ポケットモンスター チームオブブルース 作:局務事通交ピルア
「いやはや、まさかエンザンが勝ち残るとはの」
「下馬評では最下位なのは気にしていませんよ」
準決勝を終えて残すは決勝戦となった。
オーキド博士的には誰が優勝しても嬉しいことなのだが、誰が優勝するかの下馬評ではエンザンがビリだった。というのもマサラタウンでエンザンは特に誰かと仲が良い関係性ではなかったので、エンザンってそんなのいるの?な状態でありそこに加えてオーキド博士の孫というネームバリューを引っさげたシゲルが居るので余計に霞む。
「マサラタウンの皆、お前さんの優勝を期待しておるぞ!」
掌返し……まぁ、そんなものか。
特別に仲が良いわけではないのになんか応援されてたり期待されていたりする。
サトシとシゲルをどちらかと言えば依怙贔屓しているところがあるオーキド博士もそうだが、自分のことを大して期待していなかったマサラタウンの人達を見て思うところはあるにはあるが、エンザンが目立ち出したからそうなっただけ。初期の頃からファンなんです!と言うガチ勢は早々に居ない。掌返しはすんなりと受け入れる。
「エンザン、コレを覚えているかい?」
「お前達が小競り合いをしていたモンスターボール、今回持てる力を全て発揮した上で自分が負けたから渡すつもりならば受け入れない。まだ大事な試合をお前はしていない」
「大事な試合?」
「サトシとのバトルだ」
「!」
ポケモンセンターで一息ついていればシゲルがやってきた。
嘗てサトシと引き分けた証であるモンスターボールを見せた。ここから勝ったり負けたりの関係性が続くと試合後に言ったが、それでもシゲルは負けを認めた。だからエンザンにモンスターボールを渡そうとするがエンザン的には不要な物なので、まだサトシとの試合を終えていないと言えばシゲルはハッとなった。
「まだまだこれからだ」
俺達はポケモンを貰って間もないトレーナーだ……結果を出すのに急ぎすぎるのも良くない。
シゲルは引き分けのモンスターボールを渡さずに戻す。
「いよいよ決勝戦だな!応援してるぜ!」
シゲルが去った後は今度はサトシが現れた。
決勝戦にまでしっかりと駒を進めたエンザンをサトシは応援をする。エンザンはその思いに応えよう!そう思わなかった。
「俺は……誰でもない、自分の為に戦いたい」
「え?」
皆の思いを背負ってとかそういうタイプじゃない。
そんな重い物は背負いたくない。何かの為に犠牲になるんじゃなく、自らの意思で戦いたい。ここまで来た者に相応しいとかそういうのはもう嫌だ。
エンザンは応援をされることを嫌がってるわけではない、応援してくれる方の為にがしたくない。漫画で他人の為に怒れるのが泣けるのが許せるのが一番強いなんて言うがエンザンはそれを理解出来ないし理解しようとしない。自分の為に戦えないのならば、自己満足の自己犠牲だと思っている。
「俺は俺の為に戦うお前達の思いは背負わない……だから、さっさとお前も来い」
「っ!」
サトシは既にエンザンにコテンパンにやらている。サトシのカントーリーグは終わったがまだ他の地方にもリーグはある。自分の思いを誰かに託すのでなく自分の思いを持ったまま歩いて高みにまで登ってこい。エンザンはエンザンなりのやり方でサトシをフォローした。
「決勝戦、か……」
思えばこういうのは初だな。
エンザンがエンザンになる前は割と普通に生きていた。調剤事務員としてドラッグストアで働こうと登録販売の資格の勉強をしたり色々としていた。ただなにかしらの大会に出たりとかは無い。負けたらその時点で終わり、その世界でゴールが見えるところまでやってきた。
エンザンは目を閉じた。結局なんで自分がエンザンになっているのかが分からない、神様の様な超常的な存在からのコンタクトがあるかと思ったが特に無い。このカントーリーグで優勝したら全てが夢オチだったかもしれない、そんな恐怖はエンザンには襲ってこない。
『さぁ、いよいよクライマックスとなりました!カントーリーグ・セキエイ大会!遂に決勝戦!先ずは緑コーナーより、フェンネル谷のジョーイさん!流石はポケモンを知り尽くした女性か、危ない場面もありましたがキッチリと勝っています』
「…………よし」
『対するはポケモンリーグ初出場!なんとポケモンを貰った年でここまで勝ち進んで来たマサラタウンのエンザン選手!1回戦から危ない場面は幾つかあったものの、それでも着実に勝ち進んできた!』
エンザンはバトルフィールドに向かった。
セキエイスタジアムの観客席は満員、決勝戦がやって来たのだと興奮が冷めない。エンザンはそのフィールドに立って深呼吸。今までも負けてはいけない試合だったがここだけは違う。ここで勝てば報われる、勝たなければ文字通り全て水の泡になる。自分の為に戦うと決めているエンザンだがそれでも色々と重圧は襲ってくるものだ。
「これよりカントーリーグ・セキエイ大会決勝戦を行います!使用ポケモンは6体のシングルバトル!交代は両者可能の時間無制限!どちらかの手持ちが3体戦闘不能になった時点でインターバルを置きます!Zワザ、メガシンカ、テラスタルは何れか1つのみ!」
審判が試合開始を告げる前にルールを述べ、スタジアムのモニターのルーレットが回る。ここまで来た以上は先に来いとか後に来いとかそういうのは思わない。なにが出ても何事もなく対応をしよう、そう決めた。
「先行はジョーイさんから!」
「いけ、ピクシー!」
「ピィ!」
「ドリュウズ、バトルスタート!」
先行はジョーイさんに決まってジョーイさんの1番手はピクシー。エンザンは無難に行くのだとドリュウズを出した。
「試合開始!」
「ドリュウズ、つるぎのまい!」
「ピクシー、かえんほうしゃ!」
試合開始で動き出す両者。
ドリュウズはつるぎのまいを舞う、ただ周りに剣を出現させるつるぎのまいではない、自らも舞うタイプのつるぎのまいだ。とあるジムのジムリーダーが使っている。それをするとどうなるのかと言えばかえんほうしゃ等のほのおタイプの特殊攻撃を受け流せる。
「っ、読めていたのに」
エンザンはポケモンを強化するタイプの技を最初に使いがちだ。
ポケモンというゲームを知っているのならばそれは極々普通の事だがこの世界ではそうではない。基本的にはフルアタック重視だったりする。
過去の試合の流れからエンザンは初手にバフ系の技を使いがち、逆を言えば攻撃を確実に1回当てる隙がある。ジョーイさんの読み通りの動きだったもののドリュウズのつるぎのまいはピクシーのかえんほうしゃを受け流した。
「ドリュウズ、アイアンヘッド!」
ドリュウズのパワーならば1回で充分だ。
ドリュウズのつるぎのまいを終えたので攻めに転じる。アイアンヘッドを指示すればドリュウズは額を光らせて突撃をする。ピクシーは受け止めようとするがドリュウズは軽々とピクシーを突き飛ばした。
「ピィ……」
「ピクシー、戦闘不能!ドリュウズの勝ち!」
「分かっていたことだけど……ビギナーズラックで勝ち進んだんじゃない、ホントに強いからここまで来たのね」
ドリュウズがアイアンヘッドをピクシーに当てればピクシーは一撃で戦闘不能になった。
ジョーイさんはエンザンを侮っていないが思い知らされる。運でなくホントの実力でここまでやってきた猛者だと。だが伊達にバトルが大好きなジョーイさんではない、このトレーナーを倒すのはとても楽しいと笑みを浮かび上げる。
「いけ、ナッシー!」
「ナッシ!」
『ジョーイさんの2体目はナッシー!くさタイプのポケモンで一見エンザン選手のドリュウズに強そうに見えますが、ドリュウズははがねタイプを持っている!エスパーも効きづらい』
「ナッシーか……ドリュウズ、アイアンヘッド!」
つるぎのまいの旨味は活かし続ける。
他の技は指示せずにアイアンヘッド一択、ドリュウズはナッシーに向かって突撃をする。
「ナッシー、リーフストームよ!」
「ナッシィ!」
「……強いが、耐えた!」
「でも、威力は落とせたわ!」
アイアンヘッドで突撃するドリュウズに向かってナッシーはリーフストームを使う。
リーフストームを浴びながらもドリュウズは突撃してアイアンヘッドを当てたが大した威力は出ていない。それどころかリーフストームで大きなダメージを受けた。だが、耐えた。リーフストームで最も威力が高い初撃を受けた。
「ナッシー、戻って!いけ、キュウコン!」
「コーン!」
「キュウコン……ドリュウズ」
「キュウコン、ほのおのうずで包んで!」
ドリュウズがはがねタイプを持っているからキュウコンなのは分かるが、それでも何故1回ナッシーを出したのか?とエンザンは疑問を抱いたが直ぐに攻めに移る。しかしそれよりも先にキュウコンがほのおのうずを使いドリュウズを包み込む。
「戻って。もう一度頼んだわよ!ナッシー!」
「ナシィ!」
「まさか……っ、ドリュウズ、つのドリル!」
「ナッシー、リーフストーム!」
キュウコンがほのおのうずでドリュウズの動きを封じた。
そこからかえんほうしゃを浴びせる事なども出来るがジョーイさんは迷いなくナッシーに交代した。ここでエンザンは勘付く。ナッシーの最高火力リーフストームを連発するつもりだと。
一発はいけるが二発目以降は厳しいぞ!
ドリュウズはなんだかんだでリーフストームを一撃耐えている。しかし、それでも大きなダメージは入っている。二発目以降からリーフストームが弱体化していくのならばどうにでもなるが、一番威力が高いリーフストームが連発されるのは厳しい。
ドリュウズはつのドリルを使う。自分を包んでいるほのおのうずを纏いリーフストームを使ってくるナッシーに突撃をするのだがつのドリルの軌道が突如としてズレた。
「っ……」
「ドリュウズ、戦闘不能!ナッシーの勝ち!」
ドリュウズのつのドリルの軌道がズレたのはドリュウズが戦闘不能になったから。
ここまでかとエンザンは素直に負けを認め、どうするのかを考える。
今回はエースに全てを託す、そのコンセプトを取っている。
その都合上、手持ちの枠が2体潰れる……残り3体で何処まで追い詰めれるかだ。
「ゲンガー、バトルスタート!」
「ゲンガーね……戻って、ナッシー。頼んだわよ、ヤドラン!」
「ヤァ」
ジョーイさんの4体目はヤドラン。互いにセオリー通りに攻めている状況にある。
「ゲンガー、シャドーボール!」
「ヤドラン、サイコキネシス!」
ゲンガーはシャドーボールを放った。それに対してサイコキネシスをぶつけるヤドラン。サイコキネシスがシャドーボールに触れればシャドーボールの推進力とサイコキネシスの念動力がぶつかり合いシャドーボールがグニョグニョとなり……だいばくはつを起こした。
「なっ!?」
技と技がぶつかれば爆発が起きるのは知っているが、こんな事があるのか!?
「ゲン」
「ヤァン……」
「ゲンガー、ヤドラン!両者共に戦闘不能!」
『な、なんということでしょう!ゲンガーの放ったシャドーボールがヤドランのサイコキネシスに反応を起こし爆発をした!この爆発!どちらの技も高威力で無いと起きないであろう現象です!』
ここでゲンガーを失う……まだ大丈夫だ。リカバリーは間に合う。
結果的に倒すことに成功しているから1:1の等価交換をしたと割り切るぞ。
ゲンガーを失ったのは割と痛手だったもののまだリカバリーが出来る。これで相手のポケモンが倒れていなかったら大損だが、相手も相手で損をしているのでセーフ。
「ジョーイさんからお願いします」
「いくわよ、エレブー!」
「サンダース、バトルスタート!」
「っ!」
ジョーイさんの5体目はエレブー、それに対してエンザンはサンダースを出した。
全ての相棒技を使うことが出来る特殊なサンダース……しかし、特性は本来の特性であるちくでんだ。相手がでんきタイプの技を使えば体力は回復する。
「エレブーがどんなポケモンか知らないはずはないわよね?れいとうパンチ!」
「シャドーボール!」
対するはエレブー、エレキブルならば特性のでんきエンジンででんきタイプの通じない。エレブーなのででんきタイプは通じるがこうかはいまひとつ、そうなると無理に拘ってでんきタイプで攻める必要は無い。エレブーは冷気を纏った拳を振り被るがそれよりも先にシャドーボールが当たった。
「戻れ!」
エレブーがサンダースに対する有効打、れいとうパンチ。
それを使っても当てることが難しいと判断したのでジョーイさんはエレブーをボールに戻しナッシーを出した。三度の登場であるナッシー
「ナッシー、ねむりごな!!」
「ホントに……ポケモンを知り尽くしているな……」
攻撃技主体な奴等が基本的には相手だからどうにもやりづらい。
ポケモンのことはある程度は熟知しているジョーイさん。
サンダースが危険だと感じたのでナッシーに切り替えてねむりごなを使うがエンザンは動く。
「エレキフィールド!からのこちこちフロスト!!」
サンダースの方が先に行動をしたのでエレキフィールドがねむりごなよりも先に展開された。その上でねむりごなを浴びるが眠らず、こちこちフロストを使う。
こちこちフロストが命中したナッシーは苦しそうにするがまだ倒れない。
「戻れ……頼んだわよ!カイロス!」
『ジョーイさん、ポケモンを素早く入れ替えている!即決即断が早い!早いぞ!』
ジョーイさんの手持ちが全て判明した。
ピクシー、ナッシー、キュウコン、エレブー、ヤドラン、カイロスの6体だ。
ジョーイさんは変に粘らない。直ぐに入れ替えて使える手を使ってくる。
「カイロス、じしんよ!!」
「っ、サンダース、でんじはだ」
あの手この手……1枚ずつだ、ゆっくりとだが1枚ずつだが薄皮を捲られている気分だ。
「ダァ……」
「サンダース、戦闘不能!カイロスの勝ち!」
カイロスのじしんを回避する事が出来ずサンダースは戦闘不能になった。
エンザンのポケモンが先に3体戦闘不能になったのでインターバルに入る