硝子の間に咲いた火花   作:鈴木颯手

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『任務はスマートに確実に』


Code45.

「逃走車両の破壊を完了しました」

「よろしい。ではエーレンベルク処置官を救助しに行きましょう」

 

 廃工場の入り口、そこに停車してあったヴァルキューレの護送車両はたった今ナディア・ヒッケルハイム率いるヴァルグレアの特殊部隊が放った無反動砲によって全車両が破壊された。そこから混乱するヴァルキューレの生徒達はピンポイント狙撃を受けて次々と地に伏せていき、ナディアが屋内へと突入する時には全員が気絶していた。

 

「所詮はヴァルキューレ。我々の敵ではありませんね」

「ですが小鳥遊ホシノとシャーレの先生が確認されています。恐らくですがまだ屋内にいるかと」

 

 ヴァルキューレの生徒に向けたナディアの嘲笑を聞きながら副官の少女が注意を促すように答えた。連日の調査でアマリアが未だアビドス自治区に留めおかれている事やヴァルキューレ側の人数などを把握しており、小鳥遊ホシノと先生が訪れている事が把握済みだった。そして、彼らがアマリアと話した後に連行される事も。

 

「分かっていますよ。シャーレの先生の指揮能力の高さは報告に上がってきています。小鳥遊ホシノもアマリア率いる地上部隊をたった一人で相手取る等本来ならば我々だけでは決して勝てない相手です」

「……失礼しました。余計な事を言ったようです」

「構いませんよ。懸念はもっともである以上正攻法ではいきません。急ぎ準備を」

「了解です」

 

 入り口を占拠した特殊部隊は周囲を警戒しつつ内部へと侵入していく。廃工場は工場用の大きな部屋といくつかの小部屋しかない為に場所の特定は容易だった。

 

「っ!!」

 

 そして、その小部屋の一つから銃撃が行われ、先頭を歩いていた生徒が諸に受ける事となり、倒れこんだ。それを見て全員が一斉に物陰に隠れる。物陰から様子を見たナディアは目を細めながら言った。

 

「ヴァルキューレの生徒が4人ですか。シャーレの先生の姿も見えますね。小鳥遊ホシノがいないという事は内部で潜んでいるか……」

 

 その時、ナディアは何かを察知して咄嗟にその場を飛びのいた。瞬間、ナディアがいた場所を銃弾が降り注いだ。上を見上げればそこには天井の鉄筋に上った小鳥遊ホシノの姿があった。

 

「またお前達か……」

「こちらの頭を狙っての奇襲。予測は出来ていますよ」

 

 ナディアはニヤリと笑みを浮かべた。小鳥遊ホシノがこちらにいるというのは好都合だった。ナディアはヴァルグレアで正式採用されている自動拳銃を両手に持つと走り出すと同時にホシノに向けて発砲する。しかし、銃口を向けた時には既にホシノは鉄骨の上から落ちるように下に降りており逃がさないと言わんばかりにショットガンを放つ。

 

「聞いていたよりも動きが鈍いですね。そう言えば退院したばかりでしたか」

「答える必要は無いよ。大人しく降参しろ」

「お断りですよ!」

 

 ナディアは部下に短く指示を出してからホシノとの銃撃戦を繰り広げた。常に動き回りながら時に物陰に隠れホシノを翻弄するナディアにホシノは盾を構えつつ冷静にナディアへと攻撃を繰り出していく。

 ガン! ガン! とナディアが放つ銃弾がホシノの盾に当たる音が響く。お返しと言わんばかりにショットガンを放てばそれは目標に当たる事なく地面や壁に弾痕を刻んでいく。

 そんなやり取りが10分程続けられた頃だろうか、二人が装備するイヤホンからほぼ同時に報告が入った事でこの銃撃戦は中断される事になる。

 

『ヴァルキューレを無力化。先生を捕らえ、アマリア高等処置官を保護しました』

『“ホシノ、ごめん。捕まっちゃった”』

 

 この瞬間から二人の攻守は逆転した。先程まではホシノが守りに入っていた。一撃で仕留められなかった以上体調も万全ではない自分では相手を仕留める事は出来ないと判断したホシノは相手の頭の足止めに徹していた。しかし、先生が捕まり、アマリアが奪還された以上そんなことを言っている暇は無くなった。

 一方でナディアは小鳥遊ホシノというここでは最大の戦力を足止めする為に積極的に攻撃してくぎ付けにしていた。ホシノは頭を抑える事で何とでもなると思っていたようだがそう考えるにはヴァルキューレの生徒達は頼りなく、ヴァルグレアの特殊部隊は精鋭過ぎた。

 様々な状況に備えた訓練を行っている特殊部隊は当然頭がいない状況での迅速な指揮官の選出、交代を行う事が出来、任務の継続が可能な程の練度を誇っているのだ。不良生徒相手にさえ後手に回るヴァルキューレの生徒ではいくら先生の指揮があっても覆す事が不可能だったのだ。

 結果、10分という時間がかかれどヴァルキューレの生徒は全員が倒れ、先生は捕えられる形となったのだ。

 

「この! どけ!」

「無理な話ですよ」

 

 故にホシノは焦りを覚えてしゃにむに突撃に出る。目の前の敵を倒して先生の元に駆け付けようとするホシノにナディアはニヤリと笑みを浮かべるとボールのような何を放ってくる。咄嗟にそれを盾で防いだホシノだが瞬間、彼女の目に激痛が走った。

 

「っ!!!!???」

「盾があるからとなんでも受け止めるのは愚策ですよ!」

 

 それは粉末状の刺激物が入った特殊なボールだった。ぶつける事で中身が飛び出し、目に入る事で激痛を起こすのだ。これによりホシノは一瞬だが激痛と視界を塞がれた事で大きな隙を作ってしまう。

 

「終わりですよ」

 

 そして、そんな隙をナディアが見逃すはずもなく、ホシノへと銃創が空になるまで銃弾が放たれた。何度も、何度も繰り返されたそれによってナディアが止まる頃にはホシノの頭上からヘイローは消え去っていた。

 

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