好きバレした掛田さんが可愛いすぎる話   作:冷泉七都

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第33話 放課後練習-1

「じゃあ、晴路。ベットに座ってくれる?」

「あぁ、分かった」

 

 俺は言われるがままにベッドの端に座って、なにをするのか――と風花を見つめる。

 すると風花はなにも言わずに、俺の隣へ座ってきた。

 

 近い……、肩が触れ合いそうなほど近いところに風花がいる。

 しかも俺の方に顔を向けてくるから、緊張して少しだけ離れたい。

 でも、そんなことはできなくて――。

 

 そして風花は身体を前に倒した。

 風花の背中が見える。

 しかし直視しすぎるのはダメで悪い気がして、俺は正面に顔を向ける。

 

「風花……?」

 

 俺がそう名前を呼んで、なにをするつもりなのか聞こうと思った。

 ちょうどそのとき――。

 

「っん……」

 

 足に感じた冷たい感覚にゾクッとして、声が漏れてしまった。

 風花の手だとはすぐ分かった。

 スラックスの裾部分が、上にあげられている。

 それはだんだんと俺の足の体温と馴染んできて、ただすべすべした気持ちよさを感じるのみになる。

 

 そんな感触がある、足の方に目を遣った。

 

「足を結ぶのか……」

 

 俺の足に触れていない方の風花の手は、紐を持っていた。

 しかし――。

 

「風花、わざと触ってない? 足に」

 

 風花が必要以上に、というよりも、紐を持つ手は動かさずに俺の足を触るだけだったから、抗議の意を込めてそう言った。

 嫌かと聞かれれば、嫌じゃないが、不用意に触られると俺が持たない。

 

「あー、バレた?」

「そりゃな、ねちねちしてくるからな」

 

 前屈姿勢のまま、顔だけ俺の方を見上げてクスりとはにかみ笑いながら、反省を感じない「ごめん」を言ってきた。

 

「次はちゃんと結ぶからさ――」

 

 風花の宣言どおり、5秒くらいで俺の左足と風花の右足は繋がった。

 

 俺の足の下側は露出している。

 そしてスカートを履いている風花の足も、もちろん素肌だ。

 それが紐によって、密着させられているのは言うまでもない。

 ここから座ったまま、かろうじて見えた風花の肌はとても綺麗で、俺とぶつかってしまっているのが申し訳ないほどだ。

 

「あれじゃない?」

 

 足に向いた意識を逸らそうと、俺は風花に喋りかけた。

 

「ん?」

「風花ってスカートだからさ、このまましたらめくれちゃったりしない?」

 

 さっきまではそんなこと考えなかったのに、いざするとなったら気がついて、気になった。

 

「あーね。大丈夫、大丈夫――」

 

 それはどういう類の大丈夫なのだろうか。

 下になにか履いてるから?

 別に見えてもいいってこと?

 履いていても履いていなくても、そういう危ないことは考えてしまうから、心に悪くてやめて欲しいのだけど。

 

 どちらにしろ、俺は信頼されているっていう意味でいいのだろうか。

 逆に意識されていないから――とか言うけれども、多分、そんなことはないはずだ。

 そう考えて、頭に落とし込んだ。

 

「よし、初めは二人で歩いてみよっか」

 

 風花は元気にそう言った。

 せーの、という掛け声で一緒に立ち上がる。

 

「右足から行くよ」

 

 そう言って、風花は一呼吸置いてから――。

 

「せーのっ」

 

 俺は右足を前に出した。

 風花も右足を前に出した。

 つまり、風花は俺の左足を引っ張ることになって……。

 

「やべっ」

「あーっ」

 

 俺が倒れて、風花も共倒れしてしまった。

 ベタな展開に、なんで気づかなかったのかと思ったが、勢いで行ってしまったと反省する。

 

「晴路、大丈夫?」

 

 風花は腕を伸ばした手を床について、上から俺を覗き込む形で心配してくれた。

 

「大丈夫だよ。風花こそ怪我とかしてない?」

「うん、まったく」

「それならよかった」

 

 お互いに大丈夫と分かって、こんなことになってしまったのに対して思わず少し声を漏らしながら笑ってしまった。

 そして俺たちは、せーので立ち上がった。

 

「左右じゃだめなんだよね……」

 

 風花は考え込んだ。

 そして「あっ――」となにかを思いついて、手を打ち鳴らした。

 

「今度は、内側の足から出そうっ。それならいけるよね」

「あぁ、確かにそうだな」

 

 そうすればなにも問題はない。

 俺はなるほどと思った。

 

「「せーの」」

 

 一緒に掛け声を出して、俺は左足を、風花は右足を出した。

 こんどは上手く成功して、前に進むことができた。

 部屋の中をぐるぐる回るように、歩いていく。

 3周したぐらいで、「そろそろ止まろ」と風花が行って、だんだん速度を落として止まった。

 

「もうちょっと速くできるかなぁ」

 

 風花がそう言った。

 

「できるんじゃないか?」

 

 前に和田さんに持て囃されたからか、調子に乗ってしまっていたのかもしれない。

 

 初めはゆっくり歩き出し、徐々にスピードを上げていく。

 普通に歩くぐらいの速度になったぐらいのとき――。

 

「「っぁ――」」

 

 本当にやばいときには、かすれたような声しか出ないのだと分かった。

 急に世界が傾き、自分が倒れている途中だと気づいた。

 目の前には鏡がある。

 これに当たってしまうわけにはいかない――と、最後の力を振り絞って身体を左に曲げる。

 

 あ……。

 こちらも倒れている最中の風花と目が合った。

 俺の方が下側にいる。

 風花が下じゃなくて良かった――。

 もしそうでなかったら、風花を潰してしまっていたかもしれない。

 

 ちょうどそれを考えた瞬間――。

 俺の背中にずっしりとした振動を感じた。

 床にぶつかったのだ。

 風花越しに天井が見える。

 そしてそのすぐあと、風花が上から降って落ちて来た。

 

 ぶつかった瞬間こそ感じなかったが、少しして、痛い――という感覚が湧き出て来た。

 それなのに、俺は頭の片隅で、風花のソレが当たっていることにも意識が向いてしまっている。

 こんな状況でダメな気がしたけれど、仕方ないのだと自分に言い聞かせた。

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