遅くなりましたね、すいません。臨海学校二日目です。
では、どうぞ。
臨海学校二日目。その日の予定はつつがなく始まっていた。
因みに起きた時に山田先生にお礼を言われた。有り難く使わせてもらうそうだ。こちらとしてもそのほうが嬉しい。
二日目は午前から夜までびっちりとやることが決まっており、それを消化していくことになる。専用機持ちは専用機持ち用のカリキュラムで、他は訓練機の打鉄、ラファール・リヴァイブを使いISの稼働・装備・模擬訓練を行う。
当然俺は稼働訓練などを行う方に行こうとしていたのだが織斑先生に止められた。というか打鉄を持ってこちらに来いと言われた。なんぞ?
織斑先生に付いて行ったら予想外の人がそこに居た。
「おー、長崎くん、久し振り~。元気にしていたかい?」
「おっ、来たか。久し振りだな、長崎。」
「来ましたね。お久し振りです、長崎くん」
なんと水面さん、三木さん、神崎さんの三人が居たのだ。……何故?
他の皆はパッケージだけ送られて来ているが水面さんたちは俺が臨海学校で訓練することを知り、どうせならということで来たらしい。まぁ、それれは建前で完成した新装備を生で着けてみて感想を聞かせて欲しいと言っていた。
皆が訓練する砂浜から更に離れた岩場に俺達は集まっていた。面子としては織斑先生に山田先生、織斑、鷺ノ宮、ブランケットさん、篠ノ之さん、オルコットさん、鳳さん、デュノアさん、ラウラに俺と水面さん、神崎さん、三木さんといった顔ぶれになっている。因みに先程、織斑先生が言っていたのだが本来ならここにもう一人専用機持ちが加わる予定だったのだが機体が完成しておらず、参加出来ないということになったらしい。
「さーて、長崎くんこっち来て。……ではでは、お披露目しよう。タッグマッチ戦からアイディアをもらって考えた新装備!その名を【白百合】!!」
「この【白百合】ですが、長崎くんの案と私たちの考えをまとめ形にしたものとなります。名は【白百合】。正式名称は『爆発反射装甲甲冑』と言います」
「デザインは俺たち開発班の皆で決めたんだ。まぁ、中々決まらなかったんだが、最終的には今の形でってので落ち着いたんだ。大変だったぜー、特に日比野の奴と藍と彼方が気合い入りまくりでなぁ。あーでもないこーでもないってずっと議論しっぱなしだったよ」
「…………」
高らかに宣言した水面さんとは違い、淡々と名前を述べていく神崎さん。三木さんは製作のちょっとした小話を話してくれた。
「って、皆テンションおかしいでしょ!?折角完成した装備だよ、もっとこう……なんかあるでしょ!」
「いやいや、そういうのは社長だけで十分ですから。あと、何で今日に限ってスイッチ入れてないんですか、普通逆でしょう?」
「あれ知らない内に疲れるんだよー。それにしたって……」
水面さんと三木さんとで言い合いが始まってしまった。チラリと他のところの状況を見てみると何とも言えない表情でこちらを見ていた。何だか恥ずかしいので見ないでくれ。
どうしたらいいか分からないでいると神崎さんが申し訳なさそうにして謝ってきた。全く神崎さんは悪くないので『こちらこそすいません』と言った。
暫く待っていたがまだ続きそうだということで神崎さんが【白百合】をセットしてくれるそうだ。その合間に話してくれたが、なんでもこの【白百合】と本来俺の専用機の【黒牡丹】とのどちらを持って行くか凄く悩んだそうだ。そして協議の結果、新装備の【白百合】なった。初めのように乗れないということはないと思うが、他の専用機持ちたちのように十全には扱えないと思うし、テスターをやらせてもらっている身としては申し訳ないと思う。
「……これでよし。出来ましたよ長崎くん」
セットしてもらった【白百合】をディスプレイを押して呼び出す。
眩い光が一瞬だけ溢れ、形が形成される。全身装甲(フルスキン)の純白で染められた外装。右手の籠手は五指タイプの「ガントレット」。左手の籠手は二股タイプの「ミトン」で構成。頭部・胸部は前面がひし形のように尖っていて、左目側、心臓側に一輪、百合の装飾が施されている。頭頂部にはこちらも装飾なのか銀色の長い毛が一房、風でなびいていた。
感覚を確かめる為に動作確認をする。
「……ん?」
ちょっとした違和感を腰に感じ、見てみると、前開きのスカートのようなものが付いていた。よくよく見れば盾のような装甲にも見えなくもない。っていうか、完全に打鉄を覆ってるな、どうなってるんだ?本当に。
つか頭の先から足の先まで……まさに全身装甲(フルプレートメイル)って感じだ。
「この装甲の一番の特長は反射して攻撃を弾いた時に装甲の一部が剥離するのですがその様が百合の花弁に似ているから【白百合】と名付けられた点です」
なるほど。しかし、甲冑だから動きにくいんじゃないかと思ったが全くそんなことはない。動きに支障は無いな。
「ただ、やはり欠点はあります。【白百合】の装甲は爆発の為に何層も重なっているんですが、攻撃が爆発するよりも早く装甲の深部に達してしまうと爆発が搭乗者を襲ってしまうということなんです。その例としては一点集中型の攻撃や装甲が削り切られてしまう広範囲圧殺型の質量が多い攻撃などが挙げられます」
なるほど、そんな欠点があったとは。頭に入れておこうと思っていたら水面さんと三木さんが来た。
「お~、やっぱりかっこいいね!」
「創るのもいいが、こうして自分達が創ったものを見るのも良いもんだなぁ」
睡蓮は目をキラキラとさせて、大葉は司の姿を見て沁々という。
何だかこっちが何とも言えない感じになり、視線を逸らすと皆こっち見てた。なんでさ。
「すげぇな……なんか、騎士って感じだ」
「すげぇな……なんか、騎士って感じだ」
織斑、鷺ノ宮お前らなに言ってんだ。ハモるなハモるな。ステレオで聞こえっから。
「……なんか、なんか白騎士みたい」
誰かがそんなことを言った。皆の視線が一層強まった気がした。何でやねん、授業でやったじゃん。いや、粗かったけど映像で見たでしょ?君たち。何言ってんの?姿形、全然違うじゃない。
甲冑で見えないけど、苦笑する。何となく居心地が悪かったので【白百合】を解除して水面さんたちの方を見ると三人も苦笑してた。
「ちーちゃ~~ん!!」
すると、遠くの方から砂煙と共に声が聞こえてきた。なんだ、ちーちゃん?
「……束か」
織斑先生がぼそりと呟いたのが聞こえ、納得する。千冬だからちーちゃんか。
「やあやあ、お久し振りだねちーちゃん!会いたかったよ、さぁギュッとハグしよう。久しぶりに友情を確かめようじゃないか!友情以外のものを確立させようぜ!……あいたっ」
両手を広げて近付いてくる束に千冬は手を上げ、軽くチョップする。
「……少し落ち着け束。それよりもいきなり来るな。来るなら連絡なんなりしてから来いと言っただろうが」
「えへへ、忘れてたよー。あれ、箒ちゃんは?」
「篠ノ之ならあっちで訓練中だ。用があるならお前が連れてくるなりしろよ。私はそこまで手はまわらん」
「うん、いいよー。むしろ好都合だよ。箒ちゃんの訓練風景をこの目で見られるんだよー、自分から行っちゃう行っちゃう」
そう言って、また砂煙を立てながら反対方向の篠ノ之さんたちがいる場所へ向かって行った。
「……嵐みたいな人だな」
去って行った方を向きながらそう呟く。しかし、凄く変わった服装だなとも思う。……いや、どうなんだろ。あの人なのだろうか。
唐突に二年前に起こったことを思い出しながらそう考える。すると、横から砂を踏む音が聞こえた。
「……追い付いた、と思ったら束様は居ないのですね。はぁ、流石に疲れました」
ドクンと心臓が跳ねた。彼女が何故ここに居るのか、という疑問はあったが今はいい。間違える筈もない、小さい頃から幾度も聞き、言葉を交わした。綺麗な声だ。確信を持って声の方へ向いた。
「……クロエ、久しぶり」
少女、クロエは閉じていた目を見開き、金色の瞳を露にしてこちらを見つめた。
「……司兄様」
やっぱり、その金色の瞳は小さい頃見た時から変わらず綺麗だなとそんな事を思った。
幼少期に別れてから二人、司とクロエは不意に邂逅した。