読者様を大変待たせてしまいしたがそれでも、こんな作品を読んで下さる皆様、ありがとうございます。
久しぶりで書き方やキャラなどを忘れてしまった等があり、なんかおかしくね?と思ったらすいません!
あとお気に入りがいつの間にか100件を越えていました。感謝、感激です!これからも頑張ります。
では、第4話、どうそ!
※指摘して頂いた箇所を修正致しました。指摘して下さった方々、ありがとうございます。
翌日、俺はまた織斑先生に呼び出されていた。
「……は?試合、ですか?」
「そうだ」
「何故、ですか?」
いきなり試合しろなんて言われても困る。俺の場合文字どおり死合いになりそうで怖い。
「私たち教師の間で話題に挙がってな、そう言えば長崎の実力はどの程度のものなのか、と」
内心、マジかよと思う司だった。
「急な転校生がなんせ3人も来たからな、こっちもその対応に追われていたんだ。いつもなら実施している対教師の実力試験も時間がなくて出来なくてな。無理に時間を作れないでもないが、仕事が多くてな……」
「あ、あはは…」
こめかみを押さえる織斑先生にどう反応していいか分からず苦笑いする司。
取り合えず、お仕事ご苦労様ですと労いの言葉を言ったら、あぁと返事が返ってきた。
「…あれ?ですが織斑先生。何故俺だけなんですか?他の転校生、デュノアにボーデヴィッヒも俺と同じ時期に入って来たんですよ?」
不意に疑問に思ったことを言う。おかしな話だ、話題になるのが俺だけなんて。普通、話題になるのは織斑のことだろ?いや、違うか…違うな、うん。
「あぁ、そのことか。自己紹介の時に言っていなかったがデュノア、ボーデヴィッヒの両名は代表候補生だ。だから、取り合えず実力は申し分ないと言うことになった。それで転校生の中で実力がわからないのは長崎、お前だけだ」
大体予想はついていたが、まさか本当に代表候補生だったとは。2人とも専用機持ちか……マジかよ。
「ん?あまり驚いていないな」
「あ、いえ…授業の時にデュノアはなんか訓練機以外の機体に乗っていたなぁって思い出してまして、それに代表候補生ならあの操縦の上手さも納得できますから。ボーデヴィッヒについては知らないと言うか分かりませんでしたが」
つか、ウチのクラスって専用機持ち多いよなぁ……4人もいるんだよなぁ、はぁ。
司が小さくため息を吐いていたら、職員室の扉が開いた。現れたのは紙の山を抱え、若干フラフラしている山田先生とこっちも紙の山を抱えている織斑が入ってきた。
「織斑君、わざわざすいません、ありがとうございます」
と山田先生は頭を下げた。紙の山を抱えたまま。
当然、紙は重力に逆らえる筈もなく大半が床に散乱した。
山田先生はあわわわっと言った風で急いで拾いにかかる。織斑は抱えていた紙を手近な机に置き、拾うのを手伝う。しかし量が半端じゃなく多い。2人では大変だろうと思い、俺は織斑先生に断りを入れ拾いに行く。
「手伝います、山田先生」
「あ、あ、ありがとうございますぅ…」
うん、少し涙目だ。何だろう、いつも思うんだがこの人本当に歳上なんだろうか?IS学園の制服着てもバレないんじゃね?マジで。
司が山田先生について考えていると織斑が司に気づいた。
「うん?司?なにやってるんだ?こんなとこで」
「紙拾ってんだ」
「……いや、そうじゃなくてだな」
「ん?あぁ、織斑先生に呼び出されたんだよ」
「千冬姉に?」
こいつ織斑先生のこと千冬姉って呼ぶよな、注意されてんのに。まぁ兄弟だから定着してしまっているっていうのもあるが、ちょっとばかし、治らなすぎじゃありませんかね?あなた。
そのとき、後ろからカツカツと足音が聴こえた。あぁ、織斑終わったなと思った。そしてその足音の主は織斑の後ろに行って止まり、織斑の名前を呼んだ。
名前を呼ばれたことで振り返るとそこには手があった。デコピンの形をした。
「織斑先生だ、馬鹿者」
そう言って織斑先生は弟の額に撃鉄を落とした。デコピンの筈なのに鈍い音がした。
「~~~っ!?」
あまりの痛さに声も出てない織斑。横から、…力を込めすぎたなと聞こえた。
「お、織斑君!だ、大丈夫ですか!?もう、織斑先生もやり過ぎですよ!」
山田先生が初めて怒ったのを見たかもしれない、だがそこには恐いという感情は無く、 見ているものを和ませる感じがする。なんか擬音で表すならポワポワだ。
ふと気になったので織斑先生の方を見てみると、若干織斑先生の表情がいつもより穏やかだ。山田先生恐るべし。すげぇな、山田先生みたいな人が世界中に居たら戦争なくなるんじゃねぇか?
司も山田先生で和んでいるとやっと回復した織斑が尋ねてきた。
「…お、織斑先生、司と何を?」
話していた内容が気になるのか、織斑先生に尋ねる。それに、ふむと考えてから答えた。
「ちょうどいい、織斑。長崎と試合しろ」
「「え?」」
二つの声が重なる。一夏の方は訳がわからずっと言った風で司の方は何故織斑となのかといった風で。
「長崎の実力を測る為だ。織斑、お前はオルコット、凰などと試合をして大体の力量は分かっているし、自分でも分かるだろう?だが長崎の実力はこちらでも分からんし、自分でも分かっていない。それでは危険と判断したからだ」
いきなり試合しろと言われて何考えて要るのかな?と思ってたけどそんな事考えていたんですか、織斑先生!
それに、と織斑先生は付け足した。
「専用機を持っていて、訓練時間も長崎よりはあるが、もしかしたら…ということもあるかも知れんだろう?」
ニッと笑う織斑先生。それが様になっていてかっこいい。
それにうっと言葉を詰まらせる織斑。それから考えこんでいて、しばらくしたらよしやる、頑張ります!と意気込んでいた。
やる気十分な織斑。あーそんなやる気出さなくて良いのよ?言っとくけど俺機体、打鉄だからね?負けるよ?完璧に。
「そうだな、あとはどうするか。……織斑、オルコット、凰とどちらが戦いずらかった?」
「え?えーと、セシリアはビットを避けるのは大変だったけど戦っているうちに癖が見つかっていったし、鈴の龍咆は見えなかったからなんもできなかったらか………どちらかと言えば鈴、かな?」
なんかぶつぶつ呟いていたけど鈴って奴になった。誰?
「そうか。……よし、オルコットに明日、模擬試験だと伝えてくれ」
織斑先生の言葉に驚愕する司。
あ、明日ぅ!?ちょっと待ってください織斑先生!俺なんも準備できて……って打鉄だから準備もなんもねぇか。うん、この後少しIS動かそう。せめて操作くらいまともにしたい。
分かりましたと言って職員室を出る織斑。俺もその後に続こうとしたら織斑先生に止められた。
「いきなり決めてしまって悪い。お前の意見も聞けばよかったな、すまん」
止められたから何話されるのかと思ったら謝られた。
「え?……いや、なんで織斑先生が謝っているんですか。むしろ、こっちとしては実力が分かりますし感謝しています。それにクラスメイトの実力とか判らないんで先生に選んで貰っても一向に構いませんよ。……というか織斑と戦うのは分かったんですが、何故オルコットなんですか?」
これは本音だ。まぁ俺の実力などたかが知れているが、どのくらい自分が出来るのか知っておいて損はないと思う。
しかし何故オルコットなのだろうか?……つか、オルコットって誰?ここで名前を出されたってことは結構実力がある奴ってことだろ?うーむ…………あっ!もしかしていつも一夏さんって言ってる金髪縦ロールの奴か?そうだよな。他に専用機持ちの奴居ないし、授業で名前呼ばれたの織斑、セシリア、デュノア、ボーデヴィッヒだけだったし。その中で該当すんのはその容姿の人しかいないな。
「何故オルコット、か。長崎、お前が一番戦いたくないと思う相手は誰だ?」
「え?出来れば全員戦いたくないんですが…。俺にとっては全員脅威ですし」
これも本音である。だって皆専用機持ってるし、IS搭乗時間も他より圧倒的に多い。さっき実力がどうのって言ったが俺、勝てるわけないと思う。絶対ボロ負けする。そんな自信しかない!
と司がそんなことを意気込んで?いると織斑先生がため息を吐き、口を開いた。
「……オルコットにした理由だがな、お前にはデュノア、ボーデヴィッヒ、凰の相手はまだ荷が重いと思ってな。あぁ、オルコットも十分強いがまだムラが在りすぎる、そこを突ければお前でも勝機はあると踏んだからだ」
そこまで考えてくれていたことに驚く司。正直、弟が言ったからそれで良いか、みたいな軽い感じだと思っていた。いや別にそれでも良かったんだが、まさかそこまで考えてくれていたとは……なんでこの人彼氏いないんだ?ものすげぇ出来る人なのに。あれか?出来すぎる女は嫌いってか?意味がわからん。
「……はぁ、いや、正直そこまで考えていてくれていると思っていなかったので何も言えないです」
言葉に詰まったが返答する。流石にそう思われたのは不満だったのか、少し顔をしかめて返した。
「あのな長崎、私達は教師だ。私達が生徒のことを考えてやらずに誰が学校という組織の中で考えてやると言うんだ?」
また言葉に詰まった。前世でここまで真剣に生徒のことを考えていた先生は居ただろうか?いや、居なかった。
「…そう、ですね。すいません。まぁ…ボロ負けしないようには頑張ります」
「ん?勝ちます、とは言わんのか?」
「いやだって、まだISの操縦すら苦労してるんですよ?そんな俺がどう足掻いても専用機持ちや代表候補生の人には勝てませんって」
苦笑いする司にそうかと返す織斑先生。
「まぁ、何にせよ明日は頑張れよ」
初めて応援というのをされた。むず痒く、照れ臭くはあるが悪くないなと思った。
職員室を出た後、司は少しでも操縦がマシになるように訓練場へと向かった。
◆◇◆◇◆
次の日、俺はオルコットさんと戦った。
結果は当然負けた。
◆◆◇◇◆
あー、この時が来ちゃったか。あの後打鉄で訓練したがやっぱり一日やそこらで上達しないなぁ。
俺は自分の専用機でもある打鉄に今日は頑張ろうぜと一言言ってから機体に乗った。
「司、頑張れよ」
「…あぁ、取り合えずはな」
あの、織斑さん。あなたなんでこっちに居るんですかね?普通オルコットの場所じゃありませんかね?見てくれよ、オルコットさんもうアリーナに出てるし、銃口こっちに向けてんだせ?絶対怒ってるよ。なに?、もしかしてあいつも織斑のこと好きなの?織斑さんモテすぎでしょ?つか、気付けよ!?
「………」
「………」
司と織斑が話していると司のことをじっと見つめている人物が二人。
恐ぇ!何なの、あの二人!?なんでこっち見てんの!?つか誰だよ!
何故あの二人がこちらを見ているのか、そしてその二人の名前を思い出そうとしていて、織斑の言葉が耳に入っていなかった。
頭の中でぐるぐると名前を思い出していると小さく金属が擦れる音が聞こえ、なんだと思い、そちらを向いた。
向いたと同時に金属が弾かれたような音がした。は?と思ったがすぐにその正体が分かった。
俺を睨んでいた片方のポニーテールのやつがどこから取り出したかわからない真剣で俺に斬りかかっていた。もう一方のツインテールの方はおそらくISであろう武装を両肩部に展開している。きゅ、球体。え…何あれ。あれ飛ばして来んの?なんか面白いな。……つか、こいつも専用機持ちか?ホントに多くない?専用機。どうなってんの?
気になったので織斑の方を見てみた。織斑は訳が分からないと言った表情でほ…箒?と言っていたが一番訳が分からないのは俺だ。何故こんな名前も知らん女子に斬り掛かられなきゃならないんだ?
「…貴様、一夏を無視するとはどういうことだ!」
はい?……あぁ、確かに織斑がなんか話してたけど、俺別に無視していたわけじゃないんだが…まぁ結果的に無視しているという形になってしまったけどさ。真剣で斬りかかって来なくても良いんじゃないですかね?って………エネルギーが減ってるぅぅ!?ちょっ、まっ、回避回避!!
「くっ、貴様避けるな!」
「…無理言わないでくださいよ、エネルギー減ってるんで。あと織斑、ボーとしてしまっていてな話が聞こえて来なかったんだ、不快な思いをさせたかもしれない、すまん」
「い、いや、気にしていないぞ。と、というか箒!やめろって!」
「一夏っ!何故止める?こいつはお前を無視したんだぞ!」
おいぃ!?俺の話聞いてなかったのかよ!?
「無視したわけじゃないって!ただ少し聞こえていなかっただけなんだって!」
「それでも―――」
と箒が声を発した瞬間、それに被せるように鈴が続けた。
「それでも―――私はアンタが気に入らないのよ!」
なにそれ、理不尽。
言い終わった瞬間、両肩部の球体、【龍砲】が爆ぜた。
不可視の砲撃、それが【龍砲】なのだ。司は為す術もなくアリーナに吹っ飛ばされた。
それに驚いたのはセシリアだった。当然だろう、いつ来るのかと待っていたら吹っ飛んで来たのだ。そりゃ驚く。
「ゲホッ!ゲホッ!……あーくそっ、気に入らないだけって理不尽だな。まぁ…理不尽には馴れてるが………あ゙っ、エネルギーがむっちゃ減ってる…うぅ、マジか」
なんか泣きたいです。
「だ、大丈夫ですの?」
司の様子を心配してか、セシリアが声を掛けてきた。
今はその思いやりだけで泣けそうです、オルコットさん。
「あーはい、大丈夫です。エネルギーが減るというアクシデントが有りましたが、問題はないはずです。さて、では始めましょうか」
そう言い、刀を構える。
セシリアside
私はいまBピットにいます、織斑先生と二人で。ここに居ないというとは一夏さんは長崎という人の所へ行ったのでしょう。少し理不尽だとは思いますが、腹が立ちます。そりゃあ同じ男の人だからというのもありますけど応援くらいには来て下さっても良いんじゃありませんの?
セシリアが少しの不満を溢していると千冬が話かけて来た。
「おい、オルコット」
「は、はい!」
急に名前を呼ばれ、戸惑うも返事をする。
「お前の目から見て、司はどう写る?やはりただの男か?」
質問の意味が判らず考えていたが、代表決定戦の時に男を馬鹿にする発言をしたことを思い出した。一夏と戦い、男性も悪い人ばかりではないと気付かされた。全てではないがやはり男性でも良い人はいるのだと思うこともあった。
では長崎という男はどうか?長崎についてセシリアはこう思っていた。
「悪い人ではないと思いましたわ。ですが、ひとつ気になったことが…」
「ふむ、気になったこととは?」
「……彼はそこに居るのにどこか遠くの存在のように感じることがありました。気になったのはそれですわ」
セシリアと長崎は話したことがない。では何故彼女がそんなことを思ったのか?それはセシリアが長崎のことをよく観察していたのだ。一夏のおかげで男性の見方が変わった。私は変な先入観を持っていたんだと思った。そこから人をよく観察するようになった。分かっていると思うが勿論ストーカー見たいなことをやっているわけではない。
「…なるほどな。オルコット、あいつに足りない物はなんだと思う?」
「た、足りない物…ですか?うーん………分かりませんわ」
「ここ数日、奴を見てきて私は自信だと思うんだ」
「自信…ですか?しかし何故今そんなことを」
「あいつのポテンシャルは決して低くない。だがどこかで自分は出来ないと思い込んでしまっている」
なるほどと不思議と納得した。そう言えば彼の訓練を見たことがあった。彼の操縦は決して上手いと言えるものではなかったがどこか安定していると思っていた。理由はそう言うことか。
「だからこの試合で少しはと思ったんだかな、こっちに火を着けてしまったか」
「そんな話を聞いて、やる気が出るのも当然ですわ」
アリーナに出ようとするところを織斑先生が言葉を掛けてきた。
「しっかり頼むぞ、オルコット」
「候補生ですが、代表候補生として、わたくしは長崎さんと戦いますわ!」
織斑千冬にそう宣言し、飛び立った。
アリーナに出たセシリアは少しも油断しないようにスターライトmkⅢを構え、集中する。
しかし、待っていても司が来ない。少し遅すぎじゃありませんの?とセシリアが思った瞬間、司のいるはずのピットから砲撃が飛んできた。
「っ?!」
何だと思い、体を緊張させたが、飛んできた物はセシリアには当たらずその手前で落ちた。その飛んできた物をよく見てみると司だった。
長崎が溢した声はほぼ聞こえなかったが聞こえた所もあった。それがセシリアに疑問を抱かせた。
理不尽に、馴れている――と言うのは一体?
「さぁ、始めましょうか」
考えている暇もなく、試合が始まった。疑問を隅に置き、今は長崎に集中する。
セシリアsideout
◆◇◆◇◆
まず、先手を打ったのはセシリアだった。2機のビットを飛ばし、スターライトで射撃。
スターライトによる射撃を少し喰らいながらなんとか避ける。身体ごと。
「……貴方、加速装置(スラスター)を使わないですの?」
「……加速装置ってどうやって使うんです?使い方知らないんですけど……」
えぇ、習っていませんからね!人力で動かすしかありませんでしたよ?何か?
でもこれ体力消耗が半端じゃない。もう体力がヤバイ、キツイ。
つか絶対オルコットさん呆れてると思うわ。だってさっきから何もして来ないもん。殺ろうと思えば殺れたのにさ。
と不意に通信回路に接続された。なんだと思ったが相手はオルコットさんだった。
「長崎さん、要はイメージです。ISは操縦者がこうしたいと思い描いたことをやってくれます。だから、わたしくし達はISにそのきっかけをイメージとして送るんです。それが正確なら、応えてくれる筈ですわ」
呆れられて、なんか言ってくんのかなと思ったら親切に操縦方法を教えてくれた。…何故?裏がありそうで怖いなぁ…。
「あ、はい、ありがとうございます」
取り合えずそう返す。そして教えられた通り、やりたい事をイメージとして思い浮かべる。すると…。
「うおっ!浮いた!飛んでる!?」
機体が浮かび、上昇した。
空を飛ぶって言うのは気持ち良い物だと感じた。今まで行ったことの無い場所から世界を見て、やっぱり世界は広いと再認識させられた。
地上にいた頃よりも空に近づいたが天にはまだ遠い。
この場所は不思議と居心地が良かった。どこに居ても不安しかなかったあの世界、しかしそれは、この世界にしてみれば些細なことなのかもしれない。
それを知って逆に安心した。自分はまだ大丈夫なんだと感じた。
打鉄に触れる。人のような温もりはない。しかし、そこにはしっかりと形がある。人のように喋れないがそこにあるということに司は安堵した。
打鉄に勝とうぜ、と呟いた。答えは返ってこない。だがそれに応えてくれたような気がした。
「ふふっ、良い顔になりましたね。では、改めて、始めますわ!」
言うと同時にビット4機を射出し、司の周りに展開させる。続けてスターライトによる射撃。
司はこれを避けるが背後にあった2機のビットの攻撃をもろに受けてしまう。
空中ディスプレイに表示された数字を見て舌打ちをする。
「やっぱり、あの時のワケわからん攻撃が不味かったか」
甲龍による砲撃によって、実質4割近くのエネルギーを削られ、装甲を破損。それに加え、セシリアのビットの攻撃をもろに受け、もうほとんどエネルギーは無いに等しかった。
「正直厳しいが…やるしかないか」
織斑先生の言っていたオルコットさんに勝てる勝機っつーのは全く分からないままだが、迷ってる時間とエネルギーは無ぇ!
あの銃器が射撃出来ない圏内まで近づいて、ビットによる攻撃が届ききる前に近接ブレード【葵】を当てる。それには少しの隙が必要なのだがそれについては考えがある。
セシリアが自身に照準を合わせたとき、ここだと思い拡張領域(バススロット)をオープンし、打鉄装備アサルトライフル【焔備】を取り出す。狙っている隙はないので、ただばら蒔く。数発の弾が運良くセシリアの元へ向かう。
まさか射撃武器を使うとは予想していなかったのかセシリアは体勢を崩し、被弾。チャンスと思い一気に近づく。
「しまっ……」
「もらっ……」
セシリアの懐まで近づいてブレードを振りかぶる。
斬りかかろうとした瞬間、機体がガクッと下がり、紙一重でセシリアに攻撃は届かなかった。
次いでディスプレイにその状態が表示される。
『出力低下、左翼スラスター破損。出力不足』
「マジか……」
背後から鈍い衝撃が走った。
「がっ!!」
それはセシリアのビットによる攻撃。セシリア自身は司から距離をとっていた。
だが、司はもうエネルギーが無いのか地面に向かって落ちていった。
セシリアは司が地面に落ちきる前に掴み、そのままゆっくりと下降。
「まさか射撃武器を使うとは予想外でしたわ。あそこでスラスターが故障していなければ間違いなく攻撃はわたくしに届いていたでしょう」
司の意識がもったのはそこまでだった。
「でもまぁ良く戦ったと思いましてよ?長崎さん。……織斑先生、確かに貴女のおっしゃった通りでしたわ」
セシリア漏らした言の葉は司には届いていなかった。
その後、司が目覚めたのはそれからしばらくしてから、日が傾きかけているときだった。
大体、自分が負けたのだと分かっていたがそのことを織斑に聞いた。言いずらそうな顔をしていたが負けたのだと教えてくれた。
言いずらそうにしていたのは俺を気遣っていたと信じたい。
そして、機体の状態を聞いた。そしたら破損はしているが飛行や戦闘には問題はないそうだと言っていたらしいと返ってきた。
良かったと思った。壊れていたらどうしようと不安があったが杞憂に終わったようだ。
そしてもうひとつだけ気になったことを尋ねた。それはオルコットさんのことだ。俺が気を失なう前なんか言っていたはずなのだが思い出せない。
「うん?セシリア?うーん、そう言えばこっちのピットに司を連れてきてくれた時、いつもより表情が険しかったような…」
マジかー。まぁ、当たり前か。自分は専用機なのに相手は打鉄、怒って当然だろうと思う。ただ…やっぱりちょっとへこむわ。
「次は俺の番か。…今度は司が勝つかもな?」
話題を変えるようにそう織斑が言った。
「おいおい、気休めは止してくれ。俺は多分、お前には勝てない」
「いや、でも……」
織斑の言葉の途中に『ただ』と被せる。
「ただ、負ける気では挑まないさ。やるからには勝ちたいしな」
「…!あぁ、頑張ろうぜ、お互い」
そう言って織斑はニッと笑った。こっちはそうだなと返事をする。
「そうだ、鈴にやられた所、大丈夫だったか?」
「あぁ、体に異常は無かった。が、エネルギーが大幅に減ったな」
それに織斑は『ごめん』と頭を下げて謝る。
「いや、織斑は悪くないだろ。実際お前がやった訳じゃないんだから」
「いや、それでも俺にとっては鈴や箒は大切な人だからさ、悪く思ってほしくないんだ。自分勝手ってのは分かってるけどごめん!」
他人のために頭を下げれるというのは正直、凄いことだと思う。俺には出来ないことだ。
「分かった。大丈夫だ、実を言うとあんま気にしていなかったしな」
「そ、そうなのか?でもあの後、ちゃんと二人に言ったから大丈夫だ」
ナニを言ったんだ?なんか、そのことでまた何かありそうで怖いんだが…。
司がそう思っていると横の一夏が声をあげた。なんだと思い再びそちらを向く。
「そ、そう言えば千ふ……織斑先生に来るように言われてたんだった!またな司。明日、頑張ろうな!!」
急いで駆け出していくのを手を振って見送る。
一人になった部屋でポツリと呟く。
「――織斑 一夏、か」
◆◇◆◇◆
スッと目が覚める。寝る前まであった怠惰感は幾分マシになった。
現在時刻は8:00。体調は完璧とは言えないが授業に出れない訳ではない。
少し早すぎる気もするが、身支度を整え、教室に向かう。
さて、第4話、いかがでしたでしょうか?
次回のお話は活動報告にも書きましたが、本編を進めて行こうと思っております。VS一夏戦はもう少し後で書きます。
ではまた次回も楽しみにしていてください。