どうも、お待たせしました第十二話です。
活動報告にも書きましたが、私姫百合柊の一周年が近いということでリクエストを募集しております。
詳しくは活動報告欄をご覧下さい。
ではでは、本編をどうぞ。
今、俺とボーデヴィッヒさんは第二アリーナで待機していた。何故か、それは当然このあと試合だからだ。
「……長崎、お前は何故左目を隠している?」
なんと気になしに言ったのだろう。だが俺としては対応に困るものだった。そう言えば、ボーデヴィッヒさんも左目に眼帯をしているな。
「……切るのが面倒になってきているんですよね。まぁ長くても問題ないですし、このままでいいかなと思ってまして」
そんな回答を返したら『そうか』とボーデヴィッヒさんが言った所でちょうどアナウンスが鳴った。
『それでは始まりました、学年別トーナメント。第一回戦、選手の皆さんはアリーナに出てください』
「さぁ、行きましょうか」
「あぁ」
◇◇ ◇◇◇◆◇◇
「まさか、一回戦で戦うことになるとは思いませんでした」
「そうだな、おれもびっくりしたよ」
一回戦の相手は鷺ノ宮、篠ノ之ペアとだった。
「…………」
「…………」
ボーデヴィッヒさんと篠ノ之さんは互いに無言、つか目を閉じている。
二人に向けていた視線を再び鷺ノ宮に向ける。思えば奴の機体を見たのはこれが初めてだった。
ベース機体は【R・リヴァイブ】。それにアメリカの【ファング・クエイク】を足している機体だという。
機体名は【レフィル・リノ】。和名は『換装』。
近・中・遠距離、どの距離も対応でき、それを可能にしているのが『高速切替(ラビット・スイッチ』だ。【R・リヴァイブ】の性能をフルで生かした機体なんだそうだ。死角はほぼ無いだろう。
だが、俺も新装備がある。少なくともやられるだけでは終わらないだろう。
「では、お手柔らかに頼みます」
「そうだな、絶対に負けんが」
というか、負けられない。
そう言って両者構える。篠ノ之さんとボーデヴィッヒさんは既に臨戦体勢だ。
カウントが空中ディスプレイに表示される。
3、2、1―――。
試合開始を告げるブザーが鳴った。
それと同時にボーデヴィッヒさんは6本のワイヤーブレードを射出、推進機(ブースター)で鷺ノ宮へ向かって行った。
対する鷺ノ宮も、『高速切替(ラビット・スイッチ)』で迎撃準備。篠ノ之さんと共闘の形を取ってアサルトライフル【レッド・バレット】を右手に、連装ショットガン【レイン・オブ・サタデイ】を左手に構える。
篠ノ之さんは腰を落とし、推進機を準備。近接ブレード【葵】は両手で持ち正眼の構えでいつでも斬りかかれる体勢だ。
対する俺は試合開始のブザーと共に後退した。理由は自身の新武装にあった。
一つは展開に時間が掛かること。
『【Lotus(蓮) ... 稼働率37%】』
『【Narcissus(水仙) ... Nanomachine ... 生産率28%】』
そしてもうひとつ、それは――。
一樹がラウラのワイヤーブレードの半分を撃ち落とし、そこからラウラ本人に向けて弾幕を展開した。右手にはいつの間にか【レイン・オブ・サタデイ】が握られており、両の手が連装ショットガンになっている。火力、範囲ともに高い組み合わせになる。
ラウラも【AIC(アクティブ・イナーショナル・キャンセラー)】を展開しようとしたが、すんでの所で間に合わないと悟る。
それは―――相手の度肝を抜くため。
「『【Lotus ... 稼働率100%】』……やっとか―――【蓮】、行け」
電子音声が稼働率が100%になったことを告げる。それを合図として肩部シールドに鱗のように付いていた薄クリーム色の何かが司の言葉によって一気に周囲に展開した。
そのあと直ぐにその各々が小さな固まりとなってラウラに殺到した。
◇◇ ◇◇◇◇◇
来るであろう衝撃にラウラは身を固まらせ、備えた。しかし、衝撃は来ずおかしな音、例えるなら花弁から花びらを引きちぎったような音がしただけだった。
何だと思い閉じていた目を開ける。
「……花…?」
種類は何かはわからないが確かに花弁と呼ばれるものが私の周りに展開している。薄いクリーム色をしているそれ、その数は数十に昇る。
司の新装備の一つ、それは名前を【大天輪・蓮】。打鉄の強化パッケージにも分類される。
『対BT・銃火器兵器』をコンセプトに置かれた防御専門のパックだ。任意でしか動かすことができないがそこはISならではのセンサーがある。
先程の数十の花々は【大輪】と呼ばれ、大きさは10~20cmほど。それはコンセプトの通りBT・銃火器兵器の攻撃を通さない。
他にも【天輪】、【大天輪】があり、大きさ・防御力が高くなっていく使用だ。
「……あれを防ぐのかー、火薬とか弾頭とか変えてもらって出来る限り速度に重点を置いたものなんだけどな」
防がれるとは思っていなかったのか驚きで少し目を見開いていた。
「……長崎か、なるほど、なっ!」
ラウラの呆けていた時間は数瞬。即座に切り替えて、ラウラは一樹に向かってレーゲンのレールカノンの照準を合わせ、射つ。当然のように避けられると分かっているので間髪入れずに連射する。
一樹も伊達に専用機を持っている訳ではない。直ぐに切り替えたが遅く、レールカノンの重々しい銃声を聞いた所でだった。
避けるために推進機を右側に展開、稼働して動いたが遅かった為左腕に若干被弾。残りは何とか回避したが持っていかれたエネルギーが以外と大きかった。
「…くぅ、やりますね。ですが今度はこちらの番です。篠ノ之さん援護します、先陣を斬ってください」
「了解した。……ふっ!」
箒は動いた。眼前の敵に向かって。
箒にも負けられない訳がある。この試合に優勝して、一夏と付き合うのだ、ということ。
しかし何故かあらぬ尾ひれが付いていて、優勝したら一夏、長崎、鷺ノ宮のいずれかに告白出来るという物になっていたためなにがなんでも勝ちたかった。
ラウラもラウラでただで近づかせる訳がない。ワイヤーブレードを射出し、箒に追従させる。
だがそれを一樹は【レッド・バレット】、【レイン・オブ・サタデイ】で撃ち落とす。
ラウラは舌打ちを一つつき、箒に向かって【AIC】を掛ける。
「……!?。な、何!?」
驚異にもならないそれを止め、ほぼ零距離からレールカノンを撃つために照準を合わせる。
「お前は、ここで脱落だ。――堕ちろ」
レーゲンは火花をあげた。
しかし撃った瞬間に体が真横にずれるほどの衝撃が襲って来た。正確にいうのならばレールカノンの砲身に攻撃が当たったせいで照準が狂い、弾は箒には当たらなかった。
「…ちっ、鷺ノ宮(やつ)か。」
「これはタッグマッチですよ?ボーデヴィッヒさん」
やつ、一樹の方をラウラは見る。その手には身の丈以上のランスと呼ばれる代物を握っていた。
あれ、もしくは別の代物で砲身を撃ったことに間違いはないが、そのランスにも警戒をしたほうが良いなと、気を引き締めた。
そんな所に一樹はその巨大な代物を持って突っ込んで来た。
◇◇ ◇◆◇◇◇◇◇
「なんとか、篠ノ之さんに攻撃をさせないことに成功しましたが当たって良かったですね。試作段階とはいえさすが。………まぁ欠点を挙げるのでしたら些か反動が強すぎる、というところでしょうか?」
『経験が無さすぎて17年……ん?26年?よく分からなくなってきたなぁ。早く馴染まないとなぁ。……特にこの身体だよ。なんで…』という呟きを溢して、個人間秘匿回線(プライベート・チャンネル)を開いていたことを思い出し焦った。が篠ノ之さんはそれどころではなかったらしく聞こえていなそうだった。
一先ずほっと胸を撫で下ろし、ボーデヴィッヒさんを見る。
攻撃を当てたことにより【AIC】が解かれてくれればと思っていたが甘かったらしい。篠ノ之さんは今だに固定された空間に囚われたままだ。
ラウラのレールカノンに攻撃を当てたのはこのランスだ。司に新装備があったように一樹にも会社から渡されていたものがあった。
名を【フラッカーデイルド・ガル】。より正確に言うならば、【爆裂式円筒(シリンダー)ランス】。和名は『ウミネコ』。
白を基調とし、先端は紅い。先程はこの先端を飛ばして攻撃したのだ。
発射時の音が妙に高音の猫鳴きのように聞こえることからこの名がついた。
円錐状になっているランスの根元の内部がシリンダーになっており、弾(先端)の補充・装填はそこから行われる。
内部の火薬を爆発させて先端を飛ばす。簡単に言えばこういうわけだが普通のランスとしても十分に活用出来る。
もちろん、先端は飛ばしたら再装填されるが大きさが大きさだけに弾数は三発だけしか入らない。
――残り、後2発。
そんな風に思いながら、突進していったら、耳に声が届いた。
「――知ってるよ、だから俺がいるんだ」
ランスでの突進が下からの剣での切り上げによって掬い上げられた。
◇◇ ◇◇◇◇◇
「『【Narcissus ... Nanomachine ... 生産率100%】』――来たか」
司の新装備二つ目、それは名前を【薄・水仙(うすら・すいせん)】。日本刀のような外見に刀身が淡く発光し蒼い色をしている。
水を模したナノマシンが柄で生成され、それが刀身にいくことで蒼くなっている。さらに、そのナノマシン自体が弱い電力を持っていてパチパチと帯電している。なので斬りつけたと同時に水が弾け、内包されていた雷が相手の動きを少し遅らせる働きをする。
このナノマシンにはリミッターが掛けられており、リミッターを外せば【帯電】ではなく【常電】として雷がむき出しになる。この状態で斬れば相手の動きは100%阻害される。しかしこの状態にすることでリスクもある。
【常電】が強すぎること。内包されている雷が強く、下手をしたら操縦者にも被害が及ぶということ。それと自分にも。
「――知ってるよ、だから俺がいるんだ」
そうこれはタッグ戦だ。そんなことは言われなくても分かっている。だが全部が全部パートナーを見る何てことは出来ないだろう。
だから俺は持ちつ持たれつの関係で行こうと決めた。ボーデヴィッヒさんには何も言っていないが、攻撃の大部分を任せ、俺は大部分で支援、防御にまわるという役割だ。勿論、俺も攻撃するが。
先程のボーデヴィッヒさんに行った攻撃、遠巻きに見ていてわかったのが鷺ノ宮の持っているあれは遠距離にも届くということだった。なるほどと思い、推進機を加速。一気に近づき、しかし鷺ノ宮の持っている武器と合わせるようにして【薄・水仙】を掬い上げた。
鉄と鉄をぶつけたような甲高い音が鳴った。そして司の剣線には刀身に纏っていたナノマシンが衝撃で弾け、周囲に散った。パチパチと帯電していて火花と光でそれが花のように見えて綺麗だった。
持っていた武器の上昇に伴って鷺ノ宮の体も浮いた。そして、そのがら空きになった胴体に追撃。
掬い上げた刀の勢いをそのまま回転へと昇華し、遠心力と共に斬撃の威力を上げる。
このまま一太刀浴びせられるかと思ったが甘く、鷺ノ宮はその巨大な武器を即座に収納して代わりに近接ブレード【ブレット・スライサー】を取り出し、それで受けた。
分はこちらのほうにあり、鷺ノ宮を吹き飛ばしたがそれだけでダメージは無し。
「……ふぅ、まさかあれを上げてこちらが飛ばされるとは思いませんでしたよ。力強いですね」
「はぁ、はぁ…まぁな。つか俺もビックリした。さっきの防がれるなんて思わなかった」
司の方が先に息があがっていた。体力面で比べたら司の方が多いのだが、自分の他にもうひとり一緒に戦う者がいることと授業の比にならない程の視線に晒され、司の精神的ストレスが高まってしまっていたのだ。
無論、司の意思とは関係なく無自覚、無意識にだが。
「(俺じゃあ鷺ノ宮の相手は無理だな。なら――)」
司は今の位置から180°旋回し推進機を展開。つまり後方にいるラウラたちに向かって行った。
意図に気が付いたのか、一樹も後ろから迫って来る。
『ボーデヴィッヒさん!』
「―――」
開放回線(オープン・チャンネル)で名前を呼ぶ。こちらを見て一拍置いてから、こちらに駆け出して来た。俺が呼んだ意図を汲み取ってくれたようだ。
AICが解けた箒がラウラに、一樹がさせまいと司に迫る。
『お前の相手は――』
『貴女の相手は――』
奇しくも、二人の声が重なった。
「――私だ」
「――俺ですよ」
ラウラが一樹と、司が箒と対峙した。
トーナメントはまだ始まったばかりだ。
戦闘描写って難しいです……。はい、いかがでしたでしょうか?第十二話。
戦闘面でちゃんと書けているかどうか不安ですが次話もこの続きとなります。
次話もお楽しみに<(__)>