追放から始まる英雄譚~心優しき青年は真の力に目覚める~   作:おとら0205

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教会について

 俺はすぐにアロイスが待っている場所へと向かい……。

 

「アロイス! すまない!」

 

 まずはきちんと頭を下げる。

 依頼を受けるとは言ったものの、思っていた状況とはだいぶ異なる。

 それを、ほぼ俺の独断で決めてしまったからだ。

 

「……何かあったな? 団長、詳しく教えてくれ」

 

「ああ、もちろんだ。実は……」

 

 俺が一通りの説明をすると……。

 

「なるほど、そういうわけか。しかし、ゴンザレスか……」

 

「……怒らないのか?」

 

「ん? 何か悪いことをしたのか?」

 

「いや、本来なら持って帰って相談すべきだと思うのだが……」

 

「いや、そうなる予感はしてたぜ。ああいう依頼書の書き方といい、他の冒険者がとっていかないこといい……何かしらの厄介ことがあるとは踏んでいた」

 

「そうなのか……そういうのにも気づいていかないといけないな」

 

「まあ、追追でいいと思うぜ? 俺は団長くらいの時は何も考えてなかったしな」

 

「そうか……それで、すぐにても出発したいのだが」

 

「ああ、緊急性が高いからな。それに、ある意味でラッキーかもな。奴を倒せれば、お釣りがくるぜ」

 

「イージス……は、きたようだな」

 

「ハァ、ハァ、すみません、待たせてしまって……」

 

「いや、気にするな。イージスには歩きながら話すとしよう」

 

 門へと向かいつつ、イージスにも説明をする。

 

「五級相当ですか……! オ、オイラ役に立てるかな?」

 

「お前一人じゃないから安心して良い。アロイス、勝算は?」

 

「俺が一対一では厳しい相手だが、団長のフォローがあれば行けると思うぜ」

 

「あとは奴の根城にどれだけの戦力があるかだな」

 

 シュミレーションをしつつ、王都の入り口に到着すると……。

 

「ユウマさん! 用意できてますよー!」

 

「シノブ、ありがとな。では、すぐにでも出発しよう。ロナさん、その村への道はわかりますか?」

 

「す、すみません……ラクリ村としか……」

 

「ラクリ村……軍の演習で通ったことがある気がする……イージス、地図をくれるか?」

 

「は、はいっ!」

 

「……あった、これだな。うん、覚えているはず。よし、俺が先頭で行こう。シノブはロナさんを乗せて俺の後ろへ。その後にイージスとアロイスで行くぞ」

 

 全員が頷くのを確認して、それぞれ馬にまたがる。

 そして、急いで王都を出発する。

 

 

 

 そのまま走ること二時間くらい経つと……。

 

「イタッ!?」

 

「ロナさん、大丈夫ですか?」

 

「シノブさん、平気ですから……早くいかないと……」

 

 やはり、貴族のお嬢さんにはキツかったか……。

 おいていくという選択肢もあったが、それでは説得も上手くいかないだろうし。

 

「みんな! 一度止まってくれ! 休憩を取る!」

 

「ユウマさん!?」

 

「急いで行って疲れ果てては意味がないですから。馬にも水や休息は必要ですしね。それに痛いのは俺に任せてください」

 

「は、はぃ……ごめんなさい」

 

「いえ、お気持ちはお察しします」

 

 川が流れる場所を確保して、そこで小休憩を挟む。

 

「アロイス、イージス警戒を頼めるか?」

 

「おうよ」

 

「はいっ!」

 

「では任せるとしよう」

 

「ユウマさん、私がしなくて良いんですかー? 適任ですよ?」

 

「ああ、それはわかっている。だが、女性であるお前がいた方が安心だろうからな」

 

「い、いえ! もう良い人だというのはわかってますから!」

 

「ほらー」

 

「ありがとうございます。ですが、これからすることを考えると……申し訳ないですが、患部を見せてもらっても?」

 

「え………? えぇ!? お尻ですか!?」

 

「落ち着いてください。全部を脱ぐ必要はありませんから。痛い箇所を教えてください」

 

「え、えっと……」

 

「ロナさん、大丈夫ですよー。ユウマさんは回復魔法の使い手ですからー」

 

「え? ……男の人なのに? 聞いたことないわ……あっ、でもお金が……」

 

「お代は結構ですので。俺は教会の人間ではないので。そもそも、神の奇跡でもなんでもないですからね。こんなのは、ただの魔法です」

 

 ただ、基本的に女性しか使えないこと。

 その中でも使い手がいないことにより、神聖化されているだけだ。

 それを教会の上の男共が利用しているだけに過ぎん。

 奴らは慈善活動の名の下に、孤児の中から才能のある者を見つけ出す。

 それを安くこき使うことで、その多くを自分達の金とする。

 

「ふふ……教会の人が聞いたら怒りそうですね」

 

「まあ、既に異端扱いを受けてますから。ただ母上が有名だったことで、そういうこともあるのかと納得してもらいましたね。あとは、当時いた司祭様は珍しく良い方で、その方が力になってくれましたね」

 

 その方は亡くなってしまったが、母上もお世話になったそうだ。

 複雑だが、親父との結婚もその方がいなければなかったらしい。

 

「あっ、その方って……」

 

「その前に治療してもいいですか? というか、しても良いですかね?」

 

「……いえ! それで早く着けるなら! どうぞ!」

 

 ロナさんは恥ずかしそうに、痛い箇所を指差す。

 女性にとっては恥ずかしいだろうな……手早く終わらせるとしよう。

 

「あっ——だからアロイスさんとイージスさんを……ユウマさん紳士ですねー」

 

「お気遣いありがとうございます……」

 

「いえ、では腰を触ってもよろしいですか?」

 

 流石にお尻を触るわけにはいかんし。

 

「は、はぃ……」

 

「では……かの者を傷を癒したまえ——ヒール」

 

「あっ——痛みが……すごい」

 

「どうですか?」

 

「はいっ! 痛くないです! 凄いですねっ!」

 

「ですが、少しは休憩をしましょう。魔法が行き渡るまで、少し時間がかかりますから」

 

「では、お話をしても良いですか?」

 

「ええ、どうぞ。さっき言いかけてたことですか?」

 

「ええ、モーリス司祭様ですか?」

 

「その通りですが、ご存知なのですか?」

 

「ええ、回復魔法は使えませんが私の母も教会に勤めていましたので。準男爵家の出身ですが、貧しい家だったので働きに出ていたそうです。その時に、結婚したがっている女性を後押ししたって聞いたことがあって……」

 

 基本的に回復魔法を使える者は、他国との結婚は認められない。

 貴重な回復魔法使いの血が、よその国にいってしまうからだ。

 だから本国から派遣されてきた彼女達は、基本的に敷地内から出ることはできない。

 

「なるほど、そういうことですか。ええ、あの方は良い方でした。今と違い、孤児院にもきちんとお金をかけていましたし。教会にきた男性と、それに惹かれた女性を後押ししていましたね」

 

 孤児で幸せを知らないのだから、せめてこれからは幸せにと……。

 もちろん、そうならないこともあるが……それはモーリス様の責任ではない。

 俺も謝られてしまったが、恨んでなどいない。

 そもそも後押ししてなければ、俺は生まれていないしな。

 

「ええ、良い方だったと。ただ、両親はお金で苦労したそうです。今でこそ、それなりに財を築いてますが……」

 

「それもあって認めないということですか」

 

「ええ、私には苦労してほしくないと……それはわかるんです。でも!頭ごなしに言わなくても! 彼に会ってもいないのにっ!」

 

「では、きちんと話し合うといいでしょう。貴女は両親に愛されているのだから。それは当たり前のようでいて、とても貴重なものです」

 

「……ユウマさんは……その」

 

「お恥ずかしながら、父親と上手くいかなくて……まあ、母上とは仲が良いんで。ですから、こじれる前にきちんと話し合うことをオススメします」

 

「はい……そうですね。ありがとうございます、ユウマさん。依頼にきたのが貴方で良かったです」

 

「いえ、礼は彼を見つけてからにしましょう」

 

 モーリス司祭様が亡くなって教会は変わって……いや、元に戻った。

 教会のトップが変わったことにより、孤児院にお金がいかなくなったこと。

 治療の料金が跳ね上がったこと、女性達の監視が厳しくなったこと。

 

「あの俗物共め……」

 

 モーリス様は、異端と言われた俺を守ってくださった。

 

 あの方は自分がいなくなった後の孤児院のことを憂いていた。

 

 ならば、俺が孤児院に通うことは当然ことだ。

 

 それが大恩あるモーリス様にできる、俺のせめてもの行いだからだ。

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