竜羽さん、遅くなってしまい申し訳ございません。
書いている内に竜羽さんのリヴァイアサンとずれてしまっているような感じが……。そんな話ですが楽しんで頂けたら幸いです。
この場で、リクエストしてくださった竜羽さん、1056隊風見鶏少尉さんありがとうございます<(__)>
『―お前もIS学園に来てくれ』。と始まりは一本の電話だった。
「……は?ちょっ、ちょっと待て草薙、今お前がどんな出鱈目なこと言ってるか分かってるか?」
IS学園とは神奈川県横浜市金沢区の八景島近隣に位置する超大型人工島だ。場所も分かっているし、行けと言われてもなんら問題はない……今以外は。
俺こと長崎 司(ながさき つかさ)は自身の所属する組織『S.A.U.R.U(サウル)』の仕事によりアメリカへ飛んでいた。魔女(マギ)の調査の為だ。
「草薙、俺は今アメリカだ。今から来い、ってのはむちゃくちゃ過ぎる」
「あー、無理言ってんのは分かってんだ。だが、こっちも若干想定外のことが起きたんだ。俺一人じゃ対処が難しくなるかも知れないからお前らが居てくれたほうが安心なんだ」
「……晴臣は呼ぶのか?」
「いや、あいつは今手放せない仕事をやっている最中だと」
『寝坊助も連れて来てくれよ』と最後に電話を一方的に切られた。
「俺も仕事中だよ………はぁ、どうすっかな?」
アメリカの街で一人暫く悩んでいたのだった。
◇◇ ◆◇◇◇◇◇◆
『S.A.U.R.U(サウル)』の日本支部へ来た時にはもう疲労困憊だった。
草薙からの電話の後取り合えず近場の支部へ行き、本来俺がやるはずだった仕事を他の奴にまわしてもらって何とか日本へとは行けるようになったのだが、問題は鷺ノ宮だった。
奴は仕事とか外に出てるときは凄くしっかりしてる奴なのに自室とかで休憩してるときは本当に鷺ノ宮本人かと疑いたくなるぐらい力が抜けていた。初め見たときはあまりの変わりっぷりに目を疑ったくらいだ。
しかもそうなったら部屋から出たがらない。今回は草薙からの頼みだということで割りとすんなり行ったがいつもならもっと時間がかかる。
と、こんなこともあったが今は鷺ノ宮と一緒に船でIS学園に向かっている最中だ。
ゆらゆらと揺れる船で眼前に広がる光景を見て驚く。二人とも、口を開けポカンとしていた。それで最初に口を開いたのは鷺ノ宮だった。
「……でっかいですね。総面積どのくらいなんでしょうか?」
「…あー、資料によると総面積は八丈島の1000倍、720kmってことになるな」
「……島じゃないですよね…もう。維持費とかは」
「……国費や国連とかの寄付金で成り立っているそうだ……つってもなぁ……」
視線をIS学園へ向ける。視界に収まりきらないほどバカでかい島が鎮座してる。島と呼べるのは些か疑問だか、これを維持しているのだからそっちのほうが疑問である。
と、そんな話をしていたら島に着いたようだ。人工島には見えず、緑、花々が生い茂っている。そんな中で二人は深呼吸と背を延ばす動作を一つつく。
その後手元の資料を頼りにIS学園に向かう。……どうやら道案内はしてくれないようだ、草薙の奴め。
◇◇ ◇◇◇◇◇◇
黙々と歩いて数時間ほど、やっと目的地にたどり着いた。少し疲弊していてそれが顔に出ている。
「…はぁ、やっと着いた……」
「…着きましたね。さすがに疲れた……」
IS学園に辿り着いた二人は近くにあった芝に腰を下ろしていた。そこに影が4つ向かって来る。
ひとつは水色の髪をした少女。その隣にいる草薙の腕を抱えている。ひとつは見知った顔。水色髪の少女の隣にいて、歩きにくそうな顔をしている。ひとつは黒のパンツスーツを着ている女性。仏頂面でその目は水色髪の少女に向いていた。ひとつは黒縁眼鏡を掛けている気弱そうな表情をした女性。頭一つ分くらい小さく、その顔は仏頂面の女性を不安げに見つめている。
そんな集団が歩いてきた。
「よう、司、一樹遅かったな」
他の三人が訝しげに見つめて来るなか、草薙はそんなの知らないとばかりに声をかけてくる。
歩いた疲れからか少し殴りたいと思ってしまったのは悪くないだろう。
「……あぁ、お前こそな。なぁ、鷺ノ宮」
「……えぇ、そうですね」
一樹も司と同じことを思っているだろう。
「ねぇ、リョウ、この人たちは?」
三人の思っていただろうことを水色髪の少女は凌に聞いた。
「あぁ、俺が呼んだんだ。俺と同じだよ。今日呼んだのはこいつらにも『特例』として授業を受けてもらおうと思ってな」
そう言って二人を見たリョウはニヤリと笑った。二人はただただ、いきなりの事態に固まるしかなく、リョウが教師(の助手)として働くのだと知るのはもう少し後の話になる。
◇◇ ◇◇◇◇◇◇
夜。皆が寝静まっている時間帯一室に明かりがまだ点いていた。
「眠い……司、もう寝ませんか」
「俺だって寝たいよ……だが後任の奴の為に今まで俺がやってきた調査書(レポート)を書かないといけないのだ」
「あと……この魔書みたいに分厚い説明書も読まなきゃいけないんですね……」
「……俺達には読めない魔書を読めって言われるよりはマシだがな…
IS、通称、インフィニット・ストラトスを扱うに当たってのやらなければならないこと、やってはならないこと、知っておかなければならないこと、条約数百。が事細かく書かれている、そんな書である。
本来ならISを扱う少女が読まなくてはならないものだが今年、世界初の男性IS適性者が現れたらしい。大変なニュースになったため俺でも知っている。鷺ノ宮は分からんが。
そんなものを何故司、一樹が読まなければならないのかというと、間接的にとはいえ授業を受けるのだから読んでおいたほうが良いと言われたからだ。
そして『魔書』とは簡単に言えば人とリヴァイアサンとの仲介役である。他にも魔力の補助道具(サポーター)として杖や片眼鏡(モノクル)、魔術師の魔レンズ(ウィッチワーク・レンズ)、時計仕掛けの魔術師(クロックワーク・マギ)などの魔道具などが使われている。
そして、いくらリヴァイアサンが人工的に造ったものとは言え、それには意思があり成長する。リヴァイアサンが発現した時は誰しも『魔書』を使う。慣れてきたりしてくると『魔書』が無くとも意志疎通が取れるようになるが殆どの者が最初の一、二回で『魔書』は使わなくなる。元々魔女の適性があるものは盟約さえすればだいだいのことはわかるのだ。『魔書』は俺達には難解だが魔女なら自然と分かるらしい。
さて、何故司たちが夜を徹してそんな書を読んでいるのかと言うと自分の為であり、IS学園の為なのだ。今、人がドラゴンの対抗力としているのがリヴァイアサンとISなのだ。
俺達は知らないがIS学園はドラゴンの襲撃を受けており、その際狙われたものがISに使われている『コア』なんだと草薙、そして織斑先生に言われた。 そんなことを聞いてしまっては黙っている訳にはいかない。というか結構重要な情報だ。S.A.U.R.Uでその情報を知っている奴はいないんじゃないか?草薙も情報はまだ弱いと言うことで俺達にも手伝ってほしいとのことだ。別に構わないし、ここは全生徒が乗れるだけのISがないので他生徒が危険だろう。また、魔女の適性がある子が居るかもしれないし、放っておけないのだ。
「……頑張るか」
「……そうですね」
閉じそうになる瞼をを擦りながら司は調査書を、一樹は説明書を読みふけっていた。
◇◇ ◇◇◇◇◇◇
ワイワイと人の声で溢れている教室に司たちはいた。教壇に先生が立っているのに殆どの生徒は視線が一番前と一番後ろを行ったり来たりしている。
二人はぐったりしていた。徹夜とこのようなたくさんの視線。疲れるなと言う方が無理である。
「――です。そ、それでは自己紹介をしてもらいましょう。一番の人からどうぞっ!」
ありゃ、しまった。担任の名前を聞いてなかった。迂闊だったな、まぁ誰かが先生の名前を読んでくれるだろ。
その後次々に紹介が終わっていき、織斑一夏の番に回ってきた。
緊張はしているようだがそこまでは、と言った感じだ。まぁ同じ男子がいるからだろう。俺も鷺ノ宮がいなかったらキツかったかもしれん。
「織斑一夏、です」
シン、と場が静まる。と言うよりも次の言葉を待っている感じだ。さて、どうするのか。
「――以上です」
周りの女生徒がずっこけた。『あれ?』っと言った織斑一夏の後ろに影が立つ。
「自己紹介すら満足に出来んのかお前は」
「――!?ち、千冬ね…いたっ」
「ここでは織斑先生と呼べ、馬鹿者が」
織斑先生に織斑一夏が叩かれていた。あぁ、どうりで名字が一緒な訳だ。姉弟か。
「キャアアアッ!千冬ねぇさまよ」
「織斑先生(ねぇさま)よ!かっこいい」
「千冬ねぇさまに会うためにこの学園にきました!」
「織斑先生と織斑君って姉弟?いいなぁ」
「フヒッ、面白いネタが部長に伝えなくては」
女三人寄れば姦ましい、というが、三人以上寄ればどうなるか。それは賑やかだ、とか騒がしい、とかが当てはまるのではないだろうか。実際今そうだし。
「はぁ……静かにしろ」
決して声を大きくした訳ではない。ただそれでも凜とした声が室内に響いた。それだけで騒がしかった教室が静かになった。
「騒ぐのは勝手だがせめて話ぐらいは聞け。お前たちがこれからやることは命の駆引きだ。いくらISに乗っていたとて安全ではない、むしろ危険度がはね上がる。相手はドラゴンだ。分かったか?私達は化け物どもと戦うことになる。それを頭に入れておけ」
ほう、と織斑先生の言ったことに関心した。確かにドラゴンの登場により世界は制空権は取られた。
そんな世の中でもドラゴンの認知度は決して多いとは言えない。世界中のIS搭乗者が被害を最小限にし、俺達S.A.U.R.Uのような組織が、魔女たちが裏側から食い止めていることで保っている世の中だ。
俺や鷺ノ宮はドラゴンとの戦闘を一度だけ目にしたことがある。現存の兵器がまるで歯がたたなかったIS、だがそれすらも上回るドラゴンの怪物性。
IS数十単位でやっと戦えるかどうかの次元の生物。そんなものに女の子たちが戦うしかないというのは何とも言えない気持ちになる。心構えだって出来ていなくて当然だ。しかし、一人は違ったようである。織斑先生の話が終わったあとパチパチと一人、拍手をしたのだ。まるで先の話に賛美を送るかのように。
俺と鷺ノ宮は顔を見合せその少女に目を向けた。ブロンド髪にフリルの付いた長いスカートをはき、いかにもお嬢様と言った少女だ。優雅に席に座っていて彼女だけが織斑先生の言葉に目に見える形で反応していた。
のちに知った事だがその少女の名前はセシリア・オルコットと言うISの代表候補生だった。
◇◇ ◇◇◇◇◇
初日にしては長い授業が終わった。織斑一夏と話して見たかったのだが休み時間などポニーテールの少女に連れ出されたり、放課後は俺達が草薙に呼び出されたりと会えなくなってしまっていた。
「そう言えば草薙、お前今日どこ居たんだ?」
「確かに、見かけませんでしたね」
「あー、刀奈と一緒に地下に、な」
「地下?そんなものまであんのかここは……」
「刀奈さん、と言いますとあの水色髪の少女ですよね。彼女と何を?」
『隠していても仕方がないか』と呟いてからリョウはそこであった事を話した。
「……会えたんだな」
「……良かったですね、会えて」
「……あぁ、だがまだ先生には会えてないんだ。あの人が死ぬとは思えないが…」
何か思うことがあるのか思案顔になり黙ってしまった。『先生』と言う人のことは大体、本人から聞かされている。幼い頃その人に見初められ、その人の弟子になったんだと言う。フラりと消え、一年以上も戻らなくそれから先生を探す旅に出たんだそうだ。
「……で、あの、何でいるんです?」
鷺ノ宮よ、折角気にしないように流してたのに何故口に出したんだ。ほら草薙の奴だってめんどくさいみたいな顔してるぞ。
「あら、だってここ私の部屋だもの」
私の部屋?あれ俺達は草薙の部屋に来たはずだが……。
「………同部屋なんだ。コイツと」
「うふふっ、同棲よ」
マジか。
リョウは何でこんな事になったのかと嘆き、刀奈はただ微笑むのだった。
◇◇ ◇◇◇◇◇
「それで、どうだった?」
先程の雰囲気とは打って変わり、真剣な表情で切り出したリョウ。
「あぁ、凄い緊張した」
「えぇ、あんなのは初めての体験でしたよ」
「いや、教室の話じゃねぇよ」
「分かってます分かってます、ちょっとしたジョークですよ」
「今のところ適性が低い人ばかりだな。ただ――セシリア・オルコットだけは別だが」
リョウは『へぇ』と言って続きを促した。
「何と言うか、今日見た感じだと意識が高かったな。ドラゴンを見たか、ドラゴンのせいで何か負ったか、だな」
司の言葉を聞いてから『鷺ノ宮は?』と一樹にも確認した。
「そうですね、自分も司と同じですね。ひとクラスと数人しか見ていませんが適性は低いかと」
「そうか、魔女が増えてくれると助かるんだがな」
「日本の魔女率は?」
「ほとんど変わってない。数人は発現したが今だに都市部は一人しかいない」
「……一人、ですか。あと2、3人はいて欲しいんですが…」
「こればっかりはどうしようもないしな。気長に待つしかないな、俺は。長崎、鷺ノ宮頑張れよ」
「おう」
「分かってますよ」
仕事の確認をして時計を見た。いつの間にか結構時間が経ってしまっていたようだった。
そこで『ぐー』っと誰かのお腹が鳴った。
「んーお腹空いたわね。じゃあ食堂に行きましょうか」
刀奈に促され皆が立ち上がった時に着信を告げる音が鳴った。持ち主は司のようだった。
『はい、もしもし』
『あー司ちゃん?』
『あれ、辰巳さん?何か何時ものテンションじゃないような……どうしたんですか』
何時もなら耳に響くような大声量で話してくるはずなんだが、今は全然普通だ。
『あ、あはは~、ごめんちゃい!司ちゃんたちの事支部長にばれちゃった』
『――え。……嘘、ですよね』
『本当に嘘って言ってやりたいさ。ただマジに本当なのよね』
血の気が引くとはこのことだろう。支部長にバレたとは他の支部長も知ったと言うことだ。唯でさえそんなに多くない調査員の俺達が仕事を他に回したらどうなるか、それは簡単だ。あとの奴の仕事が増えるか、自分に倍になって帰ってくるか、だ。今の場合は明らかに後者だろう。
しかもバレたのが支部長なのが問題だ。絶対何か言われるし他の支部長も仕事押し付けてくる。
なのに何故リョウについて来たかと言うとリョウのそういうことはよく当たるからだ。
『……支部長は何と?』
『取り合えず一回戻って来い、だって。頑張れ司ちゃん』
『ちょっ、辰巳さん!?フォローは……』
『司ちゃんもだけど一樹ちゃんも戻って来いと、リョウお前も後でな、だって』と言い残して辰巳さんのほぼ一方的な電話は切れた。
「司、誰からだったんですか?」
鷺ノ宮がそう聞いてきた。絶対テンション落ちるぞお前でも。俺だだ下がりだもの。
「辰巳さんからだ。なんでも『支部長にバレたから戻って来い』だそうだ」
一気に鷺ノ宮の顔が曇った。当然だ、戻った後の事を想像したのだろう。
「知られることは想定していましたがこんなに早くですか……」
「ん?何だどうした」
「早く行きましょうよ、お腹ペコペコだわ」
遅いためか草薙と刀奈さんまで来てしまった。刀奈さん、貴女は腹ペコキャラなんですか。
「草薙、これから俺達は戻らなきゃいけなくなったわ。あと支部長が『お前も後でな』だってさ」
「…マジか、巻き込んじまって悪いな」
「気にするな、無理に断ろうとすればここに来ないという選択肢もあったんだ。来た俺にも責任があるさ。それにドラゴンがISのコアに反応することも言わにゃあならんかったしな。そうだな……何か旨いものでいいぞ」
「じゃあ、俺は休みでいいですよ」
「めっちゃ気にしてるじゃねぇか……はぁわかった。出来る限りのことはする。ただし鷺ノ宮お前は無理だ」
「えー何でですか!司にだけ甘いですよ」
「そう簡単に休み取れるわけねぇだろ。つかお前は十分休んでんだろうが。休み欲しいのは俺だ」
『休み足りない』とほざいている鷺ノ宮を押し退ける。お前、俺よりも休んでるじゃねぇか。
「じゃ、そういうことだ。折角ゆっくり話せると思ったんだが無理みたいだ」
「はぁ、じゃあ仕事片付いたらゆっくりしましょう、リョウ」
「そうだな、いつになるか分からんがその時にな」
『刀奈さんも、また』と言ってその部屋を後にした。
いきなりいなくなるのはまずいので大まかな事情を織斑先生に説明してIS学園を出た。
「そう言えばもう春だったか」
月光に照らされている桜や風に舞っている花びらをみてそう呟いた。
「世界のあちこちに行くから季節感なんてもうめちゃくちゃですよ」
「そうだな……桜ってこんなに綺麗だったんだな」
「……そうですね。炎の花よりはずっと」
なんと気無しに空を見上げれば月が空を地を照らしている。
そんな空に幾つかの影が移動している。
――ドラゴン。それは突然現れ、ドラゴンのせいで人は空を失った。
人が空を取り戻せるのはまだ来ない。
どうでしたでしょうか?この閑話でリクエストしてくださったお二人の作品に興味を持たれたら 是非足を運んでみて下さい。
さて、次回から本編再開です。
司&ラウラ対一樹&箒の対決は決着かなぁ。