追放から始まる英雄譚~心優しき青年は真の力に目覚める~ 作:おとら0205
……ついに、この日が来たか。
親父と兄貴から追放される日が……。
兄貴の結婚が決まった日、俺は親父と兄貴に呼び出された。
「ユウマ! 当主の名において——お前をこの家から追放する!」
「そうだ! さっさと出て行け!」
「親父、兄貴……ああ、わかったよ」
俺は振り返ることなく、当主の私室から出て行く。
「さて……どうしたものか」
「お兄ちゃん!」
「ユウマ……」
「母上、エリカ……」
大嫌いな親父と兄貴とは違い、大好きな妹と母上が、俺を心配そうに見つめている。
「ど、どうして?お兄ちゃん、何も悪いことしてないのに……」
「エリカ、泣かないでくれ。お前泣かれると……俺は困ってしまうな」
「グスッ……だってぇ……」
まだ十歳のエリカには、これを理解するのは難しいだろうな……。
「十八歳になり成人を迎えたとはいえ……ごめんなさい、私のせいで……」
「何を言うのですか! 悪いのはあの2人であって、母上とエリカは何も悪くないですよ」
母上はとある事情から、俺が疎まれているのが自分のせいだと思い込んでいる。
「お兄ちゃんは……会えなくなるの?」
「いや、そんなことはないさ。確かに追放はされるが、こっそりと会いに来よう」
「ほんと……?」
「ああ、約束だ。俺が約束を破ったことがあるか?」
「ううん! ないよ! だからお兄ちゃん好きだもん!」
「そうか、俺もエリカが好きだぞ」
「わわっ!? 頭をわしわししないで——!?」
「フフ……ユウマ、辛くなったらいつでも帰ってらっしゃい。夫であるランドと、長男のバルスは、私が何としても説得するわ」
「いえ、それには及びません。母上はあの2人の味方でいてあげてください。でないと、また諍いになるでしょう。特に兄貴は、それが気にくわないようですし……」
母上の、銀色の髪と整った容姿。
そして、元聖女と言われる希少な回復魔法の使い手。
俺は容姿や才能を引き継いでおり、それが気にくわないのだろう。
さらには、剣の家と言われるミストル家において、自分より剣の才能があることも。
「どうしてこうなってしまったのかしら……昔はこんなではなかったのに……」
「母上、顔を上げてください。俺は、貴方の息子として生まれたことを後悔などしていないですし……可愛い妹もいますから」
「えへへ〜」
「ユウマ……いけないわね……息子が成長してるっていうのに……」
「では、そろそろ……うるさいのが来ると面倒ですからね」
抱きついてきた可愛い妹を離し、優しく頭を撫でる。
すると、エリカか不安気に見上げてきた。
「お兄ちゃん、またね……絶対だよ?」
「ああ、もちろんだ」
「ユウマ、当てはあるの?」
「叔父上のところに行こうかと思います」
「保険をかけておいて良かった……」
「えっと……?」
「お、お兄ちゃん、お父さん達が出てきた……!」
「おっと、では失礼します」
また小言を言われたら面倒だ。
俺は何かを言われる前に、そそくさと屋敷を出ていくのだった。