※EOCからEOSへ修正しました。
あれから、訓練しようとしていたが訓練機が全て貸し出されていたので諦め、体力作りに励むことにした。EOS『イオス』(Extended・Operation・Seeker)は誰も使っていなかったので使わせてもらえた。
しかしこの時間帯EOSを纏って走ると視線が痛いので格納庫の中で手足を動かす訓練をすることにした。
格納庫に行くと水色をした髪の女の生徒が中を覗いていた。
何やってんだ?と思ったが気にしないことにして通りすぎた。通りすぎたとき目が合った気がしたのでお辞儀もしておいた。
◇◇ ◇◆◇◆◇
中に入ると先ほど格納庫を覗いていた人と同じような髪色をした女の子がいた。
姉妹かなと思ったが何やら熱心に空中ディスプレイに打ち込んだり確認したりしている。邪魔しては悪いなと思い、音をたてないようにEOSを動かした。
片手を水平に移動させてそこから上へゆっくり上げる。その時足もゆっくり動かし体重移動させる。八極拳?もしくは太極拳の要領なのだが詳しくは知らないので見よう見まねが付く。
しかしこれが地味にきつい。ゆっくり動く分、負荷がかかる。只でさえ重いEOSなのだから負荷は半端ではない。だが何事にも慣れというものがある。初めの頃に比べれば幾らか慣れたと言える。
そこからEOSを降り、ついでに空手の型も練習した。激しい音をたててはダメなのでこっちもゆっくり動いたが、良い経験になったと思う。
「……ふー……」
疲れたので一息つく。やったことがない練習だったので大分息が上がっていた。
ふとディスプレイを叩く電子音が聞こえなかったので視線を水色の髪の女の子へ向けると視線がかち合った。すぐに反らされたがチラチラとこちらを見てくる気配がする。……邪魔しちゃったかな?
そう思ったので、暫く息を整えてから格納庫を出た。出た時まだ覗いている女生徒がいた。ストーカか?と思ったが中に居るのは同じ髪色の女の子だけだ。心配しているのだろうと思い気にせず自室へ戻った。
◇◇ ◇◆◇◆◇
簪side in
私の名前は更識簪(さらしき かんざし)。ISの授業が終わると私は何時も格納庫(ここ)に来ていた。私の専用機を作る為に。
「……………はぁ…」
今日も私は格納庫に来ていた。先程から調整・確認中だった【マルチ・ロックオン・システム】の簡易試験を行っていたのだが、やはり四八基すべてを独立で稼働させることが出来ないでいる。
さっきから…いやここ最近ずっと、私はこの【マルチ・ロックオン・システム】の開発を行っていた。いい線どころか〝まったく〟だった。それどころか私には出来ないのでは?という思いまで浮上してくる。同時に私を縛り付ける言葉まで聴こえて来そうで私は慌てて頭を振った。
「……あれ?」
そこで気が付いた。私以外の誰かが居ることに。彼女…いや彼は打鉄を纏い、体を動かしていた。私に気を使っていたのだろうか?音をほとんどだしていない。
しかし、ただ体を動かしているだけなのに何故か見入ってしまう。
特別な動きはしていないと思う、だけど『綺麗』だとそう私は思った。彼がこちらを見たので慌てて目を逸らす。
その後もチラリと彼を見たが息を整えたら出ていってしまった。彼は一体誰だったのだろうか?そんな疑問が残った。
「……本音なら、知ってるかなぁ」
ポツリと呟いた言葉はそのまま空気に溶けていった。
簪side out
◇◆ ◆◇◆◇◆
部屋に戻って来たのは良いが、扉の傷が気になる。……まぁ応急処置として同色のテープを貼り付けてカモフラージュをする。うん、いいだろ。
そして自室へ戻った時俺は戦慄した。空きのベットの段ボールが動いていたのだ。いや動いているのを見たわけではなく、初めて見た場所から明らかにずれているのだ。
中に鷺ノ宮の奴が入って動かしたと言う線もあるが入って来るときちゃんと鍵が掛かっていたし、何よりも問題の段ボール以外変化がない。
一応無くなっているものがないか確認したが、何も無くなっていなかった。
…………謎だ。というか不気味だ。どうすんだよ、学食行こうとしてたのに行く気無くしちゃったじゃないか。
「……はぁ。何か作るか」
怖くて部屋を開けられん。その日は、軽く夕食を作って食べた。
そのあとは久しぶりにドイツ語を見たので何となく調べて勉強していた。
◇◆ ◆◇◆◇◆◇◆
翌日特別何もなかった。いや……あるにはあった。
昨日作っておいて朝に食べようとしていた汁物とかが無くなっていた。あとなんかベットのシーツとかがピチッと綺麗にされていた。お…俺の寝ている間に一体何が?
気になる所ではあるが俺は【ウォーター・リリー(Water・lily)社】社長、水面さんに呼ばれていた為、特に何も出来ない。また何かあったら先生に相談しよう。
水面さんに呼ばれた理由は新しい装備が出来上がったから試して見て欲しいとのことらしい。
朝から呼ばれたので授業は出れない。従ってボーデヴィッヒさんにも今日の内に手紙の返事を出せるかわからんのだ。
どうしようかと悩みながら学校を後にした。あ、ちなみに【ウォーター・リリー社】の場所まで社員かな?何かでっかい車で送ってもらった。あんな車初めて乗ったぜ。
◇◇ ◆◇◆◇◆
結局昨日一日は会社にいた。試作機の扱いに夢中になってしまっていて、すっかり夜になってしまっていたのだ。
それから水面さんたちのご厚意で応接室に泊まらせてもらった。ありがたい、ありがたい。
まぁ、一日ずっといてわかったことは俺に刀はあまり向いていないってことかな。
「部屋ありがとうございました。学校ももう始まってしまうのでそろそろ帰りますね」
「うんうん、全然オッケーだよー。部屋余ってるし、何ならまだ泊まっていてもオッケーだよ~」
いやいや、さすがにそれはいかんでしょ、と思っていたのだが反対どころか賛成の意見があがった。
「おう、泊まってけ泊まってけ。そのほうがこいつらも喜ぶぞぉ」
この人は三木 大葉(みき おおば)さん。昨日はもう二人いたのだが見送りには三人でじゃんけんして三木さんになった。三木さんはウォーター・リリー社の社員の一人であり、開発者の一人でもある。作業服でボサボサの髪、無精髭も生えているが優しい人である。そして二人の子持ちだ。結婚はしていたが別れたらしい。
そして当時どちらかと言えば懐いていた三木さんについて行ったそうだ。今では俺の子だ、とか豪語している。
「司兄ぃ、もう行っちゃうの?せっかく会えたのに……」
「……つか兄ちゃん…泊まっていかない?」
女の子の藍(らん)に男の子の彼方(かなた)。年は共に14歳。俺の幼い頃の知り合いの内の二人だ。
藍は茶色っぽい黒髪をポニーテールにし、こちらも作業服を着ている。性格は明るい子で人懐っこい。
彼方は少々髪が長めだが所々ぴょんぴょんはねている。性格はあまり喋るのは得意ではないが責任感が強く、思いやりもある子だ。彼方も作業服を着ている。二人は三木さんのIS整備を手伝っているんだそうだ。
まさか二人と再会するとは思っても見なかったため大変にテンションが上がってしまった。
「うーん、さすがに泊まりは……出来ないかなぁ、ごめんな?………あ、そうだ水面さん、近々学年別トーナメントをやるのはしっていますよね?」
「うん、知ってるよ~」
「それに藍と彼方も連れて行ってくれないでしょうか?」
「うんうん、全然オッケーだよー。というか全員で行く予定だったけどねー。せっかく司君が出るんだものー応援しなくっちゃね?」
ほぅ、よかった。これで無理とか言われたらどうしようかと思ったぜ。まぁ水面さんが『無理』っていうのが想像出来んしな。そして試作機がどんなもんかというのも兼ねているんだろう。
「……ねぇ、つか兄ぃ。皆も来れるの?」
俺の服の裾を引っ張りながら彼方がそう尋ねてきた。
「うーん…どうなんだろ?呼びたいけど無理なんじゃないかな。それとまだ俺がIS操縦者になったこと言ってないし」
「そっか残念だな…でもつか兄ぃには会えるから仕方ないかぁ……」
彼方は少し残念そうにそう呟いた。隣にいた藍も残念そうにしている。
「…そうだな、近々帰ろうかと思っていたから一緒に行くか?」
そう言ったら、二人とも顔を見合わせ同時に『行く!!」と嬉しそうにそう口にした。
「…あっ……すいません三木さん、勝手に決めてしまって……」
「おう、気にするな。藍と彼方があそこまで嬉しそうにしているんだ、俺も嬉しいんだぜ?俺のことは気にせず行って来るといい」
『はい、ありがとうございます』と三木さんに言い、そこから暫く水面さん達と話してからリリー社を後にした。
◇◇ ◇◆◇◆◇◆◇
時刻は現在八時。授業までまだ少しだけ時間があるので支度をするために自室に戻った。
そして戻ったのを若干後悔した。
「――一樹様、早く支度をして頂けなければ授業に遅れてしまいますよ?それに長崎様もいつお戻りになられるかわかりませんので早く起きてください」
自分の部屋から女の人の声がしたのだ。思わず番号を確認したがあってる。
思考は混乱の極みに達していたが、誰か確認のためにそっと覗く。
メイド服を着た美人さんがいた。先程の声はこの人か。
金髪がキラキラと輝いていてオルコットさんとはまた違った綺麗さがある。
「………あと、5分」
対するは、ベットに顔を埋めてぐったりとしついる奴だった。
………誰?鷺ノ宮の奴がこの部屋に来るっつてたけどあんな布団の上で全力で脱力してる奴なんて知らねぇぞ?
「まったく、いつも言っていますが公の場でないときにだらけ過ぎです。………あら?これはお恥ずかしい所を、おはようございます長崎様」
たぶん…鷺ノ宮に怒っていたメイドさんが俺に気付き、自然な動作で頭を下げてきた。
「あ、はい。おはようございます」
「今、一樹様のお支度を終わらせますのでご心配はなさらずに。あ、それとお味噌汁大変美味しかったです」
「……え?あの、もしかして昨日味噌汁が無くなっていたのって、貴女が食べたんですか?」
「はい、そうですよ」
これで昨日の犯人が分かったが、まだ気になることがあった。
「……あの、どこにいたんですか?鍵は掛けていた筈なんですが」
そう、鍵は掛けていたのだ。朝はしっかり鍵は掛かっていたし……。
「あぁ、そのことでしたら、ほらあちらに?」
手をスッと移動させ俺も顔をそちらに移動させる。そこには一段と大きかった段ボールが……って、え?
「……だ、段ボールですか?」
「はい、わたくしそちらに入っておりました。わたくしそう言った術も心得ておりますので」
そう言った術って何!?……はっ!?困った時の織斑先生だ。そう想い体を反転させバッと駆け出した。
取り合えず職員室を目指し、織斑先生に会えたのだが廊下を走るなと怒られた
「それで何の用だ?」
「い、いやそれがですね、俺の部屋は鷺ノ宮の奴と同部屋じゃないですか?」
「あぁ」
「それなのに今朝部屋を見たら金髪の女の人がいたんですよ、メイド服の」
「………金髪のメイドかは知らんが、鷺ノ宮がここに来るときに親御さんから連絡があってな。『一人使用人を送る』だそうだ。何でも私生活はだらしないんだそうだが……」
あっ、じゃあそれだわ。すんげぇだらっとしてたもん。
「はい、だらしないですね自分もびっくりしましたよ」
「そうですね、一樹様は私生活では力を抜いて生活しておられますね。まぁ今までの反動で御座いましょうか?」
ん、今の声は?と想い振り返る。すると件のメイドさんがいた。
「どうもお初にお目にかかります、織斑千冬様。そして先程はご迷惑をお掛けしました、長崎司様」
声の主は先程、俺の部屋にいたメイドさんだった。
は、早い。というか何で俺の場所が分かったんだ?
「……ブランケットさん、昨日は何処に?」
織斑先生はこめかみを押さえ、ブランケットさんとやらに聞いた。
「昨日は、一樹様のお荷物の中に、強いては長崎様の部屋におりましたね」
その答えを聞いた途端、『はぁ』とため息が聞こえた。
「そういう行為は止めて頂きたい。今回は仕方ないとしても次回はないですよ。それに貴女がここにいるのは特例でと言うことなのでそれはお忘れなく」
「ふむ、それは鷺ノ宮様から詳しくお聞きになったと言うことですね?」
「そういうことになります。ただ、今だに信じられませんがね」
「そう言うのであればお見えになりますか?まだ、くたっとしていますよ」
「いや、そこはもう長崎との共同部屋ですから、私の了承だけでは行けませんね」
マシンガントークとはこの事かと会話について行けずにいたら、織斑先生に話をふられた。
「長崎、帰ってきたばかりですまないがお前の部屋にお邪魔してもいいか?」
「あ、はい。構いませんが……あの、そちらの方は一体誰なんですか」
疑問に思っていたことを織斑先生に聞くと、先生は目で紹介を促した。
「おや、これはこれはとんだ失礼を。わたくし一樹様のお世話をさせて頂いております、セシリー・ブランケットと申します。長崎様どうぞよろしくお願いします」
そう言ってスカートの両裾を摘み、頭を下げて挨拶をした。
自然な流れるような動作だったのでみいってしまった。ハッとしてこちらも挨拶を返す。
「……えっと、長崎司です。よろしくお願いします、ブランケットさん」
「わたくしことでしたらどうぞ気軽にセシリーとでもお呼びください」
「いえいえ、さすがにそれは……ブランケットさんが精一杯です」
初めて会った人、それも女の人ならとくに呼び捨てなんて出来ない。何か、失礼にあたりそうで。というか女の人にこんなこと思うなんてちょっとあれだがブランケットさんって絶対年上だよね?対応が年上にしか見えない……。
そんな心境を知ってか知らずかブランケットさんは『あらあら』と微笑んでいた。
◇◇ ◆◆◇◇◆◆
部屋に戻るとやはりと言うか、鷺ノ宮がベットでつぶれていた。
「……これは」
あぁ、織斑先生がびっくりしている。口を少し開けて、目も少しだけ見開いている。こんな表情は初めて見たな。普段が凛としているだけあって中々にレアな表情だな。
まぁ、普通びっくりするよね。初めに会った人が完璧な感じの人で家柄も確りしているのに実は素の顔がこんなにだらっとしているなんて知ったら。
「……ぅん……ぁ……お、織斑先生!?お、おはようございます!」
うおぅ、寝惚け眼(まなこ)から織斑先生を見つけた瞬間、即飛び起きたよ。ただ悲しいかな、寝癖と格好で台無しになってる。
「あ、あぁ、おはよう」
ほら見ろ。織斑先生がまだ面食らっているぞ。それだけ衝撃的だったんだな。まぁ俺もだが……。
「ちょっ…ちょっとセシリー、もうこんな時間じゃないか!なんで早く起こしてくれないのさ!?」
「わたくしはいつものように何回もお呼びになりました。しかし『まだ…』や『あとちょっと…』と時間を先延ばしにしたのは一樹様でございます」
うっと言葉に詰まり、こちらを見る鷺ノ宮。いや、こっちを見られてもなぁ。
「長崎君も何か言ってやってくれ!というか起こしてくれたってよかったじゃないかっ」
「お、おう。何かすまん」
あれ?何で俺怒られてんだ、おかしくね?
「……長崎と鷺ノ宮、あとブランケットさんは放課後私の所に来てください。ちょっと話し合いましょう」
「取り合えずブランケットさんは用務員としてこの学園に来たということになっていますので、今日からお願いします。詳しくは轡木 十蔵(くつわき じゅうぞう)さんに聞いてください。長崎と鷺ノ宮、もう少しで授業だ、早くしろよ」
最後に織斑先生は『朝からすまんな』と言って去って行った。まぁ、なんだ、俺も早く準備しよう。
◇◇ ◇◆◆◇◇◇
朝、ボーデヴィッヒさんが教室に来たとき、俺は前の手紙の返事を言った。答えは『YES』。是非一緒にタッグで頑張りましょう、と言うことだ。
反応は『あぁ』とか『よろしく』とかしか返ってこなかったがその後にやった授業で、ペアを組んで模擬試合をやって見たのだが中々に動けているそうだ。よかった。
『今日は無理ですが、明日、放課後練習しませんか?』とボーデヴィッヒさんに頼んだ。練習は出来る限り一緒にやりたいし、織斑に勝ちたいしな。まぁ俺ではなくボーデヴィッヒさんにがやるのだが。
暫く無言でいたため、無理かな?と思ったが『そうだな、よろしく頼む』と言ったのでこちらこそと返した。
織斑の奴と戦う前に負けたら話しにならないので、というかボーデヴィッヒさんに申し訳ないので頑張ろうと思う。
◇◇ ◆◇◇◇◇◇
そして放課後、織斑先生に呼び出されておこなった話し合いは、鷺ノ宮についてだった。
『プライベートまでとやかく言うつもりはないが、せめて起きれるようになれ』とのお言葉をもらっていた。
そして俺は、鷺ノ宮を起こさなくてはならんくなった。ブランケットさんが男子の部屋を行き来しているのはどうなんだ?ということになり、そこで同部屋の俺に任されました。
俺が平日、ブランケットさんが休日にというローテーションで。
まぁ、早起きなのでまったく問題ないがちゃんと起こせるのか?…不安になってきた。
と言うことで話し合いは以上と言うことになった。
◇◇ ◇◇◇◇◇◆◆
ラウラ side in
今朝、長崎の奴が声を掛けて来た。なんだと思っていると前に奴に送った返事の返答だった。
朝に言う必要はないだろうと思ったし何とも律儀な奴だとも思った。
私がタッグ申請書のことを口にすると長崎は『もう書いた』と口にして私のであろう紙を出してきた。
心のどこかで断られるか?と思っていたのは杞憂に終わったようだ。
授業でペアを組んで模擬試合をする授業があったが、長崎の奴は初めてにしては中々に動けていた。
授業が終わった時に長崎が『放課後も練習しないか?』と言われた時はキョトンとしてしまったが良いことだと思う。なので頼んでおいた。
どんな訓練にしようか、少しだけ楽しみだ。
ラウラ side out
◇◇ ◇◇◆◆◇◇◇
気がつけばあっという間に学年別トーナメントの日まで過ぎていた。濃い数日間だったなと思うし、楽しかったなとも思う。
放課後練習は大変だったが実に実になった。ボーデヴィッヒさんにたくさん教わることもあった。しかしボーデヴィッヒさんは嫌な顔せず教えてくれた。
自分のためにも、ボーデヴィッヒさんの為にも頑張ろうと思う。
◇◇ ◇◇◆◆◆◆◆
長崎の奴の練習に付き合っていて分かったことがある。
奴は要領が良いとは言えないが、よく聞き、聞いたこと素直に取り込み自分で何回も反復させているということだ。
何かひとつをやり通すこと。私にはそれが出来ていただろうか?
私は織斑教官に強くしてもらい、織斑教官に憧れてここまで来た。
いつか強さとは何か、織斑教官に聞いたことがあった。
『教官はどうしてそこまで強いのですか?どうすれば強くなれますか?』
今ですら強さとは分からないのに昔の私はそんなことを聞いた。
教官はしばし考えてから、『私には弟がいる』と口にした。
私は驚いた。教官に弟がいることよりも、教官が浮かべた表情にだ。私が見たことのない優しい顔をしていた。
『弟……ですか』
返す言葉はそれだけで精一杯だった。
『あぁ、あいつを、一夏の奴を見ているとわかるときがある。強さとはどういうものなのか、その先に何があるのかをな』
『よく……わかりません』
わからなかったのは私が未熟だったからだろうか?
『わからないなら、今はまだそれでいいさ。お前ならきっと意味が分かる時が来る。……ふむ、そうだな、いつか日本に来ることがあるなら一夏の奴に会ってみるといい』
その後にも会話はあったはずだろうが、何故だか忘れてしまった。教官と過ごした日々は忘れていなというのに。
教官が浮かべた優しい笑みとどこか気恥ずかしそうな表情。一夏という男は教官にそんな表情をさせる。
私は教官にそんな顔を向けられたことが合っただろうか?ふとなんだかモヤモヤとした気持ちになった。これは何なのだろう。
教官はなぜそいつだけにそんな顔を向けるのか。なんだか無性に腹が立った。
私は、織斑一夏が――。
どうでしたでしょうか、第十一話?
タッグ戦までちょびっと飛びました。それとオリキャラについて詳しくは追々。
次回はタッグマッチです。司君とラウラの活躍にご期待ください。ではまた~。