ポケットモンスター チームオブブルース   作:局務事通交ピルア

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第2話

 

 男がエンザンと言う男として生きる決意はあっさりとしたものだった。泣いていたって意味は無いのを男は知っているので泣かない。

 

「……なるほどな……」

 

ジムリーダーはバッジの数に合わせて使ってくるポケモンを変える。

ポケモンは試合では技を4つしか使ってはいけない。

既にジョウト以降のポケモンもカントーで見る時がある。

ポケモン図鑑のデータの纏めの都合上、まだ全国図鑑が出来ていない。

 

 男改めエンザンはポケモンに関する勉強を始めた。努力値や性格補正、個体値、種族値等のポケモンというゲームをやり込んでいれば自然と身に付く知識は持っている。しかしアニメのポケモンの世界は知識だけでどうこうすることが出来る世界ではない。世界最強になったサトシのパーティ、ピカチュウ、カイリュー、ネギガナイト、ウオノラゴン、ルカリオ、ゲンガー……コレで世界一になるのはゲームのポケモンを知っている身からすればありえないことである。ウーラオスやザシアンなんかが当たり前の如く居るのがゲームのポケモンの世界、彼にとっての常識だ。

 

 

アニメ世界だからインフレとか色々と凄い事になっているな。

 

 

 アニメのポケットモンスターの世界……要するにホビーアニメの世界だ。

 

 有名どころで言えば遊戯王、青眼の白龍(ブルーアイズホワイトドラゴン)が世界に4枚しか存在しない。その内の3枚は海馬瀬人が独占し、1枚は武藤双六が持っていた。そしてそれを海馬瀬人が破り捨てた。3枚だけの青眼の白龍を海馬瀬人は独占している。

 

 どうでもいいカードやカードパワーが低いカードは大量生産されており、レアカードは家一軒と同じ価値がある世界観……ホビーアニメのお約束だ。それに漏れずこの世界も色々とインフレとデフレを起こしている。全員が持っていて当たり前の準伝説のポケモンを持っている奴は滅多な事で見ない。しかし冷静になって考えてみれば主人公達がおかしい、主人公補正が働いていて準伝説以上のレアポケモンと出会える可能性を手に入れている。

 

 

完全に感覚が麻痺しているな。

 

 

 ちゃんとしたレート戦に潜ればタイプ統一パ等でなく種族値が高く役割論理等をしっかりとしているパーティだらけで、基本的には準伝説のポケモンが2,3体入っている。自分が住んでいた世界は色々と魔境だがそれが当たり前になっている。自分の感覚が完全に麻痺をしていると少しだけ呆れながらも緑茶を啜る。

 

「知識は頼れるが……想像力や発想力が問われる世界だな……」

 

 ポケモンリーグでのバトルが放映されている。生放送でなく録画放送であり結果は分かっている。しかし、それでも面白いなと思いながらも自分ならばどういう風に動くのかを考え予想外の動きがあったので理解させられる。

 

 アニメのポケモンバトルでは知識方面があればポケモンバトルは優位に進めれる。しかしそれだけである。極々稀に予想外な事をしてくる奴が居て大物喰い(ジャイアントキリング)が起きる。

 

 

遊戯王の様にカードや知識だけがあれば問題ないと言うわけではない。BLEACHやジョジョの奇妙な冒険の様に能力という理不尽を押し付ける戦いではない。

NARUTOな要素が強いか?だが、NARUTOの属性とかそういうのって活かされているところはほぼ見ない。

そうなるとワールドトリガーみたいなバトルの世界……戦術をしっかりとしていたり一発芸を磨けば格上相手にもなんとか戦える世界か?

 

 

 ポケモンリーグを見ており、ここはこうすればよかったとかを考えていたが余計な事を考えてしまう。

 

 ポケモンバトルがどういうものなのかと自分の中で認識を定めようとしており、中々に上手く嵌まらない。

 

「……意外性No.1だったな」

 

 知識こそが全ての世界でなく、想像力や発想力が試される世界だ。サトシが格上相手に勝ち星を拾えていたのは周りに言われている滅茶苦茶な戦法をしているからだとエンザンは自己解釈をした。勿論、サトシ自身も成長しているが持っているポケモン、パラメーター等を考慮し更には決勝戦でダイマックス、Zワザ、メガシンカの全てを解禁させたダンデの舐めプでなんとか勝てた。

 

 どれか1つでも欠けていたら負けていた勝負だった……4人のパラメータが公表されたがサトシが意外性がNo.1、攻撃とスピードがチャンピオン達に負けていなかった。攻撃は最大の防御を素でやって時折予想の範囲外のとんでもない事をしてくる。成る程、確かにそれならば世界最強格のトレーナー達と互角に渡り合う事が出来るだろう。

 

「ちょっと走ってくる」

 

 

今の間に、体力を作っておこう。

 

 

 レジェンズアルセウスを除けばトレーナーへのダイレクトアタックの概念は無いが、この世界では険しいダンジョンを歩かないといけない。ゲームならばそれこそ自転車でスイスイっと行っているが、エンザンが乗れるのは普通の自転車だ。時速15kmぐらいだがプロは平均40km、最高速度は70km以上と言われている……要するに鍛えておかなければならない。

 

 濡れたマスクを付けて心肺機能を高める!なんていう体育会系な特訓はしない。いい歳しておっさんが春風や秋風が心地良い時期に気持ちの良い汗をかくような感覚で5km走る。

 

 

毎年1kmずつ上げるか。

 

 

 姉はもうすぐポケモンを貰うが自分は後数年必要だ……そしてやはりと言うべきか自分はモブだった。

 

 マサラタウンのサトシは居た。マサラタウンのシゲルも居た。自分が知っているサトシやシゲルだった。優等生タイプのシゲルに対しての王道的な主人公のサトシ。啀み合う事も多々あるがライバルとして対抗心をガンガンと燃やしている。そして自分はと言えば、サトシやシゲルと同じ日にポケモンを貰う名もなきモブキャラだった。

 

 

もし原作という運命に逆らうことが出来ないのであれば、俺は絶対にポケモンリーグに出ることが出来ない。

だが、俺をこういう存在にしたのだからそういう悪い意味でのご都合主義は無効化される……その逆、いい意味でのご都合主義も無い。

なんの漫画かは覚えていないが、主人公補正を無効化する能力があったな……主人公補正を運命力とギルガメッシュが言っていたし……俺の運命力はどういう風になっているのだろうか?

 

 

 色々と考えたが自分は例えるのならばメアリー・スーの様な存在なのかもしれないなと少し自虐した。

 

 ポケモンバトルが面白いというのは理解した。自分もそれに挑んでみたいと憧れを抱いた。やってみたいと興味を抱いた。だったらやるしかない。ポケモンバトルは面白いのだから。

 

 10日後に姉はオーキド博士にフシギダネを貰った。姉はポケモンブリーダーを目指したいらしく、ポケモンコンテストとポケモンリーグの2つに挑戦する。ポケモンはコンテストやバトルの中で輝くものだと姉は考えており、ポケモンをカッコよく、美しく、逞しく、可愛く、賢く鍛えたい!と目をキラキラと輝かせていた。

 

「姉さんは姉さんの思う様にすればいいよ」

 

 ライバルであるナナミはポケモンコーディネーター兼ポケモンブリーダー志望だ。ポケモンバトルも出来るには出来るが、それよりもコンテストの方が楽しいと思っている。姉とライバル関係ではあるがサトシとシゲルの様に毎回顔を合わせる度に啀み合っている関係性ではない。むしろ色々と意見を交換している関係性であり……姉は何処か引け目を感じていた。

 

 ポケモンコーディネーターとブリーダーをやっていると言えば聞こえはいいが、コンテスト向けのポケモンの育成をしていると言える。それに対して姉はポケモンバトル向けのポケモンの育成もしたいと思っている。ポケモンブリーダーは勝つことより育成をする事に対して力を入れる……が、大会に出る時はしっかりと出ている。

 

 姉が色々と思うところがあるだろうが、姉の思うがままに動いたらいい。それを言えば、姉は肩の力が少しだけ抜けた。

 

 自分がやりたいのはポケモンの育成であり勝ち負けの世界じゃない。勿論勝ち負けの世界に挑んでみたいと思うところもあるが、それよりも大事な事がある。ポケモンの育成にだけ集中しその力を発揮する場所を与えない。それはそれで迷惑なトレーナーじゃないのかと考えていたりもしたが弟であるエンザンの言葉を聞いて自分らしく行こうと決意をした。

 

 そこからは特筆するべきことはあまり無かった。

 

 ポケモンの知識を使ってオレTueeeee!と知識マウントを取るような真似はしなかった。と言うかそういう機会が無かった。

 

 通信制の学校に通う。ポケモントレーナーになった時に必要なスキルを磨く。姉であるフユカもやっていた事をしており、同い歳にオーキド博士の孫であるシゲルが居るのでシゲルに対しライバル心を抱いているサトシは目立ったがそれ以外は目立たなかった。

 

 吉良吉影の様に大人しくしているわけではない、なにか特別な事をしようとしているわけでもなかった。

 

「「うぉおおお!!」」

 

 休む時に休まないと後で痛い目に遭う。それを知っているので缶コーヒーを片手に川辺に来ていた。釣り竿を持っています釣りをする、と言う事はせずにただただ橋の上で綺麗な川を見つめる。ここはいいスポットだなと缶コーヒーを飲んで景色に癒されていると釣り竿を持ったサトシとシゲルが走ってきた。

 

「コレは俺のモンスターボールだ!」

 

「いいや、僕のモンスターボールだ!」

 

「俺が先に釣ったんだ!」

 

「僕が先に釣ったんだ!神様が未来のポケモンマスターである僕に先にポケモンを渡してくれたんだ!!」

 

 

あ、コレは知っている。サトシとシゲルの引き分けのモンスターボールだ。

引き分けのモンスターボールと言う中々に熱い展開、その展開を妨害するわけにはいかない……釣り竿を引っ張りまくっているが壊れたらそれが一番大変なのに大丈夫か?

 

 

 エンザンはサトシとシゲルの引っ張り合いを見守っている。どうでもいいことを考えている

 

「「あっ!」」

 

「…………そう来るか」

 

 古いモンスターボールを引っ張りあった末にモンスターボールは赤色の上半分、白色の下半分、そして開閉スイッチに分かれた。上半分はシゲルに、下半分はサトシに向かい真ん中である大きさを変えたりする開閉スイッチはエンザンのもとに向かった。

 

 原作と同じ展開になるかと思ったがそうはいかなかった。まぁ、こんな事もあるだろうとコーヒーを飲む。

 

「ジョイントに大分ガタが来ていたみたいだな……かなり古いモンスターボールだ……って、エンザン!」

 

「シゲル、知り合いなのか?」

 

「はぁ……やれやれ、これだからサートシくんは……僕達と同じ日にポケモンを貰うエンザンだよ……そう言えば君とは面識が無かったね」

 

「エンザンだ……サトシの事は一方的に知っている」

 

 

ここにきて、俺の存在に気付いたか。勝負に熱くなっていて周りに目が向かなかったな。

 

 

 エンザンは少し呆れつつも自己紹介をする。サトシについては一方的に知っている関係性で、サトシとは初対面だ。

 

 一先ずは自己紹介をしたのだがサトシはモンスターボールを見る。自分よりもモンスターボールの方が優先事項か、まぁ、それもそうかと納得をする。サトシは折角のモンスターボールが真っ二つになったショックを受け入れるのに時間がかかった……が、受け入れる事は出来た。

 

「コレって、引き分けだよな?」

 

「引き分け?ふざけるな!君に対して引き分けなんて敗北も同然だ!」

 

 滅多な事では手に入れることが出来ないシゲルとの勝負での引き分けを手に入れた事をサトシは少し喜んでシゲルに聞いた。シゲルは引き分けなんてありえない!と即座にコレは自分の敗北だと認めている。しかしそれがサトシの癪に触ったのかサトシはシゲルを睨む。

 

「なんだと!!」

 

「落ち着け。お互いに言いたいことは分かるがここでああだこうだ言っても意味は無い……俺もシゲルもサトシもポケモンを持って旅立つんだ。もしホントの意味でどっちが勝ったか負けたかを決めたいのならポケモンリーグで決めろ」

 

 今にでも拳が飛んできそうな険悪なムードが出る中でエンザンはサトシとシゲルの間に入った。こんなところでああだこうだと言い争いをしたとしても何の意味も持たない。ポケモンリーグで勝利する、それこそが勝ったか負けたが分かる事だ。我ながら良いことを言ったなと思っているとサトシとシゲルが驚いた顔をした。

 

 

こいつら……コレに気付いているのか………

 

 

「エンザン、そのボタンみたいなのは……」

 

「お前とサトシが引っ張りあったモンスターボールの開閉スイッチだ……コレを言い出せば元も子もないが、このモンスターボールはガタが来ていて修理しないといけなかった。サトシがゲットしようがお前がゲットしようがモンスターボールを手に入れられない」

 

 自分にモンスターボールの開閉スイッチが飛んできていることにサトシとシゲルが気付いた。喉から手が出るほどに欲しいモンスターボールに対して身も蓋もない事を言い出した。しかしエンザンが言っていることは事実……そしてその対応を見てサトシが驚いた。

 

「お前、モンスターボールが欲しくないのかよ!?」

 

「欲しいもなにも後数ヶ月でポケモン取扱免許を貰えてモンスターボールをオーキド博士から貰えるんだぞ?……それが確定しているのだから、こんな物に焦るな」

 

「こんな物って、君は喉から手が出るほどに欲しくはないのか!?」

 

「貰える事が確定しているんだ……1日でも早くにと考えているかもしれないが……待つ、と言うのもトレーナーには必要だぞ」

 

「っ!!」

 

 

普段ならば、冷静になっているシゲルが熱くなっているな。

サトシが居るから子供っぽくなっているところがある……意外な一面、と言うか怒っているな。

 

「だったら……だったら、そのモンスターボールの開閉スイッチを君が持て!君もポケモンを貰えばカントーリーグを目指すんだろう!だったらカントーリーグで君とサトシを倒し、モンスターボールを完成させる!……サトシ、君はその覚悟があるかい?」

 

「カントーリーグで優勝するのはオレだ!シゲルとエンザンから破片を貰ってモンスターボールを完成させてやる!」

 

 

 モンスターボールを完成させると宣言しシゲルは去っていく。サトシも引き分けはモヤモヤがあったのか去っていった。

 

 

もうすぐちゃんと貰えるのに……いや、だからこそか。もうすぐポケモンが貰える。それは確定事項だ。だからこそ、早く欲しい。

大人になって自力で金を稼ぐという経験をし、欲しい物が特撮の変身アイテムの限定品でしっかりと待たないと発送されないから待つ、耐えるという事は馴れている。あの2人はポケモンマスターを夢見ているから欲しいと思うのは尚更か。

 

 

「……俺だって負ける義理も理由も言い訳も何処にもない……」

 

 

 サトシとシゲルを前に色々と言っていたが、本人もなんだかんだで燃えている。

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