鳴羽田ヴィジランテにヒーラー生やしてみた   作:ゴリ押しこそ至高

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ナックルダスター

わかっちゃいた。わかってはいたんだ。

 

引っ込み思案だが腹を決めた時の行動力はピカイチ。

 

それが羽根山和歩という少女だ。

 

俺は今日、そんなヤツに話をする為に羽根山家を訪れたのだ。

 

あの衝撃的な出会いから数日が経った。

 

あのチンピラとの一件の後も敵と遭遇して交戦する出来事があったワケだが…。

 

和歩は未だにアイドル活動をやっているどころかコーイチさん達に付き合って諜報&避難誘導にまで首を突っ込んでいる。

 

……いやいかんでしょ。危ねえよ?常識的に考えて。オマエ本来なら避難誘導される側な?

 

という訳で、アイドルやコーイチさんとの交友はともかく敵絡みの活動を辞めさせるべくお話を…というワケだ。

 

俺も毎日あの娘に付き添える訳では無いし、あの棘のチンピラの時みたいに分断されては守る事すら出来ない。

 

和歩は基本的に学校から家に帰り、家で着替えてからアイドル活動を開始する。

 

なので学校で捕まらなくても、家に最速で行けばメイク中の彼女を捕まえられる。

 

そう、今までは。

 

「……居ねえ!」

 

衣装もメイク道具も含めもぬけのから。

 

学校で会った時に話があるから家にいろと言ったのが警戒されたか?

 

「コーイチさんのトコだろどうせ…ふざけやがって」

 

移動時間を考えるとメイクも終わってねえだろ!逃さねえぞ!

 

 

 

「ハナシあるから家いろって言っただろうがァ!どうせここだろ!」

 

「む、トウカか…あいにくコーイチも小娘も出掛けたぞ」

 

「クソ!一足遅かったか……家主いないのに何やってんですか?」

 

コーイチさんの家で何故か1人くつろぐナックルさん。本当に何故だ。

 

「昼の仕事が早くハケたんだが、パトロールは夜からなんでそれまで休憩だ」

 

……ツッコむのも面倒になってきた。

 

「ハァ……あの娘を危険な事に連れ回すのは控えて欲しいんですがね」

 

「トラブルに対しては報告や避難誘導に留めるように言ってある」

 

「危険は危険なんですよ?この前俺があの棘の不良に襲われた時も、コーイチさんがいなければ危なかったと聞いてますし…硬化の敵相手にゃ貴方も怪我してたでしょう」

 

俺が治したけど、治せるからって怪我をする事を受け入れるのは狂人の思考だ。

 

和歩だけでなく、コーイチさんもこの人も心配する程度には情もあるのだ。痛い思いはさせたく無い。

 

「合流前に治しただけで、怪我をしたのはオマエもだろう?痛い思いを忌避するなら、何故あの公園での一件の時一人で応戦なんぞした?相手は薬物でブーストされた敵だぞ」

 

「応戦しなきゃ2人を追ってたでしょうし、痛い思いするのが自分なら結構…ですがあの娘への危害は許容出来ません」

 

怪訝な顔をするナックルさん。そんなに変な事を言っただろうか?

 

「……まるで騎士だな、惚れているのか?」

 

「家族愛です、幼少期からずっと兄妹のように過ごしてきたんですよ」

 

そもそも惚れてる相手ならあんな格好で飛び回るのを許すものか。

 

……いや、恋愛感情は無くとも辞めさせるべきではあるのか?感覚が麻痺している気がする。

 

「妹が危ない事をしていて、それを良く思う兄がいるとでも?」

 

「…ひっぱたいてでも止めないのは矜持か?」

 

「そういうワケでは無いですけど…本人の意思を尊重して、対話で解決出来るのがベストでしょう?」

 

ここで一旦、彼との会話は途切れてしまった。

 

何か地雷を踏んだだろうか?と思うくらいには彼は考え込んでいる。

 

……この人の事を、俺は良く理解出来ていない。

 

トリガー使用者への苛烈な言動や行動とは裏腹に、なんだかんだで俺達には(充分かつ適切かどうかは別として)配慮してはいる程度には善性はある……程度の認識で止まっている。

 

そもそもどうして……。

 

「トリガーを追っている理由って、なんですか?」

 

思わず聞いてしまった。

 

言葉を選ぶように沈黙したのち彼は話し出す。

 

「流通経路を辿れば、探している人に会える可能性が高いからだ…が、その時に関してはお前達に深く踏み込ませるつもりは無い」

 

「………探しているって言うなら、情報を俺にだけでも寄越したら効率良いんじゃ無いですか?」

 

「バカを言うな」

 

真剣な顔で、真っ直ぐに俺の目を見て……まるで子を叱る親の様に彼は続ける。

 

「お前たちの協力を得るのは治安維持までだ…それ以上の事に関わらせるつもりは無い!俺の様なギリギリにいるようなヤツですら引いた一線を、お前のような子供が独断で越える事は考えるな……変に関われば、死ぬぞ」

 

ギリギリの自覚あったのかよ。

 

……死ぬ、ねえ?

 

「死ぬぞって言うなら1番リスク抱えてんのはそっちでしょう?貴方、無個性なんじゃ無いですか?」

 

「…何故そう思う」

 

「イレイザーヘッドとケンカしてた時と、敵とやりあう時のスタイルが変わらなすぎ(・・・・・・)だったので」

 

抹消ヒーロー、イレイザーヘッド。その個性は条件は知らないが“個性を消す個性”だ。

 

「イレイザーとの時は個性を消されてるか、ヒーロー相手に個性使ったら敵扱いで100%しょっ引かれるから使ってないか、のどっちかで考えてましたね…では、敵相手に個性を使わなかった理由は?」

 

敵相手に使わない理由はないだろう。法を気にするにしても活動が既に非合法だ。

 

「無個性か、もしくは戦闘には役に立たない個性か、戦闘で役に立っても見てわかる程に有利になるものじゃない…少なくとも、治療を俺の個性に頼った時点で怪我を治せたり防いだり出来る個性じゃない」

 

「なるほどなかなかの推理だ…確かに、俺は無個性だ」

 

「それにまあ……俺も直接危ない事に関わろうってワケではなくて、その探している人をここで見た覚えがあるだとかの共有を俺とだけでもしようって話ですよ」

 

「今やっている事より、リスクがあると言っているんだ」

 

頑固な…面倒くさい。こっちだってダラダラとその“目的”とやらの為に和歩を危険に晒す期間を長引かせるわけにはいかないんだよ。

 

「……よーしわかった、だったら俺に稽古をつけてくれ」

 

なので強行突破だ。

 

「アンタのやってる“危険な事”についていける程度に…そうだな、ガチで殴り合って5分保つようになったらその探し人の情報だけでも…そんでもしアンタをノックアウト出来たら、全ての情報を洗いざらい吐いてもらう!」

 

あ〜どうしようもないアホを見る目をしてる〜……イカれたメリケンサックジジイにその反応されてると思うとちょっぴり腹が立つな。

 

だが俺はそんな反応程度で折れる気は無い。

 

「怪我人がどうあがいても出るから争いは避けるべきとは思ってる、だけど身内の被害はもっと嫌だ!そんで俺の身内を助けた以上アンタも身内だ!身内のトラブルには首を突っ込むぞ俺は!本人が嫌がろうがな!」

 

「……10分だ」

 

「は?」

 

「俺と本気で殴り合い、10分保つならすべて話してやる…指導する時はオマエの力量を見て手加減してやるが、あくまで条件は“本気の俺と殴り合って10分”だ」

 

「……言質取ったからな?」

 

「望むところだかかって来い!2分でノされても文句は受け付けんぞクソガキ!」

 

「よっしゃそっちこそブチのめされた後から『本気じゃ無かった』なんてぬかすなよジジイ!」

 

こうして俺の戦闘訓練が始まった。

 

なお、最初はウナギみたいな突発性敵との実戦訓練になった。

 

……参考にはならなかった。

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