追放から始まる英雄譚~心優しき青年は真の力に目覚める~   作:おとら0205

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突入

 母上は俺に教えてくれた。

 

 回復魔法というのは神聖なものでもなく。

 

 時として毒になるということを。

 

「ユウマ、よく聞きなさい。回復魔法とは使い方を誤れば毒となります」

 

「それはどういうことでしょうか?」

 

「人の身体とは繊細なものです。回復しすぎると、かえって身体の細胞を破壊することになります。そして一度破壊されたものは、二度と再生することはないのです——私のように」

 

「母上は、エリカを産んだ時に……」

 

 確か、それが原因で回復魔法をほとんど使えなくなったと……。

 

「ええ、難産により……自分で自分を回復しながら出産するという無茶をしてしまいましたね。そうしなければエリカは死んでいたでしょうから。ですが、私は後悔していません。大切なあの子が健康に育ってくれましたから」

 

「母上……」

 

「それほど回復魔法とは繊細な扱いを要求されるものです。それなのに、教会ではヒールで済むのにハイヒールをかけて回復しすぎるということも……そんなことすれば、身体に悪いことは知っているはずなのに」

 

「そうすることによって、料金を多く請求すると……クズだな」

 

「ええ、残念なことに。だからユウマ、貴方に教えます。優しい貴方は、完璧に回復したいと思うでしょう。ですが、行き過ぎるとかえって負担となるのです。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なるほど……あとは自己治癒に任せると?」

 

「ええ、その通りです。血の量は回復魔法でも治せませんし。少しじっとしてもらって、それから動かすようにしなさい。もちろん、生死がかかった状況であれば、致し方ない場合もありますが……」

 

「わかりました、母上。俺は細心の注意を払い、回復魔法を行使していくことを約束いたします」

 

「ふふ……本当に良い子に育って。シグルドには感謝しなきゃ……貴方が真っ直ぐに育ってくれたのは、間違いなくあの子のおかげだわ」

 

「ええ、叔父上は俺の目標ですから。あのような、一本筋の通った男になりたいです」

 

「……母親としては複雑ですが……ええ、貴方は貴方の思う道をゆきなさい」

 

 

 

 

 ……全員の出血量は?

 

 ……欠損箇所はなし。

 

 ……意識は全員ある。

 

 ……加減は——決まった!

 

「我を中心に癒しの光を——エリアハイヒール!」

 

 俺を中心したサークルが発生する。

 

「おおっ!」

 

「傷が……!」

 

「いいですか! まだ傷を塞いだだけで完全ではありません! そのまま少しの間じっとしててください!」

 

 ……苦しんでいる人はいない。

 ……よし、成功と言っていいだろう。

 家を出てから、俺の魔力は上昇している。

 家を出る前なら、これだけで空っぽだったが、まだ余裕があるくらいだ。

 

「イージス! 状況は!?」

 

「入り口より敵多数! ですがアロイスさんとシノブさんが抑え込んでます! アロイスさんが怪我を! シノブさんは無傷です!」

 

「わかった、ありがとう……よし、俺の身体も平気そうだ」

 

 これならまだまだ戦えそうだ。

 

「ロナさん、オランさん」

 

「は、はいっ!」

 

「な、何なりと!」

 

 なんか畏まってて態度がおかしいが……今は気にしてる場合じゃないな。

 

「俺達は中に突入してきます。その間、この方達と共にいてください。きちんと帰ってきて、送り届けますので。あと、彼らに回復魔法の代価は必要ないと教えておいてください」

 

「わ、わかりましたっ!」

 

「お気をつけて!」

 

「イージス! いくぞ!」

 

「了解ですっ!」

 

 イージスを伴い、入り口に向かうと……。

 敵の返り血と、自分の血により血塗れのアロイスがいた。

 

「オラァァ——!!」

 

「ギャーーー!?」

 

「こいつ強えぞ!?」

 

「こいつ鬼のアロイスだっ!」

 

「実力はあるのにあえて下の階級にいる奴か!」

 

「どうしたぁ!? 死にたい奴は前に出やがれ!」

 

 腰が引けた奴らの後ろから、俺は切り込んでいく。

 

「なっ……グハッ!?」

 

「いつの、ボゲェ!?」

 

 一刀のもとに斬り伏せていく。

 

「ウアアアア!!」

 

「なんだ!?こいつ!?」

 

「泣きながら人を殺してるぞ!?」

 

 俺と並んでイージスも敵を槍で始末していく。

 鼻水と涙が凄いことになってるが……まあ、良いだろう。

 

「アロイス! その血は!?」

 

「胴体は返り血だ。だが、左腕がまずいな……」

 

「わかった、すぐに治療する。イージス——盾となってくれ」

 

「っ——!! はいっ!!」

 

 俺の背中でイージスが盾を構える。

 

「シノブは撹乱を!」

 

「あいさー!」

 

「アロイス、どこが痛い?」

 

「……ここだな」

 

「よし……かの者の傷を癒したまえ——ヒール」

 

「……動く。団長、感謝するぜ」

 

「それはこちらのセリフだ。よく、持ち堪えてくれたよ。さて、俺は突撃するが……ついてこれるか?」

 

「へっ! 上等だぜ!」

 

「よし、ならば——いくとしよう」

 

 イージスの背中から躍り出て、敵の頸動脈を斬る。

 

「カッ………」

 

「団長! ありがとうございます!」

 

「こちらこそだ。さあ、イージスもついてこい」

 

「はいっ!」

 

 そして、四人で入り口の敵を始末すると……。

 

「やれやれ〜疲れましたよー」

 

「シノブもお疲れさん、助かったよ。やはり、遊撃がいると違うな」

 

 俺の代わりにもなれるから、回復に専念できる。

 

「えへへ〜、ご褒美はありますか?」

 

 俺の腕を組んで、上目遣いをしてくる。

 

「……アレをする以外で、何か一つリクエストを受けよう」

 

「むぅ……でも、それはそれで……むふふ〜」

 

「ほら、いくぞ。ったく……」

 

 だが、お陰でリラックス出来たな……狙ってやった? まさかね。

 

 

 入り口に行き、作戦を立てる。

 

「さて、敵はどうでる?」

 

「おそらく罠に嵌めるために、入り口は一つにしていると思うぜ」

 

「えー? でも、隠し通路は有ると思いますよー?」

 

「それもあるか……」

 

「あとどれくらいいるんですかね?」

 

「私が行きますかー?」

 

「いや、偵察自体が危険過ぎる。ここは、全員で行くべきだと思う」

 

「団長に賛成だな」

 

「でも、フォーメンションはどうしますかね?」

 

「イージス——お前が先頭でいけるか?」

 

「はいっ! お任せを!」

 

「怯むことなく即答か……良い覚悟だ」

 

「へっ、こいつは負けらんねえな。じゃあ、俺が真後ろで支えるとするか」

 

「では、俺がその後ろから行き、もしもの時は回復魔法を行使する」

 

「私は目が良いので、何かが飛んできたらすぐに知らせますねー。あと、壁に張り付いたりもできるので、自由に行動してます」

 

「わかった、シノブはそれで良い」

 

 さて……いよいよご対面といきますか。

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