IS~一人の転生者、報われる日は来るのか?   作:姫百合 柊

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本日は2話更新です。順序を間違えずにご覧下さい。(2/2)


第十六話 VTS(ヴァルキリートレースシステム)

「なっ!?こいつは――」

 

そこまでしか一夏の言葉は続かなかった。何故なら、腕をこちらに伸ばし熱線光(ブラスター)を放ってきたからである。

 

「なんだ、あいつは」

 

一夏と同時に後退したラウラがボソリと呟き、隣にいた一夏が答える。

 

「あいつは、無人のISだ。前にも学園に入られた。ただ……前の機体とは違うみたいだ」

 

そう言いながらも目線は離さない一夏。前に飛来した無人IS――通称〝ゴーレム〟は鉄の塊のような機体だった。だが今、目の前の機体は人形により近づき若干スリムになっている。

 

「――――」

 

全身装甲(フル・スキン)で顔どころか口も見えないがそれでもゴーレムは雄叫びをあげた。相手を威嚇するように全身を鳴らした雄叫びを。

 

その動作のあと、ゴーレムは両腕を伸ばしラウラ、一夏に向かい熱線光を連射する。

 

一夏はその攻撃を何とか避け続け、ラウラは余裕を持って回避する。

 

「……遅いな。ただの熱線光ならいつまでかかっても私を落とすことなど出来ん。ましてや――」

 

ラウラの動きが極端に早くなり、一瞬で背後を取った。そのまま手を向け【AIC】を発動させる。

 

「―――――」

 

空間に縫い付けられたゴーレムはもがこうとするがそれすら許されない。

 

「殺す気も無いんだ、勝てる訳が無いだろう。機械風情が」

 

肩のレールカノンがゴーレムに照準を合わせる。そして続け様に爆ぜた。

 

「―――――」

 

一発一発を確実に当てていき、どんどん装甲が壊れていく。

 

四肢が破壊され、体も半壊した。これで終わりとばかりにラウラはレールカノンを頭に狙いを定める。しかし、ISの警告音がして、横から衝撃。飛んできた物体をつかんで見るとそれはぐったりした長崎だった。

 

「――長崎っ」

 

 

◇◇ ◆◆◆◆◆◆

 

 

「………なんだ?こいつは」

 

荒い息をしながらも何とか立ち上がり司はそう呟く。

 

不用意に近づいたりはしなかったが、それでも不気味なことに変わりはなかった。それはデュノアさんも同じだったようでジッと睨んでいる。

 

まさに正体不明。この4人の中で〝ゴーレム〟の存在を知っているのは一夏だけである。

 

司とシャルルに至っては何と戦っているのかすら分からない。

 

「……長崎君、相手がどんな奴かわからない。先ずは出方を――」

 

シャルルの言葉はそこで途切れた。ゴーレムが手をこちらに向け、熱線光を放ってきたからだ。だがその攻撃を司は【蓮】で防ぐ。

 

「……防げないことはないが、何だか反応しずらいな」

 

攻撃は一定で、予備動作が無いため反応が遅れてしまう。

――まるで。

 

「……何だか、このISって機械みたいだよね」

 

おっと、奇しくも同じことを思っていたらしい。

 

「…ですね。動作は一定で、考えて行動してる感じがしませんしね」

 

まるでこちらを観察しているようだ。

 

「――無人機?」

 

「……え、無人機、ですか?」

 

「うん。だけどISは人が乗っているから動かせるんだけど……」

 

ふむ、デュノアさんの話からすると……つまりあれに人は乗っていない訳だ。幸いなことに。

 

「丁度良い。これは水面さん達から危ないからあまりやるなって言われてたんだが、今はするときだよな」

攻撃を食らった相手も危ないが、自分も危ないという物だ。

 

そう言ってからリミッターの〝4段階目〟を外す。

 

短く空気が抜ける音がし、放電が始まる。〝3段階目〟よりも大きく、強く電気が弾ける。発生した電気が空気を弾き、音が伝わる。

 

【Narcissus(水仙) ... Nanomachine ... 生産率100%維持...リミッター〝固定ボルト〟解除命令.......受理。... リミッターを解除します ... Fourth stage .. Release(第四段階 .. 解除) ... 帯電出力60%。一次規定50%を超えました。13%のフィードバックが発生します】

 

また、一際大きく電気が弾ける。それと同じで刀身の色も強く、濃くなる。

 

「…………痛っ…」

 

フィードバックによって、手に電気が流れる。そこまで強くないがこれが続けてだと厳しいかもしれない。

「……俺が防いで足止めします。デュノアさんは隙が出来たらアレをぶち込んでください」

 

コツコツと胸の辺りを叩く。すると分かったのか若干気まずそうな表情をして頷いた。

 

推進機(スラスター)を展開して一気に近づく。だが無人機の方も近付けまいとブラスターを連射してくる。密度が高く中々近付けない。デュノアさんも【レイン・オブ・サタデイ】や【デザート・フォックス】で攻撃しているが殆どが弾かれてしまう。装甲が硬すぎるのだ。

 

一旦攻撃を止め、デュノアさんの元へ寄る。こちらが攻撃しなければ相手も攻撃してこないからそこだけは良かった。

 

「デュノアさん」

 

「長崎くん。……ダメだ。僕の攻撃は全然効いていないよ。こいつ(グレー・スケール)を打とうにも近付けないから打てないし」

 

そうなんだよな。一番の有効打になりそうなデュノアさんの攻撃だが近付けなければ意味がない。【蓮】もブラスターの数が多すぎてデュノアさんまで手がまわらないのだ。……どうしようか。

 

「……デュノアさん。それでこいつの柄頭を思いっきり叩くことは可能ですか」

 

水仙を見せて、どうかと聞く。

 

「出来ないこともないけど、あのブラスターはどうするの」

 

「【蓮】で何とか耐えて見せます」

 

自信は無いが。【蓮】は対BT兵器でもあるのだが、ブラスターとは勝手が違うらしく完全には攻撃を防げないのだ。

 

「それだと長崎くんの負担が……」

 

負担か、確かに負担だけなら俺の方が多いだろう。だけど……。

 

「負担のことなら大丈夫です、慣れてるんで。それにデュノアさんの方が俺よりもISのことを知っていますし、操縦だって上手いですから安心できます」

 

「うー……わかったよ。そこまで言うなら僕も頑張るよ」

 

よし、と気持ちを落ち着けた時にデュノアさんが声をかけてきた。

 

「ところで、長崎くん。あの時はありがとう」

 

あの時?なんのことだ。

 

「えーっと、あの時って言うのは………」

 

「ほら、僕が女の子だって一夏が君に言ったときのことだよ」

 

あぁ、その時か。だが俺はお礼を言われるようなことはしちゃいないぞ。寧ろ、罵られる覚悟までしていたくらいである。

 

「長崎くんのおかげて僕たち二人とも冷静になれて、確りどうすればいいのか考えれたんだ」

 

なるほど。役に立てたんならよかった。

 

「…答えは見つかりましたか?」

 

デュノアさんは首を横に振ってそれを否定した。

 

「いや、ある程度ってぐらいしか……まだ分かんないや」

 

まぁ、急げとは言わない、まだ時間はあるしな。

 

「そっ、それに一夏がここに要ろっていってくれたし……」

 

いきなりモジモジしだして顔を真っ赤にするデュノアさん。……おや?この反応は。

 

えーっと、篠ノ之さんに鳳さん、そしてオルコットさん。そしてデュノアさんも合わせて4人か。織斑のやつ大丈夫か?どうなるんだろ、頑張れオルコットさん。

 

ま、まぁそんなことはさておいて、行くとしよう。デュノアさんはちゃんと着いてきてくれるだろう。

 

【水仙】を構えて、スラスターを加速させ一気に突っ込む。

 

だが敵もそう簡単には近付けさせてくれない。何発もブラスターを撃ち込んでくる。それを【蓮】の『天輪』で防ぐが多すぎる熱量までは防げない。

 

熱い。

あちちっ。

熱いというより痛い。

 

強引にブラスターを突破し、【水仙】を無人機に向かって刺突するが両手で止められる。

 

全力で力を込めるがそれでもあちらの方が強く、少しずつ押し返されていく。

 

「デュノアさん!」

 

「はあぁぁぁぁっ!」

 

名前を呼んだのと同時に少し下がる。後ろからグレー・スケールで追撃。1発、2発と打ち込んで押し込む。奴の胸部に鋒が刺さり、衝撃で罅が入った。だが、先に耐えきれなかったのか水仙が砕ける。その時刀身に満ちていたナノマシンと電気が一緒に放出され司とシャルル、無人機を襲う。土煙が巻き起こった。

 

司は【蓮】を、シャルルはシールドを咄嗟に出して直撃を回避した。直撃はしなくとも一時的な動作不良が起こる。

 

少しだけ自分の動作の確認をしていたらいきなり巨大な手で体を捕まれた。

 

錆びた機械を無理矢理動かしているかのような不快な音をさせながらも動いている無人機。

 

――うそだろ、直撃したんだぞ。壊れるかは兎も角としても動作が出来なくなるぐらいの威力はあったはずだ。

 

万力のような力で締め上げられる。苦しい。痛い。

 

途端に胸部に熱と衝撃。焦げるんじゃないかってくらいの熱さとデュノアさんにもらった杭の攻撃かそれ以上の衝撃。

 

当然、意識なんて繋ぎ止めておけるはずもなく、どこか体が宙を舞っているなという感覚を残して視界は暗転した。

 

◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆

 

 

動揺した。何故、動揺した?

 

動揺している。何故、動揺している?

 

分からない。分からないが無人機にそこを突かれた。

 

ゴーレムの熱線光(ブラスター)での攻撃。有ろうことかそれに当たってしまい体勢を大きく崩した。そして腕に抱えていた長崎を離してまった。

 

焦燥に駆られた。何故?このような感情が私の中で渦巻く?

 

ぐるぐると思考に囚われそうになったが、ハッとする。今は戦闘中だ、切り替えろ。

 

だが意識を替えるのが少しだけ遅かった。私の場所に影が落ちた。

 

不快な鉄の音をたてる無人機が鉄屑同然のゴーレムをこちらへ投げたのだ。それだけなら難なく避けられた。だが投げられたゴーレムの内部から紅い光が漏れた。

 

 

◆◆ ◆◆◆◆◆◆

 

 

ゴーレムと言えどISだ。しかも国籍不明どころか明らかに世界にあるコアの487つの内のものではない。

 

では、そんなISを見つけたらどうするか。当然鹵獲して使うほうがいい。使えるコアは1つでも多いほうがいいのである。

 

だがそれを逆手にとり、ゴーレムは自身が危険になったら自爆するようにされている。コアはブラックボックスの塊。そのような処置は適切と言えるだろう。

 

爆発半径30メートル。コアが超高温度になり、臨界点まで達した時、コア、機体の情報すら残さず消すのだ。

 

そのほぼ中心地に居たラウラ、司の被害は甚大だ。

 

ラウラは経験則でそれがマズイものだと瞬時に理解し眼帯を外す。動体視力、視覚解像度並び神経系を爆発的に高める『オーディンの瞳(ヴォーダン・オージェ)』を解放し、【AIC】を全開にする。

 

全開にしたとしても爆発は四方から襲いかかる。ラウラだけで防ぐのは難しい。だが防がないよりはいいと思い、それに備える。

 

そして今まさに臨界に達しようしていた時、ラウラ、司の周りを【蓮】覆った。

 

この時司は完全に意識がなかった。しかしISはまだ生きていた。IS独自のネットワークを通してISは状況に、環境に合わせて進化又は最適化されていく。それが【蓮】に起きたのだ。言うなれば、半自立防御型・対BT・銃火器兵器【蓮】。

 

司たちの周りを舞い動く花が覆い、紅(あか)が弾けた。

 

 

◆◆◆ ◆◆◆◆◆

 

 

爆発の時、シャルルと一夏は近くに居た。咄嗟に気付いたシャルルが一夏を掴み、瞬時加速(イグニッション・ブースト)をして爆発半径から逃れた。

 

紅く輝く光がドームを形成する。それに二人が完全にの飲み込まれたところだった。

 

「……くっ………司、ラウラ」

 

離れていたシャルルや一夏までもが爆風、熱風にあおられながら、一夏の口から二人の名前が呟かれた。

 

暫くしてから、紅いドームは空気が萎むようにして消えていった。

 

消失した場にいたのは司とラウラだけだった。爆発したゴーレムは跡形も無く、ただ大きく負傷した二人が残った。

 

所々機体が溶け、壊れているのか小さく紫電が走っていて、共通しているのが二人とも所々火傷に犯されている所だ。

 

「……くっ……ぅ」

 

ラウラが苦悶の声をあげ、【AIC】を解く。そのときラウラが膝を崩すのと同時にドシャリと音をたててレールカノンが落ちた。いや、落ちたと言うより融解して使い物にならなくなったと言ったほうが適当である。

 

膝をつき、ラウラが苦しそうにしているがそんなものは関係ないといった感じに攻撃をしてくる。

 

ただの熱線光。しかし今のラウラにとってはただの攻撃ではない。満身創痍。そんな状態では回避も防御もままならない。成す術もなく攻撃を喰らい吹き飛ばされるラウラ。

 

そうして今度は司とばかりに手を伸ばすゴーレム。それを白刃と数多の銃弾が、一夏とシャルルがゴーレムを遮った。

 

「やらせるかっ」

 

「―――――」

 

チラリとシャルルが司を見る。ピクリとも動かないが微かに息づかいが聴こえる為死んではいないだろうと取り合えずほっと胸を撫で下ろす。

 

次にラウラの方へ視線を向ける。咳き込んだり起き上がろうとしているから命に別状はないだろうと判断し、安堵する。

 

そうしてシャルル、一夏は目の前のゴーレムを見た。正直勝てるかは分からない。だが教員たちが来る時間稼ぎぐらいはなると思う。

スラスターを準備させ、武器を構える。そして今まさに仕掛けようとした瞬間、悲鳴が聞こえた。

 

 

◆◆ ◆◆◆◆◆◆

 

 

――私は何をやっているのか。このような体たらくを晒し、パートナーすら守れないとは。

 

自分を叱咤し、自己嫌悪に駆られていると声が聞こえた。

 

『――願うか…?汝、自らの変革を望むか…?より強い力を欲するか…?……………何を望む…?』

 

「……力だ。力を望む」

 

――力が欲しいと思った。絶対的な力が欲しい。それは変わらない。だが守る力も欲しいと思った。

 

何処からかの問いかけに私はそう答える。

 

「私が私で在るために。私という存在を証明するために。力が、もっと強い力が必要だ。そして守れるくらいの力が欲しい」

 

 

Damage Level・・・・・D.

Mind Conditon・・・・・Uplift.

Certification・・・・・・Clear.

《Valkyrie Trace System》・・・・・・・・・・boot.

 

暗闇が私を覆い、闇が意識を遠ざける。

 

身体に、脳に、眼に痛みが走り私はたまらず悲鳴をあげた。

 

何処からかした問い掛けの答えに私が欲したのは何処までも憧れたあの人の強さだった。炎のように苛烈で氷のように冷酷で、しかし優しかったあの人を。

 

どこか私と似ていて、どこまでも優しいやつ。日の光のように暖かく、同じ場所は心地好かった。そんな彼を守れるようにと。

 

私は織斑千冬を思い浮かべ、長崎司を想い、意識が途切れた。

 

 




お読みいただきありがとうございます。話が少なめですいません。あと少し、あと少しでラウラ編が終わります。

大分遅くなってしまいましたが、今年も姫百合柊を、宜しくお願いします。
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