現代ホラーの中で順当にハクスラしてたらいつの間にか都市伝説化していた。   作:細々した胡麻

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ヤバいヤツのほうが強い

 

 あぁ……やったぜ!まさか肉波が出てくるとはな!あ、肉波ってのはこのぶよぶよ動いてる肉塊ね!肉波は良いエネミーだ。

 

 序盤は肉波に飲まれると範囲かつ断続的攻撃で無敵時間切れた先から攻撃されて無限ハメされるっていう控えめクソな奴だが、ある程度の戦力が入ると所謂スライムシルバーみたいな経験値ボックスになる。

 

 あ、因みに鏖殺のゲーム内の武器への経験値は【穢れ】って言うんだが、肉塊は特に穢れの回収効率が良い。俺みたいな武器強化に心血注いでる奴にはありがたいことこの上ないエネミーだ。

 

 いやぁ、最近ラッキーが続くなぁ。

 

 ……ところで、彼処でくたびれてる女の子って誰なんですかね?

 

 銀髪赤眼とか好きな人めっちゃ多そう。俺も好き〜。鏖殺にキャラメイク機能があったら白髪赤目のキャラにするくらいには好き〜。

 

 ま、鏖殺は基本一人称かADV方式で話が進むんで主人公のアバターなんて無いんですけどね、初見さん。

 

 しかし、なんだろう……あの女の子からは只者じゃない才能を感じる。俺以上に怪物を狩ってハクスラする為に生まれたような……そんな気配だ

 

 と言うか、なんで若干目を輝かせてコッチ見てるんだろう。雰囲気がもう怖い……まぁ、流石に正気を保ってるんなら多少コミュニケーションした方が良いのかな?

 

「……なん、だ?」

 

 あっ、駄目だぁコミュ障発現しちゃってるわぁ。すげぇ冷たい声しか出せてないっていうか、声出したの何週間ぶり?

 

 初めてこの館に入って友達皆食われた時に泣き喚いたのが最後かな?兎に角ヤバい、敵意が無いことくらいは示さないと……!!

 

「……何処かへ、行け。」

 

 コミュ障って言うかそう言う化け物じゃん!?なんでこんなコミュ力低いの俺!?ソレ以前の問題だけど……!!!

 

「……凄い。」

「……何がだ。」

「倒しちゃった……あの化け物……」

 

 んっ???もしかしてこの娘ヤバい?

 

 自分で言うのもアレだけど全力で一般的市民ならあんなの見せつけられたら逃げるか腰抜かすかすると思うんだけど……凄いって何、怖いわこの娘……

 

 と、とりあえずもうちょっとコミュニケーション取ってみるか。

 

「お前、なんでここに居る。そもそも、誰だ。」

「……私は、マオ。ここには肝試しに来た。」

「一人でか?」

「ううん、四人で。でも、皆居なくなった。」

 

 おっとぉ、話が見えて来たな……要するに、このおなごも俺と同じような状態って言うことか。

 

 友達と肝試しにきたけど、友達皆喰われたって言う……なるほど、そりゃあ若干正気じゃなくなるわな。この娘の目ぇ今ヤバいもん。ハイライトのハの字もない。怖いわァ〜。

 

 ……いや待って、その割にはこの子冷静過ぎないか?友達目の前で死んだんだよね?こんな平常心でいれる?こんな感情筋死んでる事ってあるか?

 

 この辺は心の問題だから突っ込むのはやめておくか。まぁ、取り敢えず外に出してやるか。

 

 つかドアは……んげっ、扉の怪物リスポーンしてたのか。そりゃ逃げようにも逃げれないわけだ。こいつには弱点があってね。ドア窓の所あるじゃん?ここを真正面からぶった斬るとォ!!

 

「ばぁぁぁぁぁぁぁぁ………       」

「良し、死んだな。」

 

 ここまで強化の進んだ手斧なら一発で沈めることができるんですねぇ!チュートリアルボスをボコすのは単純に気持ちがいい!!!……にしてもリポップ速いなコイツ。

 

 あの時はよくもまぁコンテニューさせまくってきやがったなぁって気分に成るからな!一銭にもならないけどこういうメンタル的回復は大事だと思います。

 

「……コレで出るか?」

 

 俺がドアをガチャリと開けると……そこはまだ暗闇。

 

「       ………ぁぁぁぁぁぁぁぁば」

「っ!」

 

 虚空からは鋭い舌が飛び出して俺の片腕を切断し、胴体を貫く…………あぁぁぁぁぁぁ!!くっそ痛いわこれ!くそくそくそ………

 

 本当にさ、稀にこんな騙し討ちするのやめてよ。一応君チュートリアルボスって自覚持ちなよ?そんな初見殺しするからみんな序盤でやめたって声がデカくなるんだよ…初めてのボスはもっと優しくしときなさい。フ□ムソ◯トウェアじゃないんだから!!!

 

 つっー訳で、生意気にも胴体貫いてきた舌を残った腕の手斧でまた叩き斬ります。

 

「ばぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

 

 なんか、ムカつくのであと5.6発切って起きます。」

 

「ばびゃっ」

 

 相変わらず断末魔なんか腹立つなこのドアのボス……すると、開いた扉を染めていた黒い虚空がまるで肉が溶けるようになくなっていき……それはもうとんでもなく美しい青空が広がっている。

 

 あぁ、眩しい!ドア閉めよ。皮膚が焼けそうなくらい熱い!!……んっ、足元に何かが……昔の呼び鈴か。ベルタイプの……

 

「……何それ、鈴?」

「……素材だよ。」

 

キタァァァァァァァ!!!!!!

 もうすっかり諦めてドアのベロで妥協しようと思ってたのに!!きたぞ俺の探し求めていた激レア素材!この館限定のチュートリアルボスのドアからだけドロップする『呼び鈴』だぁぁぁぁ!!チュートリアルボスからしかドロップする他にはクソ面倒くさいレシピでクラフトするしかないクソほど面倒くさいアイテムだが……あると無いとじゃ周回数がダンチだぜ!

 

 ……効果?これをアクセにして付けると弱い怪物が近寄らなくなる。虫よけスプレーみたいなもんだが、事実あるとないとじゃだいぶ違う、そして弱い怪物は寄せ付けないのと同時にレアな怪物を呼び寄せる効果もあるんだ……っと、感傷に浸ってる場合じゃねぇな。

 

「コレで出れるだろ、早く出てけ。」

「まだ。」

「?」

「貴方は一体何なの?」

「貴方の武器……それは何なの?」

「どうしたら、貴方みたいに化け物が狩れるの?」

 

 凄い沢山質問ぶつけてくるね君。

 

「良いから、帰れ。話すことなんてない。」

「帰らない、帰れない、どうしたら貴方みたいに化け物が狩れるの?」

「狩ろうと思えば誰でも狩れる。必要なのは殺意と道具だけだ。」

 

 はい!こっからうろ覚えの鏖殺の公式設定の説明なんですが……実は怪物って殺すために特別なスキルって必要ないんですよね。「殺そう」って言う確実な殺意と道具さえあれば案外簡単に殺せます!普通に怪物強いから逆に殺される事の方が多いけど。

 

 逆に言えば怪物に恐れたりおののいたりするとどんな武器でも一切殺せなくなります。重要なのは道具ではなくて「殺す意思」の方なんですねぇ……道具も大事だけど、どんなに殺意があってもクソ硬い敵をバターナイフで攻略はできない。

 

 鏖殺ゲーム本編ではステータスの要素があって、その中に「殺意」がある。殺意を伸ばすと攻撃面のステータスが倍加していって、最終的にラスボスも一撃で溶けるけどそうなると鏖殺唯一のBADに突入してセーブデータ消えるんだよね。

 

 主人公が殺意の波動に目覚めすぎたせいで世界を怪物認定して殺ス見たいなサプライズニンジン見たいな展開だったけど。

 

「……殺そうと思えば殺せるの?」

「恐れなきゃな。」

 

 恐れると殺せなくなるから気をつけ。

 

「それじゃあ……あなたは、大丈夫なの?片腕が……」

 

 あぁ、忘れてた。さっきドアの舌で片腕切られてたっけ。

 

「また生える。問題ない。」

「生えるの?」

「生える、髪の毛よりも生える。」

「……私も貴方みたいに怪物を殺したい。」

「なら勝手にしろ。」

 

 大丈夫大丈夫。君ならやれるって、俺も友達殺された怒りで怪物殺し始めたけど今やこんな感じだから。もうとっくに敵取ることよりも怪物殺すほうが目的になっちゃった。

 

 もっと言えば怪物殺す武器作るために怪物殺す事が目的になってる。小泉構文だなこれ……まぁ、いいや。この子のお陰で目当ての素材も手に入れられた面もあるし……

 

「……選別だ、これをあげよう。」

 

俺は 予備の手斧を 手渡した。

マオは うれしそうだ

 

「これ……貴方の……」

「予備の斧だ。強化はマトモに出来てないが……怪物狩るには十分だろ。殺したきゃそれで殺せ。」

 

 まぁ、俺が本当の最初に手にした手斧よりかはよっぽど強化されてるけど。新参者には優しくする物だから。

 

「だが……今日はもうやめておけ。」

「なんで?」

「もう、館の奴は大抵狩り尽くした。また復活するのを待て……もしくは適当な人けのない場所に行ってみろ。案外直ぐ狩れる。」

「……ありがとう。斧男。」

「待て。」

 

 斧男って誰だよ!?俺か!?俺しかいないよな!?俺に向かっていってるんだから!?斧男って……何その都市伝説的な名称は!?

 

「斧男とは……なんだ?」

「貴方の事。」

「それはお前がつけた渾名か?」

「みんなそう呼んでる。ここにヘルメットをかぶった斧を振り回す斧男が出るって。」

 

 俺都市伝説になってる!?!?!?俺は純粋にハクスラしてただけなのに……あっ、それが理由か。

 

「……そもそも、あなた人間?」

「人間のつもりで生きてきた。」

 

 怪物の返り血浴びすぎて不死属性ついたけどまだまだバリバリ種族的には人間だぜ!だって死んでないもん!!

 

「そう、それじゃあ……貴方の名前を教えて。」

「……名前か。」

 

 名前……名前…………あれっ、名前なんだっけ?もうずっとここに籠って怪物殺し続けてたら忘れちゃった。部屋まで戻って荷物に入ってた生徒手帳見たら思い出せるだろ。……まぁいいや。斧男で。

 

「いや、もう斧男で良い。」

「そっか。」

 

 面倒くさいので斧男で……あっ、そう言えば怪物殺すのに夢中になりすぎてこれからのこと考えてねぇや。……まぁ、いいや。またそのうち怪物がでるからまた殺して素材集めて繰り返せばいいか。

 

 っと、そんな事を考えていると……マオとか言うコがもう帰るみたいだな。

 

「……それじゃあ、私は帰る。」

「あぁ、もう二度と来る……」

「また明日来るよ、()()

 

 可笑しい、何故そうなる。おい待て、そんな走って出ていくな……おい、なんだ師匠って、おい……師匠ってなんだよ!?おい!?

 

 はぁ……なんか今日は疲れた……あっ、食われたやつの下半身あるじゃん。あとで庭に埋めてあげなきゃ……

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 奇妙な事に、マオが館に入ってからほんの数十分しか経っていないにも関わらず、月がまだ浮かぶ深夜に入った時間から大幅に過ぎて朝日が昇り晴天が出てくる時間になっていた。

 

 どうやら、あの館は外とは時間の流れが違うようだ……あのまま、なかに居続けていたらどれだけの時間経過があったのかゾットする。そして同時に暫くあの館に籠っていた師匠……斧男が、こちらの世界でどの程度前の人間なのか考えて、またゾットする。

 

 だが、マオにはゾットする暇はない……この恐怖と言える感情を御して、殺意に変えなければ怪物は狩れないのだから。

 

 

 マオが家に帰ると騒然となる……朝になっても帰ってこず、オマケに共に出かけた友人たちも行方不明になっているなっていたものだから。

 

 当然、マオには警察から事情聴取がはいる。ハッキリ言って、四人の失踪者の中から一人だけ戻ってきたなど不自然の極みだからだ。

 

 だが、マオは適当なごまかしで乗り切った。追求しようにも、マオが何かした証拠も何も出ないのだから、留置以外にやりようがない……実際、マオは何もしていないのだから。

 

 だが、警察の追及から逃れても、家族やその友人たちからの追及には逃れられない…………これからきっと、マオが友人達に何かをしたという噂が、まるで真実のように語られる日が来るのだろう。

 

 だが、それすらマオにはどうでもよかった。彼女は翌日……宣言通りに、また終点の館へと足を運ぶことになるのだった。

 

 

 




とあるゲームブックに乗った『鏖殺』に関するQ&Aコーナー

Q:作中で怪物を狩れる人間って皆頭可笑しくなってませんか?
A:頭のネジを外さないと怪物なんか倒せるわけないので。
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