ポケットモンスター チームオブブルース   作:局務事通交ピルア

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第4話

 

「………またか……」

 

 

一応は自然豊かなトキワの森なんだが……マナーを守らない奴は何処にでも居るものだな。

 

 

 エンザンはトランセルを引き連れて川辺にやってきた。川にみずタイプのポケモンが生息しているか、その確認を既に終わらせている。川と言ってもそこそこ深い。川の水の行く先は汽水湖……エンザンは釣りを始めて数時間が経過した。目的は言うまでもなくみずタイプのポケモンを手に入れる事だ。トランセルをバタフリーにさせスボミーが居るのならば問題無くニビジムは攻略出来るだろうが、それでもみずタイプのポケモンは早期にゲットしておきたい。

 

「みずタイプのポケモンは居る筈だが……出ないな」

 

 数時間前に釣り竿を垂らしたものの、釣れるのは空き缶やビニール手袋などの所謂ゴミばかり。自然豊かでポケモンが生態系の頂点に立っているポケモン社会な世の中なトキワの森。ゴミを捨てるというのは普通にマナー違反である。

 

 

コレはスポットを変えた方がいいのか?

水の中で移動する事が可能なポケモンが居るのならばポケモン図鑑を使ってこのポケモンを探してくれと頼み引きずり出すことが出来る。とは言え、それが出来るという事はみずタイプのポケモンを持っていると同じに等しい。

 

 

 釣りは自分との勝負でもあり、下手に焦っても何の成果も得られない。今頃はシゲルはニビジムに挑んでいたりするのだろうなと考えながらも釣り糸を揺らさずにピタリと静止をしていると人の気配を感じた。

 

「お主、マサラタウンのトレーナーでござるか?」

 

「悪いな、その質問に答えたいところだが見ての通り釣りで忙しいんだ」

 

「逃げるではない!答えるでござる!!」

 

 背後から声をかけてきた兜を被った虫取り少年、名はサムライ。マサラタウンのトレーナーの打倒を掲げている。理由は至ってシンプルにゼニガメを選んだシゲルと会ったことが無いフシギダネを選んだトレーナーに負けたから。だから3度目の正直だとヒトカゲを選んだであろうトレーナーを探しており、偶然にもエンザンを見つけた。

 

 アニメのポケモンを1から10まで覚えているわけではないが、サムライについては知っている……なにせ公式チャンネルで常時見れていたから。本来であれば1人のトレーナーとしてバトルをしよう!と言いたいところだが、今の自分はみずタイプのポケモンを釣るのに必死だ。

 

「ええぃ!なにを世迷い言を!お主がポケモントレーナーであるならばやることは1つであろう!」

 

「……それもそうか……1つ、賭けるか」

 

「む?」

 

「ああ、気にするなこっちの話だ」

 

 

もしこの男に負けたのならばこのスポットから移動しよう。もしこの男に勝てたのならばこのスポットで待機しよう。

下手にコロコロ場所を入れ替えても意味は無い、と言うが釣れない場合はホントに最初からそこに居ない、0の可能性もある。0ならば0で受け入れれる。

 

 

「さて、俺はマサラタウンのエンザンだ」

 

「拙者はサムライでござる!使用ポケモンは2体のシングルバトル!交代はありでござる!ゆけ!カイロス!」

 

「カイカイ!」

 

「トランセル、バトルスタート!」

 

 互いに自己紹介をしたのでポケモンバトルを早速始める。サムライが出したのはカイロス、それに対抗しエンザンはトランセルを出した。

 

 ガキンガキンと金属音か?と思えるぐらいにはいい音を響かせているカイロス。トランセルは特に怯える事はしない。いや、トランセルの体の都合上、前を見る事が出来ない形になっている。

 

「カイロス、はさむ!」

 

「トランセル、かたくなる!」

 

 カイロスがはさむ攻撃を使ってきた。予想通りの動きだなとトランセルに回避はさせずにかたくなるを指示した。トランセルはその指示に従えば硬くなり物理防御力を高めた。高くなった物理防御力でカイロスのはさむ攻撃を真正面から受け止め……カイロスの自慢のハサミにヒビが入った。

 

「カィ!?」

 

「やはりな……」

 

 

進化して間もないサトシのトランセルの普通のかたくなるでサムライのカイロスは負けた。

だったら俺のトランセルでもかたくなるを使えばカイロスのはさむで挟まれても硬すぎてハサミの方が根を上げる。

 

 

 原作知識からしてサムライもまだまだ未熟なトレーナーだと分かっていた。ヒトカゲを使えば楽勝だが、出来ればトランセルを直ぐにでもバタフリーに進化をさせたい。

 

 カイロスは自慢のハサミにヒビが入った事で痛みを感じたのかハサミから挟んでいたトランセルを解放した。

 

「トランセル、たいあたりだ」

 

 トランセルはたいあたりでカイロスを攻撃する。しかし一撃では倒れない。これを見てやはりバタフリーになるまで頑張らなければならないなと思わされたが、それでも少しずつ攻略の糸口は見えてきた。

 

 

厄介なハサミは早々に使わせない。

 

 

「トランセル、いとをはくで縛れ」

 

 今度はこちらから攻めるのだといとをはくを指示した。見たまんまの物理アタッカーのカイロスはトランセルが放った糸に縛られる。

 

 ゲームだと素早さを2段階下げるだけの筈なのだが、この世界ではなんか拘束系の技になっているいとをはく。

 

「カィカイ!?」

 

「カイロス!パワーはお主が上でござる!諦めるな!」

 

「トランセル、たいあたりだ!」

 

 自慢のハサミを含めて全身をグルグルと糸に巻き付かれたカイロス。足は動かせるが両腕やハサミがまともに動かせない事でパニックを起こした。サムライはトランセルの糸を引き千切る様に言うのだがそこで隙が生まれた。足だけはまだ動かせるのでずつき等の激突系の技が使えるのだがサムライはそこに気付かない。

 

 

ポケモンがパニックになればトレーナーがパニックになる、か。

 

 

 トランセルが再びたいあたりを使えば今度こそカイロスは倒れた。あの状況から脱出する方法はしっかりとあった。高度な技術を求められるものでもなかったのだがトレーナーのミスで失敗をした。今、初のトレーナーとのポケモンバトルをしている。相手はとてつもない格上!でも物凄く格下!でもない、自分が駆け出しトレーナーなのでなんとも言えないレベルだ。

 

 実際にバトルをし感じ取った。本物のポケモンバトルは違うと。自分も冷静になれているものの、下手をすれば同じ目に遭う可能性がある。コレは注意をしなければならない。

 

「ぐぬぬ……流石はマサラタウンのトレーナー!中々にやるでござる!」

 

「出来ればそのマサラタウンのトレーナー、と言うのは止めてほしい……俺にはエンザンと言う名前がある」

 

「名を覚えてほしいのであれば刻め!お主が負けたトレーナー!そして拙者が勝ったトレーナーとして!」

 

「それは出来ない相談だな、その逆になるのだから」

 

「それはこちらのセリフ!ゆけ、トランセル!」

 

 どちらが勝つか負けるかはまだ分からない中で2体目に出てきたのはトランセル。トランセルvsトランセルと言うミラーマッチになった。ここでミラーマッチ……は、想定内。

 

「「トランセル、かたくなる!」」

 

 使う技は互いにかたくなる。1回、2回、3回とかたくなるを使う。

 

 

やはりこういう勝負になった……そうなると一か八かの賭けに出るしかないか。

 

 

 トランセルvsトランセルのミラーマッチになっているが、この状況はエンザンにとって想定の範囲内である。エンザンはまだトランセルしか使用していない、だからヒトカゲを出すだけで勝ちが確定。ただただひのこを当てるだけでトランセルは倒せる。

 

 しかし貴重な対人戦の場所、トランセルvsトランセルと言うミラーマッチ。得られる経験値は通常よりも多いはずだろう。

 

「トランセル、エレキネット!」

 

「なに!?」

 

 かたくなる合戦を先に終えたのはエンザンのトランセルだった。カイロスとの戦闘で使った分のかたくなるのおかげで先に動けた……だが、ここで攻撃技のたいあたりを使わなかった。エンザンはエレキネットを指示した。

 

「バカな!トランセルはたいあたり、いとをはく、かたくなるしか使えぬ筈!」

 

「残念だが、エレキネットも覚える」

 

「っま、まずい!……む?」

 

 

やはり無理があったか。

 

 

 かたくなる合戦で高まった物理防御力、たいあたりを受けてもビクともしなくなるので泥沼試合になるだろう。

 

 そんな状況をひっくり返すのはただ1つ、キャタピーの時点で覚える事が出来るでんきタイプでかたくなるで積み上げた物理防御力が意味が無い特殊攻撃のエレキネットだ。技の威力はやや低いがその分しっかりとした追加効果は持っている。追加効果は今は求めない、今求めているのは特殊攻撃と言うところ。

 

「エレキネット、出てないでござるよ?」

 

「ああ……教えていないからな」

 

 エレキネットが飛んでくるとわかり、驚いていたサムライだったがエンザンのトランセルからエレキネットは飛んでこなかった。

 

 エレキネットを覚えているんじゃないのか?それっぽいものが飛んできていないぞ?と聞けばエンザンは教えていないと素直に答えた。

 

「かたくなる合戦になった時点で、お互いに動けない……キャタピーがトランセルに進化すれば稀にたいあたりを忘れたりする個体も居るらしいが、トレーナーが育成をしているトランセルならばたいあたりは忘れていない。しかしかたくなるでたいあたりが通じない。エレキネットだけが突破口だ」

 

「……確かにこの状況ならば、エレキネットをホントに覚えるのならばエレキネットが1番……しかし、教えていないのでござるか?」

 

「ああ……言っておくがこれでトレーナー歴3日目だからな」

 

 

エレキネットは使える手だ、充分な技だが、教えている暇は無かった。

電気の網とはどういう網だ?俺はデンキウナギの様に体内で自家発電する事は出来ないから電気を体内で扱うということそのものが分からない。

 

 

 エンザンは自身がトレーナー歴3日目であることを告白した。

 トランセルはエレキネットを覚えることが出来る……が、何もせずに普通に鍛えていてある日突然勝手に覚える技ではなくちゃんとした特訓をしないと覚えられない。エンザンはつい先程までみずタイプのポケモンに執着しており、みずタイプのポケモンをゲットしてなんとかトランセルをバタフリーにし、そしてスボミーと一緒に育成をしようと考えていた。そこでのサムライの登場だ。

 

「この状況を打破する方法は2つ、1つはバタフリーに進化する。もう1つはエレキネットを使う……」

 

「バタフリーに進化させる事でなく、エレキネットに賭けたでござるか!?」

 

「ああ、なにせ昨日ゲットしたばかりでバタフリーの方が可能性が低い……だからエレキネットに賭けるしかない……まだトランセルはバタフリーに届かない。それはお前も同じじゃないのか?」

 

「む……確かに……まだバタフリーにはならないでござる…………ならばやることは1つ!トランセル、エレキネット!!」

 

「……それで使えていれば、俺はもう勝利している」

 

 トランセルはエレキネットを覚えるという情報を手に入れた。ならば自分のトランセルも使える筈だとエレキネットを指示するが、それで使えていれば既に自分は勝利しているとエンザンは呆れた。エレキネットをどういう風に覚えさせるか、互いにバタフリーに進化するという可能性を考えずにエレキネットをどちらが先に出せるかの勝負になった。

 

「トランセル、痺れる糸を出すのでござる!」

 

「イヤンイヤンセル」

 

 

痺れる糸をどういう風に解釈すればいいのかが分かっていない……

 

 

「トランセル、イメージをしろ……周りにある光、その光が体内に入っているのを……その光が上下に激しく揺れているのを」

 

 

コレが一番な筈だ。

 

 

 エンザンは自身のトランセルに問いかける。自分の中にある光が揺れていると。

 

 光は色々とあるがスゴくザックリと言えば電磁波の一種だ。デンキウナギの様に高い電圧の電気を生み出せる生物は少ないが、生物は基本的には電磁波を放っている。ならばその電磁波をコントロール出来るようになればいい。今回欲しいのは電磁波の電気……電磁波を電気に変換するには色々と機材が必要だがポケモンの神秘的な構造、そしてトランセルと言うポケモンはエレキネットを覚えることから微弱だが電気を生み出す力を持っている。

 

 要するに力の引き出し方を教えればいい。

 

「その光を1つに、何時もの様にいとをはくを使う感覚だ!」

 

「ビィ!」

 

 自分なりのアドバイスを送った結果、トランセルは黄色の糸を放った。

 

 エレキネットを覚えたか!と思ったが、サムライのトランセルは声を上げていない。

 

 

エレキネットは無理なのか……いや、電気っぽいのは出ている。

 

 

 微弱だがバチ、バチと糸から音が鳴っている。しかしエンザンの知っているエレキネットとは違う。練習のれの字も無しでエレキネットは無茶があったのかとなったがそれっぽいのは出来ている。

 

「トランセル、エレキネットの連発だ!」

 

 

今は質よりも量、回数を重ねることで覚える可能性もある。

 

 

 エレキネットを連発するトランセル。段々とエンザンの知っているエレキネットになっていく。そんな中だ

 

「イヤン!」

 

「やったでござる!!」

 

 サムライのトランセルがエレキネットを覚えた。何度も何度もコレが電気なのだと認知出来るレベルの微弱な電気を受けたせいで文字通り体で覚えた。この状況でエレキネットを覚えられたらまずい……が……

 

「あいつに出来たんだ、お前も出来るだろう?」

 

 

同じ事はお前にも出来る筈だ。

 

 

 エンザンのトランセルはサムライのトランセルからエレキネットを受けた。エレキネットに苦しみが電気が何なのかを体で無理矢理掴んだ。足りないのはパワーだけ、電気そのものは既に作れている。エンザンのトランセルもここでエレキネットを習得し、サムライのトランセルにぶつけ……互いに倒れた。

 

「っ……お主にはまだ1体ポケモンが残っている……拙者の負けか」

 

「ああ……俺の勝ちだ……」

 

 

あまり喜べないな。

 

 

 お互いのトランセルは体でエレキネットを覚えた。そして互いに限界を迎えた……出来ればサムライのトランセルを自身のトランセルで倒したかった。サムライのトランセルとバトルをしたおかげで貴重な経験値を手に入れる事が出来たが、望んだ形の勝利ではない。

 

「…………少し、焦りすぎたな……」

 

「焦りすぎた?」

 

 ポケモンバトルを終えたのでキズぐすりを取り出して自分達のポケモンを回復させるエンザンとサムライ、勝負に勝ったがモヤモヤしているエンザンは自分自身が焦りすぎていると反省をした。サムライは何のことだ?と疑問を抱いた。

 

「バタフリーに進化しないとトランセルはまともな勝負が出来ない……それは分かっていた」

 

 

育成もまだまだ足りないというのも分かっていた。ここで限界を越えろと火事場の馬鹿力を求めた、結果的には出せたが引き分けた。

火事場の馬鹿力は諸刃の剣、追い詰められてからこそ発揮するもの……色々と足りないところが多かった、それなのにトランセルに無茶を要求した。虫ポケモンは進化してはじめて力を発揮するのを知っているのに。

 

 

「知識だけのトレーナーになりかけているな……」

 

「なにを考えているかは深くは問わぬでござるが……少なくとも、後1日遅ければ拙者のトランセルは負けていたでござる」

 

 自分が知識だけの頭でっかちなトレーナーになりかけている、その事を嫌悪しているが後1日出会う日が遅ければ、エレキネットの特訓に時間を費やす事が出来たのならば、負けていたのは自分だ。サムライはそれを素直に認め、今回は自分の負けだと認めた。

 

「後、1人、マサラタウンのトレーナーが通る筈だ」

 

 打倒!マサラタウンのトレーナー!と再び燃えるサムライ、ゼニガメとフシギダネを相手にしたのだから後はサトシだけだから教えておいた。

 

 

多分、負けるだろうな。

 

 

 サムライのトランセルがエレキネットを覚えたのでかたくなる合戦になった後に特殊攻撃の攻撃手段を残している。サトシがエレキネットを覚えさせていれば話は変わるのだがこのままだとトランセルvsトランセルでサムライのトランセルが勝つ。もしサトシが勝つ要素があるとするのならばバタフリーに進化することぐらいだろう。

 

 後日、サトシはエレキネットを覚えたサムライのトランセルに自身のトランセルが倒された

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