好きバレした掛田さんが可愛いすぎる話   作:冷泉七都

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第18話 プレゼント探し

 俺たちは、大型のショッピングモールにやってきた。

 この前、掛田さんも含めてオムライスを食べたところと同じだ。

 あのときみたいに誰かとバッタリ会う可能性が高いのだが、この辺りでこういうのに適した場所といえば、ここぐらいしかないので仕方ない。

 

「夏実――。掛田さんに渡すのって、どんなのがいいんだ? 女子高校生の普通が分からないっ……」

 

 モールのフロアガイドが映し出されたモニターを見たが、めぼしい店が見当たらず、夏実に聞いてみた。

 

「まぁやっぱり、安定は文房具系じゃないかな」

「なるほど」

「ちなみに、私はリップバームにしたんだけどね」

「うんうん」

 

 リップバームってなんだ? と思ったけど、知ったかぶりをして適当に頷いた。

 多分、唇につけるリップの亜種みたいなものだろう。

 

「じゃあ、ここ行ってみる?」

「そうだな。本当にありがと、俺だけだったら碌なもの買ってなかった」

「いえいえ、風花のためでもあるからさ」

 

 風花のためという言い方が気になったが、夏実がそう考えるのもしょうがないのか――。

 余計なことは置いておいて、とりあえず、マップで見つけた文房具店へと歩き出した夏実についていく。

 

 …………。

 

「そうだ、晴路――」

 

 向かっている途中、急に喋り出したかと思えば、こちらを向いてきた。

 

「――文房具じゃなくて、あんなのでもいいんじゃない?」

 

 そう言って視線を向け、指をさした先にあったのはジュエリーショップだ。

 値段は宝飾雑貨にしては安めだが品質が良くて評判だと、どこかで聞いたことがある。

 しかし高校生同士でのプレゼント、しかも男子から女子へとなると、ここを選ぶのはかなりのハイリスクな気がする。

 まぁ、いざこの店に行ったら、初々しいカップルだと思われて、逆に熱心に良いものを売ってくれる展開が目に浮かぶ。

 よくある話だ。

 でも――。

 

「いやいや、なんで俺が掛田さんにあれを渡すんだよ……」

「えぇー、別に良いんじゃない?」

「重すぎないか? なんか」

「風花は絶対喜ぶよっ、絶対!」

 

 確かに俺があれをプレゼントすると、嬉しがるだろうが……。

 告白してるみたいなものだし、そう思われると誤解が生まれてしまうからな。

 

「そんなこと言ってないで、早く行こう」

 

 興奮している夏実をあしらうように、足早にこの場を去っていく。

 後ろから夏実が追いかけてくるが、目当ての文房具屋に着くまではなにも言わなくなった。

 

「夏実、文房具って言っても、どういう系とかあるのか?」

「普通はシャ……いや、そこは自分で考えた方が良いんじゃない? 私のプレゼントになっちゃう」

「それもそうだな、ちょっと見てみる」

 

 夏実に正論を言われて、俺はしっかり自分の頭で決めることにした。

 それならと店の外のソファに座りに行った夏実を横目に、店を一周回って候補をいくつかつくったけれど、なにか最後の一押しが足りなくて迷う。

 

 ボールペン? シャーペン? 修正テープもありか?

 そう悩んでいるとき、一つの商品が目に入った。

 

 綺麗なオレンジ色をしたガラスペン――。

 濃い群青のインクに浸したペンで文字を書く掛田さんを想像すると、明るいイメージとは違うはずなのに、無性に似合っている気がする。

 これを掛田さんにあげたいと、あげるべきだと思った。

 

 インクとのセットで3000円ぐらいか……。

 プレゼントとしては少し高いかもしれないけど、俺は決めた。

 

 

   / / / / /

 

 

「夏実、おまたせ。待った?」

「まあまあ待った」

「…………」

 

 正直に答える夏実に、なぜか安心感を覚える。

 夏実はすぐに、俺の手に下げられた紙袋に目を遣った。

 

「で、それ、何買ったの?」

「ガラスペン」

「……へぇ」

 

 夏実が面白いのを見たみたいな表情をしてくる。

 もしかして、こういうのをあげるのはもっと違う関係の人同士だとか言うのか――。

 

「ダメだったか?」

「良いと思うよ。おしゃれで、気持ちも伝わるし」

「気持ち、か……」

 

 俺の気持ちとはなんだろう。

 

「それなら風花、喜ぶね」

 

 掛田さんに喜んで欲しいという気持ち。

 それは確かに持っている。

 今はそれを、答えにしておこう。

 

 …………。

 

「おぉ、これ可愛いじゃんっ」

 

 アクセサリーショップの隣を歩いているところで、夏実がなにかを見つけてそう言った。

 手に取ったのは青色のヘアリボン。

 

「これ似合うかなぁ」

 

 夏実はリボンをいろんな角度から見ながら呟いた。

 独り言っぽいが、確実に俺の回答を待っている感じだ。

 掛田さんがこれを付けた姿を考えてみる。

 ……うん、これも良いかもしれない。

 

「俺は似合うと思うな」

「やっぱりそうだよねっ」

「あぁ。夏実の掛田さんへのプレゼントに追加?」

「……んへぇ?」

 

 うんうんと頷いていた夏実が急に固まったかと思えば、変な声を漏らした。

 なにかおかしなことを俺は言ってしまったのか。

 そう思案していると、夏実が少し小さな声を出した。

 

「私は、私が付けたらの話をしてたんだけど……」

 

 そういうことか――。

 俺はてっきり掛田さんの話をしているのかと思ってた。

 夏実は勘違いされたことにちょっとだけ怒っている気がする。

 

「俺は掛田さんだと……」

「はぁ――」

 

 夏実がため息を吐いたかと思えば、思いもよらない提案をしてきた。

 

「――そんな似合うと思うなら、買ってあげたら?」

「俺が?」

「そう。風花なら付けてくれるよ。晴路が渡したなら、なおさら」

 

 ここで俺が夏実に何を言っても言い返されそうだったから、俺はそのヘアリボンを買うことにした。

 そして、俺の掛田さんへのプレゼントは二つに増えたのだった。

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