硝子の間に咲いた火花   作:鈴木颯手

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Code42.5.

「“君がアマリア・エーレンベルクだね?”」

「……そう言う貴様はS.C.H.A.L.Eの先生か」

 

 ヴァルグレア統制学院によるアビドス侵攻を辛くも退けた先生は協力してくれたヴァルキューレ警察学校の生徒や先生直属の護衛部隊となったRABBIT小隊と共にアマリア・エーレンベルクと面会を行っていた。

 アマリア・エーレンベルクはヴァルグレア側の重要人物であり、戦闘能力も高いためにこの面会に当たって厳重な拘束を施されていた。その拘束は事情を知っている先生をしてやり過ぎと思える程に過剰に施されていたがこれでも最低限に抑えていると言われてしまっては何も言う事が出来なかった。

 

「情報は我々の元にも来ていた。しかし、実際に目にすればなんとも柔な姿をしている」

「“そうだね。その辺は生徒達にもよく言われているよ”」

 

 実際、キヴォトスという銃撃戦が日常的に行われている場所で活動しているとは思えない程に先生は普通の体型をしていた。何かしらの武術を習っていたわけでも、身体を鍛えているわけでもない。その辺にいる一般人と言われてもおかしくない姿をしていたのだ。

 それがアマリアには不思議でならなかった。何故キヴォトスでそうも活動できるのかと。

 

「“聞いているかもしれないけど君はこれから矯正局に収監される。恐らくだけど二度と出てくることは出来ない程の罰が下されるはずだよ”」

「……そうか」

 

 今回のヴァルグレアによる侵攻において市民に多数の死者が出ている以上捕まえている中で一番高い階級に位置するアマリアに全ての責任が行くのは仕方のない事だった。連邦生徒会やアビドスから責任者の引き渡しを命じてもヴァルグレアがそれに応じる事はないだろう。むしろ応じる程従順ならば今回の侵攻は引き起こしてはいないだろう。

 

「“いくら生徒であっても君たちの行いを擁護することは出来ない。どんな理由があろうとも人を殺すことはいけない事だ”」

「……それも全ては統制された未来の為に必要な事だ」

 

 アマリアは淡々と告げる。そこに感情は乗っていないかのように。

 

「先生はコラテラルダメージという言葉をご存じですか?」

「“『目的のための犠牲』だったかな? まさか今回の犠牲はそれに該当すると言いたいのかい?”」

「その通り、ですよ。我々が目指す理想社会の為には犠牲が必要不可欠です。何故ならばそれを理解できない人々が頑強に抵抗し、受け入れないからです。ですので今回のように犠牲が出てしまうのはしょうがない事、なのですよ」

「“……”」

 

 先生は一瞬声を張り上げそうになった。例えどんな目的で、どんな理由があろうともそれらは決して殺人を容認するには至らない。そう怒鳴りそうになったがアマリアの顔を見て言葉に詰まってしまった。

 

「“……君は、本当にそう思っているのか? 今回の犠牲が本当に必要だったと? どうしても出さないといけない被害だったと、心から思っているのかい?”」

「……」

 

 先生の何処か確認させるかの物言いにアマリアは何をいまさらと即答しようとした時、なぜかそれが言葉に出る事は無かった。別に口枷をされたわけでもない。口が乾いて喋れなくなったわけでもない。自信を持って答えられるはずなのにそれが出てこなかったのだ。まるで、本心ではそう思っていないかのように。

 

「……えぇ、そう……思っています、よ」

 

 結局、アマリアは途切れ途切でそう答える事しか出来なかった。無理やり吐き出すかのように喋ったがアマリアの心は大きくざわついていた。処置官として持ってはいけない大きな感情。それを鎮めようとするが一向に上手くいかない。今すぐにでも身体をかきむしりたい衝動に駆られてしまう。

 

「“……わかったよ”」

 

 そして、先生はそれだけ言うと護衛の生徒達を連れて部屋を後にした。結果、部屋には監視を行うヴァルキューレ警察学校の生徒と、悲し気な、後悔しているように表情を大きくゆがめたアマリアだけが残されるのだった。

 

 

 

 

 

 部屋を出た先生は今回のアマリアとの話を行って確信した。ヴァルグレアの生徒と言えど心の底から従っているわけではないと。本人たちも気づかない深層心理では間違っていると感じている事に。

 それが分かった以上先生の中にヴァルグレアの生徒を助けないという選択肢は無かった。一体どれだけの時間がかかるのか、そして本当に出来るのかは分からないが必ずヴァルグレアを正して生徒達を解放し、あるべき姿に戻して見せると。

 

「“何時の日か、必ず……!”」

 

 もう二度とこんな悲劇は起こしたくない。起こさせたくない。いや、起こさせてはいけないと、先生は改めて決意を新たにS.C.H.A.L.Eの先生としてやっていく覚悟を決めるのだった。

 

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