あれから図書館と自宅を往復する日々となり、私がホグワーツに戻る日となった。
カミラと私の二人分の荷物を載せたローバーミニは段差があるごとにギシギシと悲鳴をあげたが、どうにかキングス・クロスまで到着した。
「また、学期末に帰ってくるよ」
「ルーマニアでのお土産、期待しててね」
私とカミラは互いに抱きしめ合ってから別れる。
悲鳴をあげ続けるローバーを見送ってから、九と四分の三番線に歩みを進める。
改札口では赤いローブの女性がアリスの足にしがみ付きながらシクシク泣いていた。
何だかとんでもない修羅場を見てしまった気分だ。
アリスはこちらに気づくと足を振り払ってこちらに駆け寄って来た。
「マリサ!助かったわ」
「何もしていないが?」
「理由がないと振り払えるに振り払えないじゃない?」
「随分と…個性的?なんだな、お前の母親って」
正直人目のある中であんな事ができる人、そういないだろう?
「だから家には帰りたくないのよ…」
顔を片手で覆いながらアリスはそう言った。
少し早めに到着した私達は後方のコンパートメントに荷物を置いた。
「そういうマリサは?クリスマスどうだったのよ?」
「ずっとダイアゴン横丁を探索してたか、店の手伝いをしてたかのどっちかだったな」
「私はずっと家でね…」
「何というか…ご愁傷様」
「そう言えばマリサ、時計買えたのね?」
「あぁ…百貨店に売ってた物を買った、50ガリオンもするのは驚いたが」
「かなり贅沢な買い物をしたのね、大体1〜10ガリオンの物もあったでしょうに」
「しっくりくるのがコレしか無かったんだよ」
あの後他の時計屋も行って見たがあまり自分の心には響かなかった。
「あぁ…それとニコラス・フラメルについてなんだが」
そこから先を言おうと瞬間、コンパートメントがノックされた。
「どうぞ?」
中に入って来たのはハーマイオニーだった。
「あぁ、ハーマイオニーか…びっくりしたよ」
話をしようとした瞬間だったから肝が冷えた。
「え?なんのこと?」
ハーマイオニーは不思議そうな顔をしていた。
「ニコラス・フラメルについてなんだが」
私は彼の事について話す事にした。
「何か分かったの?」
ハーマイオニーが興奮した様に聞く。
「あぁ、彼はどうやら錬金術師だったみたいだ、詳しくは分からないが600年以上前の人物らしい」
正直まだ生きているのが不思議だと思っている。
「通りで『魔法界における最近の進歩に関する研究』に乗っている訳無いはずよ…」
アリスは頭を納得した様にそう呟いた。
「ちょっと待ってて!」
ハーマイオニーは閃いた様に自分のトランクを漁り始めた。
「どうしてマリサはフラメルを見つけたの?」
アリスはハーマイオニーの漁りを横目に見ながら私に不思議そうに聞いてくる。
「少し知り合いの図書館で探しているときに教えてくれたんだ、イマイチ錬金術には詳しく無かったからその程度しか知らなかったみたいだが」
たまたま探している時にラウルに聞かれなかったらきっと見つからなかっただろう。
「あった!」
ハーマイオニーは胸にとても分厚い本を抱えてそう言った。
「軽い読書用に図書館から借りて来たの」
「「軽い?」」
思わず私達はそう突っ込んでしまった。
「見つけた!ココを見て!」
ハーマイオニーが指を指した部分を読み上げる。
「ニコラス・フラメルは我々が知っている限りでは『賢者の石』の創造に成功した唯一の人物である!」
「なるほど…いかなる金属を黄金に変えて、飲めば不老不死になる霊薬の源か…誰でも欲しくなるでしょうね」
「無限の命と無限の財産…誰もが羨む生活だろうな」
私はそうは思わなかったが。
「でも、マリサはそうも思ってないんでしょう?」
ハーマイオニーは私の顔を見てそう聞いた。
「まぁな…確かにその二つは魅力的だが、死ぬ事が無いならば、大切な人の死を見続けなければならない、そんな人生はごめんだな」
「確かに…ずっと親友の死を見ていかなければならないなんて心が壊れてしまうでしょうね」
アリスは静かにそう言った。
私達はフラメルについての情報をハリー達に伝えた。
「金を作って、絶対に死なない石、スネイプが狙うのも無理ないね、誰もが欲しがるもの」
ハリーは納得した様にそう言った。
「でも、どうして今なんだろう?」
ロンが首を傾げてそう言った。
「そこが分からないんだ、グリンゴッツから移送された理由が分からない」
私も不思議だった、どうしてグリンゴッツから盗まれる前にホグワーツに来たのかが。
「色々分からない事があるけど、まぁ何を狙っているのか分かっただけ良かったんじゃないかしら?」
アリスはそう言って全員を解散させた。
新学期が始まるとすぐにハリーは忙しくなった。
寮対抗クィディッチ戦、グリフィンドール対ハッフルパフの試合が近いからというのもあるが、次の試合の審判がスネイプである事もその忙しさに拍車をかけているらしい。
理由として次の試合はハリーができるだけ早くスニッチを手に入れなければならず、練習が普段よりも厳しかった。
だが、私はこのスネイプの行動から彼がシロであると言う確信が強くなった。
私はハリーが更衣室に行く前にそれを伝えた。
「どうして?だってそれこそスネイプは審判として飛んで来るんだよ?」
ハリーは信じられないという様な顔でこっちを見た。
「逆にそんな状況で呪いをかけられるか?私には無理だと思うぞ?」
それに、と続ける。
「審判というものは自然と目が行くものだ、仮に杖なんて出したら全員から見られる事になる。スネイプとサシで魔法薬の授業をする訳じゃ無いんだ、もう少しリラックスしてもバチは当たらないぜ?」
私は自分の仮説をハリーに伝えた。
「そうだね、僕、少し緊張していたみたいだ、頑張ってやってみるよ」
「退屈させてくれるなよ?」
私とハリーは互いに拳を合わせる。
結果はグリフィンドールの勝利だった、緊張が解かれたハリーは過去一のスピードでスニッチを手に入れたのだった。
しかし、賢者の石を巡る事態は静かに進行していた様だ。
ハリー曰く、試合の帰りにクィレルとスネイプは禁じられた森に入って何かを話していたらしい、スネイプはクィレルを脅迫し、賢者の石の守りを知っているか聞いたらしい。
抵抗している様だが、スネイプはまた話すと言ったらしく守りが崩されるのもそう遅く無いだろう。
なぜクィレルなんだ?他の教師の守りを知らないならば他にも色々な教師にやっているはずだろう?
やはりスネイプは賢者の石を…?
その話から数週が経過したが、クィレルは衰弱していくものの口を割った様子はなかった。
石は確かに心配だったが、ハーマイオニーにはそれ以上の心配ごとができたらしい、期末試験だ。
「ハーマイオニー、試験は十週も先だよ?」
ロンは勉強を勧めるハーマイオニーに抗議する様にそう言った。
「何を言っているの?十週なんてずっと先の話じゃないわ」
二人は助けを求める様に私達を見てくる。
「まぁ…そうだな、勉強をしていく中で役立つ物が見えてくる可能性は否定できない、やっておいて損は無いだろうな」
「石に気を取られて勉強して無かった、絶対に言い訳にはならないわよ?」
まぁ筆記試験は術式魔術の性質上、方程式を覚えるのがマストだから正直言ってあまり心配はしていない。
どうやら十週前というのは教師陣にとってもテストが近くなったという認識らしく、宿題が山の様に出てくる。
「こんなに覚えきれないよ!」
羽ペンを放り出したロンを横目に見ながら私は変身術の理論を書き記していた。
「ハグリッド! 図書室で何をしてるんだい?」
ハグリッドという言葉に不思議に思って顔を上げるとそこには少し慌てた様な顔をしているハグリッドがいた。
「いや、なんでもない。ちーっと見てただけだ。お前さんらは何をやっとるんだ? まだニコラス・フラメルについて調べとるんじゃないだろうな」
「もう、そんなのとっくの昔にわかったさ」
ロンは意気揚々と言った。
「それだけじゃない。フラッフィーが何を守っているかも知ってるよ。賢者のい──」
「シーッ!」
ハグリッドは慌てて周りを見回す。
「その事は大声で言いふらしちゃいかん、生徒が知ってる事じゃねぇ」
「ちょうどよかった。ハグリッドに聞きたいことがあるんだ。フラッフィー以外にあの石を守っているのは何なの」
ハリーが聞いた。
「シーッ!良いか、あとで小屋に来てくれや。教えるなんて約束はしねぇからな。ここで誰かに聞かれたら俺が喋ったと思われる」
「わかった。じゃあ後で行くよ」
ハグリッドは何かを隠した様に帰って行った。
不審に思った私達はその本棚を調べてみると、どうやらドラゴン関連、しかも飼育に関係する本棚らしい。
だが、ドラゴンの飼育は法律違反だ、ハグリッドは一体何をするつもりだろうか?
ローバーミニ
イギリスの1959年誕生以来の基本設計のまま、90年代も根強い人気で生産が続いたロングセラー車両。
有名なアニメだとシティーハンターで使われている。
因みに魔理沙のところは旅のお供である為、ルーフキャリア(自動車の屋根に荷物を載せる為のアイテム)が付けられている。
永遠の命について
作中のマリサとアリスの発言は私の考えです、不死について、皆さんはどう思いますか?一生涯親友を看取り続ける日々…私は耐えられる自信がないです、かと言って自らの手で命を断つ勇気もない…私としては不死は呪いの様な物だと思っています。