ポケットモンスター チームオブブルース 作:局務事通交ピルア
目を覚ませば知らない人になっていた……名作の映画にありがちな展開である。
「…………」
目を覚ませば見知らぬ天井だった。どういうことかと一先ずは起き上がろうとするが体が思う様に上手く動かない。
正確に言えば身体に物凄く違和感を感じている。
なにがあった?ここは何処だ?
一度に大量に情報が入ってくるので男は目を閉じた。情報が多くパニックになりそうな時は一度現実から目を背ける。目を閉じて、体内の酸素を全て吐いた。一度に入ってきた情報が多く体がビクッと反応をしている。
目を閉じるが、眠気は無い。先ほどまで眠っていたが、激しい眠気に襲われるという事は無い。自分は睡眠薬を飲まないとまともに眠れず、睡眠薬を飲んだら飲んだで効果がありすぎてて眠気に襲われる。こんな快適な感覚は何時ぶりだ?
色々と考えないといけない事があるが割とどうでもいい事に思考が奪われる。そのどうでもいい事を考えていく内に気持ちが段々と納まっていく。段々と気持ちが落ち着いていった彼は目を開いた。右を見ても左を見てもやはり子供部屋だ。いったいなにが起きているのか、なにか手掛かりの様な物が無いのかとベッドの周りを確認すればポケットモンスターに出てくるポケモン、ビリリダマ型の目覚まし時計を見つける。
こんな公式グッズあったか?
男は大人のオモチャ、そう大人向けに作られているオモチャが大好きだ。エロいアダルトグッズという意味でなく、子供向けの特撮の変身アイテム、それに役者達の声が入れられていたり大人向けのサイズになっているのを購入している。どうせ彼女は出来ないだろうし独身貴族で生き抜くかと考えており、趣味に没頭する。因みに好きな特撮ヒーローは仮面ライダークローズ。グレートクローズドラゴンは即座にポチっている。
一応はホビーグッズに関してはそれなりに知識がある彼だがビリリダマ型の目覚まし時計は見たことが無い。ただ単に見たことが無いだけかもしれないがよく見れば至る所にポケモンに関するグッズが置いてあった。
体に違和感があるどころか縮んでいるという事は別人になった。今自分が動かしている体の持ち主は大のポケモン好きか。
男はそう考えながらも鏡が無いのかを確認すれば鏡を見つけた。自分の幼い頃の容姿は何処に行ったんだ?と言えるぐらいには美形である。幼くてもコイツ将来的にイケメンになるのは確定だなと分かるぐらいの顔立ち……と言うかオセロや陰陽を表す勾玉みたいに髪が白と黒の部分がある。
今の俺はロックマンエグゼの伊集院炎山に似ている……いや、そのままか?
自分がイケメンになっているなと思いながらも、アニメのキャラの容姿になっている事に気付く。色々と情報が足りないし理解するのに追いつかない。しかし1つずつ紐を解いていく。今の自分の容姿はロックマンエグゼの伊集院炎山を幼くした感じだ。周りにはやたらとポケモンのグッズがある。いや、ポケモンのグッズしかないとも言える。
今の自分は自分じゃない……が、自分の名前はハッキリと覚えている。昨日食べた夕飯も覚えている。体に染み込ませたブラインドタッチも出来る。スマホのキーボード操作やフリック操作も覚えている。携帯電話の番号やゲームのアカウントのパスワード等も覚えている。何かそこからと考えるが分からない。
都合が良いと言えばそこまでだろうが部屋にはテレビが置かれている。窓から光が差し込んでいるのとビリリダマ型の目覚まし時計から見て朝方の時間帯だろう。ものは試しにテレビの電源を起動した。
『ニュースの時間です。ポケウッドが漫画が原作の実写映画の製作を禁止にする方針にし株主総会で』
「……」
ニュースをつければ聞いたことがあるがここでは聞いてはいけない単語が出てきた。
ポケウッド、それはポケットモンスターに出てくる……ハリウッドみたいなものだ。インド映画のボリウッドと言い間違えた、誤植かなにかかと思ったが誤植でもなんでもなく、漫画を原作にした実写映画を今後一切作らない方針と言う一時期のウンザリとした人気漫画の実写映画化が無くなったのだと少しだけ嬉しい気持ちになった。
「……なるほど……ポケモンの世界か」
男はここで自分が何処に居るのかが分かった。ポケットモンスターの世界、右を見ても左を見てもポケモングッズだらけ。見たことが無いグッズもあるので同人グッズと認識するよりポケットモンスターの世界に居ると認識した。と言うか認識せざるをえなかった。
サラリと受け入れている彼だがコレでも物凄く驚いている。ただただ声にしないし顔にしない、そういうタイプの人間である。一先ずは部屋を出た。家を出ようと思っていると今いる家が2階建ての家だと理解する。トントントントンと包丁で食材を斬る音が聞こえた。
「あら、エンザンおはよう」
「……おはよう……」
見た目も伊集院炎山で名前もエンザンなのか……
見た目からして母親ではない女性が野菜を切っていた。今から朝ご飯を作るのだろうか?と思ったが既に朝ご飯の用意は出来ている。
クロワッサンが2つ、ベーコンエッグ、レタスとプチトマト、牛乳とまぁ、何処にでもある極々普通な朝ごはんだ。どうしようかと考えていたが答えが出ない彼は椅子に座った。
「あら、エンザン。もう起きたのね」
今度もまた若い女性が現れた。
姉妹?いや、それともどっちかが母で娘なのか?……なんだか色々と展開が読めないが食卓に乗っている朝ごはんは4つだ。と言う事は後1人居るだろうと思っていると1人の男性が現れる。今度はしっかりと大人だと分かる見た目の大人だった。
「お父さん、出来たよ」
「お、手作りクロワッサンか」
「母さんは一切頼っていないよ」
大人と分かる見た目の男はお父さんで料理をしていた女性は娘、そして後から現れた人はお母さんだと判明した。
いただきますと食卓を囲む。モグモグとクロワッサンを食べるのだが自分が知っているクロワッサンと同じ味だ。もしかしたらまだ夢の中に居る可能性がある。明晰夢かなにかなのかと思っていれば母が口を開いた。
「後、一ヶ月ね……フユカが旅立つのは……これならば問題は無いわね……」
娘の手料理を食べて満足げな母は姉の名前と旅立ちについて言った。ここがポケモンの世界なのは分かった……父が後で読むつもりの新聞にポケモンのことばかり書かれていた。ポケモンバトルの大会で誰が優勝したか等もだ。
姉が旅立つ?……と色々と思考を加速させる。あの世という意味でなく、文字通り冒険をするのだろう。ここがポケットモンスターの世界ならばそれは極々普通の事だ。
「フユカ、最初のポケモンは決まったか?」
「うん……ナナミちゃんと話し合ったけど、ナナミちゃんはヒトカゲ、私はフシギダネを選ぶよ」
父が最初のポケモンが決まったことについて姉に聞いた。ナナミという聞いたことがある名前が出てきた。
ナナミ、それはポケモンの初代ライバルの姉の名前。自分の部屋の窓の外から見える光景が田舎な事からまさかと思えばマサラタウンだった。いや、その可能性があるだけかもしれないだけで違うかもしれない。そう考えていたが直ぐに否定される。
「エンザンもフユカも大変ね……フユカはナナミちゃん、エンザンはシゲルくんがライバルなんだから。2人ともオーキド博士の孫で将来性が高いわよね」
母がシゲルと言う名前とナナミという名前を出した。そしてオーキド博士という名前が出てきた。やはりここはポケットモンスターの世界、しかもアニメのポケットモンスターの世界だ。また色々と厄介な世界に来てしまったなと牛乳を飲む。
「どうした、エンザン?何時になく無口じゃないか」
「……ポケモンの勉強だけじゃなくて他も学ばないといけないと思えば、大変だなと色々と考えていたところ」
「旅をする上では色々必要だわ」
父が無口である自分に反応をしたので、ポケモン関係の知識以外を学ばないといけない事に色々大変だなと考えていたと嘘をつく。
流石に素知らぬ顔をして貴方の息子じゃないんです!と言っても信じてもらえないだろうし、本来のエンザンと言う男が居なくなった責任を取れ!と言われても困る。もし自分と同じ立ち位置に居る奴が居るのならば、そいつに転生云々を言ったりするがそう言うのが言えそうな空気は無い。
どうしたものか……
朝食を食べ終わった彼は自分の部屋に戻った。この世界がポケットモンスターの世界なのは分かった。アニメのポケットモンスターの世界だ。何故に自分がエンザンと言う男になったかは知らないが分かる情報は幾つかある。エンザンと言う男は存在しない存在だ。
伊集院炎山こと炎山はポケットモンスターのアニメが放送開始後に生まれたロックマンエグゼに出てくる主要人物だ。なので、自分の見た目が幼い頃伊集院炎山に瓜二つなのはありえないしかりにありえても中々のミラクルだ。自分が死んだわけでもないのに転生とはどういうことかと疑問を抱いていたが、身辺整理。
俺はマサラタウンのエンザンと言う男になった。
姉であるフユカは1ヶ月後にポケモンを貰い旅立つ、ライバルにはオーキド博士の孫であるナナミが居る。
その事を母が指摘し、俺にはオーキド博士の孫のシゲルが居るから厄介な世代に生まれたなと若干だが同情された。
マサラタウンのシゲル、マサラタウンのナナミ、オーキド博士の孫からしてここがアニメのポケモンの世界の可能性が大。
今のところ纏めれるものは頭の中で纏め終えた。事実は小説よりも奇なりとは言うが、ここまで奇々怪々な事も早々に無いだろう。
しかし実際に起きているのだから受け入れるしかないなと言葉を発さずに飲み込む……マサラタウンのエンザンと言う男は聞いたことが無い。しかし聞いたことが無くても存在している可能性がある……マサラタウンのサトシは最初のポケモンを貰う日に遅刻をしピカチュウを貰った。オーキド博士の孫であるシゲルはゼニガメを貰った。そしてフシギダネとヒトカゲを貰った子供が一応は居る。存在については時折チラリと語られているが、名前や特徴は一切登場しない。しかしそれでも見た目が伊集院炎山なのはおかしいだろう。
おそらくは神様の様な超常的存在、上位種の暇潰しかなにかか。
色々と考えたが答えはそれしか出なかった。今まで積み上げてきたものを返せ!と叫びたい思いがあったが、叫んだとして意味は無い。何の迷いもなく自殺をすることが出来るほどに倫理観が狂っているわけでもない。
最初からエンザンと言う男として生きるしか道は無いか……
男はエンザンと言う男になる覚悟が出来た。