お待たせ致しました。何だが思うように書けなかったです……スランプかなぁ。
では、どうぞ。
向かい合っていた二人は示し合わせたように互いに歩き出す。司はクロエを、クロエは閉じた瞳で司の方を向きながら歩く。
「……大きくなったな」
「……はい」
司とクロエは互いに言葉を交わしながら一歩ずつ近付いていく。
「最近、やっと帰ることが出来てさ……自分の中でも心の整理がついたから。それで結構な人数が出掛けて行ったことを知ったんだ。……クロエ、今のところで幸せ?」
「はい、束様には良くして頂いています」
開いていた互いの距離が埋まるまであと数歩。
「……司兄様、お姉様とは会えましたか?」
「いや、まだ会えてないよ。これも切れてないから」
そう言って司は手首に巻いてあるミサンガを見せる。それを見たクロエは微笑を浮かべた。
「していてくれていたんですね」
「これも、四つ葉の栞も俺にとっては大切な宝物だから」
距離がなくなり、二人は互いを見つめる。少年だった彼は彼女よりも大きくなり、少女だった彼女はもう少女ではなくなっていた。ふたりとも互いに知らない内に大きくなっていた。
「……変わらないなぁ、クロエは」
「……司兄様も変わらないですね」
小さい頃に一緒にいて、暫くしたら別れてしまったクロエを今の姿と重ねる。そして変わっていないと安心して、昔のように頭を撫でた。
◇◇ ◇◇◇
小さい頃に別れてしまった、別れるしかなかった当時も私にとっては大きかった兄を見る。昔とは少しだけ違ったが間違いなく兄だった、私の大好きな。だから昔と同じように頭を撫でてくれたことを嬉しく感じた。チラリと目を開いて、兄を見ると優しく笑みを浮かべていた。だから私も嬉しくなって自然と笑顔が溢れた。
◇◇ ◇◇◇
その光景を見ていた者は驚きを隠せなかった。だが一番驚きを露にしたのはラウラだった。
「……その髪、その瞳の色」
そのラウラはブツブツと驚きながら考え込むという器用なことをしていた。
一番早く立ち直ったのは一夏だった。皆の気持ちを代弁するように疑問を口にする。
「……えーっと……つ、司その人は一体……」
「――――彼女は」
言いよどみ、口を開いては閉じることを数回繰り返してから何処か言いづらそうに言葉を口にした司。それを遮るようにして悲鳴のような声が響いた。
「お、織斑先生っ!た、たた……大変です!?」
「どうしました、山田先生?」
俺は勿論、その場にいた全員がそちらを向いた。離れた位置にいた山田先生だったが飛ぶようにして織斑先生の場所に走っていく。織斑先生もその様子がおかしいと気付き、真剣な眼差しになる。
「こ、これを見てくださいっ」
持っていた小型端末を織斑先生に手渡す。その端末を見て行くうちに織斑先生の表情が険しくなっていった。
「……何だこれは。特命任務レベルAだと」
「そ、それが……」
一言二言、言葉を交わした後、織斑先生と山田先生は小さな声で手話を交えながらやり取りをしていた。
「それでは私は他の先生方と生徒たちに伝えて来ますっ」
「えぇ、頼みます。――全員、注目」
駆け出した山田先生を見送ってから手を叩き、自分を見るように促す。その場にいる者が織斑先生の方を向く。
「現時刻より私たち教員は特殊任務行動に移ることになった。今日のテスト稼働は中止だ。織斑、長崎、鷺ノ宮、鳳、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒお前たちは私たちと同じように特殊任務行動に移ってもらう」
有無を言わせないような迫力にただ頷くしかない。
「詳しくは機密事項なので申せませんが水面さんと神崎さん、三木さん、ブランケットさんは旅館で待機をしていて頂きたい。折角のテスト稼働でしたのに申し訳ありません」
『気にしないでください』と水面さんたちはそう言ってから旅館に戻って行った。その時、水面と神崎は頑張ってと声を司にかけ、三木は肩をポンポンと叩いてから戻って行った。
そして、いつの間にかクロエは何処かに行ってしまっていた。
◇◇ ◇◇◇
あれから千冬と別れ、束は妹の箒に会っていた。他の皆は訓練機で稼働・装備の訓練を行っていたが箒だけは他とは外れて一人でいた。まるで誰かを待っているかのように。そんな妹を見て、ほんの一瞬寂しそうにしたがすぐに笑顔になって箒に話しかけた。
「お久しぶりだね~、箒ちゃん。暫く見ないうちに色んなところがおっきくなっちゃって。まぁ、何処がとはいわないけどねっ」
「……姉さん」
「姉さんなんて堅苦しいなぁ~。昔みたいにお姉ちゃんでいいんだよん」
「姉さん、頼んでいたものは出来上がりましたか?」
「うんうん、もうとっくに出来上がっているよ」
箒はその答えに喜色を露にした。ただ、束は笑顔のまま続けた。
「箒ちゃん、ISって箒ちゃんにとって何?」
「……何ですか、突然。そんなもの決まっているでしょう?姉さんが生み出したモノですよ」
その問いに箒は顔を歪めながら答える。束は笑顔で続ける。
「箒ちゃんはISに何を求めるの?」
「力です。隣に立つために私には力がいる」
その答えを聞いて、『そっか』と呟いてから告げた。
「じゃあ、これが今の箒ちゃんに相応しいISだよ」
空中にディスプレイを一つ出し、それを下にスクロールする。すると空から何かが砂浜に着弾した。
「これが箒ちゃんのIS『鴇蕾(ときつぼみ)』だよ」
砂煙が晴れ、姿が露になった。鉄に覆われたそれだったが、束がパチンと指を鳴らすとデータ化して消えた。
現れたそれは白かった。いや、完全に白ではない。薄い黄色と淡く桃色のカラーリングが施されたそれ。箒はそれ見て、体を震わせながら声を荒げた。
「……何ですかこれは!?これが私の専用機?こんなものただ色が違う打鉄じゃないですか!」
「いいや、違うよ。この子は箒ちゃん専用のIS。箒ちゃんから頼まれたから私がその子を生み出した。正真正銘の専用機だよ」
激昂している箒に微笑を浮かべ束はただそう告げる。
「確かに、側(がわ)だけ見れば打鉄だよね。私が敢えてそうしたから。……じゃあ、重ねて問うよ箒ちゃん。箒ちゃんはIS学園でどのくらいISに乗ったのかな」
ぐっと言葉を詰まらせた箒。当然だ、毛嫌いしていた姉が作ったモノだ。ISには殆どと言っていいほど乗ってはいなかった。一夏が来てからは多少マシにはなったがそれでもだ。その箒の反応を見て『やっぱり』と告げる。
「だからだよ。だから箒ちゃんには『鴇蕾』にしたんだ。私の本当に思い描いたIS(こ)を今の箒ちゃんが乗っても絶対に全ての性能を発揮できないからね」
それでも納得がいかずに箒は食い下がる。そんな様子を見て、僅かに息を吐いて言葉を告げる。
「……じゃあ、こう言えば乗ってくれるかな?『鴇蕾』は『白式』の姉妹機だって」
「……何ですって。これが?」
訝しげに『鴇蕾』の方を見る箒。そんな妹を見ている束は笑顔のままだ。しかし、突然勢い良く海の方を見た。
「束様」
「何か問題が起こったようだね、くーちゃん」
何時の間にか束の元へ来ていたクロエは、先の事情を束へ説明した。
「そっかそっか。……じゃあ行こうか、くーちゃん、箒ちゃん」
「どこへ?……私もですか」
クロエの手を引いて歩いていた束は箒の問いに振り向いて答えた。
「専用機持ち(みんな)のところだよ。私はISの問題に関しては積極的に動くよ?……それに箒ちゃんだってもう無関係じゃないんだ」
『専用機があるんだから』と告げ、鴇蕾を待機状態にして箒に渡す。それは少し変わった形のブレスレットとなった。
一際強い風が吹き、髪を揺らす。夏なのに嫌にその風は冷たく感じた。