IS~一人の転生者、報われる日は来るのか?   作:姫百合 柊

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どうも、お久しぶりです。本編でなく、閑話で申し訳ないです。しかも三周年過ぎてしまいましたし……。

さて、第一弾となります。楽しんで頂けましたら幸いです。


三周年記念閑話・冬とお鍋

 

季節は冬。IS学園にも冬は来る。寒くないように温かい格好をしていも、どうしたって寒いものは寒い。どうしたものかと考え、ふとちらりと見えた物に目が行く。

 

「そうだ。鍋にしよう」

 

そう思い立った司は早速準備に取りかかった。何気なく決めた事だったが、それは良い判断だと司は知る由もない。

 

 

◇◇ ◇◇◇

 

 

ぐつぐつと鍋が煮える音が聞こえる。

 

鍋の具材は無難に白菜に豆腐、椎茸、豚肉、薬味に刻み葱といったものだ。湯豆腐というのも考えたが気分で何となくこちらにした。

 

「んー、そろそろかな」

 

蓋のすき間から出てくる湯気と音でそろそろ食べ頃だろうと思い、火を止め机に持って行く。机といっても学習机ではなく、炬燵だ。

 

つい先週の休日、さすがに寒かったので家電屋に行き炬燵を買った。それのおかげで大部、部屋の中でも過ごしやすくなった。

 

取り皿に適量取った具材をいれる。ご飯も炊いていたので茶碗によそう。

 

「いただき……」

 

と言ったところでドアがノックされた。時計を見てみると、現在時刻19時05分。大抵の生徒は学食にいって夕飯を食べているはずだが?誰だろうと思いながら出てみた。

 

「司よ、一緒に学食に……む?」

 

誰かと思ったらラウラが訪ねて来た。どうやら一緒に学食に行こうと誘いに来てくれたらしい。だがこちらが今食事中だということに気付き、何とも言えない表情になった。

 

何だか悪いことをした気分になった。どうしたものかと考え、ふと思い立った。

 

「ラウラはご飯まだですよね?」

 

「……え?」

 

「良かったら、一緒に食べますか?」

 

そう問われたラウラは表情を明るくして答えた。

 

「頂こう!」

 

 

◇◇ ◇◇◇

 

 

ぐつぐつと煮えている鍋から取り皿に具材をよそう。ラウラとは対面に座っており、よそった取り皿を手渡す。

 

それにしても、食器類をお徳用のセットで買っていて良かった。こういった事態を見越した訳ではなく、自分が壊してしまった時や食器は多くあってもそんなに困らないだろうと思ったからなのだが、それが項を奏したようだ。

 

「はい、熱いので気を付けてくださいね」

 

「うむ」

 

準備が出来たので手を合わせる。やはりこれは大事だと思う。

 

「いただきます」

 

「む?……いただき、ます」

 

ラウラも食べようとしていたのを制し、自分と同じように手を合わせた。やはり文化が違く、不馴れな感じではあるがしてくれただけで何だか嬉しく感じた。

 

「美味しいですか?」

 

ラウラが一口食べたのを見計らって、そう疑問を投げ掛けてみた。味見などはしてみたが、味覚の違いでというのもあるかもしれない。美味しくないなどと言われてしまったらどうしようかと少しだけ困った。

 

「……私がドイツにいたとき、食事はレーションのようなものを口にしていた」

 

ぽつりぽつりとラウラがドイツでの出来事を話始める。

 

「乾パンのようなものだったり、チーズ、スープだったりといったものだ」

 

箸を置き、時々相づちをしながら聞くことに徹する。

 

「だが、この学園に来て自国には無いものを食べた。驚きもたくさんあった。しかし、ここの辺りが暖かくなったのはこれが初めてだ。……だから、美味しいのだと思う」

 

自分の胸のあたりに手を当てながら、ラウラはそう言った。その表情は自分の今の感情が何なのか不思議に感じているような顔をしている。

 

「……まだありますから、どんどん食べてください」

 

「うむ!」

 

俺はそんなラウラの様子に微笑みながらそう言い、ラウラは笑みを浮かべて再び食べ始めた。

 

 

◇◇ ◇◇◇

 

 

食事が終わってゆったりとした空気が流れる。ラウラは炬燵で寛いでおり、俺はちょっとした飲み物の準備中だ。

 

色々あって、鷺ノ宮もといブランケットさんの持ってきていたコーヒーミル一式を貸してもらったのだ。豆とかは自分で買ったが、やり方はブランケットさんにレクチャーしてもらいブランケットさんも美味しいと言ってくれるくらいには上手く淹れれるようになった。

 

「炬燵で寝ると風邪引きますよ。はい、コーヒーです」

 

炬燵に入って、うとうとしていたラウラに声をかけてコーヒーを置く。目を擦りながら、おぼろ気ながら頷く。

 

「……ぅむ、わかった」

 

そう言ってコーヒーを一口飲むと目が見開かれた。

 

「……不思議だ。とても美味しい」

 

「そう言ってもらえて良かったです。誰かに振る舞うなんてしたことが無かったので不安だったんですよ」

 

 

そしてまた、ゆったりとした時間が流れた。静かな室内で時計の音がやけに大きく聞こえる。しかし嫌な静けさではない。寧ろ、心地よい時間だ。だからだろう、瞼が重く感じる。ボーデヴィッヒさんが居るので寝てはダメだと分かってはいるのだがどうしても抗えない。意識が途切れる前に見たのはボーデヴィッヒさんもうつらうつらしていたということだった。

 

 

◇◇ ◇◇◇

 

 

「おーい、司ぁ。ちょっと遅いけど皆で一緒に夕食に行かないかー」

 

現在時刻は20時10分。食堂が閉まるまで、まだ少し時間がある。だからさっきまで一緒にいた箒に鈴、セシリア、シャルロットを夕飯に誘ったのだ。途中で会ったブランケットさんと一樹も行くことに。

 

ラウラも誘おうとしたのだが何処かに出掛けているとシャルから言われた。だから誘えないし、最後に司のところによったのだが……。

 

「……居ないのか?」

 

返事は返って来ない。何処かに出掛けているのだろうと思い、諦めようとして何の気なしにドアノブに手を掛けてみた。すると、抵抗も無く開いたのだ。

 

悪いと思いながらも中の様子が気になって、入ってしまった。

 

「……司?」

 

再度、呼び掛けてみるがやはり返事はない。だがそれも納得の光景が目の前にあった。皆、俺に釣られて中に入って来てしまったがその光景を見て、頬を緩める者、『あらあら』と言って口元に手を持っていく者がいたりと三者三様の反応をしていた。

 

俺達が見た光景。それは机に突っ伏して寝てしまっている司とラウラがいたということだ。頭を合わせるようにしていて、傍らにマグカップがあり飲んでいる途中だったのだろう、まだ中身が残っていた。それに毛布すらかけていない。

 

皆で顔を見合わせて、司とラウラを起こさないように静かに移動して二人に毛布をかける。

 

電気を消して、『おやすみ』と声を掛けてから部屋を出た。何だか頬が緩むので誤魔化すように皆の方を向くと皆も笑顔になっていた。

 

こうして、IS学園の冬の一日が過ぎていく。

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