好きバレした掛田さんが可愛いすぎる話   作:冷泉七都

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第14話 男女合同体育

 期末考査と夏休みに挟まれたこの時期は、いつもより楽だ。

 数学とかの授業はテストを返却するだけで終わったり、テストがない教科ではアクティビティと題して遊んだりする。

 

 そして、今は体育の時間――。

 普段と異なり、男女合同でドッチボールをするらしい。

 3組と4組の二クラスをランダムに十個のチームに分けて行うということで、体育館の壁にチーム表がはられている。

 ちなみに、チームごとの男女比がほぼ同じになるように先生が調整したという。

 

「よぉっ、晴路!」

 

 そう低い声で呼ばれながら肩を叩かれて振り返ってみると、見知った顔があった。

 

「おぉ、将か――」

「俺たち同じチームだな、頑張ろうぜ」

「そうだなっ」

 

 将がグーの手をこちらに向けてきたから、俺も向け返し拳と拳をぶつけ合う。

 それで満足したのか、将はサムズアップをすると、どこかへ去って行った。

 

 すると、入れ替わるように累がこちらへとやって来た。

 

「なぁ、聞いて欲しいんだけど――」

「ん、どうしたんだ?」

「俺、風花と一緒のグループなんだよ……っ」

「おーそうか、それは良かったな」

 

 掛田さんと話せる機会ができた、と、いつも以上にニコニコ笑顔。

 そんな累を見るとやっぱり、なんだか複雑な気持ちになる。

 

「風花にいいところ見せられるかなぁ……」

 

 急に声色を変えて不安そうにする。

 喜から哀まで、表情が忙しい人だ。

 

「運動部のチカラの見せ所だろ、俺とか文化部には到底敵わないよ」

「だといいな――」

 

 手首を伸ばして軽くストレッチしながら、累はクスリと笑った。

 

「そういや、最近晴路って風花と仲良くない?」

「あー……そう?」

「そうだよ。なんか、放課後勉強してたとか聞いたし」

「あーね」

「アレなんだよね――」

 

 ヤバい。

 累になにか推測されているのではないか、と緊張が走る。

 累の恋を応援すると言った手前、そんなことを知られて仕舞えば、気まずいどころでは済まない。

 

「――夏実と同じ小学校だったんでしょ?」

 

 ふぅ――と心の中で、安堵の溜め息を吐く。

 良かった、良かった。

 

「そうそう。それで掛田さんとも話すようになって……」

「ならさ、聞いてみて欲しいことがあるんだけどさ。頼まれてくれる?」

 

 本題を言う前にYesかNoかを質問してくるのはズルいと思いながらも、一応「うん」と首を縦に振った。

 

「――風花って好きな人いるのかな……」

「なるほど」

「半年前くらいは、いるって言ってたけど、どうなんだろう」

 

 累が知るはずのないことを知っているかと、一瞬ドキッとしてしまったが、顔には出ないようにする。

 ここで「いるよ。目の前に」なんて即答できる訳もなく、俺は少し黙ってしまう。

 

「どうだろう? 聞いてみないと分かんないや」

「で、聞いてくれるのか?」

「タイミングがあったらな――」

「まじか、ありがとー」

 

 俺の左手を累が両手で包み込んで、感謝を伝えてくる。

 純粋過ぎて、恐ろしいと感じてしまう。

 

 掛田さんの回答は、聞くまでもなく俺は知っている。

 問題はこれをどう累に話すのか、それとも嘘を吐くのか。

 さて、どうしよう。

 

「もうチャイムがなるから、整列しよう」

 

 俺はそう言って、累を遠ざける。

 ほんの僅かに心が痛んだが、難しいことは後回しにしたかった。

 

 

   / / / / /

 

 

「掛田って、意外と胸あるんだな――」

「やっぱ、制服じゃ本当の大きさって分かんないもんだな――」

「なにより、ボールを避ける時に震えるのが最高だな――」

 

 休憩中の男子数名が試合中のコートを眺めながら、小声でそんな会話をしている。

 下劣といえば下劣なのだが、残念ながら俺も性別は男なもので、共感できてしまう。

 

 内野にいてボールが飛び交う中を動く掛田さんは、周りの女子の中でも特に目立っている。

 顔が良いのはもちろんだが、カッターシャツでは上手く抑えられてしまい標準くらいの大きさに見えたソレが、体操服の伸縮性を活かして本領を発揮している。

 去年も同じクラスだったが、一ヶ月ほど前、積極的に掛田さんを気にするようになってからやっと気づいた。

 

 そんなことを考えてしまっていると、掛田さんの相手コートのいかにも運動部な女子がボールを取得した。

 内野にいる女子が掛田さんのみだから、とりあえず女子を一掃したかったのだろう、その女子は掛田さんに狙いを定めたらしく、強めの一発を放った。

 

 観念して立ち止まった掛田さんの胸部に、ボールが当たろうかという瞬間――。

 累が掛田さんの前に現れて、勢いのあるボールを掴み取った。

 

「「「おぉ――」」」

 

 男子からも女子からも歓声が上がった。

 隣にいる将は、思わず立ち上がり飛び上がった。

 まごうことなきナイスプレイだ。

 これは俺でも惚れてしまうかもしれない。

 掛田さんもそうなのかもしれない。

 分からないが、それぐらい凄くてカッコよかった。

 

「浅川がいなければ、掛田の()()()()()()()()が見れたかもしれないのに――」とか呟いているヤツがいたが、気づかない振りをしておこう。

 

 男子というのは、こんなときに欲に従順な人たちだ。

 これを馬鹿というのかもしれない。

 

 結局その後、掛田さんのチームは負けてしまっていたが、累はなんだか満足そうな顔をしていた。

 

 俺と将のチームは準決勝まで行ったが、そこで敗退してしまった。

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