くどころか、頭部丸ごと蒸発させるだろう。とはいえそうなればティリアも雷の直撃で黒焦げになるのは免れないので、どこまで行っても相打ちの引き分けにしかならないのだが。

 

 ウルボザが構えを解くと、ティリアも彼女から後ずさって離れ、指先を天に向けて熱線を解き放ち、呼び寄せた嵐を霧散させた。

 

「アハハ。いいね。楽しかったよ。」

「ひぃん……ウルボザは全然疲れてないジャラ。」

「アンタはむしろヘロヘロだね。」

「もう疲れちゃって、全然動けないヨ。」

 

 ヘロヘロと歩いて森人の盾とコキリの白刃剣を拾う。そして鞘に収めた剣を杖にしてウルボザの方に戻ってきた。

 

「振り返りは戻ってやろうヨ。」

「そうだね。アンタの化粧、雨と汗で崩れてドロドロじゃないか。」

「ひぃん……」

 

 迎えに来たゲルド兵士のソリに連れられ、2人は砂漠の処刑場跡地を後にした。

 

 *

 sideウルボザ 

 

 ティリアは帰ってすぐ、眠気に負けて私の膝に倒れ込んできた。

 こうして見ると本当に幼いヴァーイにしか見えない。およそ100歳を超えているなんてどうしても信じられなくなる。

 

「コキリ族は森を出ると死んでしまう、か。」

 

 ハイラル大森林の中にさえいる限り、歳を取らず、永遠に子供のまま生きられる。だというのに彼女は森から出てきた。それは私の親友の子、御ひい様が生まれたからだと言う。

 

 森はそれ全体が悠久の時を生きる生命だという話がある。そしてティリアもまた森の一部。彼女は森の見てきた知識を受け継いでいるのだとしたら、この先近いうちに何かしらの災いが御ひい様を、ひいてはこの国を襲うのかもしれない。もしくはコログの森で眠る『退魔の剣』が彼女に何かを頼んだのか。

 

 なんにせよ、彼女は重い決意を持って子供の時間を捨て去った。それでも、私の隣にいる間くらいは子どもらしくいたっていいじゃないか。こんなに可愛らしいんだからさ。

 

 しばらくして夕飯の匂いに釣られて起きてきた彼女は、赤面して動かなくなっちまったけど、照れてるのかい。やっぱりウブな子だね。

 




・キングラジーク
 酷い目に遭わされた。ゲルドの街で解体されて、肝はハイラル城に送られた。

・モルドラジーク
 10秒でやられた。『とどめ』で内蔵を破棄されたので肝は取れなかった。

 ゲルドのお姉様方ならティリアをほっとかないだろうな、と思って書いた話。ウルボザはまだ20代頃で、先代の族長は健在のイメージ。

 次はリトの村かゴロンシティですが、リトの村だとリーバルが生まれているか、生まれていてもまだ幼児だろうのでゴロンシティを一回挟んでからかな。
 ゾーラの里は最後です。
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