デカくて強い女が無双する話 〜竜の罪、歩き破戒巫女〜   作:Suzuki-Romy

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文章力があまりないですがよろしくお願いします。
デカ女流行って!


◆プロローグ:生き恥を晒して

 日の差さない洞窟の奥深く。

 今世でも見慣れぬ不思議な鉱石が青白く、月よりも明るく照らす中。

 

 煌めく磨かれた宝石のようなそれは規則性を持って並び、非生物的な質感にそぐわない、生物のような形をとっていた。

 

 力強くも美しい四肢に優美な尾、広げずとも雄大な翼、艶のある角、種が違えど感じる端正な顔立ちと理知的な瞳。

 

 私の知る生物の枠組みから外れたその存在は事前に思い描いていた姿と似ていながらも、直接目にする威容は大きく上回り、

 

 ただ存在するだけでその身に秘める力の大きさを伝えてくる。生物としての格の差がわかる。

 

 私にはその存在が高位の精霊に類する、いや、それをも上回る存在に思えた。

 

 ――――竜。

 

 前世では空想上の生き物で強さの象徴。

 

 トカゲや蛇などの爬虫類に似ていて、角を持ち、多くが空を飛ぶその生き物は様々な物語に登場していた。

 

 登場する物語によって扱いはまちまちだったけれど、個人的な印象としては人に討たれる存在であることが多かったと記憶している。

 

 所詮は形ある生き物で、命を持ち、この世の存在である以上はと思っていた。

 

 あぁ、私は舐めていたんだ。

 

 今世では前世の神に位置する存在として扱われているのを知っていたのに。

 

 思えば前世とは異なるこの世界に生きる人々のことも私は侮っていたんだ、生まれ変わってからずっと。

 

 だから私は、今日ここで死ぬ────

 

 

 

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 異世界転生。

 

 死後に別世界で生まれ変わり、多くの場合前世の記憶を持ったまま新しい人生をやり直す、そういう物語上の事象で前世では物語の大きなジャンルとして確立していた。

 

 私もその手の物語を楽しむことがあったが、転生するのであれば現代で同じ世界、せめて類似する世界で平和な世界が良かったのだけれど、

 

 残念なことに私が転生したのは現代のインフラも娯楽もない、恐らく文明の発展度合が前世に比べて低い感じの剣と魔法のファンタジー世界で、

 

 前世で何も為せなかった私は、

 

 今世でも何も為せないままに全てを失った。

 

 前世の記憶も、恵まれた今世の出生も、何も活かせず、

 

 チートと称することのできる力は遅くに手に入れ、けれども何も変えることはできず、

 

 神の、いや竜の気まぐれに命だけは永らえて、

 

 二度目の人生におけるセカンドライフ、前世から数えて三度目の正直。

 

 私は今世での出生地から遠く離れた地で、

 

 

「帰れっ! このばっ、ばちあたりもんがぁ!!」

「と、父ちゃんっ! 巫女様になんてこと言うんだいっ!」

「みんなしてありがたがってぇ、正気じゃねぇっ……」

「ごめんねぇ、わざわざ来て下さったのに」

「いえ、構いません」

 

 

 信仰に寄りかかって生きていた。

 

 しかし今世の特定の宗教に帰依しているわけではない。前世の宗教を持ち込んでいる訳でもないが。

 

 そのため、今しがた怒鳴って家屋に引っ込んでしまった方のように嫌悪されるのもやむを得ないと納得している。今回の場合はそれだけではないが割愛しておく。

 

 私は先ほどのおば様による世間話の傍らの先導で小さな広場のような場所に案内された。来訪者が珍しいのか、私が目立つのか、その両方か、既にこの集落の人たちが集まってきていた。

 

 適当な場所に背負っていた彫金による大層な装飾の施された箱を降ろす。

 

 箱は半分から下は引き出しに、上は両開きの扉となっている。

 

 

「ここを訪れるのは初めてではありませんが、改めて名乗らせて頂きます。私は遠く離れた異郷の地から参りました、赤竜様に仕える巫女のリアンヌと申します。修行として各地を巡らせて頂いております」

 

 

 手短に挨拶を済ませる。ありがたい説法などはない。

だが大層ありがたそうなものは持ち合わせていた。

 

 私は懐から鍵を出すと箱の上の扉を開放し、集まってきた人たちに見えるように体をずらす。

 

 

「こちらは私が赤竜様より賜りました御聖体でございます。どうぞ御覧ください」

 

 

 箱の中に座すのはパンやワインではなく、真っ赤な宝石のような竜鱗である。

 

 小さな畳と柔らかな座布団の上に置かれたそれは磨かれた宝石の一枚板(この表現も奇妙だがその大きさからこのような表現にせざるを得ない)にしかみえず、とても生物の鱗とは信じられない。

 

 そう、私が寄りかかっているのは強大な力を持つ実存する竜への漠然とした尊敬や畏怖に由来する信仰である。

 

 当然この世界、竜を崇拝する既存宗教など数多くあるのだが、竜が直接御触れを出しているならまだしも、単に人が運営する宗教でしかないため私は入信していない。

 

 別に怪しげな教義を広めたり、組織を作ったりする訳ではなく、このようにパワーストーン的なアイテムを見せて気分を上げて貰っているだけの可愛らしい活動である。

 

 誓って何も悪いことはしていない。ただ貴重なものを人々に見せているだけ。

 

 現に御聖体を目にした人たちは感嘆の声をあげたり、見惚れたり、拝み始めたりと様々な反応を示していた。

 

 それもしばらくすれば落ち着き、畏敬の対象は話の種へと変わり集まった人たちは歓談へと移っていく。所詮は目の前にあるのはモノに過ぎないから。

 

 和やかな雰囲気であるが、私の周りは静かだ。単に余所者であるからなのかもしれないが、おそらくは私があまりに異質だからだろう。決まってこういう場では私が気安く話しかけられることはない。

 

 目の前にいる彼らの容姿と服装は前世の故国、日本の時代劇に登場する庶民のようで、そこだけを見れば異世界感がとても薄い。

 

 それに対して私の容姿は前世の西欧の人のイメージに近い顔立ちに、老化によるものとは違う透き通るような艶と柔らかさのある白髪、

 

 服装もロリータに分類されるであろうブラウスの上に着物をはおり、袴を穿き、その上にコルセットベルトを着け、仕上げに和風の首鎧に胸当て、大袖、籠手と部分鎧が覆っており、足元はブーツと和洋が入り乱れている。

 

 見事にファンタジーな創作物のキャラクターといった見た目だ。あと着込み過ぎかもしれない。

 

 おまけにかなりの長身である。大人2人が肩車をしたほどの高さを誇っている。この世界にメートル原器はないが、2m半ばはあるのではないだろうか。前世で長身を誇る怪異として有名であった八尺様よりもデカい。

 

 今世の世界の人々は栄養状態が悪いにも関わらず、前世の世界よりも体が大きな人が多いが、それでも目立つ体格である。

 

 この場において、私は恐ろしい程に存在そのものが世界から浮いていた。

 

 とはいえ、前世が小柄だったために苦労した身としてはこの長身は嬉しいし、顔が良いのも自慢だ。

 

 

「巫女様、本日はわざわざありがとうございました。皆十分に赤竜様の御威光を感じさせていただきました。巫女様もお疲れでしょう────」

 

 

 じっと温かい目で歓談を見守っていたのだが、見かねた集落の長からそっと退場を促された。

 

 私は御聖体の座す箱をそっと片付けていると、前世への郷愁に縋った逃避行、その果ての今に酷く虚しさを感じて仕方がなかった。

 

 




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