鳴羽田ヴィジランテにヒーラー生やしてみた 作:ゴリ押しこそ至高
「
ありふれた中学のありふれた朝の教室に、俺を呼ぶ声が響く。
個性は〈活性炎〉という、『ちょっと暖かい炎を出せて』『その炎が触れたものの何かを活性化する』のが能力。
もっぱらの使い方は治癒力の活性化による怪我の治療だ。
だからこうしてクラスメイトがちょっとした傷の治療を頼んでくる事がある。
「朝っぱらから怪我って何したんだよ…」
「いやその……妹怒らせてブン殴られたら口の中切っちゃった」
「口の中か〜」
「いやホント申し訳ないけど頼むわ!痛すぎて授業にならねえよ」
「いつも体育と家庭科の実習以外は寝てんだろ」
軽口を叩きながら一応傷を診る。
「とりあえずうがいして来て?俺の個性傷塞げても殺菌は出来ないから」
「マジメか!」
「面倒は避けようぜ?塞いだ後から化膿しましたとかあったらほっぺた腐り落ちるぞ?ホレうがい薬」
しぶしぶうがいの為に手洗い場に向かう友人をニヤニヤしながら見送る。
それを見たクラスの女子が話しかけて来た。
「何ニヤニヤしてんのさ」
「ああ、あのうがい薬ね?殺菌能力は医療機関で採用されてた時期もあるくらい信頼できるモノだけど……」
ギャアアアアア!ナンダコレ!?
ウワフキダスナキッタネエ!
「傷にスゲー染みるしすこぶる不味いんだよね〜……だから同等の殺菌力のヤツが出たら速攻で市場から消えたワケだ」
無論頬が腐り落ちるなんて真っ赤なウソである。
「怪我人相手に鬼かよw」
「どうせロクな理由で殴られてねえだろうし、授業中に寝てる事含めてお灸ってワケよ」
「アンタも自習は寝てる時あんじゃん」
「成績は落としてないし、アイツ寝てる授業のノート貸してって言ってくるから、迷惑料として不良在庫の処分に付き合ってもらおうじゃ無いか……たまにゃ自分で板書しろよって思ってるよ正直」
これが俺の学校での日常。
将来はきっとこういう経験を活かして医療系の仕事にでも就くのだと考えていた。
放課後、俺は普通の学生はやらないだろう活動に勤しむ。
「ありがとうございました!おまわりさん!」
「こちらこそ市民の協力に感謝!この辺のパトロールを増やしておくよ」
「お願いします〜………さてと」
インカムのマイクのスイッチを入れて、連絡を入れる。
『和歩〜後2分くらいでそっちに警察行くかもだからアンコールには応えるなよ〜』
インカムを叩く音2回は「了解」の合図。
俺の放課後活動は2つある。
1つ、怪我をしている人をパトロールで見つけて治療&事件性がありそうな事を見つけたら警察への報告。
2つ、非合法アイドル活動をしているいとこに警察の接近を伝える事。
ここ鳴羽田の警察のパトロールはぶっちゃけザルだ。何せ人が足りていない。
なのでパトロールに介入すれば、ほぼ確実に彼らの巡回には(そこそこ正確な情報さえあれば)予測可能な
その穴を非合法アイドル…ポップ⭐︎ステップとやらを名乗って活動しているいとこが利用するというワケだ。
……冷静に考えるとあの娘ヤバいな。動機は理解出来なくも無いが。
『トウカ!聞いてよ見つけた!』
『見つけたぁ?何を?』
『あの時助けてくれた人よ!』
『ウッソだろ!?』
そう、「恩人に見つけてもらうため」という少女らしい可愛らしい動機でやっているのだ。じゃなきゃ協力なんぞしないよこんな事。
…で、その「恩人」とやらが見つかったって?見つけてもらったではなく?
『で、声かけた?』
『どこか行っちゃった……少し探してみる』
『……忘れられてんじゃねーの?』
『ひっぱたくわよアンタ!忘れられてたってお礼は言うの!』
『ハイハイさーせんでしたぁ〜、遅くなんなよ?もう暗くなってくるぞ』
『あ…………見つけたら一緒に来てくれない?』
『アイドルやってるくせに緊張しいめ…それじゃ位置情報共有だけしといて、見つけたら呼び出してくれ』
『うん』
『……オールマイトパーカー、返せそうでよかったな』
『!…うん!』
アイツ暗くなっても家戻んねえ……。
「今は………路地裏?遅くまでうろついた挙句危険なトコに行きやがって……説教してやるアンニャロ」
少しずつ位置情報に近づくにつれて、人の声が聞こえて……。
「言い争ってる……?」
嫌な汗が噴き出す。路地裏で少女の動かない位置情報と言い争いの声はトラブルの予感しか無い。
やっぱり今日は帰ろうと言うべきだった。後日一緒に探そうと提案すべきだった。
全力で走り、位置情報の座標に辿り着く。
そこに居たのは、オールマイトのパーカーを着た青年と、明らかにヤバそうなナックルダスターを携えたオッサンと、倒れ込んだ2人組と、そんで……
見慣れた少女と、手から棘を生やしてその少女を人質にとる男。
多分俺はこの時、冷静じゃ無かったんだと思う。
「……その娘から手ェ離せてめぇ!!!」
男の顔面に不意打ちで炎をぶつける。どうせ火傷もしないどころか、傷が少し治る目眩しだ。この隙に……
マイトパーカーの人が、男に跳びつき体勢を崩させた。
「!?跳べっ!」
「っ!?うんっ!」
和歩をとりあえず脱出させて、俺の後ろに庇う。
「よくやった小僧共」
「えっ?」
ナックルダスターのオッサンの拳が、棘の男に叩き込まれる。
加減しているようには見えず、文句無しの一発KOだ。
容赦の無さすぎる光景を見て絶句している俺とマイトパーカーと和歩を横目に、オッサンはぶっ飛ばした相手を観察しながらなんかブツブツ言っている。
身内を助けてもらった身で失礼だけど、正直怖い。
「おいそこの……パーカーの小僧と炎の小僧」
……アレ?炎のって俺だよね?何で俺も呼んだ?
「最初はパーカーの小僧だけのつもりだったが…思わぬ収穫だ」
収穫?マジで何?
「これから
ヒーロー?マジでこのオッサン何言ってんの!?
「悪党を殴るとスカッとするぞ!!」
俺はこの日、人生で初めて初対面の人とハモるという経験をした。
「「ぜ…全力で辞退します…」」
個性〈活性炎〉
早い話が晴の死ぬ気の炎みたいなもの。
ただし「活性させる事象」は使用者本人が明確に設定しないといけない。
灯火は訓練によって基本的に「活性させる事象」は治癒力をデフォルトにしている。