え?スイーツで契約できる悪魔がいるんですか?   作:八重歯

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ダンブルドア

 

 

 私は悪魔です。

 

 地獄生まれ地獄育ち。生粋の上位悪魔、肩書き的には「古の契約王」とか「魂喰らい」とか、それっぽい物騒な二つ名がついているが、まあどうでもよろしい。

 

 私が今求めているのは魂じゃなくてスイーツです。それも最上級の。

 

 魂?いやいやいや、固い、重い、めんどくさい。そりゃ昔の魂はなかなかに純度も高く美味なものもありましたよ。けどね、今の魂、あれは微妙。雑味が多くてあんまり美味しくないのです。

 その点、スイーツやお菓子は最高!香り、甘み、口溶け、全部が至高の調和を奏でています!

 

 霊格や魔力なんてどうでもいい。魂より菓子の方が格段に旨いんですよ。魂なんて食べなくても後何千年も生きられますし。

 

 

 

 

──おっと、また誰かが私を呼んだようです。

 

 

 

 ぽわ、と魔力が注がれる感覚が伝わってきました。

 よし、行ってきますか。

 

 

***

 

 現世へ降り立つと、足元の魔法陣が赤くぼうっと光り、蝋燭の炎が揺れていました。

 紫煙が巻き上がり、私は十七歳ほどの中性的な姿で現れます。黒髪は腰までさらりと流れ、紫の瞳が闇夜に浮かぶことでしょう。白い肌に長い睫毛が影を落とし、男女どちらともつかない未完成な顔立ち。──これが案外、人間の警戒心を削ぐんですよね。

 まあ雰囲気と第一印象は大切です。中性の方がどちらの客にも対応しやすいので。

 

 

「……召喚、おめでとうございます、とでも言っておきましょうか」

 

 

 私は煙の中で腰に手を当てて軽く笑ってみせた。私を召喚した青年は杖を構え、緊張で喉を鳴らした。えーと、名前はアルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア。高貴な感じで長いお名前ですね。

 

 

「君は……悪魔か?」

「はいはい、そのへんの扱いで構いませんよ。上位悪魔です一応、ね。あなたは、えーとアルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアさん」

「なぜ、私の名前が……?」

「ああ、ヒトには魂に刻まれた名前が読めませんものねぇ。これでも上級悪魔なので。魂を読めば名前や今までの行動思想丸っとわかります」

 

 

 アルバスは私を見上げ、緊張から唇を少し舐めた後、興奮と緊張が滲む色で「魂を、要求するのか?」と囁く。

 

 

「魂?ああ、それねえ……」

 

 

 私は手をひらひらと振った。

 そんなに悪魔といえば魂奪うってメジャーなんですか?上級悪魔はどっちかっていうと別のもの欲しがりますけど。もしや下級悪魔ばかり現世に来てます?

 

 

「それより、あー、悪いんですけど、お菓子、持ってます?」

「……は?」

「お菓子。スイーツ。甘いもの。魂よりもずっと価値があるんですよこれが。めちゃくちゃ美味なんです、しってます?」

「悪魔が甘党とは知らなかった」

「他の上級悪魔は知りませんけど。私は数千年前からスイーツで契約しておりますね」

 

 

 あの時初めてスイーツを食べた衝撃は忘れられない!そりゃ、魂で契約もできますけどね。そんなの私に旨みはゼロ。下級悪魔ならまあまあ魂食べれば強くなれるかもしれないですが、もう私の力はカンストしてますし。

 

 

「お菓子……そんなもので……願いを叶えてくれるのか?」

「質と量によりますけどね。ちなみに思いのこもったスイーツは、格を超える力を持つので覚えておくといいですよ?」

「……」 

 

 

 アルバスは目を伏せて迷うように息を吐き、ポケットを探ってカラン、と音を立ててドロップ缶を取り出した。た。

 

 

「……これしかない」

「飴玉。まあいいでしょう」

 

 

 彼が手のひらに載せた黄色い飴玉をそっと摘み、口に含む。──うーん!!すっぱ!!

 

 

「酸っぱ!」

「レモンキャンデー。……口に合わなかったかな?」

「すっっ──あ、でもほのかに甘いでございますね。まあ、これもなかなか」

 

 

 カロコロと転がしていると、少し甘みが出てきて、まあスイーツというより駄菓子よりではありますが、お菓子にはかわりありません。

 

 

「さて、願いをお聞かせ願えますか?」

「……弟のアバーフォースと、仲良くしたい」

 

 

 アルバスは俯きながら、小さく呟きました。その目にはわずかな焦りと寂しさがにじんでいます。

 

 

「人の心を大きく動かすには、それ相応の対価が必要となります。飴玉では弟君の感情を操作する事は叶いませんねぇ」

「……」

 

 

 アルバスの顔に落ちる影が深くなる。

 そもそも、もし飴玉一つで世界が思い通りになるなら、その世界はとっくに滅んでますよ。

 

 

「しかし、飴玉一つの対価はお渡しせねばなりません。それが、甘党悪魔との契約ですから。なので、『弟君と話す勇気と余裕を持つ魔法』をかけてあげましょう。ただし効果は一日」

「……本当に?」

「本当に、でございます」

 

 

 指をパチンと鳴らす。小さな紫の光が浮かび上がり、アルバスの胸へと吸い込まれていった。

 

 

「……ありがとう」

「どういたしまして、でございます」

 

 

 アルバスは照れ隠しに赤い髪をかき上げながら、頬を赤らめて笑う。それはまだ幼さを残す笑顔だったが、その目は揺るぎない光を宿していた。

 

 

 

 私は甘党の上級悪魔。

 スイーツこそが私の求める対価。

 いつまでも、ご利用お待ちしております。

 

 

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