現代ホラーの中で順当にハクスラしてたらいつの間にか都市伝説化していた。 作:細々した胡麻
怪物は、何時でも私達を狙っている。
怪物は、何時でも舌舐めずりを続けている。
怪物は、既に貴方のそばにいる。
怪物は、もう貴方の外側にいる。
――ゲーム『鏖殺』キャッチコピーより――
うるせぇぇぇぇぇぇ!!!!知らねぇぇぇぇぇぇ!!!おらッ!怪物死ね!死んで俺の手斧の栄養になれッ!!スキルポイント振らせろ!!あっ、折れたァッ!(腕が)あっ、治ったァッ!(腕が)
と言うわけでキモい怪物を手斧ですり潰しながらこんにちわ。怪物を只管にぶっ殺しまくるゲームに転生した男のハクスラ日常はっじまぁるよぉ!(挨拶)
まぁ、そんなこんなで転生しましたわ。キモい怪物が雄雌問わず食い散らかそうとしているモンスターパニック系のハクスラ世界に、な。
ゲームタイトルは『鏖殺』これ、化け物が人間を鏖殺するって意味に思えるでしょ?ホラゲーとかの類に思うでしょ?逆なんだなぁ、これが。
確かにストーリーや設定上は、人間が人知れず『怪物』と呼ばれるクリーチャーに襲われて殺されまくるって言う無差別殺人が罷り通ってるヤバい世界なんだが、実際のゲーム内容は違う。
兎に角怪物をぶち殺しまくってドンドン強くなって更に強い怪物をぶち殺して鏖殺していく、プレイヤーが怪物を鏖殺するゲームだったんですねぇ、これが。
ストーリーなんて物も殆どなく、ひょんな事からとある寂れた館へ友人達と肝試しに訪れた主人公が、怪物と出会い、怪物から友人達を守る為に戦う。
そんな感じのストーリーだった気がする。
EDとか細かい所は覚えてない、この世界に転生してから16年は経ってんだ!んでそのゲームを俺がプレイしてたのは俺が死ぬ14年前!
30年前に少しハマってたゲームのことをそんな事細かに覚えてねぇよ!特に興味なかったストーリー面とかはマジで!!
まぁこまけぇこたぁいいんだよ!このゲームの面白さは戦闘の爽快さとハクスラ要素と成長システムに詰まってる!
兎に角敵を倒せば倒すほど強くなり、スキルポイントの割り振りで様々なビルドを組めるのが面白いんだ。面白かったはずだ。
敵を倒せば倒すほど武器は怪物に対して特攻を持っていく、だが怪物への特攻が高い武器は壊れやすく怪物の素材を用いての修繕が必須だ。つまり?
怪物ぶっ殺し素材集めツアーの開催と言う訳だ!俺も現在そのツアーに一人参加の真っ最中。館の中で現れる魔物を千切っては投げ千切っては投げ……
……どうしてこうなったんだろ。俺も元々はなぁ、特に何の特徴もない前世の記憶を持って真面目に勉強してただけの高校生だったんだが、友達との付き合いでこの館……主人公も物語の始まりで訪れることになる『終点の館』に肝試しに来たんだ。
鏖殺ってゲームの事を若干覚えていた俺はワンチャン主人公かその友達説あるか?って思った。
全然違ったわ、友達みんな化け物に食われて死んだし友達もよく見てみたら全然ゲームの登場人物じゃなかった。
覚えてねぇって三十年前にプレイしたゲームの登場人物とか!!今世だとそのゲーム無いから情報もないしなぁ!?わかんねぇって話よなぁ!?
まぁ、そんなこんなでゲーム内初ダンジョンの終点の館にて、俺は生き残るために怪物共を拾った二本の手斧で引き裂いてきた訳だ。
幸い、ザコキャラか中ボスかくらいは覚えてたからザコの怪物を不意打ちで襲いながら手斧を強化と修繕を続けていたんだ。
そしたら、手斧がとんでもねぇ怪物殺し性能になってきちまってる。
んで、俺自身もそこそこ長い間怪物と戦っては回復アイテムの缶詰を食い散らかしながら館でのサバイバル生活をしていたら、怪物の返り血的なのを浴びすぎて再生者になっちまった。
多少の傷ならすぐに治る!多少じゃなくてもそのうち治る!そうなってから俺のハクスラ生活は拍車がかかってきた。
今や館で寝ても覚めても怪物を狩りまくっている。
えっ?早くその館から出ろよって?バカ野郎!まだ目当ての素材でてねぇんだよ!この館のボスエネミー殺れてねぇんだよ!
あと、鏖殺って作品の主人公見たい!本編中だと一人称だし、はいorいいえのテキスト文くらいしか無くて見た目とか性別すらわかんねぇんだよ!
主人公の友達キャラの見た目はなんとなく思い出して記憶したからそれっぽい子達が現れるまで館でハクスラしまくってるって訳だ。
ついでにこのゲームの世界観的に強くなっとかないとふとした瞬間に怪物に食われてオシマイとかが全然ありうるからできるだけレベリングしておきたいってのはある。
ここでなんとかボスキャラ倒して目当ての素材手に入れて武器強化しないと外に出ても全然普通に怪物に負けてミンチよりヒデェ状態になる。
それだけなら俺は再生者だからいいが、そもそも攻撃が通らない可能性もでてくるので、それだけは避けたい。攻撃性能の低下は生存能力の低下だ。
俺は今世では刺激的に生きたい。前世が妥協と退廃で生きてきたロクデナシだったからな。今世では妥協はしない、
お母さんが言ってました!!
逃げたら1つ!進めば2つ!!奪えば全部ゥッ!!!!
っつー訳で、欲望に忠実に生きていきます。
おあっ!怪物みーっけ!ぶち殺ぶち殺!ヒャッハー!素材置いてけやぁぁぁぁ!!!!!
「はぁ……はぁ……」
見てしまった。
見つかってしまった。
目に入ってしました。
少女は館の中を必死に駆けずり回る。自分が目に入れてしまった、目をつけられてしまった『怪物』から逃れる為に。
彼女がこの館に来たのは、ほんの出来心だった。巷で噂の手斧を二本もった血みどろの男……『斧男』と言う都市伝説にまでなっているその正体を突き止めようとやってきたオカルト部。それが彼女の正体だ。
様々な情報を集めて斧男の現れる廃墟の館を突き止めて、たどり着いたのだ。
そこまでくれば、彼女の中の好奇心は抑えきれないほど肥大化していた。
館の扉を開けて、斧男を見つける為に中の探索を始める。
台所の最近漁られた跡や、真新しい血痕や斧による傷跡。さまざまな痕跡を見つけていき、やがて物音が響き渡る音が聞こえた。
肥大化した好奇心を持った彼女は、その好奇心の赴くままに目の音へと向かっていった……それがよくなかった。
彼女が目の当たりにしたのは、都市伝説に出てくる斧男などでは無かった。
彼女の眼に映るのは、全身に目をくっつけた大きな口を持つ無数の足を持った怪物。それと目が合った瞬間、全身の身の毛が逆立ち、ここに居てはならないと脳が危険信号を送る。
彼女は脇目を振らずに飛び出して、その館から出ようとする……しかし、パニクった状態では、ろくに出口までたどり着くことも出来ずに色んな場所を行ったり来たりだ。そう言う恐怖を与える力がその怪物にはあった。
正常な判断を失わせ、恐怖させ、
「ぜぇ……はぁ……!こひゅっ……た、助けっ……!!」
少女は助けを求める。
だが、その声は届かない後ろに怪物が迫っているのか確認することすら出来ない……だが、背後になにかとんでもないものが憑いているのが分かる。
そして、それが大顎を開いて生暖かい吐息を流していることも。
ただ少女は手を伸ばす。
声にならぬ声を上げて。
言葉ですら無い音を巻き上げて……
グシャリ。
肉がえぐれる嫌な音が響いた。
「ひゅ……」
本来であれば少女だった物がぐちゃぐちゃの挽肉にされるはずのその音は、少女からではなく怪物の方からなっていた。
少女はその時改めて自身を追ってきた怪物の姿を認知する。
だが、その姿は先ほどまでの恐れを感じさせる佇まいではなく……身体に付いた目に一本の手斧が突き刺さり、泣き声の様な猛りを上げる怪物の姿だった。
「えっ……えっ……?」
少女がへたり込んでいると、その後ろからナニかを地面に引きずった音を響かせて、一人の男がやって来る。その男は一見普通の……自分と歳も変わらない青年だ。
しかし、その佇まいや据わった目は普通の男子高生のソレではない。
ギリギリと斧を壁に滑らせて傷をつける。全身に固まった血を帯びたその姿は、彼が、彼こそが都市伝説の正体『斧男』であると認識させられる。
斧男は、手斧を一本片腕に掲げて駆け出す。怪物は不定形の身体を伸ばして触手の様にして斧男へと襲いかかる。
斧男は迫りくる触手を、只管に手斧で叩き切る。何回も、何回も、何回も、何回も。執拗に、執拗に、執拗に、執拗に。
何度でも切り裂き、その触手に腕が、。腹が、頭が貫かれようとも、斧男はその度に身体を再生させ斧で斬り伏せていく。
もはや、少女の目には化け物と怪物が戦っているようにしか見えない。勝手に戦えと言う話である。
「あぁ……!!ば、化け物……!!いや、いやぁぁぁ!!!」
少女は怯えながらも、化け物たる斧男が戦っている隙に、怪物から逃げおおせる事が出来る。
少女は怯えながら立ち上がり、目の前の
彼女はエントランスまで漸くたどり着くと、その扉へと触れる。ガチャリと扉が開く音と友に、戸が開く。その先にあるのは………
「ばぁ。」
アイアンメイデンの様に前面にトゲのような牙の生えた怪物の口内だった。少女は何が起こったのかすら分からずに、舌を身体に巻きつけられ、口内に押し込まれ、食われる。
それが、正史。
現代ホラーハクスラゲーム『鏖殺』の導入は、哀れな少女が怪物に食われるところから始まった。そのはずだった。
だが、ここにはあるイレギュラーが存在する。ゲームで例えるなら……バグだ。
「おっ、ボスエネミー来た。」
かすれた声で手斧を化け物の口内に投げ込み突き刺す男……怪物の返り血を浴び、先程の化け物をミンチにしてやった男の姿。都市伝説『斧男』。
その姿が、少女が屋敷で最後に見た光景だった。
「ねぇ。知ってる?ウチの学校の生徒でさ。1週間行方不明になってたんだけど、例の館の近くで見つかったんだって!」
「斧男が出るって噂のですか?」
「そーそー!でさ、その娘が言うには斧男の他におっかない怪物が居たんだって!」
「ンだよそれ。嘘っぱちだろ?」
「だーかーら、それを確かめに行こうよ!夏休みに、肝試しとして!!」
「ちょっと、面白そうですね!行きましょう!」
「おっ!乗り気ィ!」
「はぁ……馬鹿なことばっかり考えるな。こいつら。」
「じゃあアンタは、行かないの?」
「わぁったよ、俺も行くよ。なぁ、お前も来るだろ?」
| →はい いいえ |
|---|
「……うん。」