追放から始まる英雄譚~心優しき青年は真の力に目覚める~   作:おとら0205

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お互いに譲れないモノ

 翌日、叔父上の家で寝ていると……。

 

「おい、ユウマ」

 

「ん……叔父上? どうしたのです?」

 

「これはお前のか? 家の周りをチョロチョロしてたから捕まえたが……」

 

「ユウマさん! このバケモノは何ですか!? 私が手も足も出ないなんて!」

 

 そこには片手で掴まれて、猫のようになっている女性がいた。

 

「おい、失礼な奴だな」

 

「君は昨日の……よく、この場所がわかったな?」

 

「企業秘密ですっ!」

 

「ほらよ!」

 

「キャア!?」

 

「ちょっ!? 投げないでくださいよ!」

 

「全く、ガキだと思っていたが……隅に置けない奴だ。俺は出掛けるから好きにやると良い……じゃあな」

 

「叔父上!? 違いますよ!」

 

 俺の話を聞くことなく、叔父上は行ってしまう。

 

「えへへー、家主公認ですね?」

 

「おい!? 引っ付くな!」

 

「良いじゃないですかー? 減るものじゃないし……あっ、別に付き合ってくれとは言いませんので。ただ、子種をくれればそれで良いのでー」

 

「いや、だから……まずは、説明をしてくれ」

 

「もう、逃げませんか?」

 

「昨日は悪かったよ。ただ、いきなり子種をくれと言われたら逃げたくもなる」

 

「むぅ……それもそうですねー。私も焦っていたので……えっと、どこから説明しましょう?」

 

「最初からだ。まずは、()()()()()()()()()

 

 これが昨日から疑問だった。

 いくら魔力強化してないとはいえ、この細腕で俺と力が互角はおかしい。

 

「へぇ、益々良いですねー。私、見た目は人族に近いと思うんですけど?」

 

「ああ、だからこその疑問だ。君は亜人なのか?」

 

「むぅ〜合ってますけど……その言い方は嫌いですねー」

 

「え?」

 

 いや、しかし……俺はそうとしか教わっていない。

 だが、知らないからといって相手を不快にさせるのは違う。

 

「私はですね……」

 

「待った」

 

「はい?」

 

「まずは謝罪する。そして、俺はエデンに住む方々を亜人としか習っていない。もしよかったら、君の種族を教えてくれないか?」

 

 我が国は亜人国家と言われるエデンとは微妙な関係だ。

 仲は悪くないが、お互いに不干渉という形をとっている。

 その理由は、人族が彼らを奴隷として扱っていた時代があるからだ。

 いや……正確には、今でも少数ながら存在すると言われている。

 もちろん非合法なので、見つかればタダではすまない。

 

「……真面目なんですねー。えへへ〜、良いですよー。私の一族はヴァンパイア族です」

 

「ヴァンパイア族……俺が知っているのは獣人というやつだな」

 

「一番数も多いですし、種類もいますからねー。この国でもたまに見かけますし」

 

 我が国は個人としてなら、国の行き来は自由となっている。

 もちろん、人族がエデンに行くことも可能だが……あまり行きたがる人はいない。

 誰も好き好んで、憎しみの目で見られたくないしな。

 

「他にはどんなのがいるんだ?」

 

「獣人族、ドワーフ族、ハーフエルフ族、鬼人族、ヴァンパイア族が住んでますね」

 

「その中の一つであるヴァンパイア族ってことか……それで、子種とは?」

 

「私の種族はですね、男が生まれにくいんですよー。なので、初潮を迎えた女性は、他の種族に種をもらいにいくんです。それも、出来るだけ強い個体に」

 

「……なるほど、それで俺に子種をってことか。それは同じ国の、別の種族ではいけないのか?」

 

「大体はそうなりますねー。ただ、ピンとくるのが条件の一つでして……私も自分の国を回ってみたんですが……まあ、いなくてですね。隣の宗教国家セントアレイや、その上にある騎士国家トライデントにも行きましたが……どこにもいなかったですし」

 

「すごいな……エデンを敵視している国にまで行ったのか……見つかったらタダではすまないだろうに。一応、人族に近いからバレにくいとはいえ……」

 

 セントアレイは人間至上主義の国だし、トライデントはセントアレイの同盟国だ。

 亜人と人とは認めていないし、過去に奴隷扱いをしていたのはこいつらだ。

 

「まあ、捕まって犯されてますねー。子種どころじゃないですね」

 

「軽いな! ……いや、違うか。そのピンとくるってやつが、そこまで大事なことなんだな?」

 

 すると、先ほどとは違い……真剣な表情になる。

 

「ええ、そういうことです。強い子を産むためには、直感が頼りになります。この人となら強い子が出来るっていうのを本能的に感じるんです。そして、この国にきて貴方に会いました」

 

「残りの国であり、我が国の上に位置するバルザックには行かなくていいのか?」

 

「むぅ……正直言って、それは少し迷いましたね。ただ、貴方を見た瞬間から——この人しかいないって強く思いました」

 

 彼女は強い意志を瞳に宿している。

 

「そうか……ならば、俺も本気で答える必要があるか」

 

「断る理由があるんですね?」

 

「まあ、そうだな……俺は、とある貴族の次男坊だ。そして、長男や親父からは嫌われている。ただ、兄貴の子供ができるまでは廃嫡されないはずだ。だから子供を作る気はないし、恋人も作る気はない。少なくとも兄貴に子供ができるまではな」

 

「なるほど〜お家騒動になるからですね?」

 

「そういうことだ。きっと俺の相手は嫌がらせを受けるだろう。それだけでなく、刺客もやってくるかもしれない。ただ、俺は溺愛する妹がいる。その子がきちんとした相手と婚約するまでは国を出てもいけない。つまり、それまでは結婚もできないということだ」

 

「へぇー……詳しいことはわかりませんが、貴方の譲れない思いってことですか?」

 

「ああ、これだけはな」

 

「ふーむ……なら、尚更のこと私で良くないですかー?」

 

「はい?」

 

「私なら嫌がらせも平気ですし、刺客も撃退できますし。それに、子種だけもらったら国に帰るのでー」

 

「いや、そういうことじゃない。俺が嫌なんだ。大事な人が、俺のせいで危険な目にあうことが。あと、俺はそんな無責任なことは出来ない。子供ができたなら責任をとって結婚する」

 

「……真面目さんですねー。据え膳食わないとか……」

 

「ほっとけ……自分でもどうかと思う時はある」

 

「でも……嫌いじゃないですよ、そういう考えの人」

 

「そ、そうか……」

 

「おや? デレましたー? やっぱり、今からしますかー?」

 

「しないわっ!」

 

「あら、残念」

 

「まあ、というわけなんで……平行線だな」

 

「うーん……それが解決したら、私のことを考えてくれますか?」

 

「……まあ、俺とて男ではあるからな。ただ、その人となりを知らないことには……」

 

「なら、私も仲間に入りますねー」

 

「はい?」

 

「パーティーってやつですか? 私は冒険者の資格は持ってないから、これから取らなきゃですけどー」

 

「いや、まあ……だが女性というのは、タイムリミットというか……俺は、いつになるかわからないぞ?」

 

「問題ありませんよー。私達の種族は若い時期が長くて、五十歳くらいまではこのままですし。子供も、四十歳くらいまでは余裕ですからー」

 

「ほう? 人族とはだいぶ違うのだな」

 

「そういうことも含めて、知ってもらいたいです——私のこと」

 

 その澄んだ瞳で、俺を見つめてくる……。

 俺はそういうのに……弱いんだよ!

 というか……見た目的にはどストライクだし。

 

「わかったとは言えない……が、アロイスとイージスが認めたなら許可する」

 

「あの二人ですか〜わっかりましたー! では、早速行ってきますねっ! ついでに登録もしてきますねー!」

 

「え? 今?」

 

「善は急げですっ! では、失礼しますねー」

 

 そう言い、風のように去っていった……。

 

 いや……仲間は欲しかったけれども!

 

 どうやら、俺は……変な子に好かれたようだ。

 

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