本当にお待たせしました。リアルでバタバタしていて、執筆が手につかない状態でした。何とか合間合間をぬって投稿します。
就活って大変ですね……。
「はい、皆さん。7月は臨海学校なので準備を忘れないで下さいね」
そう山田先生が言ったあと、HR終了の鐘が鳴った。時刻は夕刻、後は帰るなり部活動に勤しんだりするはずだが今、女の子達の関心は臨海学校である。
「臨海学校か、もうちょっと痩せないとなー」
「水着どうしよー。買っちゃおっかな」
「どうするどうする。今年は攻めてみる?」
いやー、さすが女子校。華々しいなー。
と、自室に戻る準備をしながら山田先生に聞く内容を確認していると横からちょんちょんとつつかれた。何だと思い、顔を向けてみると先程渡されたプリントを手にしているボーデヴィッヒさんだった。
「司よ、この一日自由とは何だ?何をするのだ?ISの訓練なのだから訓練をしなくてもよいのか?」
うん、なんの抵抗も無く名前で呼んでる。俺なんてまだ違和感があんのに……。
「まぁ、休息の時間なんじゃないでしょうか?最近は変な事が多かったですし、そういう意味で俺たちに楽しんで欲しいという学校側の配慮では?」
「ふむ、ならば水着はどうすれば良いだろうか」
え?それ俺に聞くの?同じ女の子に聞こうよ。知ってるよ、デュノアさん達と仲が良くなっているって。俺知ってるよ。まぁ周りのクラスメイトたちの話を聞くに……うむ。
「あー、水着は買った方が良いのでは?折角の機会ですし」
俺を言葉を聞いて、数回頷きながら何か考え込む仕草をし、返答した。
「うむ、了解した。では善は急げだ。またな司」
「うん、また明日」
一つの挨拶を終えると、ボーデヴィッヒさんはピューっと何処かに走って行った。織斑先生に注意されなきゃ良いけどなぁ……。
水着か……。まぁ俺はいらんな。
そんなことを思いながら、山田先生と自習に取り組んだ。
◇◇ ◇◇◇
「もうすっかり皆さんの気持ちは臨海学校に向いていますねぇ」
山田先生との自習が終わり、片付けをしていたらふと山田先生がそんなことを言った。
「まぁ、女子校ですからそれも仕方ないんですがねぇ。長崎くんくらいですよ、こうやって授業の終わりに聞きに来るのは」
まぁ、そうでしょうな。鷺ノ宮はもう殆ど分かっているようなもので、当てられてもほぼノータイムで答えられるし。織斑はあんまり分かってないんだろうけどそれどころじゃないんだよなぁ……大変だ。
「ISのこと、況してや自分の乗ってる機体のことを知っておいて損は全くありませんからね。当然のことですよ」
そんなことを言ったらしみじみと感動して『長崎くんは良いIS搭乗者になれますよ』と言ってくれた。嬉しかった。
「あ、山田先生ちょといいですか」
「はい、なんですか?」
折角だ、ちょっと言ってみよう。
「あの、一日目の自由時間なんですけどISって貸し出してますか?貸し出しているんでしたら使いたいんですが」
「……え?」
何か、変な空気になった。変なことでも言ってしまっただろうか。驚きでこっちを向いたまま固まってしまった山田先生。眼鏡がずれている。
「えぇっと……長崎くん、その心意気は先生としてとても嬉しいのですが私個人としても長崎くんに海でリラックスしてほしいんですよ。色々と長崎くんは頑張っているので時としては遊ぶことも大事なんですよ」
そう言われて包帯が巻かれた手を見る。
「……そう、ですね。不粋でした」
「不粋なんてとんでもないです!長崎くんのその取り組む姿勢は立派ですよ。現に何人かが感化されたみたいですから」
そう言ってその人たちのことを思い浮かべたのか優しい笑みを山田先生は浮かべた。
そのような時間を過ごしていると突然、山田先生が何かを決心したような顔になった。
「……あ、あの私と水着を買いに行きましょうっ」
ちなみにこの時の山田摩耶の顔は熟れたトマトみたいに真っ赤だった。
◇◇ ◇◇◇
「す、すませーん!お待たせしました」
小走りで来たために若干息が荒い山田先生。その為のやはりと言うように頬も朱に染まっている。
あの時、山田先生が言った「水着を買いに行きましょう」と言うのは緊張で中の課程を全てすっ飛ばしてしまったらしい。山田先生は色々と気を使って水着選びに誘ってくれたようだった。正直、嬉しい。
ちなみに山田先生の服装は白の大きめのシャツ、いやワンピースか?
それを着ているからだろうか、普段のほんわかとした山田先生の印象をより優しくしている。……麦わら帽子とか被ったら似合うと思う。
「いや、全然待っていませんよ。というか早いくらいです」
と、そんな小話もそこそこに、司が歩を進めようとしたときにストップがかかった。
「あ、長崎くんちょっと待ってください。織斑先生も呼んでるんです」
「織斑先生を?」
「あっ、いえ、深い意味はないんですけど……やっぱり、恥ずかしいので……すみません」
朱に染まった頬がさらに赤くなり、俯く山田先生。まぁ男と一緒では恥ずかしいよね。
そんなこんなでまた山田先生と話をしながら織斑先生を待っていると、直ぐに来た。
「山田先生、待たせました。長崎もな」
「い、いえいえ、大丈夫です」
「全然待ってないので大丈夫ですよ。……ってあれ、ラウラ?」
織斑先生の後ろに誰かいるな、と思っていたらボーデヴィッヒさんがいた。何故?
「む、司か?どうして山田先生と」
取り合えず、山田先生と買い物に一緒に行くことになったと言うことを簡単に伝える。ボーデヴィッヒさんは織斑先生を誘って買い物に行こうとしたらしい。おぉ、すげぇな。
そうして、俺たち一行は話しながら目的地、ショッピングモール『レゾナンス』へ向かった。当然水着を買いにである。
◇◇ ◇◇◇
「すいません、別の所に行っていいですか」
と喉元まで出かかった言葉を何とか飲み込む。しかも着いてからすぐそう思ったので、何ともまぁ先が思いやられる。
至るところ、華やかしい水着があった。水着?と少々疑問視されるような布面積が少ないものから競泳とスクール水着のような水着まで。バラエティーが豊富である。
女性の方々。山田先生、織斑先生、ラウラは水着を選ぶのを楽しんでいたり、どちらにしようかと悩んでいたりと反応は様々である。
ちなみに俺は直ぐに決まった。黒色で白の線が3本ほど入ってる水着で値段は三千円。
取り合えず、女性の水着売り場に行くのも何となく憚られ、近くにあったベンチに座っていると山田先生に名前を呼ばれた。
「……こちらとこちら、どっちが似合っていますか?す、すいません、いきなり。男の人の意見も参考になるかと思いまして……」
山田摩耶が手にしていたのは『バンドゥ・ビキニ』と『ホルター・ビキニ』だった。
『バンドゥ・ビキニ』。首から紐で吊るす三角タイプの水着ではなく、胸を包むような長方形タイプの水着。
ライトグリーン色でブラとパンツに可愛らしいフリルがあしらわれていて、山田先生に大変合ってらっしゃる。
『ホルター・ビキニ』。首から紐で吊るす一般的なタイプの水着。三角ビキニとも呼ばれている。
こちらは黄色い色をしていて、ブラの部分に花柄のワンポイントがこの水着の良さを際立たせている。
これを選べと?……うーん、どっちも似合うと思うんだが。
「……こっちの黄色い方がいいんじゃないかと俺は思います。でも、どちらも山田先生に似合うと思いますよ」
いや、本当に。でも、ライトグリーンの水着も良いと思うよ。
そんな俺の思いとは別に山田先生は本当に顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「……ぁ、あぅ。……わ、わたし、これ買ってきますっ」
そう言って、俯いたまま『ダッ』と走り出してしまった。当然そんなことをすればコケる確率はあがるのであり、山田先生はコケた。『ぽてっ』という感じでコケたのだが近くにいた織斑先生がフォローしていた。
ボーデヴィッヒさんはどうかと見てみると端末を使って誰かと連絡を取っていた。後、『ふん、ふん』といった感じで頷いていた。楽しそうだなぁ。
とそんな風にボーデヴィッヒさんを見ていたら声をかけられた。
「あれ、司じゃないですか。司も水着を買いに?」
「ん?おぉ、鷺ノ宮か。まぁそんなところだ。あ、おはようございます、ブランケットさん」
「おはようございます、長崎様。お久し振り、とは言えないですがお久し振りでございます」
まさか、だ。鷺ノ宮が水着を買いに来ていた。てっきり買いに来る必要なんてないのかと思ってたからな。
ブランケットさんもブランケットさんで通常運転だ。メイド服で来るもんだから目立っている。
ブランケットさんが久しぶりと言ったのは部屋割りが変わったからだ。さすがに女のデュノアと織斑の部屋を一緒にするのはいけないということで織斑と鷺ノ宮が一緒になった。ということは俺がまた一人部屋に戻ると言うわけである。
「ブランケットさんも水着になるんですか?」
「いえ、私はメイドですので、メイド服が正装なのでおいそれとメイド服以外のものを着るわけにはいかないのです」
メイドの魂ってやつを垣間見た気がした。と言っても流石に長袖のメイド服は暑かろう。えーと、たしか……あ、あったあった。
「おい、鷺ノ宮ちょっと」
鷺ノ宮を呼んで、少し離れた所に行きあるものを手渡す。
「これは?」
「あぁ、さっき水着コーナーに置いてあったんだがな、日焼け止めだ。『紫外線カット率が高く、肌に優しく、潤いを与える。美容液のような日焼け止め』がコンセプトらしい。もちろん顔や体にも使える。これはお前とブランケットさんの分だ」
「おぉー、ありがとう司。早速買ってくる」
買いに行く鷺ノ宮を見て思う。……何となく、俺も買っていこう、2本くらい。ちなみに一本3,000円だ。……高いね。
鷺ノ宮と同じくレジに向かって順番を待つ。本当になんの気無しに左の方を見たらデュノアさんが織斑の手を引っ張って一緒に試着室に入って行ったのを見てしまった。呆気に取られ、レジが遅れてしまったので慌てて前に行く。
そしてレジを済ませ、先生たちと合流した。
「すいません、遅くなりました」
「いえいえ、急がなくても大丈夫ですよ」
「あぁ、そうだな。買うものは買ったのだから……ん?」
織斑先生が喋っていたが言葉が途切れ、視線が後ろの方へ向いた。何だと思い俺たちも視線の方へ顔を向けた。
「……あれは、セシリアと鈴、か?何故あんなところに」
皆の気持ちを代弁するようにボーデヴィッヒさんがそう口にした。……確かになにやってんだろうねあの二人。あれで隠れているつもり何だろうか。
そう思っていたら試着室から織斑と水着のデュノアさんが出てきた。
「ほう……」
織斑先生の普段の声と比べると1トーンぐらい低い声が聞こえた。怖い。怖いです、織斑先生。
そしてボーデヴィッヒさんが『シャルロットは何をしているのだ……』と若干呆れた声を漏らしていた。うん、そうだよね織斑が進んで入って行くわけないもんね。
「……少し急用を思い出した。山田先生一緒に行きますか?」
「い、いえ……私は遠慮しておきます」
やっぱりデュノアさんが無理矢理?更衣室に連れ込んだことは織斑先生は分かっているようでそれについて怒っていると思う。というか雰囲気がすごく怖い。
「そうですか。お前らも帰るんだったら気を付けるんだぞ」
織斑先生がそう言ってゆっくりと向かって行った。あ、オルコットさんと鳳さんが気付いて顔を青くしている。まぁ、そうなるよね。デュノアさん、織斑……南無。骨は拾ってやる。