追放から始まる英雄譚~心優しき青年は真の力に目覚める~   作:おとら0205

37 / 50
シノブ視点

 いや〜まいりましたねー。

 

 まさか、私がこんな気持ちになるなんて……。

 

 不思議な人だよねーユウマさんって。

 

 里にいた頃は、人族は悪魔だって教わってきました。

 

 亜人を奴隷扱いして、同じ生き物として認めないって。

 

 そもそも亜人という呼び名も、彼らが勝手につけたもの。

 

 私達だって人だもん、魔物じゃないもん。

 

 ですが、あちらはそうは思ってくれません。

 

 私達を発見したなら、怖がって避けるか——喜んで痛ぶるかです。

 

 だから、人族の者とは関わるなと言われていました。

 

 エデン内部の種族と結婚しろと……。

 

 でも私はとある事情により、国を出て行くことを決めました。

 

 それはユウマさんには話していないけど……。

 

 いつか、本当のことを話したいなと思います。

 

 

 

 

 

 

 疲れた身体を叱咤して、何とかギルドへ到着すると……。

 

「シノブ、ここで待っていろ。すぐに終わらせて戻ってくる」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「しおらしいお前も珍しいな……」

 

「むぅ……私だってそう時はありますよー」

 

「クク……可愛くて良いと思うがな。では、良い子で待ってろよ?」

 

「ふえっ?」

 

 ……何ということでしょう。

 あれは天然さんなのですか?

 去り際にあんなセリフを言うなんて……不覚にも、ドキッとしてしまいました。

 私が欲しいのは種であって、愛情ではないのに……でも、それも変わってきたかも。

 

「ふぅ……流石に疲れましたね……」

 

 でも、私だけ先に帰るのは仲間外れみたいで嫌ですし。

 本当はユウマさんを待つ間の、ただの腰掛けのつもりだったのに……。

 いつの間かユウマさん以外の二人も好きになってましたねー。

 ユウマさんの人柄なのか、優しい人が集まってるからかな?

 

 

 壁に寄りかかりつ、入り口の横で待っていると……。

 みんなが、ギルドから出てきます。

 

「みんな、お疲れ。これにて依頼完了だ」

 

「おう、お疲れさん」

 

「お疲れ様です!」

 

「お疲れ様でしたー」

 

「確認のため、報酬は明日ということだ。というわけで、明日の昼過ぎにここに集合だな」

 

「おう! じゃあ、飯でも行くか?」

 

「あっ! いいですねっ!」

 

 ……どうしよう?

 正直言って辛い……もう、すぐにでも倒れこみたい。

 でも、ノリが悪い気もするし……。

 

「悪いが、今日はやめておく。シノブが辛そうだからな。さっき軽く説明したろ?」

 

 ユウマさん……?

 

「……例のアレか?」

 

「アレ、凄かったですね……」

 

「二人は、何も聞かないんですね? 私のあの状態について……」

 

 人族からしたらバケモノそのものなのに……。

 

「団長から軽く説明を受けたからな。流石に驚きはしたが……団長に怒られちまった。それで、これまでの何かが変わるのか?ってな。これまでの仕事を見て、俺は信頼できると思っているぜ」

 

「オイラもですっ! どんな姿だってシノブさんは仲間ですもん!」

 

「お二人とも……ありがとうございます」

 

 人族にも、良い人っているんですね……。

 教会やトライデントではいなかったから……。

 最初から、この国に来れば良かったのかな?

 でも、そうしたら……今みたいになってないかも。

 ユウマさんも、最近冒険者になったって言ってたし。

 

「と言うわけで、シノブだけを仲間外れは可哀想だ。今日はここで解散にしよう」

 

「だな、俺が悪かったぜ」

 

「ですね」

 

「い、いえ! 私のことは気にせずにみんなで……」

 

「はい、解散ー」

 

「じゃあな」

 

「また、明日です」

 

「もう! 聞いてます!?」

 

「ほら、行くぞ」

 

「えっ?」

 

「そんな状態で放っておけるか。今日はうちに泊まれ。叔父上には、俺から上手く伝えておくから」

 

「ご、強引じゃありません?」

 

「お前が弱音を吐かないからだ。意外とそういうところがあるみたいだからな」

 

「だって弱音を見せたら……」

 

 亜人である私は……。

 

「絶対守るなんてことは言えないが……俺が出来る限り力になる。いや、俺らがな」

 

「ユウマさん……」

 

「それとも、まだ俺達は信用できないか?」

 

「そんなことありませんっ! そうだったらあの姿にはなってませんっ!」

 

「なら問題ないな。シノブ、お前の気持ちに応えられるかどうかは正直わからない。だが、お前が大事な仲間であるということは断言できる」

 

「むぅ……そこは、正直に言わなくても良くないですかー?」

 

 恥ずかしくなって……私は、いつものように軽口をたたいてしまいます。

 

「すまんな、嘘はつきたくないものでな」

 

 その言葉は、私の心に突き刺さる。

 ……私は、嘘をついているから……。

 正確には嘘ではないけど、本当のことを言っていないというか……。

 

「ユウマさん、私……」

 

「まあ、そんなに思いつめた顔をするな」

 

「えっ?」

 

「まだ、何か言えないことがあるんだろう? 言いたくないことかもしれないが」

 

「す、すみません」

 

 気づいてたんだ……それでも、何も言わずに。

 

「謝ることはない。皆、それぞれに事情があるだろう。言いたくなったらいうと良い」

 

「あ、ありがとぅございます……」

 

「クク……ほら、帰ろう」

 

 その笑った顔を見て——私は自覚します。

 

 私は子種に惹かれていたけど……今は、この方自身に惹かれていると。

 

 だって……胸がドキドキするから。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。