追放から始まる英雄譚~心優しき青年は真の力に目覚める~ 作:おとら0205
……これが、本来のヴァンパイア族ということなのか?
普段の姿は、ほとんど人族と変わりないから疑問には思っていたが……。
「ユウマさん……」
いや、それはどうでもいい。
不安そうな顔をしているシノブに、まずは言うべきことがある。
「シノブ、綺麗だ」
「ふえっ?」
「あれ? 違ったか? 驚きはしたが……怖くないし、とても綺麗だと思う」
「っ〜!! な、なんなんですか!?」
「……何故、怒る?」
「怒ってませんよっ! もう!」
「いや、しかし……」
「もう良いですから〜! これ、時間制限があるんですっ!」
「それを早く言えよっ!」
「今、言いましたっ! それどころじゃなかったもんっ!」
「亜人だったのか……道理で、嫌悪感がすると思えば! 醜い種族めっ!」
「むぅ……」
「気にするな、シノブ。誰がなんと言おうと、俺は綺麗だと思う」
「わかりましたからっ! それより……作戦です。私、これ五分も保たないんです」
……そんなに短いのか。
しかも、心なしか苦しそうだ。
すぐに決着をつけるには……。
「シノブ、俺を奴の目の前まで連れて行けるか?」
「……いけます。あの壁も問題なく破壊しますよー」
「わかった、その言葉を信じよう。では、そのあとは俺に任せろ」
「はいっ! ではっ!」
シノブが駆け出すが……速い!
俺も脚に魔力をまとい、必死についていく。
「ユウマさんは防御を気にしなくて良いですからねっ!」
「なに? ……いや、わかった」
「く、来るんじゃない! ロックランス!」
丸太ほどの槍が飛んでくるが……。
「ハァァーー!!」
長く伸びた爪により、それを切り裂く。
「ば、バカなっ!?」
「クッ——!」
簡単に処理したように見えるが……とても辛そうだ。
この一回で確実に仕留めなくては。
俺はシノブを信頼して任せ、自分の魔力を溜めることに集中する。
「こ、これならどうだ!? アースキャノン!!」
直径一メートルほどの大岩が飛んでくる!
「シノブ!」
流石に避けないと!
「平気ですっ! ヤァァァ——!!」
「な、ナニィィ——!?」
なんと……殴りつけやがった。
爪では折れると思ったんだろうが……何という膂力だ。
「ユウマさん! もういけますっ! 準備を!」
「ああ! もう出来ている!」
「うあぁぁぁ——!? アースガード!!」
奴の目の前に、二メートルほどの高さの土の壁が現れる。
「邪魔だァァァ! 双竜爪!」
シノブは両爪を交差して、それを一気に振り抜いた。
その結果……土の壁はバラバラになる。
「ヒィ!?」
「あっ——ダメです……ひゃぅ……」
シノブの状態が元に戻る。
「よくやった! 後は任せろ!」
「ヒヒッ! そいつさえいなければ問題ない! ロックランス!」
「舐めるなよ!? 魔光剣!」
剣に潤魔力を込め、光輝く剣を振り抜く。
「グハッ!? ……ば、バカな……」
俺の剣は、奴の魔法ごと斬り裂いた。
そして、奴は意識を失ったようだ。
「……死んでいないな。だが、それで良い」
是非とも、こいつから情報が欲しいところだからな。
「やりましたねー!」
「シノブ、身体は平気か?」
「はいっ! 私達は回復速度が速いのでー」
「そうか……あっ! イージス!」
「い、生きてますっ! ゴーレムも消えましたっ!」
俺はイージスに駆け寄ろうとするが……。
「お、オイラの傷は平気です! アロイスさんを!」
アロイスの方を見ると……。
「オァァァ!」
「ガァァァ!」
斧と斧が激しくぶつかり合っている。
が、俺はイージスのほうにむかう。
「ど、どうしてですか!?」
「まあ、見てろ——すぐに終わる」
俺はアロイスを見た瞬間に、背中から声がした気がした。
俺に任せろ、もう終わらせると。
「え?」
「いいから、お前だって血だらけだからな?……ヒール」
さすがに魔力がキツイな……。
「も、もう平気ですから! 無理しないでください!」
「動けるか?」
「はいっ!」
「じゃあ、一緒に見守るとしよう。ロンドはシノブが見てくれているしな」
俺が再び視線と耳を傾けると……。
「ゼェ、ゼェ……アロイス……噂通りの男だったか。下級に留まっているが、実力は中級以上だと……」
「ゴンザレス……お前の戦いからは卑怯さが感じられない。真っ直ぐな戦いかた……一体、何故こんな状況になっている?」
「へっ! お偉い貴族に嵌められたんだよ! そっからは簡単さ! 指名手配され、返り討ちしてたら賞金首になり……終いには、こんな馬鹿げたことに手を貸すくらいだ」
「正直に全てを話すなら、俺が上に掛け合ってやる。ギルドマスターとも付き合いもある。情状酌量の余地があるかはわからないが……」
「随分とお優しいことで……だが、俺は人を殺しすぎた。いくら脅されていたとはいえな。だから、ここで決着をつけようぜ」
「……わかったぜ。じゃあ——構えろや!」
「おう!」
「いくぞ! ウォォォ——!」
「来いや! ガァァァ——!」
二人の斧が激しくぶつかり合い——片方が砕け散る。
「ゴハッ!?」
「ゼェ、ゼェ……」
俺はアロイスの元に駆け寄り、すぐさまに回復をかける。
「平気か?」
「ああ、大丈夫だ。それより、よくわかったな?」
「何となくな……お前がそう言ってる気がしてさ」
「団長には敵わんぜ……」
「い、いい仲間を持っているな……羨ましいぜ。俺にもそんな奴らがいれば、何かが違ったのかもな……己の強さを過信して、貴族に雇われちまったが……」
……もう、命の灯火が消えるな。
「最後に何か言うことはあるか?」
「黒幕の正体を教えてやる……奴の名は伯」
「ユウマさん! 避けて——!?」
「クッ!?」
俺は一歩下がり、何とか矢を避けるが……。
「カハッ……ア、ア……サウ……」
ゴンザレスは首に矢が刺さり、そのまま絶命した。
「誰だ!?」
「ユウマさん! あそこですっ!」
天井の柱に小柄な人物がいる。
しかし、近くの窓からすぐに出て行ってしまった。
「追いますか!?」
「いや、良い。シノブも疲れただろう。というか……やはり、そいつも死んでいるか」
視線の先では、ロンドは頭を貫かれている。
あれでは即死だろう。
「すみません……あの人、相当な腕前ですよ? この距離から正確に射ってきましたね」
「ああ、しかも連射でな。おそらく、口止めの意味を持つのはわかるが……」
「何で、手出しをしてこなかったかだな?」
「オイラ達、あれが援護してたら危なかったですよね?」
「ああ、誰かが死んでいたかもしれない。ただ、出来なかったのかもしれない」
「何でですかねー?」
「さあ……ただ、何かしらの理由はあるだろうな。だが、それは帰ってからにしよう」
「それもそうですねー。とりあえず依頼は完了ですし、賞金首も倒しましたしー」
「ゴンザレスは俺が担いでいこう」
「こいつも犠牲者だったのかな?」
「団長、気にしてはいかんぜ。こいつはこいつで悪事を働いていたんだからな」
「……だが、それも嵌められたと。サウとか言いかけてたな」
サウ……ハク……この二つの言葉の意味か。
最近、どっかで聞いたような気がする……。