少年が居たのはただ真っ白い空間だった。
「……ぅん?………何処だ、ここ?」
なんだここ?俺寝たはずだよな?……えーじゃあ夢?ここ夢?えっらいリアルな夢だな。
少年が私案に暮れている最中、ふと気配を感じその方へ向くと人が立っていた。
「…ん?…なんだじいさんか」
目の前に居たのはいかにも物腰の柔らかそうなおじいさんだった。
「…中身のない反応じゃのぉ」
「そんなこと言われましてもねぇ…」
と言って肩をすくめた。
「……………」
「……………」
二人ともしばし無言。その場に静寂だけが流れた。
最初に口を開いたのはおじいさんの方だった。
「お主の表情が変わらないのは何か訳があるのかの?」
少年がピクリと反応した。
おじいさんが少年に聞いたのはそんなことだった。普通ならなぜそんなことを?と思うかもしれないがこの少年は今の今まで全くと言っていいほどに無表情なのだ。
少年はしばらく何かを考えていたがやがて、ポツポツと話始めた。
「……俺は今まで文字どおり歯を食い縛って生きてきたんだ」
「俺は何をするにしても要領が悪くってさ…物を覚えるのだって人の何十倍も頑張らなきゃいけなかったんだ」
「子供の頃からだったからその頃から必死だったよ。初めは親も褒めてくれたよ…頑張ってて偉いねって、でも初めだけだった。中学になったときは何でこんなことができないのって叱られたよ。出来てたと思ったんだけどなぁ…」
「中学後半になってからは何も言われなくなった。顔を合わせただけで嫌な顔をされるようになったな。親にそんなことされるとは思ってなかったからショックだったよ」
少年は自嘲気味に語り、おじいさんはただ黙ってそれを聞いていた。
「その頃からかな、俺が笑ったり出来なくなってることに気がついたのは。楽しいことは無かったよ、辛かっただけだった、でもやるしかなかった。だから………」
少年が喋っている最中におじいさんが『もうよい』と言って少年の言葉を止めた。
「……その歳で随分と無理をさせたのぉ」
と言っておじいさんが髪を撫でてきた。
「……じいさん、俺はもう子供じゃないんだが」
「ワシから見たらまだまだ若僧じゃわ」
「まぁ、神サマから見たらそうでしょうね」
「む、なんじゃ気付いておったのか?」
「えぇ。だって完全に真っ白い空間ですよ?そんなもの現代にはありませんし……まぁ俗に言うテンプレってやつですよ」
「なるほどのぉ、最近は全く動じない輩が多くてつまらんかったのはそういう訳じゃったのか」
おじいさんはふむふむと頷いていた。
「あ、と言うことは俺は死んだんですか?」
「そういうことになるのぉ。ちなみに死因は過労と心臓発作発作じゃ」
「えぇー………」
少年とおじいさんがそんな話をしていると少年の体が透け始めていた。
「!?」
さすがに驚く少年。意味が分からないと思いおじいさんの方を向く。するとおじいさんはその意図が伝わったのか説明してくれた。
「それはもうすぐ違う世界へ転生すると言う合図みたいなものじゃ」
「え?転生ですか?まだ何処に行くとか決めてないんですが?普通は貴方が決めるのでは?」
おじいさんは俺の問いに首を横に振って答えた。
「ワシはただの案内役みたいなもので決めるのはワシよりもさらに格上の神なのじゃ。大丈夫、心配せんでいいぞ。お主に合った世界に連れて行ってもらえるからの」
俺はなるほどと頷く。
俺の体がほとんど消えかかっていたときおじいさんがあっ、と思い出したかのように言ってきた。
「お主にワシからのささやかな贈り物がある。一つは行ってみたらわかるからの。二つ目はすぐではないが必ず役立つはずじゃ」
そう言ったあとおじいさんは『達者での』と言った。
それに俺は笑顔か分からない笑みを浮かべ、消えていった。
少年が消えた後、誰に言うまでもなく一人呟いた。
「あの少年ならきっと大丈夫じゃろう。頑張るのじゃ、挫けてはいかんぞ」
そう言って彼は何処かへ消えた。
いかがでしたでしょうか?こんな物語でも構わん!と思って下さる方々、ありがとうございます!次は設定です。