好きバレした掛田さんが可愛いすぎる話   作:冷泉七都

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第24話 夏祭り-屋台

 夏祭り当日――。

 建物と建物の間からさし込む西陽が眩しくて、雲ひとつない空は赤色と青色のコントラストが綺麗だ。

 この交差点で、掛田さんと待ち合わせをしている。

 

 ここに着いてから待つこと5分、集合時間の3分前、掛田さんがやって来た。

 

「割ヶ谷、久しぶりっ」

「久しぶりだな――」

 

 今回はしっかりと共感して相槌を打つ。

 しかし、そんなことよりも気になることがあった。

 

「――って、浴衣姿?」

 

 そう、掛田さんは浴衣を着ていたのだ。

 事前になにも言っていなかったから、映画館のときみたいな私服で来るのかと思っていた。

 その予想が外れたことで、驚きと感動が入り混じった気持ちになる。

 

「せっかくだし、着よっかなって」

 

 掛田さんはそう言うと、一周くるりと回転して俺に全身を見せてくれた。

 淡い色を基調とした浴衣が掛田さんに似合っていて思わず、可愛い――と見惚れてしまうほど美しい。

 

「どう?」

 

 俺に感想を求めてくる。

 嘘を吐く意味もないし、正直にこたえるべきだろう。

 

「似合ってるよ。可愛いと思う」

「かっ、可愛い――!?」

 

 そこまで言われるとは思っていなかったのか、少し叫んでびっくりする掛田さん。

 口元に両手を当てて、西陽に負けないくらい頬を赤くしていた。

 その姿までもが、とても良い。

 

 俺が掛田さんを眺めていると、掛田さんはこちらをジッと睨みつけてきた。

 

「なんなの……」

 

 どんな感情から出た言葉かは分からないが、続いて「行くよ――」と言われて腕を引かれた。

 太陽の方角へと歩いていくせいで逆光となり、眩しくて掛田さんの姿がよく見えない。

 

 そのままズンズンと、神社の方へと歩いていく。

 掛田さんの手が生温かくて、ずっと繋がれていたい。

 引かれるがままついていく、それがなんだか楽しく思えた。

 

 

   / / / / /

 

 

 3分ほどで目的地の神社の前に到着した。

 境内をみると、あふれんばかりの多くの人がいてまあまあな混雑具合だ。

 

 俺たちは意を決して、鳥居をくぐった。

 その途端、空気が変わったように、軽快な祭囃子が流れていて、威勢の良い屋台のおじさんの呼び込む声が聞こえる。

 それが、俺たちは祭りに来たんだ――と自覚させる。

 

「すごい人だね……」

 

 掛田さんは圧巻されたように言った。

 周りを見渡せば、家族連れやカップル、男女の小学生グループや男子だけの中学生の団体がいる。

 

 俺たちはこの中で、男女二人で歩いている。

 それは側から見ると、彼氏彼女の関係で間違いないと思われるだろう。

 そんなありきたりなことを考えてしまう。

 

 その思考を振り切るためにも、思いついた質問を掛田さんに投げかける。

 

「去年は来てないのか?」

「そう。ちょっと家の用事があってさ、来れなかった」

「それは残念だったな」

 

 ほんとにそうだよ――と、うなだれて悲しげな表情を見せてくる。

 しかしやっぱりそれは演技で、すぐに元の姿に戻り、俺を見て首を傾げてきた。

 

「割ヶ谷は来てないの?」

「最近は家で花火を眺めてるな。だから、五年くらい来てないかもしれない」

「へぇ、割ヶ谷の家からでも見えるんだ。いいなぁ、行ってみたい――」

 

 本気かどうか分からないことを言ってくるから、なんて返そうか迷ってしまう。

 社交辞令みたいなものなのかもしれない。

 だから俺も「ぜひぜひ」と、社交辞令とも捉えられるように言った。

 

「じゃあ、来年だね」

「楽しみにしとくよ」

 

 案外、本気で言っていたらしい。

 

 そんなことを駄弁っていると、掛田さんがなにかを見つけたのか、一つの屋台に向かって指をさした。

 

「あそこ、リンゴ飴売ってるってさ。食べたいっ」

 

 そう元気に言って、その屋台に向かっていく掛田の後ろ姿――。

 それを追いかける。

 

「一つお願いします」

「はいよっ」

 

 400円を支払って、リンゴ飴を手に入れた掛田さんは、隣に立っている俺に「持ってて」と渡してきた。

 そして掛田さんが財布を仕舞って、俺の手にあるリンゴ飴を貰おうとしたが、すんでのところでやめた。

 そして「割ヶ谷、ちょっと食べてもいいよ?」と言ってきた。

 

「いや、一口目もらうのは悪いから大丈夫」

「そう? でも申し訳ないからな……」

「いいよ、いいよ」

 

 遠慮したのだが、掛田さんは全く聞く耳を持たない。

 持たせたことを、そんなに悪いことだと思ってるのだろうか。

 それほどのことじゃないのに。

 

「……そうだ。じゃあ――」

 

 掛田さんは俺からリンゴ飴を奪うと、一口噛んで、再び渡してきた。

 

「――はい。これなら食べてくれる?」

「ぇ……」

 

 これを渡されると、なんだか掛田さんの食べかけを食べたかったみたいな人になってないか――? と不安になる。

 でも、確かに俺が言った『一口目』ではないし、そこまで食べてと言われれば食べるしかない。

 

「もしかして、わたしの食べさしは食べたくない?」

 

 わたし――とわざわざ言うのはやめて欲しい。

 俺は特に分け隔てなく食べられるけれども、掛田さんに特定されると『食べれる』と返答しづらい。

 でも、そう返すしかない。

 

「ううん」

 

 俺はリンゴ飴に齧りつこうとした。

 待てよ……。

 どこを食べれば良いのか?

 今、口が向かっているのは、掛田さんが口をつけた部分と同じところ。

 しかし、今からでも少し外して、綺麗な部分を齧った方がいいのかもしれない。

 でも、食べかけを食べたくないという話の後にそうすれば、やっぱり嫌なんだ――となりかねない。

 

 …………。

 

 俺は悩んだ末、掛田さんと同じところにかぶりついた。

 

「美味しい――」

 

 そう言って掛田さんにリンゴ飴を返すと、掛田さんはなんの迷いもなく、俺の跡がついた部分を食べた。

 

「んーっ、美味しい」

 

 掛田さんも美味しいと唸る。

 しかし俺は、掛田さんの口が気になって仕方がなかった。

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