好きバレした掛田さんが可愛いすぎる話   作:冷泉七都

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第4話 偶然

 日曜日の昼――12時過ぎごろ。

 

 今日は両親が家にいなくて、自分で昼ごはんを作らなければならない。

 はずだったのだが、朝起きるとダイニングテーブルに『昼食は好きにしてね』という置き手紙と現金2000円が置かれていた。

 だから俺は、近くの大きめのショッピングモールへとやって来ている。

 

 どこで食べようか――と、レストラン街をウロウロしているとき。

 

 あ……。

 

 少し離れたところに夏実を見つけた。

 目が合って面倒なことになるのは嫌で、バレないように移動しようとした……のだが、踵を返す寸前に俺に気づかれた気がした。

 こちらに向かって両手を振っているし、後ろを振り返っても夏実の友人らしき人はいない。

 しかも、俺の方へと歩いてきている。

 これは完全にバレたな――。

 

「晴路、その露骨に嫌そうな顔やめてくれるかな?」

「いや……まぁ、すまん」

 

 そんなに顔に出ていたのか。

 なんだか申し訳ない気分になる。

 

「別に良いんだけどね、なんでそうなってるのかは分かるし」

 

 分かってるなら俺の顔に突っ込まず、スルーしてほしかった――とは言えない。

 二秒ほど沈黙が流れた頃、夏実が「そうだっ」と何か閃いた感じで両手を合わせて音を鳴らした。

 

「晴路って昼食どうするかは決まってるの?」

「何も決まってないけど……それがどうし――」

「――じゃあさっ!」

 

 最後まで言う前に、俺の言葉を夏実が遮った。

 

「一緒に昼、食べない?」

「夏実と、か――?」

「いや、違……。――うんっ! そう、せっかくこんなところで会ったんだしさっ」

 

 異様に夏実が元気になって、話す口調も段々早くなっている。

 まるで何かを隠している――そんな雰囲気だ。

 

「夏実? なんでそんな早口なの?」

「べ、べつに早口になんてなってないけど?」

「…………」

「それよりも、食べるのはあそこのお店でいい?」

 

 夏実の視線の先には、有名オムライスチェーン店があった。

 なるほど、高校生の夏実らしい希望だ――。

 異論はなく「いいぞ」と言うと、夏実が俺を店へと急かしてくる。

 俺は連れていかれるまま、店の前にやって来た。

 

「すみませーん」

 

 と、夏実が店員を呼んだ。

 12時を少し過ぎたばかりだからか、店内は満席で店頭の椅子に座って待っている人も何人もいるっぽい。

 

「はい、どうしましたか?」

「二人で書いてたんですけど、三人に変更したくて……」

 

 店前に置かれた順番待ちの紙を指差しながら言う夏実。

 

 ……三人?

 さっき()()()()()と言っていたはずなのに、おかしいなと思った。

 だが、なぜそうなっているのかはすぐに分かった。

 

 夏実の指先に書かれた名前をよく見てみると、名字のところに『カケダ』と書かれていた。

 

「掛田様ですね。分かりました、変更しておきます」

 

 そして、店員は紙の文字を書き直しはじめた。

 俺は夏実を見つめる。

 すると夏実はバツが悪そうな表情で、明後日の方向を向いた。

 

「掛田って……、掛田さんもいるってこと?」

「嘘を吐かないで言ったら、まぁ、そういうことだね」

 

 やっぱりそういうことなのか――。

 

「じゃあ、なんでさっきは二人だけなんて言ったんだ?」

「……それは晴路、風花もいるって言ったら、どうせ来なかったでしょ。だ・か・ら」

 

 だ・か・ら、じゃないんだが……。

 昨日、掛田さんと仲良くなっていこうと決心したのだが、急に一緒に食事をするというのは話が違う。

 しかしここまで来てしまったし、店員に人数変更までしてもらったし、今から断れそうにない。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

「夏実、お待た……せ……ぇ……え?」

 

 ハンカチで手を拭きながら戻って来たらしい掛田さんは、開いた口をそのままに唖然としている。

 こりゃあ、誰でも驚くに違いない。

 

「なんで割ヶ谷がここにいるっ!?」

「そこで見かけたから、私が来たら――? って呼んだの」

 

 概ね合っているが少し語弊がある言い方をする夏実。

 

「ふーん……」

「風花は別にいいよね? 晴路も一緒で」

「――まぁ、いいっつーか……」

 

 掛田さんの少し言葉が詰まってする返事も、俺のことが実は嫌いだからじゃないと分かって聞くと、なんだか嬉しさみたいなものしか感じない。

 でももちろん、その嬉しさが恋とか愛とかから生まれたものではないというのは、ひしひしと思い知らされる。

 

「曖昧な答えだねぇ」

「なっ。――いいよ。割ヶ谷と一緒でいいっ」

「らしいよ、晴路」

 

 夏実は俺にどんな返答を求めているのか、なんて返せばいいのか――。

 まだまだ恋愛弱者の俺には到底分からない。

 だから頷くことしかできなかった。

 

 

   / / / / /

 

 

「こちらの席へどうぞー。ごゆっくりー」

「ありがとーございまーす」

 

 席に案内された俺たちは、俺対夏実と掛田さんみたいな構図で座った。

 

 …………。

 

 話すことが思いつかない。

 夏実、なにか話して話題を振ってくれ――。

 

 そう願っても夏実はただニヤニヤしているだけで、役に立ちそうもない。

 コイツはダメだ……と諦めたその瞬間、夏実ではなく掛田さんが言葉を発した。

 

「割ヶ谷、夏実に無理やり来させられたっしょ。なんかごめんね……」

 

 店の中での一言目は、そこはかとなく暗い雰囲気だった。

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